「ただいまー。」
真っ暗な部屋の中にわたしの声だけが響く。当然返事が返ってくることはない。
簡単な言葉なのに聞きたい人からはもうずっと聞いていない。
明かりをつけ、ベットに座ると疲れが一気に押し寄せてきた。
(はぁ…疲れたなぁ。)
わたしは明かりをつけたままベットに潜り込む。
(少し寝よ。)
目を閉じるとすぐにわたしの意識は深く底まで沈んでいった。
「ねぇ、星になったってどういうこと?」
「……遠くで見守っていると言うことじゃ。」
「どうして!?なんで?」
「……。」
「わかんないよ…。おじいちゃん…。」
祖父の思いやりも辛かった。結局は両親が死んだという事実は知ることになるのに…。
さらに、死因については全く教えてくれなかった。何回も教えて欲しいと頼んでも祖父は答えてくれない。
わたしは次第に両親の死因について祖父に聞くことがなくなっていった。それと同時に祖父に不信感を持つようにもなった。
そしてわたしは中学から一人暮らしを始める事を決めた。
祖父も心配して反論していたが、わたしも聞く耳を持たなかったため、
「そうか…。でも唯が生きていくための手伝いはさせてくれ。」
と言って、わたしの一人暮らしは認められた。
生活費などを祖父に頼らなければいけないのは複雑な気持ちだったが中学生が一人で生きていくのは正直無理なので仕方がなかった。
ただ家事に関してはほとんど困っていない。料理は得意だし洗濯や掃除もできる。せめてそれくらいは自分でという意地もあったので上達するのは早かった。
それにしてもなぜ祖父はわたしに両親の死を隠そうとし、死因を教えようとしなかったのだろうか。
もしかすると、高校生になった今のわたしになら祖父は話してくれるかもしれない。
でも、自分から家を出ていったわたしにそんな資格はない。
今さら教えてくれなんてどんな顔をして言えばいいのだろうか。
「わたしはどうしたらいいの…。」
目が覚めると目には涙が溢れていた。
(もうわかんないや…。)
とりあえず重い体を起こし、気分転換に家事などを済ませることにした。
「やっぱりだめね…。」
食事や洗濯などを一通り終わらせたが、やはり気分は晴れない。
時間を確認するとまだ九時前だった。
思ったより時間が経っていなかったのでわたしは外へ出る準備をする。
特に心が晴れない時にわたしはよく外に星空を見に行っている。星空を見ていると不思議と心が落ち着く。
今夜は普段より肌寒いらしいので厚着をしていつもの公園へ向かう。
「じゃあ、いってきます。」
「よいしょっと。」
いつものベンチに腰掛けて星空を見上げる。
わたしの家から歩いて二、三分の所に公園はある。
この公園から見える星空は本当に綺麗だ。それぞれ独自の輝きを放つ無数の星、その中で一段と強い輝きを放つ月。
そのどちらも、この星空に欠かせないものでありわたしの心を包み込んでくれていた。
いつもだったら。
なぜだろう。今日は星空を見ても心が晴れない。それどころか悲しい気持ちになる。この星空が私を飲み込んでいく気がする。
絶望するわたしの真上に一瞬流れ星が見えた。もし願いが叶うならわたしを助けて。
「わたしをみつけて…。」
「星河…さん?」
あの人の優しい声が聞こえる。
嫌だ。変わりたくない。
またあなたはわたしと変わって自分の輝きを増していく。
お願い…。出てこないで…。
わた…しに話させ…。
いまわたしたちが見ている星が存在する全ての星では無い。
星の中にはわたしたちが見ることが出来ない、誰にも知られていない星も無数にある。
わたしは見えない星。でも私は一際目立つあの一番星。
今日もわたしは私を恨めしそうに眺める。