(うーん…。)
最近少し腑に落ちないことがある。つかさくんと星を見に行った日の家での記憶はしっかり残っているのにそれ以外の日の家での記憶がほとんど無い。
まるで別の誰かが過ごしているかのように…。
こんな違和感を覚え始めたのはつかさくんと出会ってからだ。
彼と出会って楽しいことがどんどん増えてきている。でもそれと同時に考えこむことも日に日に増えている。
つかさくんに出会ってから私は少しずつ変わっている。
これはいい事なのか、それとも…。
「…やめよ!こんなに考え込むの私らしくないね!」
今日は楽しみにしていた文化祭だ。いつまでもこんな気持ちじゃダメだよね。
「よーし!今日は楽しむぞー!」
「唯ー!おっはよー!」
教室についてすぐ、由貴の元気な声が聞こえてきた。
「おはよー!由貴!」
「ふっふっふっ…。」
由貴が怪しげな笑いを浮かべる。
「な、なに、怖いよ由貴。」
「ほらほら!あそこに今日のお相手さんがいるよ!」
指を指した先に、喫茶店の最後の準備をしているつかさくんがいた。
「もー!由貴!!」
「ふふっ!唯、がんばってね!」
由貴は笑いながら教室から出ていった。クラス委員の仕事で忙しいんだろう。
(それじゃ、私も準備しよっかな…。)
「おはよう!星河さん。」
「あ、つ、つかさくん!お、おはよ〜!」
「今日はよろしくね!」
「う、うん!こっちこそ!!」
それだけ言うとつかさくんは準備に戻っていった。
(も〜!一緒に回るの午後からなのになんかもう緊張してきたよ〜!)
私は顔が赤くなるのを必死に押え準備へ向かった。
午前中のシフトはあっという間に感じた。たぶん、喫茶店が予想以上に忙しく、時間が経つのが早く感じたからだろう。
それに忙しかったおかげで午後のことをあまり考えないで済んだ。考えてたらきっと自分の仕事に手がつかなかっただろうし…。
「星河さん、おつかれ!」
「う、うわぁ!もう、つかさくん急に話しかけないでよ!」
つかさくんはいつも急に話しかけてくる。
「あはは、ごめんごめん!それじゃ、行こっか!」
「うん!あ、私お腹すいたからどっかのお店に食べにいこうよ!」
するとつかさくんも頷きながら答えた。
「そうだね、僕もちょうどお腹すいてたからそうしよっか。」
「おっけー!えっと、何か近くに食べられるところは…。」
パンフレットを眺めていると近くに焼きそばを出しているクラスがあった。
「あ!私、焼きそば食べたい!つかさくんは何か食べたい物ある?」
「僕は特にないから星河さんの食べたい物でいいよ!」
それを聞いて私は少し嬉しくなった。
「わかった!それじゃあ焼きそば食べに行こ!」
ボリューム満点の焼きそばを食べ終え、私達は校内を見て回ることにした。
「あの焼きそばすごく美味しかったねー!」
「うん、それに量もあったから僕はもうお腹いっぱいかな。」
「そ、そうなんだ!わ、私ももう満足かな!」
(まだ食べれるなんて恥ずかしくて言えない…。)
私は自分の本心がバレないように慌てて話題を変える。
「そ、そうだ!次はつかさくんの行きたい場所行こ!」
「え、でも…。」
少し遠慮しているつかさくん。
「私は食べたいもの食べたから次はつかさくんが行きたいところに行こ!」
「……それじゃあお化け屋敷行かない?」
「え…?」
思わぬ答えに私は少し固まった。
(どうしよう…。私、お化け屋敷すごく苦手なんだよな…。)
「嫌だった?」
(でもつかさくんがせっかく行きたいって言ってくれてるんだし…。)
「星河さん?」
「う、ううん!私も行きたい!お化け屋敷!」
(文化祭ぐらいならそんなにクオリティも高くないはずだから大丈夫だよね…!)
「よかった、じゃあ体育館に行こっか!」
これもまた思いもよらない場所だった。
「え、た、体育館?クラスの出し物とかじゃないの?」
「うん!山吹高校のお化け屋敷はOBさん達が毎年出しててすごく怖くて有名なんだ!」
私は必死に恐怖をこらえ、笑顔で答える。
「へ、へえ〜!そ、それは楽しみだね!」
(だ、大丈夫だよね…?)
こうして私は大の苦手なお化け屋敷へ行くことになってしまった。