思ったよりも読んでいただけているので、読者様には感謝しております。
一週間で、9万字投稿って自己最速ですけど、多分サイト内でもクオリティは置いといて速い方ですよね?
質も上げられるように頑張ります!
今回もオリジナルエピソード。まほのキャラクターは半分妄想なので、ご容赦を……。
それでは、よろしくお願いします!
「にっ、西住まほさん! 何をしているんですか?」
私はさっき秋山さんからヘリコプターを貸してくれたと聞いていたので、その本人が隣に居て驚いた。
「何って、見ればわかると思うが……。カレーを食べようとしている」
まほさんは当たり前だと言わんばかりの表情でカレーが運ばれて来るのを見ていた。
「あっああ、そうですよね。これは、失礼しました――ええーっと、もしかしてウチの生徒にヘリコプターを貸したので、学園艦に戻るのが遅れているのでしょうか?」
私がそう尋ねると、まほさんのスプーンがピタリと止まった。ビンゴのようだ。
「申し訳ありません! あのう、待たせてしまっては悪いので、よろしければ私にヘリコプターで黒森峰の学園艦までお送りさせていただけないでしょうか?」
「――何? 君はヘリコプターを操縦出来るのか? そうか、なら私は余計なことをしてしまったな」
まほさんはそう言うと、カレーを黙々と食べ始めた。
「いや、そのう。私にも連絡が来ていたみたいなのですが、携帯を忘れてまして――さっきまで気付いてなかったのですよ。ですから、ぜひとも送らせてください」
「結構だ。私はエリカの帰りを待つ――」
「最近のみほの日常の話もしたいのですが――」
「早く食べなさい。冷めてはカレーは美味くないぞ。みほの話が特に聞きたいと言うわけではないが、そこまで君が言うのなら無碍にするわけにもいくまい。黒森峰まで頼もう」
早口でまほさんはそう言うと、素晴らしいスピードでカレーを平らげた。
それに圧倒され私も納豆を殆どかき混ぜることなく、ぶっかけて味わう暇もなく平らげる羽目になった。
先日、薄々感じていたことがある。
西住まほさんは妹が大好きだ――かなりの高確率で……。
しかし、口下手で不器用だから、勝手に西住さんが怖がっているのだ。
まぁ、怖いよね、この人。無駄に威圧感があるし。
生徒会に入って反社会勢力的な人を追い出す作戦とかに参加してなかったら、びびってたもん。
「さぁ、まほさん。ここが大洗の学園艦ですよ。どうですか? みほに会って行きます?」
「ふぅ、君は余計なことをしなくて良い。早くヘリコプターまで案内しなさい」
「はぁ、素直じゃないですねー」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も言ってませんよー」
素直になれないまほさんをヘリコプターに乗せて、私は思いもよらない形で憧れていた黒森峰女学園に行くことになったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヘリコプターの中で黙っているまほさんに、私は聞かれてもない西住さんの日常の話をしていた。
まほさんは、黙って聞いていただけだったが、どこか顔が安らいだように見えた。
そして、私はきっちりと黒森峰の学園艦に着陸することが出来た。
「ご苦労だった。君の友達を送り届けたエリカにも直接学園艦に戻るように伝えた。直に戻って来るだろう」
「それはよかったです。では、私はこれで……」
私は大洗に戻るためにヘリコプターに再び乗り込もうとした。西住まほさんとも、(一方的に)おしゃべり出来たし、とっとと寮に戻るとしよう。
「待ちたまえ」
「えっ?」
私はまほさんの言葉に振り返る。あれ、何かヘリコプターの中に忘れ物でも?
「せっかく黒森峰に来たんだ。君も志望校だったと言っていたし、少し見学していくか?」
まほさんは腕を組みながら私にそう尋ねた。
えっ、マジで? 黒森峰の学園艦を見ていっても良いの? よしっ、この機会を逃してなるものか!
「うわぁ、とても嬉しいです! なんせ、ずっと憧れていましたから――」
「そっそうか。わかったから、ちょっと顔を離してくれ、近いぞ……」
「すっすみません。つい……」
私はまほさんの肩を掴んで、ずぃっと顔を近づけてしまっていたので、慌てて離れた。
「とはいえ、部外者の君に見せられるのは限られているがな。付いて来なさい」
「はい、よろしくお願いします!」
私は黒森峰を案内してもらうことになった。ここが西住さんがこの間まで通っていた高校か……。そして、私が怪我をしなければ入学していた――。
部外者には見せられない場所が多いとは言われつつも、割とガッツリ戦車や演習場は見せてもらえた。えぇ……。決勝って確か20両までオッケーなんだよね。
ティーガーやパンターを中心に重戦車がズラッと並んでるんだけど。私たちは5両でどうすりゃいいんだよっ!
あれっ? これって、もしかして私に現実を見せて心を折る作戦なのかな?
「どうしたんだ? 何を考えていた?」
「いえ、どうやって5両で黒森峰に勝とうか考えていただけです」
「ほう? 5両で、私たちに?」
いやいや、違いますって。考えて無理ゲーって素直に思ってただけです。やめてください。いい度胸だな、お前って表情するの。
「今日の試合を見させて貰ったよ。サンダース大学付属高校に完勝した君らは確かに強いと認めてもいい。特に仙道玲香、君はやはり強い――」
「はぁ、ありがとうございます。黒森峰の隊長からそう言ってもらえるとは……」
私はまほさんのまっすぐな視線を受け止めて目をジッと見ていた。
「どうだ? ウチに転校して来ないか? 次の隊長はエリカに任せようと思っているが、副隊長になりそうな人材には迷っていてね。君になら、エリカの副官を任せてもいい――」
「私をダシにみほを連れ戻す気ですか?」
黒森峰の隊長がいきなりそんなことを言うとは思わなかったので、西住さんを連れ戻す目的で私を利用しようとしていると思った。
「そうか、なるほど。そういう手もあるのか……」
「えっ? まほさん?」
「いや、何でもない。みほは戻らないだろう。そもそも我が校の戦車道に合ってなかったのかもしれない。しかし、君は違う。仙道玲香の戦闘スタイルはどう考えてもこっち側だろ? 勝利への渇望と執念、そしてその為に獰猛な獣へと変わる君の戦い方は黒森峰にこそよく馴染むはずだ」
まほさんはかなり饒舌に私の戦い方の分析を語った。いや、よく見ていらっしゃる。負けず嫌いの私の戦い方を……。
確かに、あの重戦車を自在に動かせたら――とはよく思った。しかし――。
「ダシに使うとは言い過ぎました。過分な評価を頂きありがとうございます。でも、もう私は大洗の水がたまらなく好きになってしまったのです。今さら別の場所の水を飲む訳にはいきません――」
そう、私は大洗が、生徒会が、戦車道チームが大好きだ。離れるつもりはない。
「ふむ、大洗の水というが……、学園艦の水はどこの学園艦も海水をろ過したものではないのか――」
まほさんは真顔で答える。なんか、凄く恥ずかしいんだけど……。また、生真面目なツッコミを――。
「いえ、まぁ、そうなんですけど。それは比喩表現というか、なんというか――。それに――」
「それに? なんだ?」
「それに、今はみほは大洗にいます。私は彼女のいい友であり、いい仲間で居たい。あと、まほさんや逸見エリカさんは、なんていうか、そのう、ライバルでいたいなっていうか、勝ちたいっていう感じですね。今の私は、この大洗の戦車道チームでどうやって
あっ、今、また言っちゃったわ。優勝って確かに言っちゃってる。なんで、こう、私は――。
「そうか――君は面白いな。ふふっ、ライバル、それに優勝か。普通は身の程知らずと言われるようなことでも、中々どうして、君が言うと、あり得てしまうのではないかと思ってしまう。非礼はこちらにあったようだ。優勝チームの副隊長になるやもしれん人を、準優勝校の副隊長の地位で釣ろうとしたんだからな――」
「いえ、そういうわけでは……」
私は手をブンブン振って否定した。いくらなんでも、そんな大それたことを言ったつもりはない。
ていうか、まほさんって自虐的なことも言うんだ。
「そうかな? まぁいい。では、質問を変えよう。その、どうかな――私とそのう、友達とやらになるっていうのは?」
「はいぃ?」
えっと――耳が悪くなったのかな? 今、まほさんが友達になってくれって言ったように聞こえる。
「いや、やはりダメか。君のような友人が欲しかったのだが――」
めっちゃ、しょんぼりしてる。えっ、そういうところ西住さんと似てるんだけど。
「もちろん、いいですって。むしろ、ウェルカムっていうか、嬉しいです。私もまほさんと友達になりたいですよ」
「ほっ本当か?」
「ええ、ぜひともお願いします。じゃあ、これからは私のことを玲香って呼んでください! 携帯の番号を交換しましょう、ほら――」
「番号を交換? ああ、これだな。どうすればいい? まいったな、こういうのはエリカにさせているのだが――」
「ええっと、ですね。ここをこうして――」
「ほう、なかなか便利なんだな」
「まほさんって、戦車道一筋って感じで、ゲームとかもしなさそうですよね」
「ゲームくらいはするぞ。将棋は得意だ!」
「えっ、本当ですか。私も得意ですよー。今度、勝負しましょうよー」
こうして、私は西住さんのお姉さんのまほさんと友達になった。私にはどう考えても口下手ないい人にしか見えないんだけどな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ちょっと、あなたがなんで黒森峰にいるのよ! 何してるの!」
逸見さんの声が黒森峰の隊長室で響き渡る。
「えっと、将棋をしてるんだけど。むむ、やりますねぇ。ここはどうですか? 王手ですっ!」
パチリと私は駒を移動させる。うへぇ、まほさん棋力知らないって言ってたけど、本当に強い。私は一応アマ5段なんだけどなぁ。
「見たら分かるわよ! なんで、あなたが当たり前のような顔をして黒森峰に居て隊長と将棋をしているの? って聞いてるの!」
「エリカ、ご苦労だった。玲香は友人としてここに招いた。――なるほど、では、こうしよう」
まほさんは盤面を凝視しながら答えた。
「友人? あれ、私の耳がおかしくなったのかしら。隊長が友人など作るわけが……」
さり気なく、それは失礼じゃないか? 気持ちは分かるけど……。
「このノリで逸見さんも友達にならないか? ハンバーグ好きなんだってね、美味しいところ知ってるよ。――むむ、これでどうでしょう?」
「誰があんたなんかと! 隊長も勝手に人の話をしないでください」
「しかし、私はまほさんと友達だからね。聡明な逸見さんなら言ってること分からないか? 私は割と友達の言うことを聞くタイプだよ。大体、君と私はなーんにも蟠りのない、フラットな関係のはずだろ?」
「……」
逸見さんは少し黙った。そして……。
「じゃあ、例えば……」
しばらくして、私に耳打ちした。ああ、やっぱりこの人、まほさんのこと――。
「うん、全然いいよー。そんなの簡単じゃん。約束するよ」
「そっそう? じゃあ、友達になってあげてもいいわよ」
逸見さんは目を背けながら、そう言った。この人からはアリサさんと似た匂いを感じる。
「じゃっ、エリカ! よろしくね! あっ、これで詰みですよ、まほさん」
「ちょっと、いきなり呼び捨てって馴れ馴れしくない?」
「ええー、そうかな? エリカさんって呼んで欲しいの?」
「それは、それであの子みたいで嫌ね。エリカでいいわよ」
「じゃっ、それで! 私は玲香って呼んでくれ」
私は逸見さんと友達になった。まずはこの人のことをよく知ってみよう。なぜ、西住さんとの関係に亀裂が入ったのか?
それも親しくなれば分かるだろう。
「ふむ、負かされるとはな。これで1勝1敗か……。もう一戦やるか?」
「いやー、さすがにそろそろ帰らないとまずいです。今度、決着をつけましょう。その前に全国大会の決勝で戦うかもしれませんが!」
「そうだな。楽しみにしよう。君のポテンシャルはまだあんなものじゃあないはずだ」
「1回戦はまぁまぁだったわね。でも、5両じゃ2回戦は勝てても準決勝は無理じゃないの?」
「そうなんだよなー。正直、厳しいです。友達のエリカよ、何とかパンターかティーガー貸してくれ」
「無茶言わないで頂戴! たっ隊長! ダメですからね! 考える仕草を止めてください!」
やはり逸見さんには才能がある。ツッコミの才能が!
好きなんだよなー、河嶋先輩やアリサさんみたいなタイプ。会長のせいだ絶対。
「じゃあ、次はいつ会えるかわからないので、写真を撮りましょう。友達ってそういうもんですから」
「そっ、そうなのか? すまない、こういうことには疎くてな」
まほさんは真面目な表情でそう答える。本当に西住さん以上に浮き世離れしてるな、この人は。
「そうですよ、ねぇ、エリカ?」
「えっと、えっ?」
逸見さんはキラーパスを送られてしどろもどろになっていた。
「エリカ、もう、いっそのことまとめて3人で撮ってもいいかな?」
「はっ――。――ええ、そうね。隊長に時間を取らせるわけにはいかないわ。ちゃっちゃと撮りなさい!」
てな訳で、自撮りを3人で密着して撮ったわけで――それと引き換えに逸見さんの連絡先を手に入れたのだった。
こうして、私はヘリコプターに乗り込み、もうとっくに出発した大洗の学園艦を目指したのだった。
なんか、今日は凄く濃い1日だったような気がするぞ――。
やっとオリジナルエピソードが大体終わって本編に戻れそう。
残っているのはみほとの約束くらいですね。
コミカルな感じを目指して今回は書いてみました。如何でしたでしょうか?
次回もよろしくお願いします!
多分、明日の昼過ぎには投稿します!