私は夕暮れの中を歩いた。
車のタイヤに弾き飛ばされる小石、どこからか飛ばされてきたであろう隣町のスーパーのレシート。
その全てが私を彩るピースだった。
学生の笑い声、香るコンビニのホットスナック、甘酸っぱいカップルの赤く染まる空気。
死に物狂いで生きている私は、それを羨ましく思う。
戦火で埋め尽くされた焦土の上に私は立っている。幾人もの思いを刻んだこの地では、夕焼けが美しいのだ。
コインランドリーに行き交う主婦の会話は、常に生き続ける人間の原動力の元となる。
ヴァイオリンの音に視線が行き交う裏通り。
建物の隙間から見える空の陰り。
蹲る子供の、なんと悲しき姿か。電車が行き交う路線図を薄目に、流れゆくサラリーマン、風俗嬢、ピエロ。
私は、いや私のようなちっぽけなゴミが暮らすここ島国では、心と心の通いがあるのだろうか。
他人を憎み、誹謗中傷し、横目に流す。あげつらう言の葉を並べた、寂しきマリオネットは、誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。
すべて消えてしまえ、全て消えてしまえ、総て消えてしまえ。sUbeteきetEsImaェ。
心の陰りは、空の陰りとは違って消えてくれない。いつも横にあり、気を抜けば襲ってくる。上辺だけを並べて、心を偽る者のなんと愚かなことか。
藍染のシャツにしみ込んだ夕暮れの雨が、静かに冷やすアスファルト。
仮初めの仲に走る信濃川。あなたがそばにいてくれたから。
あなたは?
わたしは?
ここには気狂いしかいない。日々を諦め、自分が自分であることを認めようとせず、思考放棄異常論理記憶喪失自傷行為。
ソプラノの声に耳を傾けたのは、他の誰でもない。私だ。
歌を歌おう。世界に聞こえるように、歌を歌おう。
例え言葉が通じなくても、例え音程が外れようとも。
歌は規律を想起する。
歌こそ自由であるべきだ、なんて、戯言のような言葉だって、私は信じる。だってそれしかできないのだから。何故って?その理由を見つけるのが生きるってことだから。
ハープの音が聞こえてくるこの地では、嘆き悲しみ震える夜もある。
力の無さ、不甲斐ない、そう思う現代の大人は多い。
あなたには力がある、なんて簡単には言えないけれど、ないとも言えない。
決めつけたって意味がない。それは我々が人間だからである。
小さいことで感情は変わるし、揺れ動く。
しかし、明日を信じて私は、私たち人間は歩み続ける。
空に浮かぶあの夕日に、夜空に浮かぶあの星に。
思い、祈り、願い。
私は夕暮れの中を歩いた。