大洗のボーイッシュな書記会計   作:ルピーの指輪

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激闘もここで終止符。
なんとか、プラウダ高校との準決勝の決着まで書ききれました。
大まかな終わり方だけ考えて、あとは書きながら展開を考えるスタイルなので、今回の展開が一番苦労しました。
それでは、よろしくお願いします!


大洗女子学園VSプラウダ高校 その3

 私たち3両に対して旧ソ連の誇る高性能戦車が8両……。まさに壮観といった感じだった。

 

「みほ、どうしてだろうか? 私はすごく今、楽しいんだ。強敵が目の前にいて、廃校の危機が迫っているのに、君の隣で戦車に乗っていると思うと――胸が昂ぶる」

 

「あはは、玲香さんって……、やっぱりカッコいいよ。でも、私も落ち着くよ。玲香さんと一緒に戦えると考えたら、すぅーっと、頭が冷えて景色が広がって見えるの」

 

 ニコリと微笑んでお互いに頷きあって前を見る。カチューシャさんの肝を少しくらい冷やしてやる!

 

 私の戦車での戦い方はすべてを焼き尽くす灼熱の業火。苛烈な攻撃で敵を怯ませて、さらにスキを容赦なく攻めるスタイルだ。

 

 西住さんの戦い方は氷のような冷静な戦況判断から確実に相手の急所を一撃で仕留めるスタイルだ。

 

 炎と氷の相反するスタイルは奇跡的に噛み合い、プラウダの戦車群を圧倒した。

 

 さらにここに来てウサギさんチームが覚醒する。

 元々要領の良かった彼女たちは、自分たちの実力をキチンと把握してその上で最善の行動を実践することが出来ていた。

 それも状況に合わせて『自分たちで考えた上で』である。

 

 強豪校にありがちな指示待ち人間でもなければ、弱小校にありがちな無謀な人間でもない。

 このバランス感覚はある意味で才能だ。気配りが出来る澤さんを中心によく回っているグッドプレイヤーの集まり、それがウサギさんチームである。

 今さらだが、第一印象で頭が弱そうとか思っていてすまなかった、大野さん。

 

 敵陣の真っ只中で暴れるあんこうチームとカメさんチーム。主戦場から距離をおいて外からの砲撃で援護するウサギさんチーム。

 

 3つのチームがここぞとばかりに奇跡的な連携をして、プラウダの主力の8両を相手に善戦していたのだ。

 

「みほ!」

「玲香さん!」

 

「「真・双頭の蛇の牙(ウロボロスファング)」」

 

 以前、カチューシャさんに指摘された弱点は私が砲手をしているがために、全体の状況判断が出来なかったことだ。

 

 そのため、敵の攻撃を躱すことに関しては半分運任せとなる。

 もちろん、変わった動きで翻弄しているので、並の砲手相手ならそれで十分に被弾は避けれるが、ナオミさんやノンナさんクラスになるとそうはいかなくなる。

 

 なんせ、彼女らの心はその程度では揺るがない。

 特にノンナさん、彼女の精神力は高校生の領域を遥かに超えている。

 

 私が車長に専念出来れば、敵の砲撃にも十分に注意ができる。つまり、この技の完成形を披露することが出来るのだ。

 

 私たちの狙いは最初からIS-2だった。ノンナさんを倒すことが出来ればプラウダの士気は低下する上に遠距離からの脅威はなくなる。

 だから、ここで確実に彼女だけは仕留めておきたかったのだ。

 

 IS-2から凶弾が放たれた。すごいっ、冷泉さん! ここに来て、あんなフェイントで躱すとは! これなら、装填時間内に十分だ!

 

「会長!」

「あいよっ!」

 

 38tの砲撃でIS-2がバランスを崩す。これなら、あんこうチームは確実に仕留めるだろう。

 停止時間1秒未満の早撃ち……、そう、五十鈴さんの並外れた集中力は一撃必殺である。

 パワーアップしたⅣ号の砲撃がプラウダ高校の最強の1両を確実に屠る。

 

 こうして、私たちはプラウダの主力の中の主力であるIS-2を仕留めることに成功したのだ――。

 

『西住隊長、フラッグ車を見つけました!』

 

 そして、そのタイミングで朗報! よくやったぞ、納豆小隊! 最高のタイミングだ!

 

『カバさんチームを中心に撃破を試みてください。しかし無理はせずに、少しでも攻め込まれそうでしたら、退避をお願いします。こちらも直ぐに向かいます。アヒルさんチームは出来るだけ安全圏まで退避してください』

 

 西住さんは的確な指示を出す。

 

 勝利の天秤は確実にこちらに傾いていた。

 

 

 しかし、カチューシャさんからのプレッシャーは依然として強く――統率の乱れは全くない。

 

 依然として数では劣る私たちなので、包囲網を突破して納豆小隊と合流するのはなかなか難しそうだった。

 

 ノンナさんを倒せば多少は揺らぐと思ったのに――去年の優勝校は伊達ではないと言うことか……。

 

 そんな中、凶報が届く。

 

『こちら、カバさんチーム。撃破に失敗した。護衛のT-34がこちらに向かって攻撃を開始したので、戦線を離脱する』

 

 うん、冷静な判断だ。逃げに徹すれば、1両から追われたくらいでは、そうそう撃破されないだろう。

 

 だが、それが楽観だったことに気付いたのはすぐあとであった。

 

『こちら、カバさんチーム。すまない、撃破されてしまった。恐ろしい狙撃精度だ……』

 

 行進間射撃でこうも簡単にⅢ突がやられた? おりょうさんだって、相当逃げる練習は積んだのに……。

 砲塔が回転しないⅢ突だから、彼女はドライビングテクニックを身に着けようとかなり努力していた。それが、あっさりと……。

 

『カモさんチーム、撃破されてしまいました。アヒルさんチームの健闘を祈る!』

 

 続けてカモさんチームも!? そんな……、そこまで凄い精度の砲手って――まさか……。

 

 私はやけにあっさりとIS-2を撃破出来たことを今さら疑問に思った。そして、その後のプラウダの落ち着きぶりにも……。

 

『玲香さん……』

「ああ、間違いない……」

 

 ノンナさんはまだ……、撃破されてない……。

 

 入れ替わったんだ、砲手が……。

 

 IS-2から護衛のT-34にノンナさんは乗り換えた。フラッグ車を狙う奇襲部隊から屠るために……。

 

 カチューシャさんはここまでの展開を全て読み切っていたんだ。

 さすがは、その頭脳の1点のみで優勝校の隊長の地位を勝ち取った人間だ。

 

 今までいろんなタイプの人と戦ったことがあるけど、これ程までに見事に策にハマったのは西住さんと戦ったとき以来だ……。

 

「みほ! アヒルさんチームを助けに行ってくれ! 私たちが食い止める!」

 

『うん、玲香さん。負けないでね……』

 

 西住さんは心配そうな声を出した。負けないと言いたいが、7両をウサギさんチームと相手にするとして、こちらが撃破されるのは時間の問題だろう。

 

 そんなとき――。

 

 M3リーが飛び出してきた。「あいあいあーい」という叫び声が聞こえるように……。

 

『西住隊長、玲香先輩、ここは私たちだけで食い止めます。先輩たちはアヒルさんチームを助けてください。2両で駆けつけた方が【勝つ可能性】が高いです』

 

 澤さんの声が聞こえた瞬間、M3リーから煙幕が放たれる。プラウダ陣営は意表をつかれて一瞬硬直する。

 

「みほ、行くぞ!」

『うん、澤さん。ありがとう!』

 

 まさか、最初の練習試合で逃げ出した彼女たちが、ここまで成長するなんて……。

 最初は誰よりも弱かった、大洗のムードメーカーだった彼女たちがいつの間にか、背中を預けられる頼りがいのある仲間になっていた。

 

 あんこうチームとカメさんチームは走る。フラッグ車であるアヒルさんチームを助けるために――そして、勝つために――。

 

『すみません……。もう撃破されちゃいました……』

 

 申し訳なさそうな澤さんの声が聞こえた。

 

 西住さんが怪我はないか、確認している。よかった、みんな大丈夫みたいだ。

 ありがとう。1年生で廃校という重圧に耐えてよく働いてくれた。

 終わったら嫌というほど抱き締めてやりたい。愛してるぞ――みんな!

 

 しかし、距離を取って逃げている上に相手がIS-2ではないとはいえ、ノンナさんからアヒルさんチームはどれだけ逃げられるだろうか?

 

 戦車捌きで言えば、河西さんの操縦は冷泉さんに近い実力だ。シャープさで言えば小山先輩よりも上手い。

 

 八九式という不利にポジティブに挑み、不退転の意志の強さでここまで戦ってきたアヒルさんチーム。

 根性の強さの可能性――信じてるよ……。

 

 

 

 そして、彼女たちは私たちの信頼に応えてくれた。アヒルさんチームは雪にまみれながらも、生き残ってくれていたのだ。

 

 

 

 アヒルさんチームはもうすでに煙幕を使い果たしていたので、1分間だけT-34からこのまま離れてもらって、その後、Uターンするように指示をする。

 

 この1分でノンナさんを倒して、カチューシャさんたちから逃げ切りつつ、フラッグ車を討つ!

 

「小山先輩、TS-34の砲手は化物です。私の指示は複雑になりますが、何とかついてきてください」

 

「大丈夫だよ、玲香。もう気絶なんてしないから。なんでも言ってね」

 

 いつもどおりの優しい口調で小山先輩が返事をする。先輩の優しさに今までどれだけ救われてきたことか……。

 

 T-34は私たちに狙いを定めたみたいだ。精神を集中させて、砲弾の軌道と発射の瞬間を予測する。今だ――!

 

「先輩! 右斜めに一瞬だけフェイント、そして左に思い切り!」

 

 言葉足らずの指示でも、ニュアンスで察してくれる先輩。本当に頼りになる。

 

「装填最速で!」

「言われるまでもない!」

 

 いつも、ドジで泣き虫で自分勝手なしょうがない先輩。だけど、頑張り屋で情に脆くて、正義感が誰よりも強い。

 そして何よりも私を大事な後輩だと1番可愛がってくれた河嶋先輩。

 

 いつの間にか、言葉なんてなくても通じるようになっていた。悔しいけど、頼りにしちゃってるよ、先輩。

 

 

「にしし、あのT-34ってなんとなーく意地悪してやりたいって思うなー」

 

 いつもふんぞり返って、干し芋ばかり食べてる困った生徒会長。

 

 でも、大洗の学園艦を誰よりも大事に思って、その持ち前の行動力でそれを体現してきた。

 

 今回も人知れず努力して恐ろしい射撃を身につけてくれた。

 

 気付いたら会長に憧れて真似をするようになっていた。ちょっと可愛くなくなったから後悔はしてるけど、私が一番尊敬しているのは貴女です。

 

 角谷先輩――あとは任せました。

 

 会長の放った砲弾と同時にⅣ号からも砲弾が放たれ、T-34から白旗が上がる――。

 

 私たちは今度こそ、ノンナさんの搭乗車両を打ち破ったのだ!

 

 でも、ここからが大切だ。この先に控えるのはギガントと呼ばれた怪物――KV-2 そして、フラッグ車。

 

 さらに後ろからはカチューシャさんの本隊が追ってきている。アヒルさんチームにだって十分に守りがない状態だ――。だから、油断せずに行かなくては……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

《カチューシャサイド》

 

 なっ、どうなっているのよ!

 

 カチューシャは万全を期して布陣を敷いたはずよ。

 

 なんたってフラッグ車の護衛にノンナを付けたの。

 こっちのIS-2の凄さを印象付けた上で相手が罠にかかってくれるのを待つためにね。

 

 案の定、あいつらは部隊を半分に分割した。3両にカチューシャたちが結構な時間を足止めされたのは賞賛してあげるけど、それも想定の範囲内だった。IS-2が撃破されたことも含めてね。

 

 淡々と伝えてくるノンナからの撃破報告。さすがノンナ、もうフラッグ車を追い詰めているのね。なんか、Ⅳ号と38tが今さら逃げたけど、もう遅いわよ――。

 

 しかし、待てども来ないノンナからのフラッグ車を撃破した報告という、プラウダ高校の勝利の瞬間……。カチューシャを待たせるとはいい度胸ね……。

 

  

 

 嫌な予感がした頃に届いたのはあり得ない報告だったわ。

 

『申し訳ありません、カチューシャ。撃破されてしまいました』

 

ムカツクくらいの静かな淡々とした声でノンナは凶報を伝えた。

 

 そっか、ノンナでもダメなら、あの子は克服したのね、弱点を……。

 

 やるじゃない。レイーチカ、西住流……。このカチューシャが本気で考えた作戦を真正面から打ち破るなんて――。

 

 きっと、もう時間の問題ね。かーべーたんは確かに強いけど……。今日のあの子たちは、おそらくもっと――。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「今だみほ! T-34の動きは止めた! KV-2は装填に時間がかかる! ここで決めてくれ!」

 

『華さん、今です! 撃てー!』

 

 Ⅳ号から放たれる砲弾はまっすぐにプラウダ高校のフラッグ車の急所に衝撃を与えた――。

 

 白旗が上がった瞬間、私は声が出なかった――代わりに涙が止めどなく出ていた。

 

 絶望した。希望を信じた。そして、奇跡は起こった――。

 

『プラウダ高校、フラッグ車、走行不能を確認。よって大洗女子学園の勝利!』

 

 巨大な試合会場の電子掲示板に私たちの最高の母校の勝利が記されていた――。

 

 




本気のプラウダ高校との戦いはいかがでしたでしょうか?
今回は心理的描写と仲間との絆に重きをおいて書いてみました。
それでは、次回もよろしくお願いします!
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