戦車探しはネタが思い付かなかったのでカットしました。それではよろしくお願いします!
「ここが冷泉さんのお祖母さんの病室か」
西住さん、秋山さん、五十鈴さんの3人と冷泉さんのお祖母さんのお見舞いに大洗の病院に来ている。
私服のみんなを見るのはもしかして初めてかも。よく考えたら、ずっと制服だったな私たち。
というか、私はサイズがないからメンズファッションばかりしか私服を持ってない。その上、こだわりもない。
今さらだが、適当にラフなTシャツとジーンズを選んで着たのは間違いだったか? さっき、女の看護師さんに連絡先を聞かれたが、仕事をしろと言いたい。
なぜか、西住さんはいつもよりテンションがなぜか高かった。お見舞いに行くんだからもうちょっと自重してほしい。
「では、行きましょう」
花束を抱えた五十鈴さんが病室のドアを開けようとする。
しかし、そのとき――。
『いいから、もう帰んな! いつまでも病人扱いするんじゃないよ! あたしのことはいいから、学校行きな! 遅刻なんかしたら許さないよ!? ――なんだい? その顔? 人の話を聞いてんのかい! まったく、お前は返事も愛想も無さすぎなんだよっ!』
『そんなに怒鳴ると、また血圧上がるから――』
お年寄りの女性の叫び声と冷泉さんの声が病室から聞こえる――ふむ、大声を出してるのは冷泉さんのお祖母さんか。
「帰りますぅ?」
秋山さんがドン引きした顔をしている。潜入とかはするけど割と気が弱いんだ。
「いえ、ここは突撃あるのみです」
「良かったじゃん。元気そうで。これなら、気楽に入れるな」
五十鈴さんと私は同時に答えた。
「五十鈴殿って肝座ってますし、玲香殿ってやたらポジティブですよね」
「くすっ……」
秋山さんのツッコミに西住さんが微笑む。
「失礼します」
五十鈴さんが先頭で病室に入る。中には冷泉さんと武部さんと冷泉さんのお祖母さんが居た。
思ったとおり気の強そうなお祖母さんだ。
「あっ、華! みぽりんもゆかりんも、れいれいも、みんな来てくれたんだー」
武部さんは微笑みながら声をかけた。君だけなんだけど、『れいれい』って私を呼ぶの。定着は勘弁して欲しいかも。
「誰だい? あんた達?」
「戦車道を一緒にやってる友達」
「戦車道? あんたがかい?」
「うん……」
訝しいような表情でお祖母さんは私たちを一瞥し、戦車道というワードを聞いて目を丸くする。
「あっ、西住みほです」
「五十鈴華です」
「秋山優花里です」
「仙道玲香です」
「私たち、全国大会の1回戦勝ち抜いたんだよー」
私たちは自己紹介をして、武部さんが情報を付け加える。
「1回戦くらい勝てなくてどーすんだい? あれ? 麻子、あんたの所の高校って女子校じゃなかったのかい? どうして男の子と戦車道してるんだい!」
あはは……、久しぶりにこうなったか。スカートにすりゃ良かった。
「おばぁ、あの人、一応女の子……」
おいっ!
「ふぅーん、無駄に男前だねぇ! あんたは戦車道より、宝塚にでも行けばいい!」
無駄にって……、はははっ、まいったな。
「んなこたどーでもいいや、んで、戦車さんたちがどうしたんだい?」
「試合が終わったあと、おばぁが倒れた連絡があって、みんな心配して来た」
「あたしじゃなくて、あんたのことを心配して来たに、決まってるだろ! ちゃんと、お礼を言いな!」
「みんなわざわざ、ありがとう……」
「もっと愛想よく出来ないのかい!」
「ありがとう……」
「さっきと同じだよっ!」
ふぅ、凄いお祖母さんだな。唯我独尊の冷泉さんがタジタジだ。そりゃあ、武部さんの『おばぁ』に言うよっていうのが、最終兵器になるはずだ。
間違っても遅刻400日見逃しとか言わない方がいいな。
「お祖母ちゃん、昨日まで意識が無かったんだけどね。今朝起きるなりこれなんだ……」
マジか、それはそれで心配だな。
「お花を飾りたいのですが、花瓶あります?」
「ここにはないけど、ナースセンターにあるかも、行こっ」
うん、私は連絡先聞いてきた、看護師さんが怖いからいいや。
「あんたらもこんな所で油をさすぐらいなら、戦車に油をさしな」
会長なら、座布団いちまーいって言ってる。意外とひょうきんなのだろうか?
「まったく、この子なんてなーんの役にも立ってないだろう?」
「いえ、冷泉さん。いつも試合のとき冷静で助かってます」
「へぇ、この子がかい?」
「それに凄く戦車の操縦が上手いんですよー」
「うん、麻子の操縦は天才の領域ですから。それでご飯食べれるくらいですね」
「ふん、戦車の操縦が出来たって、どーせ、おまんま――食べれるのかい!?」
私のご飯食べれる発言がよほど驚いたのか、お祖母さんは目を見開いて、こちらを見た。
「――ええ、まぁ。戦車道は近々プロリーグが出来ますから。麻子の才能なら、このまま戦車道を続ければ日本トップクラスの操縦手になれるでしょう。となれば、プロのドライバーになることも可能かと」
「ふーん。この子がねぇ」
お祖母さんは孫が褒められて、少し嬉しそうだった。
そして、帰りがけにこう言い放った。
「あんな、愛想のない子だけどね、よろしく頼むよ――」
冷泉さんが部屋から出たあと、私たちにだけ聞こえるように……。本当に、冷泉さんのことを大切に思ってるんだな。
寝てしまった冷泉さんを背負いながら、大洗の学園艦を目指す。
先日のカチューシャさんといい、なんか小さな子を肩車とか背負うとか運搬役をしていると、母性に目覚めるというか、和む。
今度、会長に頼んで肩車させてもらおうかしら。
レイーシャとアンナみたいな――ん? それじゃ逆か。
その道中で武部さんから聞いた話によれば、なんでも冷泉さんのご両親は事故で亡くなられて、お祖母さんが最後の身内らしい。
だからこそ、冷泉さんはきちんと卒業してお祖母さんを安心させたいのだそうだ。
そうかぁ、そりゃあ単位を気にするよな。遅刻回数取り消しは魅力的になるよな。何だか、戦車道の成績云々関係なく、遅刻くらいなんとかしてあげたいと思ってしまった。流石に出来ないけど……。
戦車道の成績って言っても連帯責任だからな。私も優勝を目指すことで冷泉さんを後押ししよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そう――だよね。勝たなきゃ意味ないよね……」
ちょうど昼過ぎに戦車でも見ながらご飯を食べようとしていたら、あんこうチームと合流して一緒に格納庫で食べることになった。
西住さんは勝てるかどうかのプレッシャーでナーバスになってるみたいだ。
「そうでしょうか?」
「えっ?」
キョトンとした顔で答える秋山さんと不思議そうに見つめる西住さん。
「だって、楽しかったじゃないですかー。サンダース戦も練習試合のグロリアーナ戦も、模擬戦だって、整備だって、練習後の寄り道も!」
ニコニコと語るのは、私たちの今日までの軌跡。そうだな、私も楽しいを通り越して幸せだった。
「そういえば、私も今はみんな一緒に戦車に乗れて楽しいと思うようになった。前は勝たなきゃって思ってばかりいたから――だから、負けたときに逃げ出したくなったんだ」
あー、去年の試合かー。まぁ、あれは特殊なケースだろ。負けたのは西住さんのせいだけじゃないし。そもそも、西住さんは――。
「私、あの試合見てました」
秋山さんも当然去年の試合はチェックしているよね。だからルクレールで立ち上がったんだし。
「私は西住殿の判断は間違いでは無かったと思います。――前にも言いましたが、きっと助けてもらった乗員は西住殿に感謝していると思いますよ!」
ニコリと笑って秋山さんはこう締める。まぁ、西住さんは感謝されたくてあの行動を起こしたわけじゃないんだろうけど、それは真だろうな。
「秋山さん――ありがとう」
憑き物が落ちたように微笑む西住さん。
「うわぁ、すっすごい! 西住殿にありがとうと言われちゃいましたー」
ウネウネと照れる秋山さん。すっごい嬉しそうだな。
「戦車の道は一つだけじゃないのかもしれませんね」
「私たちの通る道がそれが戦車道になるんだよー」
五十鈴さんと武部さんが話を盛り上げる。私たちの道が戦車道かー。腕を壊して絶望して復帰してそして、私はどこへ向かうのだろうか――。まぁ、西住さんが元気になったのなら良かった。
「ごめんね。弱気になって――玲香さんが本当は勝ちたいのはわかってるから――」
「げっ――」
私は心を見透かされたような西住さんの視線にドキッとした。
「ちょっと、れいれいー。空気読みなよー」
「本当ですよ。ちょうど綺麗にまとまりかけていたではありませんか」
武部さんと五十鈴さんから非難めいた視線を感じる。
「やはり、玲香殿は勝たなきゃ意味ないって思っているのでしょうか?」
「単位取得も勝利が条件だった――」
秋山さんや冷泉さんからも冷ややかに見られる。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。ああ、確かに私は負けるのは嫌いだ! だからといって勝利至上主義ってわけじゃないぞ。ただ、世話になった先輩たちが何故か死ぬほど勝ちたがっているんだ。それなら、私くらい本気にならなきゃいけないだろう――。たとえ、見苦しくってもな」
多分、めっちゃ早口だったと思う。だけど、今回は勝たなきゃ嫌な予感がするんだよ。
あの先輩たちが、あんな強引に西住さんに戦車道をさせようとしたのだから。余程のことなんだ。
「ふふっ、大丈夫だよ。玲香さん」
「へっ?」
「私、玲香さんの誰かの為に勝とうとするの――大好きだよっ」
「みほ……」
多分、そのとき――私の顔は真っ赤だったと思う。大好きって言われたとき、西住さんの顔がとても眩しかったから――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ごめん、ごめん、五十鈴さん。書類の整理を手伝ってもらってさ」
「いえ、いつも玲香さんが居残りをしていて不憫に思っていたので、手助け出来て嬉しいです」
「五十鈴さん――本当にありがとう! 本当に河嶋先輩に五十鈴さんの爪の垢を煎じて飲ませたいよ!」
「聞こえてるぞ、馬鹿者!」
戦車道の練習にチームが一丸となって、今まで以上に本気で取り組むようになったのは良かったが、副隊長として全員の指導を西住さんと見ていたら、生徒会の仕事が溜まってしまった。
それはもう、書類が東京タワーもびっくりなくらい積まれているのである(半分は河嶋先輩が丸投げしたやつ)。
それを不憫に思った五十鈴さんが、書類の整理を手伝ってくれると申し出てくれた。
もう、五十鈴さんマジ天使!
「あら? 戦車がまだ残っているみたいな記述があるのですが――」
「えっ? 本当かい?」
五十鈴さんが見せてくれた書類には、確かに大洗の学園艦に戦車が残っている痕跡があった。
こうしちゃいられないな。
――というわけで、捜索隊結成!
まぁ、途中で武部さんとウサギさんチームが迷子になるというトラブルもあったが、戦利品は確かに手に入った。
まず、戦車が2両。
ルノーB1bisとそして、あの何だっけ? 凄そうなやつだ。ど忘れしたけど……。
更に75mm砲が何故か見つかった。これで、Ⅳ号戦車が強化されるぞ! やったね! なんか、カバさんチームから秋山さんがグデーリアンって呼ばれてるけど何があったんだ? まぁ、戦力が強くなって良かった。
駆け足でこの出来事を語ったのには理由がある。
私は今、それどころじゃない窮地に立たされているのだ。
これは――サンダース戦以上に辛いのだが……。
しかし――確かに会長の命令は聞かないとならないし、西住さんとの約束も守らなきゃならない……。
だから……、私は西住さんに声をかけた。
「なぁ、みほ――頼みがあるだ……」
「うん? なーに? 玲香さん」
西住さんは笑顔で私に顔を向ける。
「そのさ、明日なんだけど……、私と――デートしてくれ!」
「ふぇ? デート? ふぇぇぇっ!」
西住さんは顔を真っ赤にさせて絶叫した……。
目新しい感じが無くてすみません。
次はオリジナルエピソードなので、よろしくお願いします!