大洗のボーイッシュな書記会計   作:ルピーの指輪

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タイトル通りそのまんまの番外編OVAネタですね。
これは本編後にどうしても書きたかったので、書いてみました。
思ったよりも長くなってしまいましたが、楽しい話になっていれば……と、思います。
それではよろしくお願いします。


愛里寿・ウォー

「「本当ですかー?」」

 

 私と西住さんは同時に驚きの声を上げた。

 まさか、ウチに彼女が転校というか、入学するって……。

 

「いやー、急に連絡があってねー」

 

「それはウチに入学するってことですか? いや、彼女は大学生だったはず」

 

「飛び級したから、高校行ってないんだって。だから、ぜひ高校生活を送ってみたいそうだよ」

 

「そういうことなら、ウチは大歓迎だけどねー」

 

「いいか、西住、玲香! 島田愛里寿に絶対にウチに入学してもらうぞ! ウチのいい所を見てもらうんだ!」

 

「とりあえず、私が愛里寿だったらエラソーな先輩は嫌だなーって思いますね」

 

「どーいう意味だ!? 玲香!」

 

「もー、河嶋先輩ったら、スマイルですよ、スマイル」

 

 島田愛里寿さんが高校生活を送りたいらしく、その行き先に我が大洗女子学園を選んでくれそうらしい。

 だから、河嶋先輩に優しくなってもらおうって言ったら怒られた。

 

「西住ちゃーん、仙道ちゃーん、頼んだよー」

 

「あ、はい」

 

「善処しますね」

 

「気合が足りーん! もっと、絶対に入学させようって気概を持て!」

 

「いや、やる気を出したところで、上手くいくもんじゃないでしょ。河嶋先輩の狙撃と一緒です」

 

「何だと! お前というやつは!」

 

「うまいねー、仙道ちゃーん。座布団一枚」

 

「全然上手くないです! 会長ー」

 

 ということで、私と西住さんは愛里寿さんに入学してもらうために頑張ろうってことになった。

 まぁ、愛里寿さんが入ってくれたら来年も優勝は固いだろうなー。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「いやー、すごいじゃないですか! 島田殿が転校して来るなんて」

 

 秋山さんが目を輝かせてこの話に飛びついた。

 島田流の家元の娘と西住流の家元の娘が通う学校ってなると凄いことになるよな。

 これ、宣伝次第で来年、戦車道希望の新入生めっちゃ増えるんじゃ……。

 いや、それだけじゃない。島田流の家元は娘に激甘だからな。

 センチュリオンくらいは寄付してくれそうだぞ。それにお金も……。

 

 私は頭の中でそろばんを弾いて皮算用をしていた。

 

「ちょっと、れいれいー。何考えてるの? なんか、悪いこと考えてる顔してるよ」

 

「えっ? 愛里寿さんが入ってきたら後に貰えそうな寄付金の計算だけど……」

 

「考えることがゲスいよ! てか、少しは隠そうとしようよ!」

 

「そんなこと言われてもだなー。沙織、この学校の予算はカツカツなんだ。破産して廃校とか嫌だろ?」

 

「あら、そんなに大変なんですか?」

 

「ああ、だから五十鈴流の家元にも是非!」

 

「玲香さん! 話が脱線してるよ!」

 

 いかん、金の話をしてたら愛里寿さんのことを忘れて寄付金のことしか考えてなかった。

 

 

「でも、みぽりんもれいれいも良かったじゃん。ボコ仲間ができるよー」

 

「喜ぶところはそこなのでしょうか?」

 

「まだ、決まったわけじゃないけど、確かに一緒にボコミュージアム行ったり、ボコのDVD見たり、ボコグッズ見せあったりできるかなー」

 

「うん、いつも二人だけでそれやってるから、マンネリしてきたもんな」

 

「みほさんと玲香さん、一緒に暮らすようになって、いつもそんなことをされてるんですかー?」

 

 五十鈴さんが呆れたような声を出す。えっ、そんなことって言われるレベルのことかな?

 

「どうやったら入学してくれますかねー」

 

「麻子も考えてよー」

 

「島田愛里寿は子供だから、お昼寝タイムを入れてはどうだ? これを機にシエスタ制を導入する、もしくは午後から授業。愛里寿シフトを敷くのだ」

 

「それは、麻子シフトでしょ!」

 

 冷泉さんは眠気で頭が回らないのか、とにかく寝たいのか、そんなことを言う。

 

「高校で戦車道をやりたいというより、高校生活を送りたいから転校して来るのですよね? では、この高校がどんなに素敵で楽しいかをわかってもらえばいいのでは?」

 

「さすが、五十鈴さん、いいことを言う! そうだよ、この学校の魅力をアピールするんだ。簡単じゃないか」

 

 五十鈴さんのまっとうな意見に私は賛同した。そうそう、良い所を見せればいいのか。

 

「簡単とは言いますが、玲香殿、どのような点をアピールすればいいと思いますかー?」

 

「そりゃあ、優花里、あれだ、あれ。うーんと、生徒会に入れば権力を思いのままに……」

 

「他に何か良い点は無いかな?」

 

 ナチュラルに西住さんに無視されて、この話に結論は出なかった。

 愛里寿さん、生徒会に入ってくれないかな? そしたら、予算が……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「じゃあ、各チームで考えてもらった、島田愛里寿さんの獲得作戦を教えてもらってもいいかな?」

 

 生徒会を代表して私がみんなの前に立って質問した。

 愛里寿さんが入ってもらえるような方法を戦車道チームのみんなに発表してもらうのだ。

 

「「はい、はい、はーい」」

 

「それじゃ、ウサギさんチーム、どんな方法かな?」

 

 元気のいいウサギさんチームに一番手を頼む。

 

「はい、すごくかわいい制服に変えたら良いと思います!」

 

「うん、いい意見だね。しかし……、すっすまない……。我が校には、よっ予算が……、予算が……、ねぇ、小山先輩……」

 

「それは予算的に無理かな……」

 

「本当に甲斐性のない、情けない先輩で申し訳ない……。かわいい後輩の意見を採用したいのだが……。君たちが頑張って考えてきた案を実行したいのだが……」

 

 私は頭を深く下げて謝った。

 

「いえ、先輩……、頭を上げてください! あのう、私たちこそ、軽率な考えで申し訳ありませんでした……」

 

 澤さんが涙ぐみながら頭を下げる。

 

「「すみませんでした」」

 

「いや、君たちは悪くないから。非常時だからと戦車道にばかり予算を回してた私が悪いんだ……」

 

 最初の意見からなんとも言えない重苦しい空気に包まれてしまった……。

 

 

 

「はいっ!」

 

 そんな中、空気を変えようとしてくれたのか、磯辺さんが元気に挙手をしてくれた。

 

「よし、気を取り直して次だな。アヒルさんチーム!」

 

「バレーボール大会を開いたら良いと思います!」

 

「なるほど、楽しいレクリエーションだな。みんなでスポーツをすれば交流が深められる」

 

「でもぉ、この前ぇ、バレー部さんのスパイク見たんですけどぉ。体育館の床に穴が空いて大変そうでしたぁ」

 

 宇津木さんによると、バレー部の本気のサーブやスパイクは凶器らしい。さすがに愛里寿さんに怪我はさせられないな。

 

「カバさんチームは何かありますか?」

 

「全員歴史上の人物の仮装をして迎える」

 

「なるほど、それは楽しそうだな。いいんじゃないか?」

 

「ほう、玲香はどの隊士の衣装にするぜよ? やはり、鬼の副長と呼ばれた土方歳三あたりが……」

 

 おりょうさんが新選組の衣装を取り出してきた。なんかスゲー男装させられそう。

 やっぱり却下で……。

 

「さあて、カモさんチームはどうです? 園先輩」

 

「入学したら名誉風紀委員に」

 

「ダメです」

 

「他のところと比べてどーしてウチは即却下なのよー」

 

「愛里寿さんは我々生徒会がもらいます」

 

「そんなの横暴よ横暴ー」

 

「横暴は私たち生徒会の特権ですからねー」

 

 ということで、カモさんチームの意見は却下となった。

 

 そして、レオポンさんチームの24時間耐久レースとアリクイさんチームの24時間耐久ネトゲ大会も少女には体力的に辛いだろうということで却下となった。

 

「いやー、個性があっていいねー」

 

「それがみんなのいいところですからねー」

 

「おい、玲香! お前は、さっきから呑気なんだよっ! 西住! 何かないのか! 隊長だろっ!」

 

 見かねて、河嶋先輩が西住さんに意見を求める。

 

「あの、普通でいいんじゃないでしょうか? 島田さんは特別じゃなくて普通の生活をしにウチに来るんですし」

 

「いつもと変わったことをやる必要はないかー。確かにそうだねー。ありのままのウチを見てもらえればいいんだよねー。んじゃあ、西住ちゃん、出迎えの仕切りよろしくー」

 

 てなわけで、生徒会と西住さんで愛里寿さんを出迎えることになった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「愛里寿さん大丈夫?」

 

 島田愛里寿さんを迎えた私たちはさっそく困っていた。

 

「申し訳ない……、少し船に酔ったようだ……」

 

 愛里寿さんがまさかの船酔いである。思わぬ落とし穴だ。

 あんな異次元の動きの戦車内で平気なのに、船酔いになるものなんだな。

 

 確かに中高だけが学園艦だから、愛里寿さんが自分の体質に気付いてなかったのは仕方ないだろう。

 

 河嶋先輩が民間療法をいろいろと模索してるが、そんなので治るものなのか?

 

「ここは、大洗に伝わるやり方を試してみよう!」

 

 って、会長? 干しいもをおでこに貼ってどうするんですか?

 

 

 

 

「治った……」

 

「んな、馬鹿な……」

 

「額の干しいもが気になって、船酔いしてることが気にならなくなった」

 

「さすが、会長です!」

 

「いやー」

 

 世の中には科学では解明出来ないことがある……。それを知った今日であった……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「よく似合ってるよ。愛里寿さん!」

 

 大洗の制服を着た愛里寿さんを見て感想を口にする西住さん。

 

 学校に来る前にアンツィオの方々がどこから聞きつけたのか愛里寿さんを横取りしようとしたが、彼女はイタリアンは苦手らしく事なきを得た。

 

 勝手に我が校の敷地で商売をしていたので、売上の10パーセントを生徒会に納めるということで手を打ってあげた。

 うん、私って優しい。

 

「じゃあ、校内を案内するよ、愛里寿さん」

 

 私が愛里寿さんに近づいて、微笑みかける。

 今は必修選択科目だから、きっと楽しめるはずだ……。

 

「…………」

 

 愛里寿さんは無言で目を逸らして顔を赤くした。アリシアさんが、人見知りって言っていたから照れてるのかな?

 

「どうしたんだ? 愛里寿さん、一緒に学校を見て回ろう」

 

 私は腰を落として愛里寿さんの目をジッと見つめた……。

 

「あっ、あまり見ないでくれ……」

 

 きっ嫌われてる……。まさか、私が愛里寿さん獲得の懸念材料になるとは……。

 

「こらっ! 玲香! 愛里寿さんに嫌われたら転校してもらうからな!」

 

「ええーっ!」

 

「まぁまぁ、仙道ちゃんは別に嫌われてないよー。でも、仙道ちゃんの悪いところが出てるんだよねー」

 

 会長はフォローなのかそうじゃないのかわからないことを言っていた。私の悪いところってなんだ?

 

「玲香さんは、いい加減に自覚してもらいたいな」

 

 西住さんにも冷たい目で見られていた……。解せぬ……。

 

 

 

 茶道、仙道、忍道と順番に見てもらう。

 ちなみに私と仙道は全く関係ない。1年のときも絶対に仙道だけは選択しようって思わなかった。

 「仙道が仙道履修してるー」とか言われると思ったから。

 

「どれも、面白そうだ」

 

 愛里寿さんはとても興味深そうに授業を見ていた。いや、でも、やっぱり来てもらった以上はねー。

 

「いやいや、やはり戦車道を選択してもらわねば!」

 

 河嶋先輩がはっきりとそう伝えた。

 

 

 

「以前にお話したとおり、島田愛里寿さんが見学にいらっしゃった! 自由に見学してください、質問があればなんなりと!」

 

 ということで、我が校の戦車道を見てもらう。

 

「じゃっ、戦車道チームを順番に見てこうか」

 

 私と西住さんとで愛里寿さんを案内することになった。

 

 アヒルさんチームは思ったとおりバレー部の宣伝かと思えば、好きなことを聞いて、それとバレーをつなげようとしたらしい。

 

「好きのことは何?」という質問に対して、愛里寿さんは「戦車道」と答える。

 当たり前といえば、そうだけど、戦車道がはっきり好きって言えるのは大事なことだと思った。

 

 カバさんチームは愛里寿さんを「オクシュアルテス」とか呼んでた。

 ソウルネームは良いけど、歴史の成績が悪い私にはなんのことやらさっぱり。

 でも、変にツッコミを入れるとグデーリアンの時のようにアホみたいに長い話を聞かされるので、「オクシュアルテスね、知ってるよ、アレだろ、最高だね!」みたいな顔をして時間がすぎるのを待っていた。

 

 ウサギさんチームは可愛らしく、愛里寿さんに先輩って呼ばせて喜んでいた。

 先輩風って吹かしたくなるよね。でも、やり過ぎると河嶋先輩みたいになるから気をつけよう。

 私は河嶋先輩の先輩風で風邪を引きかけたとか、口に出したら、頭を叩かれた。こういうときは耳が良いんだから。

 

 その後も、カモさんチーム、レオポンさんチーム、アリクイさんチームと回り、最後はあんこうチームだ。

 

「島田殿が入学してくださると本当に嬉しいです」

 

「よろしくお願いします」

 

 秋山さんと五十鈴さんが笑顔で歓迎する。冷泉さんはこんな時でも寝てるって……。

 

「麻子ってば、もう。――大洗にはボコミュージアムもあるし、上陸したら一緒に行こっ」

 

「うんっ」

 

「今日は学園艦に泊まっていくんでしょ、放課後、一緒にお茶でもしない?」

 

「する……」

 

 さすが我が校の誇るコミュニケーション能力の塊、武部さんだ。一瞬で愛里寿さんと仲良く話せるようになっていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 放課後は愛里寿さんと一緒にアイスクリーム食べに行ったりして、私と西住さんが大学選抜チームとの戦いの後に新しく入ったルームシェアが出来る大きめの寮で食事会をした。

 

 こうやって、みんなで集まるとき部屋が大きいと便利だな。

 

 武部さんの力作料理は愛里寿さんにも好評だった。

 「さすがは彼氏の胃袋を掴むための料理」っと私が褒めたら、愛里寿さんが真剣な顔で「彼氏いるの?」と尋ね、武部さんはちょっと涙目になっていた。すまんかった。

 

 愛里寿さんは目玉焼きが乗ったハンバーグが好きだって言ってたから、今度、美味しいハンバーグが食べられる所を教えるって言ったらとてもいい笑顔をしてくれた。やっと、私とも打ち解けてくれて安心した。

 目も合わせてもらえなかったから心配してたけどよかったよ。

 

 

 食事会もお開きとなり、愛里寿さんはこのまま私たちの部屋に泊まって行くことになった。

 

 まぁ、二段ベッドもあるし、布団も床に敷くスペースは十分にあるから、全然余裕だ。

 実は西住さんとはほとんど同じベッドで寝ていて二段ベッドが仕事してなかったりするが、さすがに愛里寿さんの前でそんなことをするわけにはいかない。

 

 ということで、愛里寿さんとのお泊り会が始まったのだ。

 

 

「うわぁ、可愛い」

 

「なぁ、みほ、思い切って買った甲斐があったなー」

 

「うん、迷ったけど、買ったのは正解だったよ」

 

 私と西住さんは瞳を輝かせて、天使を見るような目で愛里寿を見ていた。

 

 数量限定で販売されていたボコパジャマ。

 こんなもの即買い決定でしょ、と思っていた私たちだったが、サイズとかいう悪魔が邪魔をしたのだ。

 

 178cmの私はもちろん、子供用のサイズしかないので、西住さんでも小さすぎる。

 

 でも、欲しい。私たちが着れなくても、会長や磯辺さんならワンチャンとか、カチューシャさんを上手く騙してとか、邪なことを考えながら私と西住さんは購入を決意したのだ。

 

 ふぅ、もう少しでプラウダ高校に遠征に行くところだった。案外、ノンナさんは協力してくれそうな気がしたんだよねー。

 

 しかし、そんなのは関係ない!

 

 今、合法的に着てくれる人物が居るんだから。

 そう、同志である愛里寿さんが嫌がるはずがないのだ。

 

 いや、マジでナニカに目覚めるかもしれないくらい可愛い。抱きしめたい。

 でも、抱きしめるのは西住さんから固く禁じられているので諦める。愛里寿さんに関わらず、コレは禁止事項になっている。

 

 前に冗談みたいに秋山さんをハグしたら、めっちゃ機嫌が悪くなって、1日口をきいてもらえなかったから、二度とやらない。

 

 そんなわけで見るだけに留めて、私たちはお蔵入りになった、特殊なルートで手に入れた裏モノのボコDVDの鑑賞を始めたのだ。

 

 

 何度観ても良いものだなー。愛里寿さんも楽しんでるみたいだし、妹ができたみたいで楽しいな。

 

 

 そして夜も更けてきたので、そろそろ寝ようとホットミルクを作ってみんなで飲んでいる。

 ちなみに、愛里寿さんは二段ベッドの上が良いとテンションを上げて言っていたので、上の段で寝てもらうことにした。

 

「学校のことで他に何か、気になることはある?」

 

 西住さんが、最後に愛里寿さんに質問をした。

 

「高校生活で……、高校生活で一番楽しいことってなんだろう?」

 

 愛里寿さんはボコのぬいぐるみを抱きしめながら純粋そうな澄んだ目を見開きながら質問した。

 

「えっ? そうだなぁ……、友達と毎日会えることかな!」

 

 西住さんは笑顔でそう答えた。本音なんだろうなー。西住さんも嘘をつけるようなタイプじゃない純粋な人だから……。

 

「玲香さんは?」

 

 愛里寿さんが私の方を見た。そんなに期待に満ち溢れた目で見ないでくれ――プレッシャーだから……。

 

「そっそうだなぁ。私は生徒会に入っているからね。やっぱり、学校でみんなが楽しそうにしているのを見ることかなー」

 

「自分じゃなくて?」

 

 愛里寿さんは不思議そうな顔をする。

 

「まっ、自分も含めてかな。やっぱり、学校のために何かをやって、喜んでもらえると嬉しいんだよねー。愛里寿さんも誰かに喜んでもらえる楽しさは知ったら、病みつきになるよ」

 

「みほさんも玲香さんも二人とも、とても楽しそう」

 

 愛里寿さんは私たちの話を聞いて、満足そうな顔をして笑った。笑うと年相応のあどけなさが出てくるな。

 

 さて、どうなることやら……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「大洗女子学園に入学することにした」

 

「よかったぁ」

 

「これで、我が校も安泰だ! 我々が卒業してもな!」

 

 愛里寿さんの結論に私たちは歓喜した。

 

「これからはチームメイトだね! 一緒に戦えるなんて、すっごく楽しみ!」

 

 西住さんが笑顔で愛里寿さんにそう声をかけると彼女はハッとした表情になった。

 

「チームメイト!? 一緒に戦う……。もう、みほさんとは戦えなくなる……」

 

「「えっ?」」

 

 愛里寿さんの言葉に私たちはハッとしたしまった。ああ、そうか……、愛里寿さんは……。

 しかし、私は……。

 

 

 

 

 

 

「仮入学とは釈然としないのですが……」

 

 河嶋先輩が愛里寿さんの乗った船を見送りながら会長に話しかけた。

 

「まぁまぁ、入学をやめる方向から保留になっただけマシだって。西住ちゃんと永遠のライバルになりたい感じだったんだからー。仙道ちゃんを付けといて正解だったよー」

 

 会長はニンマリ笑って私を見た。

 

 そう、あのままだと他の高校に行くと言いかねなかったし、まぁ愛里寿さんの気持ちもわかったから尊重はさせたかった。

 

 でも、私は西住さんみたいに無欲な人間ではない。生徒会に居たせいで、どうしてもそろばんを弾いてしまうのだ。

 

 つまり、こういうことである。

 

 練習でも西住さんとは戦えるし、真剣な勝負だったら他の学校と交流って感じで愛里寿さんを他校の隊長にして戦うようなイベントの開催もできる。

 

 何も全国大会だけが勝負の場ではない。

 

 その証拠に先日だって大学選抜チームとあれだけの熱戦が出来たし、我々は戦車の数が少ないから逆に愛里寿さんが他校に行って大会で戦うとなると平等な条件で戦うのは難しくなる。

 

 とまぁ、小一時間かけて愛里寿さんを洗脳、じゃなくて説得したのだ。

 

 そして、来年の4月まではこっちで高校生活をしてくれるという仮の入学って形を取ることに決まった。

 その期間でやはり別の高校がいいとなると転校してもらうということにしてもらったのである。

 

 ふふっ、4月までに愛里寿さんを大洗女子学園の虜にしてみせる――。

 

「玲香さん、悪い顔してるよ……」

 

 西住さんは、呆れ顔でそう言っていたけど、本心では愛里寿さんが入学するのは嬉しいみたいだ。

 

 

 ということで、島田愛里寿さん、大洗女子学園に期間限定で1年生として入学が決定したのだった。 




まさかの愛里寿、大洗女子学園入学ルート突入です。
書いているうちに、居なくなって欲しくなくなったという身勝手な理由で強引に期間限定入学という形にしました。
ですから、これからのオリジナル展開には愛里寿も大洗の生徒として出てきます。
見切り発車ですが次回もよろしくお願いします。

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