副隊長たちがバミューダ三姉妹に挑みます。
そして、アリシアと戦闘を開始した隊長たちは?
パーシング3両がこちらに向かっており、サファリパークエリアで対峙する私たち。
「あの3両の連携は強力ですが、逆に言えば1両でも減らせば攻撃力は格段に下がります。まずは4両で協力して1両を撃破しましょう」
「そんなに簡単にいくかしら? あの人たちだってわかってるんでしょ? それくらい」
『承知した。しかし、あの動き……、的が絞りにくいわ』
『以前に準決勝で試合をしたとき、玲香さんはあの動きをみほさんと真似していましたね』
「まぁ、参考にさせてもらったことはあります。ですが、私たちと違って3両でしかも同じ車両があそこまで息を合わせられると、動きを見切るのは至難でしょうね」
理屈はわかっていても止められない動きというものがある。
私たちは当然、4両が1両に的を絞ろうとする。しかし、3両は縦横無尽に動き、こちらのぎこちない連携を嘲笑うように攻撃をしてきて、的を絞ることすらさせてくれなかった。
「ちょっと、エリカ! 狙うのはそっちだろ? 黄色のひし形のやつ」
「はぁ? 何言っているの? さっきはこの車両を……。えっ、赤の四角形……、いつの間に?」
長年戦車に乗っている私たちでも、付いているエンブレム以外に違いを見分けることの出来ない。
エンブレムだって走り回っていたら当然だけど見えなくなるし、丁寧に確認なんてしようと気をそらすと殺られる。
高校最高峰の砲手であるナオミさんとノンナさんすら当てられない。
ましてや、私と逸見さんなんて翻弄されるばかりだった。
『これが精一杯だったわ――』
そんな中、こちら側に最初の犠牲者が出た。
ナオミさんだ……。
1両を集中して狙うのは私だけではなく、敵もおなじだった。
最初に3両によるバミューダ・アタックで狙われたのがファイアフライだったのだ。
最後に放ったファイアフライの砲弾は青色の三角形のエンブレムが付いた車両を掠めたが、撃破には至らず、逆に撃破されてしまった。
早くも3対3になってしまったな……。しかも、狙撃で頼れるのはノンナさんだけだ……。
ただ、ナオミさんのおかげで青色のエンブレムのパーシングに大きな砲弾が掠めた傷跡が出来て、少しだけ判別がしやすくなった。
「はぁ、目印みたいなのが出来たけど、こっちの車両が減って厳しさは増してるじゃない」
「いや、チャンスは活かそう。私があの車両をマークする……」
私はようやく目が慣れてきて、黒森峰との決勝戦の時のように、ファイアフライが傷付けた車両がなるべく自分の前に来るようにポジションを取って動けるようになった。
『かなり狙いやすくなりました。玲香さん、このまま牽制をしていてください。確実に仕留めます――』
ノンナさんは一流の砲手らしく、その言葉からは大きな自信を感じられた。
「ちっ、嫌なこと思い出させるじゃない。まったく、陰湿なあなたらしい動きね」
逸見さんも、そんなことを言いつつ上手く青色エンブレムの車両への狙撃指示を出していた。
しかし、それだけで攻撃の手を緩めるほど大学選抜チームの中隊長たちは甘くない。
バミューダ三姉妹の次の狙いは、ノンナさんだった。
私とエリカの車両よりも格段に上の狙撃技術を警戒したからだろう。
「ノンナさんっ! 今、助けます!」
『玲香さん、あのときカチューシャと共に助けていただいてありがとうございます。安心してください、私は外しませんから――』
そのときのIS-2の砲撃は1つの芸術にすら見えるほど美しかった。
パーシングが砲弾にわざと当たるために動いているようにすら見えるほどの先読みと狙撃精度……。
ノンナさんの決死の一撃により3人の中隊長の内の一角が落とされた。
しかし、残りの2両による凶弾が至近距離よりIS-2に放たれてしまい、ついに私たちは2両のみになってしまった。
「エリカ、2対2になってしまったな。どうやって勝とうか?」
「さあ、チームワークで勝つしかないんじゃないかしら?」
「急造チームなのに?」
「そうよ、急造チームでもチームはチームなんだから――」
ティーガーⅡとヘッツァーはパーシング2両と戦闘に入った。
「小山先輩! 一旦後退しながら、右に回り込んで、会長っそこです! 河嶋先輩、装填遅くなってますよ!」
「ぜぇぜぇ、分かってる!」
「次の指示は! 玲香!」
「ありゃー、外しちゃったかー。もう少しなんだけどなー」
今までで最長の戦いとなった今回の戦い。体力には自信のある生徒会だったが、さすがに疲れが出てきて本来の力が出ない。
「エリカっ!」
「わかってるわ!」
ティーガーⅡと連携してパーシングにスキを作ろうとする。
しかし、3両のときほどではないが、大学選抜チームの中隊長が弱いはずがなく、練度で言えば西住姉妹と遜色のないくらいの強さに感じた。
格上だから何だっていうんだ! 今回は殲滅戦だ。絶対に倒さなきゃダメなんだ。
「玲香! こんなことっ! あなたに死んでも言いたくなかってけど――後は頼んだわよ!」
逸見さんは絶妙なタイミングで突撃からの体当たりを赤色のエンブレムのパーシングに仕掛けてゼロ距離からの砲撃で見事に撃破した。
しかし、そのタイミングで残りのパーシングの砲撃が当たってしまい……。ティーガーⅡも白旗を上げることになった。
これで1対1か。この勝負は責任重大だな。逸見さん、ノンナさん、ナオミさんから託されているんだから――。
「みほ……、私に力を貸してくれ――」
私は覚悟を決めた。確実に敵を倒すにはアレしか思いつかなかったのだ。
「河嶋先輩、装填時間を一度だけで良いです。最速でお願いします。大丈夫ですよね?」
「当たり前だ!」
「会長、0.5秒程度の停車時間ですが、お願いします」
「何かするつもりだねー。オッケー」
「小山先輩、あのときの麻子のように、全速力で正面から一気に後部まで回り込めますか?」
「玲香……、大丈夫よ。あの決勝戦の映像は何度も見たわ。今回だけは冷泉さんのようにキレイに決めてあげるよ。大丈夫、ヘッツァーの方が小回りは効くから」
生徒会の先輩たちの精神力は誰よりも強い。河嶋先輩だって、今回の戦いに負けられないって気持ちが最後には弱気を上回ってくれたようだ。
これは、みんなの思いを乗せた一撃――。
あの決勝戦で、あんこうチームのみんなはこんな気持ちだったのだろうか?
「前進っ!」
パーシングにヘッツァーは全速力で肉薄する。
1発目は牽制――そして、ここから小山先輩があの時の冷泉さんを彷彿とさせるテクニックで、滑るようにパーシングの後部に回り込む――。
河嶋先輩も大きな遠心力がかかる中、素早い装填を完了させる――。
勝負は一瞬……。頼みますよ、会長!
くっ、先手はとれたが向こうも撃ってきたか……。
パーシングの砲弾はヘッツァーのカメのエンブレムを少しだけ傷付けただけだった。
そして、会長の放った砲弾は見事にパーシングの急所を射抜き、撃破したのだった。
ふぅ、履帯にかなり負荷がかかったはずだけど、切れてなさそうだな。
一応見ておくか、カチューシャさんのところに行くのはその後だな……。
大洗女子学園、残り車両8両。大学選抜チーム残り車両2両。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《アリシアサイド》
CV33、T-34、九七式、チャーチル、シャーマンの5両が私の前に立ち塞がる。
なるほど、圧力をかけてステージの下に追い込んで包囲する作戦かしら?
そう思って身構えていると、九七式がまっすぐに突撃してきた。
もう少し連携してくると思ったけど、意外ね。
もちろん迎撃しようと砲撃するわ。
あら、面白い動きね。私が攻撃をしようとすると、それを感じ取るように方向を転換させるの。
なかなかの先読みの鋭さ――。無駄に撃たなくて良かったわ。
とりあえず、1番スキが大きそうなT-34を狙う。
うん、手応えありだけど――。
チャーチルがまさかT-34を庇うとは思わなかったわ。装甲の厚さを利用した見事な動きよ。
そして、この砲撃の瞬間にシャーマンが側面に回り込んで攻撃するなんて……。
とっさに後方に動いて避けたけど、少しだけ驚いたわ。
どうやってサインを出しているのか分からないけど素晴らしい連携だわ。T-34がスキを作ったのも囮だったようね……。
この3両の車長さんはウチの一軍と比べても遜色がないくらいの実力者だと見ていいかもしれないわ。
シンディだったら今の連携で負けてたでしょうね。
面白いじゃない。こんなに素敵な戦車乗りと戦えるなんて、日本に来て良かったわ。
今度はT-34とシャーマンの連携ね。どちらも好き勝手に動いているように見えるけど、息がピッタリあっている。
なかなか上手に動くから、的を絞らせないわ。
でもね、やっぱり車長だけが有能な車両にありがちなんだけど、動きながらの砲撃の精度が悪いから、必ずいい狙撃ポイントで停車するのよね。
次の貴女たちの停車ポイントは……。
「ここと、ここね……。ファイア!」
これで残り3両ね。さて、次はどの車両にしようかしら?
大洗女子学園、残り車両6。大学選抜チーム、残り車両2
もう少しで大学選抜チームとの戦いも終わりますねー。
この次はどうするか? 番外編的なものをするか、オリジナル展開の世界ユース大会編でも書くか悩み中です。
とりあえず劇場版が終われそうな目処が立ってきて良かったです。
次回もよろしくお願いします!