『 ーーじゃあまた始業式でねー!』
入学式後の最初のホームルームが終わり、私はクラスメイトと別れ、由貴と瞬に声をかける。
「二人は今日どうする?」
すると、由貴が少し申し訳なさそうに答える。
「ごめーん…。私、今日はちょっと予定があるんだ…。」
続けて瞬も、
「おれも今日家の手伝いがあるからすぐに帰らないといけないんだ。」
一緒に帰ろうと思っていたので少し残念だけど二人とも忙しいのはいつもの事だから仕方がないよね。
「おっけー!じゃあ二人ともまたねー!」
「ばいばーい!」
「またなー。」
そういうと、二人は先に帰っていった。
(仕方ないから一人で帰ろ!)
周りを見ると、私以外のクラスメイトは全員帰っているようなので戸締りをして私も教室を出る。
(えっと、確か職員室に鍵を返さないといけないんだよね…)
渡り廊下を通って職員室に向かっている途中に外を見ると雲ひとつない青空が広がっていた。
(あんなに朝雨が降ってたのに天気って面白いな~。)
そんなことを呑気に思っていた私はハッとした。
「あ、傘!!」
(やっぱりそうだよねー。そりゃ帰る時に雨止んでたらみんな忘れるよ~。)
どうやら忘れ物をしているのは私だけではなかったようだ。いくつか忘れられた傘が立てかけてある。
(なんか気づいた私えらいかも!)
少し勝ち誇りながら自分の傘を取ろうとすると誰かと手が交差した。
(ん?誰だろう?)
不思議に思い、顔を上げると優しい表情をした男子生徒が笑っていた。
「うわ~~!?び、びっくりした!!」
私は思わず大きい声を出してしまった。
「あ、ごめんごめん、驚かせちゃったかな?」
男子生徒は少し申し訳なさそうに言った。
「え、ううん!誰もいないと思ってたからびっくりしただけだから大丈夫!」
「それならよかった!」
あー、びっくりした!いきなり目の前に男の子の顔が現れたから慌てちゃった…。
ん?今、ここの傘を取ろうとしてたってことはこのクラスの子か…。
じゃあ自己紹介しないと!
「私、このクラスの星河唯!よろしくね!」
男子生徒はいきなりの自己紹介に少し戸惑った顔をしたがすぐに気を取り直して同じように自己紹介をした。
「僕は
爽やかな笑顔で返されて思わず私は顔を赤らめる。
(ちょっとカッコいいかも…。)
「星河さん?顔赤いけど大丈夫?」
私はハッとして我に返った。
「え、ええ!?あ、だ、大丈夫大丈夫!あはは~。」
(カッコよくて赤くなったなんて言えないよ…。)
「うーん、少し心配だから家まで送っていくよ!」
「え、ええ!?大丈夫だよ帰れるから!」
「ここで会ったのも何かの縁を感じるし…。それに星河さんとも色々話してみたいから。」
「う、うん!じゃあお言葉に甘えて!」
(こんな運命みたいなことあるの…!?)
普段動じない私がこんなに戸惑ったのは瞬と由貴に去年のエイプリルフールに、
「俺たち実は付き合ってたんだ。」
って嘘をつかれた時以来だろう。
でも、今日の衝撃はその時以上だ。
「それじゃあ、帰ろっか!」
「う、うん!あ!教室の鍵職員室に返さないと!」
「じゃ、それも一緒に行こっか!」
窓から差し込む春の日差しが二人の姿を明るく照らす。そして、それに比例するかのように二人の影も色濃くなっていく。
この時の二人は、お互いが傘を忘れたから起きた偶然の出会いだと思っていた。
でも、これは必然の出会い。それに二人が気づくのはもう少し後の話。