劇場版を始める前に、少しだけオリジナルエピソードを挟みます。
玲香以外のオリキャラも出ます。今回は名前だけですが……。
それでは、よろしくお願いします。
それから、翌日は大洗で凱旋パレード。優勝旗を掲げてみんなで戦車に乗って町中を回った。
いやー、マジであのボロボロの戦車を1日でレストアした自動車部のみなさんには感謝しかないよー。
その夜はみんなで祝勝会をした。
各校からお祝いが届いたり、各チームでかくし芸大会をした。
カモさんチームのネタは笑ってるの私だけだった。
アリクイさんチームの筋肉クッキングのネタは大いにウケた。
ウサギさんチームの組体操は可愛いくて、癒やされた。
カバさんチームはいつも通りだった。
アヒルさんチームよりもイキイキしてる五十鈴さんが気になって仕方なかった。
レオポンさんチームの手品、あれって途中何かとんでもないことがあったような……。
あんこうチームは私が悪役をやったら、みほが攻撃出来ないとか言い出したから、会長と交代した。まったく、可愛い奴め。
ええ、カメさんチームはバレエをやりましたよ。会長は面倒くさがって何もしてくれないから、3人で。
王子のコスプレは好評でした。似合いすぎだって。
西住さんが着替えないでって無茶なことを言うから、宴会が終わるまでずっと王子の格好だった。まぁ、大洗を救ってくれた隊長のわがままくらい聞かなきゃね。
宴は大いに盛り上がり……、そしてお開きになった。
私は西住さんと2人きりで帰路についている。
「ふぅ、終わったんだなー。お疲れ様、隊長」
「うん、玲香さんこそ……、お疲れ様……」
並んで歩く夜道は風が涼しくて気持ちが良かった……。
「なんか、今でも信じられないよ。わざわざ、戦車道の無い大洗女子学園を選んで入学したのにさ、戦車道やって、優勝したんだぞ……。人生ってわかんないな」
「そうだね。私も黒森峰から戦車道がないから大洗女子学園に転校したんだもん。こうやって、玲香さんと一緒に楽しんで戦車に乗れてるって、よく考えたら不思議かも」
「うん、本当に不思議だ。本当に嬉しいよ、廃校が無くなったからさ、来年もこうやって一緒に戦車道できることが。目指せ2連覇ってとこかな」
「あはは、気が早いよー」
「そうだな、気が早かったか。それじゃ、今できることを先に済ませるか」
私はこの大会に優勝したらやろうと思っていたことがあった。
ずっと憧れていた、栗毛の英雄に言いたかったことだ。
私はみほの両肩を掴んで、顔を見つめる。
「決勝戦の前だからさ、ちょっと有耶無耶になっちゃったけど……、こういうのって、ケジメがいるだろ?」
「えっと、玲香さん?」
西住さんは少しだけ戸惑っているみたいだ。
「だからさ、なんだー、その、こんな頼りないデカイだけの色気のないやつだけどさ。付き合ってくれないか? ずっと一緒に居たいんだ。君が大好きだからさ……」
「……はい、こんな私で良かったら、よろしくお願いします。私も玲香さんと居たいから。えへへ、改まって好きって言われると、やっぱり恥ずかしいね」
「バカ、言う方が恥ずかしいに決まってる……」
「うん……、大好きだよ、玲香さん。……んっ」
そして、私とみほは、静かに口づけした。
月明かりが妙に幻想的に感じる夜だった……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日の早朝、私と西住さんは生徒会室に呼ばれた。
なんだろう、今日はさすがに戦車道は休みにする予定なんだけど……。
「いやー、西住ちゃん、仙道ちゃん、昨日までお疲れ様ー。2人が居なかったら、この学校無くなっちゃってたからねー。ホントに感謝だよー。干しいも食べるー?」
いつもの調子で会長はニンマリとした表情で飄々としている。
なーんか、また、変なこと考えてないか?
「でさ、2人に何かご褒美あげたいなーって、思ったんだー。やっぱりあたしも、西住ちゃんには特に無理矢理、戦車に乗せちゃった負い目もあるからさー」
「いえ、私は別に。今は再開できるきっかけをくれた生徒会に感謝してるぐらいですから」
「私に至っては自分のために頑張っただけなので、大丈夫ですよ、何もなくても」
モーレツに嫌な予感しかしないので、私は回避する方向で話を進めた。
「ええーっ、そうはいかないよー。もう準備しちゃったしー。優勝のご褒美として、西住ちゃんと仙道ちゃんには今から4泊6日のイギリスに旅行に行ってもらいまーす。着替えとか、そういうの全部こっちで用意してっから、行ってらー」
「「ええーっ」」
私と西住さんは顔を見合わせて驚いた。んな、バカな……。会長がマトモなご褒美を用意する……だと……。
「ああ、あとさ、最終日の前日にはあっちの大学のオープンキャンパスに行けるようにしてあげたよー。ボービントン大学って知ってるっしょ? 世界でも有数の戦車道が盛んな大学で、そこのエースって人が日本人とのハーフみたいなんだ。日本語わかるらしいから、案内してもらえるように頼んどいた。日本の優勝校の隊長と副隊長に興味があるんだってさー」
会長はボービントン大学を見学できるように手配してくれたらしい。
確かに、あそこはイギリスのプロ戦車道選手を毎年何人も出してる名門だ。うわっ、本当にすごいご褒美じゃん。
「あのさ、仙道ちゃーん、先輩がご褒美を渡してるだけなのに、ビクビクするのやめてくんないかなー。今回は、なーんも、ホントにないからさ」
「本当ですか?」
「ホントにホントさー。どうせ、2人でデートしようとか約束してたんでしょー? だったら、派手に応援したげるよー」
「「……!?」」
ストレートに会長に約束のことがバレていたので、顔を見合わせて2人とも顔が真っ赤になる。
「いやー、若いねー。まぁ、せっかく優勝したんだからさ、ここからもっと強くなりたいじゃん。ボービントン大学で学んだことを隊長と副隊長として活かしてもらうよー。あーあと、さっき言ってたハーフの選手の名前なんだけどー」
そうそう、向こうの大学に日本人とのハーフ選手のエースがいるなんて知らなかった。なんて人だろう。
「アリシア=シマダって名前だったよ。21歳の大学3年生なんだってさー」
アリシア=シマダ……、島田アリシア……、島田って、あの……。
「うん、どうやら島田流の家元の従姉妹らしいよー。まぁ、本人があまりメディアに出たがらないらしくって、日本では全くの無名だけど、近々ある世界大会のイギリスチームの代表候補になってるみたいだ。どう、興味あるでしょ?」
「それは、確かに……、どんなに凄い人なのか楽しみではありますね。てか、どんなコネでそんな人にガイドなんて頼んだのですか?」
「にしし、内緒だよー」
会長はいつものように悪い笑みを浮かべて、不敵に笑っていた。
はぁ、この人はいつもこうだ。
「でも、玲香さんと海外旅行なんて、とても楽しみだよ。えへへ」
「まぁ、私も楽しみだよ、みほと一緒だし。会長のことだから、戦車道の公欠扱いにしてくれるだろうし」
「うん、そのへんは任せといてー。んじゃ、楽しんできなよー」
そんなわけで、私たちはイギリスへと旅立って行ったのだ。
この異国での出会いが、あの激戦の始まりになるとはまだ……、思いもよらなかった……。
察しの良い方は気づいてるかもですが、大学選抜の強化イベントみたいなものです(笑)
あのままの戦力で玲香を加えても盛り上がりに欠けるので……。
というわけで、次回からの大学選抜編はオリジナルエピソードのイギリス旅行からスタートです。