「それじゃあ、話し合いを始めまーす!」
由貴の元気な声が聞こえてくる。
山吹高校に入学してから一ヶ月。私は瞬、由貴、つかさくんと一緒に過ごす事が多くなった。
始業式の時、初めて四人で話したんだけど瞬も由貴もすぐにつかさくんと仲良くなった。
二人とも口を揃えていい人って言ってくれた。
それを聞いてなんだか私は少し安心した。
さて、今私達は文化祭に向けてクラスで何をするのかの話し合いを行なっているのだが…。
「やっぱり喫茶店でしょ!」
「とりあえずみんなの意見を聞こうぜ。」
「え〜!絶対喫茶店だって!」
「はーい、他に意見がある人ー?」
文化祭のクラス委員は由貴と瞬に決まった。由貴は私とやりたがっていたが瞬とするのが正解だと思う。
瞬じゃないと由貴の暴走は止められない。私ではおそらく手に負えない。
いや、でも今日の由貴は瞬でも止められないかもしれない。
「みんな!もちろん喫茶店だよね!」
一週間前からずっと文化祭について話していたのですごい熱量だ。
私も普段勢いはある方だけど引くところは引く。でも由貴はお構い無しに突っ走っていく。
不思議と由貴が隣にいると私はある程度しっかりするようになっていた。
あれだ。自分より破天荒な人がいると自分がしっかりしないといけないと思うあの現象だ。
それにしても、この二人のやり取りを見ていると夫婦漫才を見ているくらい息が合っていて笑ってしまう。
少し気になってちらっとつかさくんの方を向くと、彼も二人を見て笑っていた。
それを見て私はなんだか嬉しくなった。
すると、突然つかさくんが私に気づき、笑顔を見せてきた。
(あっ…!?)
慌てた私は思わず顔を背ける。
(はぁ〜。)
あれ以来、つかさくんとは何回か星を見に行っている。
そこで、その日あった出来事や星座についてなど色々な話をして仲良くはなってきている。
でもそれ以上の進展はまだない。だからこの文化祭で少しでも距離を縮めたいんだけど…。
(なんて言って誘えばいいの〜。)
頭を抱える私。しかしそれ以上に頭を抱えている生徒が前にいた。
「とりあえず他の案があるひ…」
「それじゃあ、多数決で喫茶店に決定〜!」
普段は冷静な瞬だが由貴と言い合いしている時だけはいつも冷静さを失っている気がする。
「いや、多数決してないし!…てか他の人意見聞いてないだろ!」
彼の健闘も虚しくクラスの出し物は喫茶店に決まってしまった。
「お前さ、もう少し周りの意見を聞けないのかよ。」
「だって、文化祭と言えば喫茶店じゃん!」
「いや、そういう問題じゃなくてだな…。」
クラス会が終わってもまだ二人は口論をしている。
「ふふっ、本当に二人って仲良しだよね!」
私が笑って二人をからかうと、
『仲良くない!!』
綺麗に二人の声が揃う。やっぱり相性ばっちりだよね。
「でも喫茶店、楽しそうだからいいと思うよ。」
つかさくんが二人の間に入って言う。
それを聞いて由貴は嬉しそうだ。
「でしょ!さっすがつかさくん!分かってるぅ!」
「はぁ…つかさも、こいつを乗せるようなこと言うなよな。」
瞬は呆れた表情をしている。
そして勝ち誇ったように由貴が言う。
「ふふん!もう決まった事だから変えようがないもんね!」
「はぁ…。もうそれでいいよ…。」
瞬はもう無駄だと悟り、抵抗することをやめた。
「ふふっ。それじゃあごめんね、今日僕ちょっと用事があるから先に帰らせてもらうね。」
そう言うとつかさくんは帰っていった。
「…それで、文化祭当日はどうする?」
瞬が突然話題を変える。
「え?四人で回るんじゃないの?」
「それがな、俺と由貴は当日結構忙しくなりそうで回る余裕そんなに無いかもしれないんだ。」
「そっか、そうなんだ…。」
私は少し残念なそうに返事をする。
「…だから、こっちでシフト唯とつかさで一緒にしておくから空き時間二人で文化祭回ってこいよ。」
「へ?」
突然の瞬の提案に私はつい間抜けな返事をしてしまった。
「だから、つかさと二人で文化祭回ってこいってことだよ。」
動揺する私に追い打ちをかけるように瞬は言った。
「え、ええ〜!!」
「うんうん!それがいいと思う!」
便乗する由貴。こういう時も息合わさなくていいから!
「え〜!でも恥ずかしいよ〜!」
「いいのかな〜?大好きなつかさくんが他の人に取られちゃっても〜!」
由貴がニヤニヤしながら言う。
「も〜!わかったよ!二人で回るよ!」
それを聞いて瞬と由貴はハイタッチする。本当にさっきまで口論していた二人とは思えない。
(なんか悔しいけど…。二人ともありがと。)
こうして私はつかさくんと二人で文化祭を回ることに決まった。