大洗のボーイッシュな書記会計   作:ルピーの指輪

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お待たせして申し訳ありません!
ロシアユースとの試合がついに開幕しました。
それではよろしくお願いします!


VSロシアユース その1

 

「こりゃあ、強いよ。ロシアユースは今まで戦った相手の中でも相当手強い」

 

「オクーシャさんの装填……、同じ装填手としてどのようにしているのか興味は尽きませんが……」

 

 秋山さんの流した映像はロシアユースとスウェーデンユースチームの予選での試合である。

 ロシア……、いや、世界一のパワーを持つ装填手と言っても過言ではないオクーシャさんの乗るKV-2は異次元の火力を誇っていた。

 

 連射するKV-2があんなに強いなんて。

 

「かーべーたんなら、こっちにもあるわ! ニーナ、アリーナ! 負けたらシベリア送り25ルーブルよ!」

 

 カチューシャさんはKV-2の搭乗員のニーナさんとアリーナさんを鼓舞する。

 

「カチューシャ様はまーた、無茶ばっかり言ってるだ」

 

「んだ、あんな化物に勝てだなんて無茶ぶりも良いところだ」

 

 ニーナさんとアリーナさんは今の映像を見てかなり怯えているみたいだった。

 

「あんた達っ! 聞こえてるわよっ! カチューシャの戦略があれば負けるはずがないわっ! そうよね? ノンナ!」

 

「ええ、どんな相手だろうとカチューシャが勝利します」

 

 しかし、流石というべきか、カチューシャさんはまったく動じず、ノンナさんもそれに合わせてブレずにカチューシャの勝利を信じている。

 

 一応、カチューシャさんのチームはオクーシャが予選で固定されていた二試合目に出るということで決まっている。

 そして、残りの車両も彼女に決めてもらうことにしていた。

 

「ノンナのIS-2とニーナたちのKV-2は当然として、そうねぇ……、レイーチカ。あなたの車両もカチューシャのチームに入れてあげるわ」

 

「私ですか?」

 

 唐突にカチューシャさんのチームに入るように言われた私は驚いて聞き返した。

 

「そうよ、不満でもあるのかしら?」

 

「いや、不満なんて、とんでもないですよ。あははっ」

 

 私は手を横に振りながら、カチューシャさんのジト目を躱した。

 

「あとは、ダージリン。あなたのチャーチルにするわ」

 

「友人からの期待に応えないのは、騎士道精神にそぐわないですわね……。わたくしが戦う以上はあなたに勝利を捧げて差し上げますわ」

 

 映像を見始めてから10杯目の紅茶を飲み干しながら、ダージリンは優雅な振る舞いとともに、カチューシャのチームに入ることを快諾した。

 

 ということで、ロシアユース戦の第二戦目はカチューシャさん率いるプラウダ高校勢と、私たちのヘッツァー、そしてダージリンさんのチャーチルとなった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ロシアユースとの試合は雪原ステージとなってしまった。

 奇しくも、我々大洗女子学園がプラウダ高校と死闘を演じた舞台で再び戦うことになったのだ。

 

 ロシアユースはもちろん雪原では無類の強さを発揮する。大方の予想では我々日本ユースの不利は避けられないとされていた。

 

「ウルラァァァァァ!」

 

 勇ましい雄叫びがロシアユース陣営から聞こえる。

 それにしても、ロシア人は背が高いイメージだったけど、本当に高いな……。

 

 私は目の前に立っている、ロシアユースチームの隊長である、ラドミラを見ながらそう思った。

 いやー、私より背の高い戦車道選手って、世界には何人も居るもんだ。ちょっと、安心したよ。

 

 

「ラドミラ=ミハイルドナ=パブリチェンコだ。隊長は、そちらのキュートなお嬢さんかな?」

 

 ショートカットの金髪碧眼の引き締まった体つきのラドミラはニコリと笑って、流暢な日本語を話していた。

 

「はっはい。隊長の西住みほです。よろしくお願いします! にっ日本語がお上手ですね」

 

「このくらいは覚えるさ。日本でユース大会が開催されるんだ。その地域の言葉を覚えておいた方が勝率は高くなるだろう?」

 

 さも、当然という口調でラドミラは恐ろしいことを口にする。

 なんだろう……、戦車道の世界的な選手ってハイスペック体質なのがデフォルトなのだろうか?

 

「日本に私たちは負けられないんだ。君たちを倒して世界大会の誘致の話は我々ロシアが引き継ぎたいと思っているからね。すまないが、君たちはここまでだ」

 

 穏やかな口調から一転、ラドミラから滲み出るのは凍てついた殺気だった。

 どう考えてもこの人も強者だな……。

 

「こりゃ、一回戦からハードになりそうだ……」

 

「うん。第一セットから落とせないね」

 

 私と西住さんは彼女の気迫から、この戦いの厳しさを予感していた。

 

 

 

 

『第一セット、ロシアユース、残存車両1、日本ユース、残存車両0、よってロシアユースチームの勝利!』

 

 愛里寿さんの率いる第一セットのチームが負けてしまった。

 

 愛里寿さんのパーシングは三両撃破する活躍を見せたのだが、慣れない雪原で撃破されてしまうと、一気に逆転を許してしまった。

 逸見さんも粘って一対一まで持ち込んだんだけど、一歩及ばなかったか……。

 

 日本ユースチームは決勝トーナメント早々にさっそく崖っぷちに立たされていた。

 

 

 

「第一セットの仇はカチューシャたちが取るわよ! 負けたら終わりっていう状況なんてワクワクさせてくれるじゃない!」

 

 カチューシャさんは口角を釣り上げて、凶悪な笑顔を浮かべていた。

 この表情のカチューシャさんはホントに怖い。私たちも追い詰められたし……、島田流の家元のところで鍛えた後のカチューシャさんは更にとんでもない強さになっていた。

 

「ノンナっ! 最後までカチューシャを信じてついて来なさい!」

 

「もちろんです。遠いロシアの大地にカチューシャの名を刻み込みましょう」

 

 二人からはメラメラと燃える闘志を感じる。

 これはまだ日本ユースにも希望は残されているぞ。

 

「やはり出てきましたね。KV-2……、ギガントの名に相応しい怪物が乗って……」

 

 ダージリンさんは試合前の一杯を美味しそうに飲み干しながら、ロシアユースチームのKV-2を眺めていた。

 

「ちょっと、待ってください。なんですか、あれ?」

 

 めちゃめちゃ大きい金髪のロングヘアーの人がKV-2を一人でロープで引っ張って運んでいるんだけど……。しかも、片手で……。

 あの人、2メートル近いんじゃないかな?

 

「この前見た、カッターナイフでのあんこうの解体ショーよりインパクトあるねー」

 

 会長の言う解体ショーもすっごく気になるが、目の前の光景は絶句の一言だった。

 

「どうやら、あの方が噂のオクーシャさんですね……」

 

「あんなの人間じゃないよ、柚子ちゃーん」

 

「はいはい、泣かないの桃ちゃん。あの筋力って、戦車道より別の競技やったほうがいいと思うんだけど……」

 

 河嶋先輩も小山先輩も唖然として、異様な光景を見守っていた。

 確かに他の競技ならオリンピックとかに出られそう……。

 

「こんな言葉を知ってるかしら、『激流を制するのは静水』どんなパワーも受け流してしまえば怖くはありませんことよ」

 

「ついに漫画にまで手を出されましたか……」

 

 試合前から倍速で紅茶を飲んでいるダージリンさんは、闘志は十分に漲っているみたいだ。

 

 

 

 こうして、日本ユースチームとロシアユースチームの第二セットが開始された。

 

 ロシアユースチームの第二セット目のオーダーはオクーシャのKV-2に加えてIS-2とT-34が二両ずつという構成のチームだった。

 

「カチューシャさん、作戦に変更はありますか?」

 

『無いわ! レイーチカとノンナは偵察をしつつ、陽動を仕掛けなさい。相手の射程に注意して、特にKV-2とは十分に距離をとること! いいわね!?』

 

 カチューシャさんの指示により、ヘッツァーとノンナさんのIS-2は偵察に出ることとなる。

 

 

「いっいいか、玲香! あっあの化物には絶対に近づくなよ! 絶対だからな!」

 

「近付きませんよ。出来るだけ……」

 

「何だ! その、不安にさせる言い方は!」

 

 河嶋先輩が私に怒鳴り声を上げる。あれは、さっきのデモンストレーションで完全にビビってるな……。

 それだけでも、あの余興には効果があったということか。

 

「河嶋ー。そりゃ、仙道ちゃんだって自らKV-2と対峙しようなんて思わないよー。でもさー、向こうからすると、こっちはターゲットだからさー」

 

 会長はこんな時にも干しいもを片手に余裕の表情だ。

 そう、相手の出方次第なのだ。それに足の遅いKV-2だから距離さえしっかり取っていれば、そこまで驚異ではない。

 

『玲香さん、かなり奥地まで入りましたが、敵車両が見つからないのは妙ですね』

 

「私もここまで一両も見当たらないのは違和感しか感じません。一度……、本陣まで――」

 

 私が撤退を提案したときである。後方から砲撃音が聞こえ、雪の中からロシアユースのIS-2とT-34が二両ずつ出てきたのだ。

 

「しまった。あれは私たちもプラウダ戦で使った」

 

『いえ、それ以上に違和感なく風景と同化していました。私も注意していましたが全く見抜けませんでした……。とにかく、逃げるしかなさそうですね』

 

 私たちは一目散に逃げの手を打った。

 

「オクーシャさんに目が行ってたけど、ロシアユースはどの車両も装填が速い!」

 

「うわぁぁっ! もう駄目だーおしまいだー!」

 

「桃ちゃん! ちょっと黙ってて!」

 

 私はキューポラから顔を出して、神経を研ぎ澄ませて安全ルートを割り出す。

 何とか、ここまで被弾なしで来てるけど……。この先には間違いなく……。

 

 

 轟音が鳴り響き、大爆発の余波で体が吹き飛ばされそうになる――。ギガントと呼ばれた化物が私の視界に入る。

 

 セオリーならこのあと暫くは装填に時間がかかるんだけど……。

 

「やはり、とんでもない……」

 

 そんなことを考えている内に152mm砲という規格外の火力が連射される。

 

「小山先輩! 右に! 急いで!」

 

 かろうじて、二発目も躱したが、これ以上近づけないし、後ろからも敵車両が迫ってきている。

 

 こっこれは、絶体絶命ってやつでは……。

 

『絶体絶命では、ありません。カチューシャの率いるこのチームに負けはあり得ないのです。玲香さん、必ずこの状況を打破しましょう。そのために――』

 

 ノンナさんは早口で今後の作戦を伝えてきた。

 なるほど――確かにそれしか……。

 

 ロシアユースとの第二セットは序盤から大ピンチに陥ってしまっていた――。




いきなりの大ピンチの玲香です。
連射できるKV-2はやはり化物でした。
次回もよろしくお願いします!
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