大洗のボーイッシュな書記会計   作:ルピーの指輪

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四チーム合同の殲滅戦の前半です。
それではよろしくお願いします。


強化合宿 その2

『みんなー、配置に付いたわね! じゃあ、ズガーンと戦って、バーンとみんなでレベルアップしましょっ! 実戦演習開始!』

 

 蝶野さんの号令で4チームが一斉に動き出した。

 

 私たちは陣地を森の中に築いた。

 

『じゃあ、玲香とエリカには手はずどおりキルゾーンに敵を誘導してもらうわ。カチューシャとアンチョビはキチンと配置にはついた?』

 

 メグミさんが私たちに指示を出し、全体の動きの確認をする。

 

『あったり前でしょ。レイーチカ、エリーシャ、作戦は完璧なんだから、キチンとやらなきゃシベリアで強制労働25ルーブルよ』

 

「はいはい」

「頑張りますね。カチューシャさん」

 

『こっちも配置についた。いつでもいけるぞ!』

 

 私と逸見さん以外は木陰に身を隠して待ち伏せる布陣をとった。

 

 カチューシャさんの作戦は簡単に言えばおとり作戦だ。

 しかし、当然ただのおとり作戦ではない。

 

 私と逸見さんの演技力も必要となる、ちょっと変わった作戦である。

 

 

 

「本当にこんな作戦、上手く行くのかしら? というかやっていいのかしら?」

 

「そこは戦術というか、お芝居の上手さだろうなー」

 

 さて、誰と遭遇することになるのやら……。

 

 

 ヘッツァーとティーガーⅡはいかにも偵察というような動きを意識して、キルゾーン周辺を索敵する。

 

 

「エリカ、来たぞ! パーシングとパンターがこっちに向かってきてる。Dチームだな……」

 

 私は望遠鏡でいち早く敵の接近に気が付いた。

 

「島田愛里寿に小梅? いきなり強敵じゃない」

 

「まぁ、そもそも弱い人がいないからな」

 

「でも、島田流の彼女は別格でしょ。悔しいけど……」

 

 逸見さんの言うとおり、まさか最初に愛里寿さんと遭遇することになるとは思わなかった。

 ちなみに最近の練習ではアヒルさんチームには散々な目にあっている。

 

「普通に逃げても自然な感じだけど、一応、作戦は実行しなきゃな」

 

「相手は島田流の天才でしょ。念には念を入れるくらいでも足りないわよ」

 

 私たちは敵に背を向け、タイミングを待つ……。

 

「メグミさん、Dチームのパーシングとパンターを発見、これから誘い出します」

 

『なっ、いきなり隊長? 玲香もエリカも持ってないわね……。まぁいいわ。作戦開始!』

 

 合図と共に、私と逸見さんは進行方向に向かって砲撃をしながら走り出す。

 まぁ、誰もいないんだけど……。

 

 つまり、誰かを追って進んでいるという演出をしてるわけである。

 

 もちろん、視界が良好な場所だとバレバレなのだが、視界の悪い森の中に誘い込むのだから有効である。

 

 そして、何かを追うフリをしている私たちを、目論見どおり追って来てくれたアヒルさんチームとパンター。

 ふぅ、行進間射撃でもかなり際どい位置に砲弾が飛んでくるな……。

 

「キルゾーンまで、あと一分ほどで到着します。砲撃の準備をお願いします!」

 

 私はキルゾーン直前で報告をして、そこまで突き進んだ。

 

 

『Dチーム、パンター行動不能!』

 

 赤星さんの車両は集中砲撃により撃破される。

 

 よし、その勢いでアヒルさんチームも……。

 

 

『Bチーム、パーシング行動不能!』

 

 めっメグミさん……。愛里寿さんに速攻で撃破されてるんだけど……。

 というか、5両からの集中砲火を躱しながら当ててくるって怖すぎる……。

 

『ごめん、隊長が強すぎるわ……。あとは頼んだ……』

 

 まいったな、指揮官がいなくなった。アンチョビさんを後方に配置して、スムーズに引き継げるようにしててよかった。

 

『あの島田流と無理にやり合うのは、この状況じゃ他のチームの利にしかならん! 全員、退却だーっ!』

 

 すばやくアンチョビさんは戦況判断して退却を命じた。

 愛里寿さんも一両で四両を相手にするのはメリットが無いと判断して追ってくることはなかった。

 

 やっぱり、個の力でいえば、アヒルさんチームはズバ抜けてる。

 あのまま戦えば撃破出来たかもしれないけど、こちらの車両数が激減する可能性も高かった。

 そうすると、得をするのは他のチームだけだ。4対1でも逃げを選択した、アンチョビさんの判断は正しかった。

 

『まったく、カチューシャの作戦を途中で放り出すなんて……』

 

『そう言うな、カチューシャ。お前もあれを見て戦慄しただろ?』

 

『ふんっ! ビビってなんかないわ! ただレイーチカたちがもうちょっとマシな子を連れてきたら、大打撃を与えられたと思っただけよ』

 

「すみません……。カチューシャさんの作戦は成功したんですが、あれは予想以上でしたね……」

 

 あの決定的なシーンで生き残る彼女たちを倒せるのって、あんこうチームかまほさんくらいかな。

 

 でも、それだとAチームが勝っちゃうしなー。

 

『Cチーム、ポルシェティーガー走行不能』

 

『Aチーム、クルセイダー走行不能』

 

 他のチームも一戦やりあったみたいで、これで全チームが四両となり、依然として横並びの展開になった。

 

 うーん、次はどうするかな?

 

『とりあえず、他のチー厶と協力して西住たちを倒すのはどうだ? Aチームを倒すまで協調するんだ』

 

 アンチョビさんがかなり過激な案を出した。

 

「確かにそれが出来たらかなりAチームに対してかなり有利になりますけど……」

 

 私はある予感がしていて乗り気になれなかった。

 

『そうだろ? 私から他のチームの代表者に通信を繋ごう』

 

 アンチョビさんはCチームとDチームに通信をして、協調作戦を提案した。

 

 そして――。

 

『それは、かなりアンフェアねー。私たちはフェアプレーで戦うべきだと思うわ』

 

『みほさんとは、真剣勝負で戦いたい。よって、断らせてもらう』

 

 案の定、他のチームは提案を受け入れてくれなかった。

 

「やっぱり……」

 

『そりゃあそうよ、マトモなプライドがあれば負けを認めるような作戦に乗っかるわけがないじゃない』

 

 そう、ここに来るような戦車乗りは多かれ少なかれ負けず嫌いの集まりだ。

 Aチームがどんなに強かろうと負けを認めるなんてことはしたくないのだろう。

 

『そうかー。いい方法だと思ったんだが、Aチームを集中的に狙うのは無理だったかー』

 

 アンチョビさんは思いの外、他のチームが頑固なのでAチーム狙いの作戦を諦めようとした。

 

『無理じゃないわよ。カチューシャなら、わざわざお願いなんてしないわ。勝手にすればいいのよ、そんなこと』

 

 カチューシャさんはアンチョビさんの発言を訂正した。えっ、勝手にするってどういうこと。

 

『なるほど、Aチームが他のチームと戦っているところに遭遇したら、こっちが勝手に他のチームの援護に回ればいいのね』

 

 逸見さんはカチューシャさんの意見を聞いて、納得したような声を出した。

 

『そうよ、エリーシャ。要するに、あたしたちがこの戦いのパワーバランスを支配できるように立ち回ればいいの。この四チームの殲滅戦は強いチームが勝つんじゃない。戦いの流れを支配したチームが勝ち残るのよ』

 

 カチューシャさんは場の流れを自分たちで支配しようと提案した。

 暴君とか揶揄されることもあるみたいだが、こういうときは彼女のどんな状況も自分のモノにしようという気概ほど心強いものはなかった。

 

「では、当面はAチームがどこかのチームと戦っている現場を探すという作戦で……」

 

『そうね、それ以外では極力、交戦を控えて戦力の温存に努めましょ』

 

 私と逸見さんはカチューシャさんの意見に乗ることにした。

 

『では、引き続き周辺の索敵を開始する。エリカ、殿を任せたぞ』

 

『了解……』

 

 ティーガーⅡを後方に配置して、P40を先頭に、T-34とヘッツァーを両翼に配置して隊列を組み、私たちは戦場を探して動いた。

 

 途中で何度か交戦されそうになったけど、私たちは即逃げの一手を発動したので、被害は最小に食い止めれた。

 

 

 

『Dチーム、パーシング走行不能』

 

『Cチーム、シャーマン走行不能』

 

 そんな間にルミさんとケイさんの車両が撃破された連絡が届く。

 これで、4対4対3対3か……。

 

 

 

『いたわ! あそこでAチームとCチームが交戦してるっ! 行くわよ、Cチームの援護をするの!』

 

『こらっ、カチューシャ、指揮は私だと玲香が言ったろ! これよりAチームの側面に回り込み、Cチームの援護をする。特に西住姉妹の車両を狙い撃て!』

 

 仕切るカチューシャさんにツッコミをいれて、アンチョビさんが指示を出す。

 私たちは回り道をしてAチームの側面を狙うことにした。

 

 

 

『砲撃開始!』

 

 Aチームを狙って私たちは砲撃を開始する。

 しかし、さすがに警戒を怠ることはしていないAチーム。ティーガーⅠとⅣ号、つまり西住姉妹のニ両はこちらをきっちり向いて反撃してきたのだ。

 

「すごいな、4対7なのに、全然負けてないぞあっちのチーム……」

 

「褒めとる場合かっ!」

 

「いやー、西住ちゃんは強いねー。普段は味方で良かったよー」

 

「会長、呑気すぎます」

 

 こういう実戦の空気でⅣ号と相対するとよく分かる。私たちの隊長がどれだけ他校の驚異になっていたのか……。

 

「やっぱり、当たりそうにないですか?」

 

「この距離であんな動きされたら厳しいよねー」

 

 会長の狙撃精度はすでに私以上なんだけど無理みたいだ……。珍しく真面目にやってくれてるんだけどな。

 

 当たらない砲撃。いつやられてもおかしくないこの状況の中、変化はこちらではなく向こう側で起きた。

 

『Cチーム、マチルダ走行不能』

 

『Aチーム、KV-2走行不能』

 

 KV-2がマチルダを撃破した瞬間をノンナさんのIS-2が狙撃し、KV-2も撃破されたのだ。

 

 これで、私たちのチームが数の上ではトップ、Cチームは残りニ両で一番不利だ。

 

 

 

 と、思っていたのも束の間……。  

 

 

 

『Bチーム、T-34走行不能』

 

『なっ、なんでカチューシャが負けなきゃいけないのよっ! レイーチカ、Dチームが来てるわよ、あとは頼むわ!』

  

 カチューシャさんが背後から撃たれて撃破された。Dチームだって? 私はカチューシャさんが狙撃された方向を見た。

 

「ちっ、ファイアフライかっ!?」

 

『逆に挟まれたっ!』

 

『これはマズイわね……』

 

 前方に西住姉妹、後方にDチーム……。

 実戦練習が始まって、私たちは最大のピンチを迎えていた……。




思い付きで開始した4チームのバトルロイヤル。
とりあえず、どの車両がどのチームでどう動くとか考えると、頭の弱い私は混乱してエライことになってます。
次も頑張りますのでよろしくお願いします!
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