大洗のボーイッシュな書記会計   作:ルピーの指輪

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今回は簡単な予選リーグの説明からスタートです。
それではよろしくお願いします。


予選リーグの組合せとライバルたち

 ――戦車道世界ユース大会ルール――

 

 全てで16チームの参加国は、まずAからDまでの四つのブロックに分かれてリーグ戦を行う。

 

 各ブロックから上位2チームが決勝トーナメントに進むことが出来る。

 

 ブロックの順位の決め方は勝利数の多い順でまず順位を出す。

 

 勝利数が同じ場合は、取られたセット数が少ない国が上位になる。

 

 さらに取られたセット数も同数の場合は撃破された車両数が少ないチームが上位となる。

 

 それも同数の場合は直接対決で勝ったチームが上位となる。

 

 ゆえに、予選はなるべくセットを落とさない方が有利なので、強いチームを先に出す傾向が予想される。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 戦車道世界ユース大会の予選リーグの組み合わせを決める抽選会に私と西住さんと愛里寿さんの三人で来た。

 

 西住さんが日本ユース代表チームの隊長として抽選を受けた結果、我々はAブロックに入った。

 

 Aブロックの参加チームはアメリカ、日本、ギリシャ、ポーランドとなった。

 

「強敵はアメリカだな。ポーランドはそこまで戦車道は盛んじゃないし、ギリシャに至ってはよくわからない。仮にアメリカに負けても予選リーグは突破出来そうだね」

 

「玲香、そういう考えは良くない。私たちは優勝を目指している。どこにも負けない……」

 

 私の言葉に愛里寿は反論する。確かに負ける気で戦うなんてあり得ない。軽率なことを言ってしまった。

 

「あら、愛里寿、優勝とは大きく出たわね」

 

 聞き覚えのある声が、後ろからした。

 私と愛里寿は同時に振り向いた。

 

「アリシア姉様……」

 

 愛里寿は嬉しそうな顔をして、アリシアの元に駆け寄った。

 

「アリシアさん、やっぱりイギリスユースチームに入っていたんですね」

 

「ええ、オーバーエイジ枠でね。この間は不覚をとったけど、今回は負けないわよ。トーナメントまで勝ち上がってね」

 

 アリシアさんは相変わらず爽やかな笑顔で手を差し出した。

 

「ええ、私たちも強くなりました。ぜひ、イギリスユースチームと戦ってみたいです」  

 

 私はアリシアさんと握手した。

 

「アリシア、随分と親しそうだのう。知り合いか?(英語です)」

 

 中世の貴族みたいな衣装を着た、金髪のポニーテールの碧眼の女性がアリシアに声をかけた。

 一瞬、シマダスーツ着てる人かと思った……。

 

「ドリス、この子たちはあたしの日本の友人と、従姉妹の娘よ。玲香と愛里寿っていうの(英語です)」

 

「ふむ、お主ほどの者が日本で不覚をとったことは妾も知っておる。だが、此度の大会では敗北は許されん。英国戦車道の威信にかけて、叩きのめすのじゃ(英国です)」

 

 ドリスと呼ばれた女性はそう言い残して去って行った。

 

「アリシアさん、彼女は?」

 

「ああ、ドリスはイギリスユースの隊長よ。アレスサンドリス=ヴィクトリア、イギリス戦車道界の若き女王と呼ばれてるわ。恐らく同世代では世界一の戦車乗りね。あたしも一対一だと彼女には大幅に負け越してるし……」

 

 アリシアさんはドリスについて教えてくれた。

 

「アリシア姉様が、負け越し?」

 

 愛里寿も珍しく信じられないという顔をした。

 

 あの私たちが束になって戦ってようやく勝てたアリシアさんよりも強いって、考えただけでも身震いするんだけど……。

 

「それじゃあ、頑張ってね! 予選リーグ、勝ち抜けるように応援してるわ!」

 

 アリシアさんは私たちに手を振って去って行った。

 

 

 そして、しばらくすると、抽選を終えた西住さんが私たちの近くに戻ってきた。

 

「ごめん、玲香さん、愛里寿ちゃん、ルールの説明とかが結構長くて……」

 

「そんなの気にしなくていいよ、お疲れ様。さっき、アリシアさんに会ってさ、イギリスユースと戦いたいなって話をしたんだ」

 

「そうなんだー。うん、それが実現したら素敵だねー」

 

 西住さんは笑顔でそう言った。まぁ、予選リーグを勝ち抜かなきゃ絶対に戦えないから、まずはそこだよなー。

 

「それにしても、Aブロックの第一試合って大会の最初の試合だろ? 明後日からもう試合だもんなー。早いよな」

 

「ドキドキするよー、全国大会のときよりも緊張するかも。国を背負うってすごいプレッシャー」

 

「アリシア姉様よりも強い相手が出てきても、私は負けない……」

 

 私たちは大きな戦いが近付いている緊張感を肌で感じながら、代表チームが宿泊してるホテルまで歩いていた。

 

「あの、チョビっとスンマセン……」

 

 抽選会場をでて、少し歩いたところで私たちはカタコトの日本語で話しかけられた。

 

「レンコンミョウガホテルの場所知ってるでしょうカ? 道に迷っチッテ、タップリ困ってマス」

 

 雪のように真っ白い肌と長い髪の琥珀色の目をした女性が話しかけてきた。

 黒森峰の制服に似た黒い軍服のような服装をしていた。

 

「レンコンミョウガホテルって、ああ、私たちのホテルの近くだね。案内してあげるよ。みほ、愛里寿構わないだろ?」

 

「もちろん。困ってるときはお互い様だもん」

 

「私も構わない……」

 

「本当カイ! ニホンジンはヤハリ、タップリ親切ダ! ボクはラウラ、戦車ドーのドイツチームの一員なのダ!」

 

 白髪の女性にホテルまで案内すると言えば、彼女はカタコトの日本語でラウラと名乗り、ドイツユースチームの一員だと伝えた。

 

「ラウラさんだね。私は玲香、戦車道の日本チームだ」

 

「私はみほです。よろしくラウラさん」

 

「愛里寿……」

 

 ちょっと照れてる愛里寿も含めて自己紹介する。

 

「レイカ、ミホ、アリス、よろシュウなのダ。ミホとアリスはお互いにライバルなのダな。ふたりともタップリつよいナ」

 

「「――!?」」

 

 ラウラはひと目見ただけで何故か西住さんと愛里寿さんの関係を見抜いた。

 なんか、タダ者じゃないって感じだな。

 

「オオ、レイカ。キミはケガをシテたのにスゴイ努力したのダナ」

 

「あのー、ラウラさん、どうしてそんなことまでわかるのですか?」

 

 私は我慢できずに質問した。ライバル関係は勘が働いたにしても、私の怪我はさすがにわからないだろ。

 

「タップリ注意してみるなのダ」

 

 ラウラさんはよく見たらわかったと言い出した。そんなバカな話ってある?

 

 そうこうしてるうちに、私たちはラウラさんの宿泊地であるレンコンミョウガホテルに着いた。

 

「オオー、ありがとなのダ! レイカ、ミホ、アリス。タップリ助かっのダ」

 

 ラウラはホテルに無事に着いて安堵の表情を浮かべた。

 

「ラウラ! あなた、どこに行ってたの?(ドイツ語です) あーっ! あなたって、もしかしてみほじゃない?」

 

 赤髪のツインテールの女の子がラウラに声をかけたと思ったら、西住さんにも声をかけてきた。流暢な日本語で……。

 この子はハーフっぽいな……。

 

「えっ? ――あっ、もしかして、エミちゃん? 小学校のとき一緒だった」

 

「あはっ!? やっぱりみほなんだっ! そのユニフォームは……、そっかー、日本ユースチームの代表になったのね!」

 

 エミと呼ばれた女性は西住さんの日本ユース代表のユニフォーム姿を見てそう言いながら駆け寄った。

 

「うん、エミちゃんは、もしかして――」

 

「そう、私はドイツユースの代表チームのメンバーよ」

 

  彼女はドイツユースの一員らしい。西住さんとは旧友みたいだな。

 

「玲香さん、愛里寿ちゃん、こちらは中須賀エミさん、小学校のとき留学生で日本に来てて友達になったの。そのあとドイツに帰っちゃったけど……」

 

 西住さんが、小学校のときの友達の中須賀エミさんを紹介する。

 

「仙道玲香だ。みほとは同じ高校で戦車道をやってる。よろしく」

 

「島田愛里寿です、初めまして」

 

 私と愛里寿は自己紹介をした。

 

「えっと、玲香さんに愛里寿ちゃんね。よろしく。ごめんね、ラウラってドイツでもよく迷子になるのよ。戦車道はすっごく強いんだけど……」

 

 中須賀さんは私たちと握手した。

 

「エミ、ごめんなさいなのだ(ドイツ語です)」

 

 ラウラさんはよく迷子になるんだな……。

 

「でも、嬉しいわ! みほと国を背負って戦車道で戦えるかもしれないなんて。私と戦うまで、負けるなんて許さないわよ」

 

「うん、私もエミちゃんと戦車道で対戦出来るように頑張るね」

 

 そして、西住さんと中須賀さんはもう一度、固い握手をした。

 世界最高峰と言われるドイツ戦車道のユースチームに入るんだから中須賀さんもすごく強いんだろうなー。

 

「エミ、ラウラ、敵と馴れ合うなと何度となく言っているだろ!(ドイツ語です)」

 

 ホテルの入口から出てきたのはラウラさんと瓜二つの女性が出てきた。

 しかし、その眼光はするどく、瞳の色は燃えるように赤かった。

 

「――ヒルダ姉さん(ドイツ語です)」

「ごめん、みほ、ヒルデガルド隊長は怒ると怖いから……」

 

 エミはラウラの手を引いて、隊長と呼んだ女性の方に走って行った。

 

 ドイツユースか、こっちも強そうだなー。

 

 と、その前に明後日のアメリカユースについて考えなきゃ。

 

 私たちは自分たちの宿泊してるホテルに戻って、会議室を借りて車長会議を行うことにした。

 

 さあて、まずはチーム分けからだな……。

 




ドイツ代表のエミについてですが、リトルアーミーⅡはとりあえず無かった時系列ということにしてほしいです。ほとんど、こちらサイドの都合ですが……。
エミを入れるかは迷ったのですが、設定的にドイツユースにいないと不自然なので入れることにしました。
次回もよろしくお願いします!

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