職員室に鍵を返し終わり、私たちは話しながら校門に向かう。
「星河さんの家ってどっち?」
「えっと~!ここを真っ直ぐいって、右にいって、それから~!」
「ごめん、わかんないや。」
「じゃあ私が案内する!」
校門の近くにはこの学校自慢の桜並木がある。ここは今がちょうど見頃らしく満開の桜が校門を彩っている。
「私、登校の時全然気づかなかったけどすごく綺麗だね。」
「え、星河さんこんなに咲いてるのに気づかなかったの?」
「入学式で浮かれてて周りが見えてなくて…。」
「ははっ、星河さんっておもしろいね。」
「もー、今バカにしたでしょ!」
「ふふ、してないしてない。」
なんだろう。つかさ君と話してるとすごく落ち着く。彼の優しさも関係しているのだろうが、どうもそれだけではない気がする。
「とりあえず星河さんの家に向かおうか。」
「はーい!」
…といっても私の家はそんなに遠くはない。学校から歩いて十分程なのでそんなに深い話はできなかった。
どこの中学だったのか、好きな食べ物はなにか、誕生日はいつかなど、その程度のものだった。
それでもつかさ君は私のたわいもない質問に笑顔で答えてくれた。
(つかさ君ってすごく優しいな…。)
「ここが私の家だよ!」
話しているとあっという間に私の家についた。
「アパートに住んでるんだ。」
「そうなんだ!今はちょっと色々あって一人で住んでるんだけどね…。」
するとつかさくんは驚いた顔をして言う。
「え?実は僕も今一人で暮らしてるんだ。」
「え!?本当!?」
「それに、星河さんの家にも結構近いんだ。」
「じゃあつかさくんの家も教えて!」
「あ、それじゃあ案内するよ。」
つかさくんの家は私の家から歩いて五分程で着くアパートにあった。
私は、自分の事情もあるのでつかさくんがどうして一人暮らしをしているのかは聞けなかった。
そして、つかさくんも同じように聞いてこなかった。恐らく踏み込みすぎてはいけないと配慮をしてくれたのだと思う。
つかさくんは自分のアパートを見つめながら言った。
「結構古いアパートだから見た目はそんなに綺麗じゃないんだけど結構住みやすいんだ。」
「へー!いいな。でも見た目もちょっと味があるから私は好きだよ!」
「ふふっ、ありがとう。」
そして、私は続けて言う。
「それにしても、つかさくんと私ってご近所さんだったんだね!」
すると、つかさくんが少し考え込む。
「ご近所さん…。」
「あれ、私、なにか変な事言ったっけ?」
「ううん!ちょっとぼーっとしてただけ!」
笑顔で返すつかさくん。
(私が由貴と瞬に言ったこととそっくり…!)
「ふふっ…!」
「どうしたの星河さん?」
「私たちって似てるね!」
「え?ええ?」
「それじゃ、つかさくんまた学校でねー!」
「え、う、うん!気をつけてねー!」
私はこれからの学校生活に胸を弾ませながら駆け足で帰っていく。
(ふふっ、楽しみだなー!)
周りはいつの間にか濃いオレンジ色に染まっている。彼と話していた時間はあっという間だった。
つかさくんの顔を思い出すとつい、少し顔が赤くなってしまう。
もしかしたら私は彼に惹かれているのかもしれない。
(こんな顔つかさくんに見せられないよ~…。)
しかし、家に近づくにつれてあれだけ軽かった足取りが次第に重くなっていく。
それと同時に、幸せな気持ちも少しずつ消えていった。
夕焼けが次第に暗闇に侵食され、夜へと変わっていくように。