俺と友の信じる力   作:カムカム@もぐもぐ

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切りどころを探っていたら長くなりました。


2話

今流行りの異世界転生を無事果たした俺は、一つ選択を迫られていた。

転生先の作品は『オーバーロード』ほとんど内容は覚えてないが、異世界転生したらその先で異世界転移するというなんとも不可解な事柄に巻き込まれているわけだ。

 

しかし別にオーバーロードの世界のリアルなんて酷いもんだし実質異世界に転移安定だと思っていたんだが、貧困層に生まれたならまだしも残念富裕層でした。

ということで、異世界転移が安定じゃなくなりなんとリアルで過ごすという選択肢が生まれてしまったわけです。

さらにはその辺の会社の御曹司とかそんなもんじゃない、貴族だ。

貴族ってなんだよ。貧困層の会社員とかに頭下げさせて喜んじゃってる富裕層のボンボンが、俺の顔を見ただけで少し俯きながら媚びへつらえようなそんな立場の人間に生まれたのだ。

つまりは人生の勝利者、強いキャラクターをメイキングして異世界ひゃっほう!今までの辛い人生とはお別れをした!しなくて済むわけである。

そもそも貴族の仕事ってなんだ、恨まれたりはしたくないぞ。金があっても不幸なら異世界行くわ。

そう思っていた時もありました。

貴族の仕事とは、簡単に言えば経済を回すことだ。

貴族は貴族が仕事とでも言うべきか。

回す経済が縮小しようとも、富裕層貧困層別れていようとも世の中から金がなくなったわけではない。

何世代も築いてきた人脈と蓄えてきた金で、会社のスポンサーなどをする。すると売上の一部がこっちに回ってくるわけだ。

会社を興すにしろなんにしろ金が必要だから、求められる。貸す、そして成功すればこちらに金が回るの繰り返し。

特に俺の家などは国内外問わず、多くの企業に携わっているのでまさに生きているだけで生活できる。

さらには国内の紙幣の発行権まで所有しているのだ。

そんなもの成り立つのか?と思ったりもしたが、見てればわかる。

信用とは金で買えないのだ。金では買えないが、積み重ねてきた信用は金になる。

会社を興したときにうちから金を借りたとなれば、うちが信用して金を貸した、だから信用できる会社だ、となる。

あとは顔を見せて回ることだったり、企業の視察が仕事だ。

悪いことしてたりすれば家の信用に関わるからな。

 

こんなんで年収が数えるのも馬鹿らしいほどなんだから異世界転移いる?という状況だ。

そもそも異世界転移する前提だが、ユグドラシル本当に面白いのか?大体異世界転移できるの?

……というわけで買ってきましたダイブマシン。

ちょっとやってみてつまらなきゃやめればいいや。

息抜き位にはなるでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

ユグドラシルは神ゲー。

いやー見事にハマりました。リアルでは富裕層だし、金はあるけど知名度がありすぎて自由がない。

毎日が日曜日だってやることなければ毎日が月曜日だぞ。

やることがない訳じゃないし、仕事……というか与えられた役割に不満もない。だが!だが!

人は慣れる生き物だ。貧困層の民が貧困の中生きていけるように、この裕福で幸福な生活はあまりに退屈なのだ。

贅沢?はっ!専用のマスクがなければ外を歩けず娯楽がほぼほぼ壊滅したこの世界で、生活に必要以上の異常な金銭がなんの役に立つと?

 

マスクがなければ外を歩けないのを逆手にとり、こんな裕福な俺ですら目玉が飛び出るほどの金を使いドームに擬似的な自然を用意しオープンカフェなんてものを作った馬鹿がいたが、マスクをせずに外に似通った空間でカフェを楽しめるということで富裕層では大ヒットし目玉が飛び出るほどの金を取り戻し元の何倍かも分からないような利益をとったやつが知り合いにいる。

この話からもわかるだろうが、富裕層、つまりは金があるやつらですらやることがないのだ。

だから目新しいものや、好奇心を擽るものに集まる。

だから俺がユグドラシルにハマったのだって仕方がないのだ。

仕事が終わればすぐユグドラシル。そして飯を食いユグドラシル。そして寝る。

自営業に近く、そして自由業。

所謂廃人と呼ばれるまでやり込むのには、そう時間は掛からなかった。

 

しかし、俺はオーバーロードという作品についての知識があまりにもない。

この世界に生まれ落ちる前の世界はまさに異世界転生全盛期。今期のアニメは8割異世界転生物!が冗談ではない。

たしかユグドラシルというゲームで主人公が最終日に異世界転移をするという話のはずだ。

あと最強物。

わからんからいいや。無理なら無理で人生イージーモードさせてもらうぜ。

またユグドラシルの話に戻るが、自由度の高さが半端じゃない。環境汚染により荒廃した世界だからその辺の技術も衰退したかと思ったがそんなことはない。

キャラクターのビジュアルから装備まで、法律やモラル、運営が定めたルールに触れなければ基本なんでもありだ。

ビジュアルなどを弄るには課金要素があるが、アルティメット金持ちの俺にとってはその程度の課金など自販機でジュースを買う感覚だ。

余談だが外に自販機はない。あるのは店内や会社内だけだ。

まぁそんなわけで好きな容姿に変えれるのだが、どうしたのかというとどうやらこの世界にもあったらしいのだ。

ガンダムが。

俺はガノタは言い過ぎだが、かなり好きだ。

アニメ化されているので好きなのはZ逆シャアOO鉄血だろうか。細かく言えば好きな作品は多いがその辺は省略させてもらう。

 

中でも鉄血は色々言われたりしているが、俺はガエリオVSマクギリスの最終戦。

ガンダム・キマリスヴィダールVSガンダム・バエルの戦いはガンダム史上屈指の名勝負だと思っている。

作画や鉄の塊で殴り合ったりガエリオの想いをぶつけるかのような、太刀でのラッシュのシーンなどは堪らない。

……鉄血の話はともかく、どうやらこの世界の著作権はとっくに切れているようなので、ガエリオ・ボードウィンを選択した。

初登場時の坊っちゃん的な容姿より、マクギリスに殺されかけたあとの顔に傷がある方が好きだ。

次は種族だ。人間種か異形種に別れている。

人気なのは圧倒的に人間種だろう。

しかも今でこそほとんどないが異形種狩りなんて低俗な遊びが流行ったこともあるらしい。クズが。

ガエリオは人間なので人間種にしようと思ったが、キマリスとは悪魔である。

とりあえずユグドラシルのwikiを見ていると『鎧の悪魔(アーマーデビル)』という種族があるではないか。

悪魔で鎧。うーむ実に鉄血のモビルスーツ的ではないか。

異形種を最初から選ぶという手もあったが、ガエリオも最初は阿頼耶識システムを嫌悪していたが最後は阿頼耶識システムTypeEを使っていることからロールプレイの一環として人間種を選び悪魔に転生し、異形種となった。

 

そして莫大な課金と廃人プレイによって、『ガエリオ・ボードウィン』というキャラクターが完成した。

はっきり言って、めちゃくちゃ強い。

装備の相性もあるが1対1なら最強だという自負がある。

ただ、残念なことに鎧の悪魔の名の通りこの種族鎧に大きく依存しているのだ。

レベル100ではあるが鎧無しではレベル70程度の能力しか発揮できない。

ガチガチの戦闘ビルド構成のおかげで鎧なしでもかなりマシではあるがそれでも弱い。

ユグドラシルではレベル10差が付いたら勝負にならないなんて言葉があるくらいレベル差というのは大きい。

専用装備も見た目を完全にキマリスヴィダールにすることができた俺には、一つの懸念があった。

それは、世界級アイテムの存在である。

キマリスヴィダールは全身で一つの存在なので、まず全身が神器級(ゴッズ)そして武器のドリルランス、刀、シールドが伝説級(レジェンド)である。

ここまでの装備を揃えるのには苦労したが、世界級アイテムは世界級アイテムでしか対抗できない。

ならば、キマリスヴィダールの代表的なシステム阿頼耶識システムTypeEを世界級アイテムクラスの装備にしようと思う。

 

ユグドラシルは課金で大抵なんでも出来るが、こればかりは課金でもどうにもならない。

だが、ユグドラシルに不可能はあまりないのだ。世界級アイテムに運営に直接お願いできるアイテムがあるのだ。

めちゃくちゃだろう。俺もそう思う。

名前は『永劫の蛇の指輪(ウロボロス)

二十と言われるぶっ壊れ世界級アイテムのひとつだ。

そいつを手に入れて、運営に直接お願いすれば……!

とりあえず今までソロプレイだったからフレンドは居ないが、聞き込みを始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

いやー参ったなこりゃあ。

まさかあの悪名高きアインズ・ウール・ゴウンに目をつけられるとは。

商業ギルドの大会の景品に永劫の蛇の指輪(ウロボロス)があるからって意気揚々と参加したら決勝でアインズ・ウール・ゴウンのメンバーと戦うことになるとは。

しかもワールドチャンピオンってことは鬼強いじゃないか。

最後にして最大の壁か……。

いや、ここまで来て何を恐れることがあるのだ。

俺だって一応ワールドチャンピオンのクラスを修めているのだよ。

……負けたら頭下げてでも永劫の蛇の指輪(ウロボロス)を貰うぜ。

 

 

 

 

 

商業ギルドが行った大会だけあって、その盛り上がりは月毎の大会の非ではない大盛り上がりとなっていた。

現在行われているのは準決勝。

しかし、その様子を見守る観客の盛り上がりはもはや決勝戦を凌駕する勢いだろう。

それもそのはず、ユグドラシルに小さいながらも噂になった紫の鎧の戦士ガエリオ・ボードウィンが相対するはユグドラシルの悪の華、アインズ・ウール・ゴウン最強の戦士にしてユグドラシルトッププレイヤー三本指に入るの一人、たっち・みー。

どちらもワールドチャンピオンのクラスを修めているのは閲覧魔法で確認済みであり、珍しいワールドチャンピオン同士の戦いに観客は視線を釘付けにされていた。

戦いは攻めのガエリオVS守りのたっち・みーと言った様相を呈している。

 

ガエリオのキマリスヴィダールは守りも堅牢ながらドリルランスや刀など近接戦闘では無類の強さを誇るが、たっちの純白の鎧であるコンプライアンス・ウィズ・ローと純白の盾、アースリカバーにたっちの戦闘技能が加わり、ガエリオはその守りを崩せずにいた。

しかし、拮抗とはいつも得てして崩れるのは一瞬である。

 

「戦場を切り裂け、アイン!!」

「!?」

 

ガエリオの怒濤のラッシュにたっちはたまらず、ワールドチャンピオンのスキルである<次元断層>を使ってしまった。

もちろんワールドチャンピオンのスキルに相応しく絶対防御のスキルだが、同格相手では明確な隙でしかなかったのだ。

キマリスヴィダールの左目が赤く光ると一時的に敏捷値が上昇する。

そのままたっちの真後ろに回り込むとドリルランスに背面のシールドが連結される。

見ている側からすれば謎の行動だ。背後からのダメージはダメージこそ増さないが、吹き飛ばしなど戦士には優位に働くデバフを相手に与える。

それにキマリスヴィダールの一撃ならば一撃ですら致命傷に近いダメージを与えるだろう。

それなのに今さらなぜそんな隙を?

たっちもすぐさま振り返りドリルランスの射線にアースリカバーを構え防御の姿勢をとる。

次元断層には及ばないが鎧と盾によるほぼ絶対防御、過信するのもわかるが、たっちはもう一度次元断層による防御を行うべきだったのだ。

 

「貫けぇ!」

 

ドリルランスから発射された弾丸はアースリカバーを粉々に吹き飛ばし、なお余りある威力そのままにコンプライアンス・ウィズ・ローへと迫る。

たっちはその異常な威力を理解したのか体を逸らすが脇腹を弾丸は掠めた。

……掠めたというには威力が高すぎたのだろう。掠めた純白の鎧はその一部分が粉々に砕け鎧内部の異形種特有の肉体が露見している。

だが、決着には程遠い。

たっちはすぐに気持ちを切り替えると剣を構え直しドリルランスと打ち合う。

本来ならば不利な打ち合いだが、とっさの判断でドリルランスを弾いたたっちはさらにラッシュをかける。

 

「う、うおおおおおお!」

「ぐっ!」

 

すぐさま刀に切り替えラッシュに対して防御を行う。

が、後手に回ってしまったのが、勝敗を分けた要因だろう。

ほぼ満タンの体力すら一撃で削りきる攻撃が、ワールドチャンピオンには存在する。

 

次元断切(ワールドブレイク)!!」

「……っ!アイン!」

 

先ほどの逆である。一撃必殺に対してガエリオは防御ではなく回避を選択。

だが、遅かった。いや、防御ではなく回避を選択したのは間違いではない。ワールドブレイクの前では通常防御など意味を成さず、同じくワールドブレイクで相殺を狙うのも後出しでは分が悪い。

次元断層は諸事情で使えない。

となれば、回避を選択したことにミスはない。

 

結果回避しきれず、ガエリオの上の電光掲示板にLoseが出たとしても仕方がないことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

大会はたっちさんが優勝した。

言い訳するわけではないが、ワールドブレイク並の一撃必殺を避けるとかある?

しかも背後とってほぼゼロ距離だし、勝ったと思いましたよそりゃ。

そのまま殴っても十分なダメージだせるしなんならそっちの方が結果的に良かったのかもしれんけど……。

悔しいなぁ。

 

「あの、少しいいですか?」

 

ピコン♪と、チャット申請が飛んできたので名前を確認すると『モモンガ』『たっち・みー』『ウルベルト・アレイン・オードル』『ペロロンチーノ』となっていてさすがに驚く。

どうみてもアインズ・ウール・ゴウンのグループチャットじゃないか。

ま、まさか、PK(プレイヤーキル)されるのか……?

も、もちろん抵抗するぜ!(ドリルランス)で!

震えながら俺はグループチャットに了承し、参加するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

色々あったが、俺はアインズ・ウール・ゴウンに入り仲間たちと楽しい日々を過ごしていた。

ソロプレイでやっていたのは純粋にオーバーロードという作品の中で俺という異物が余計なことをしないようにという配慮と、冷静にほとんどのプレイヤーが貧困層の中キャラ愛があるとはいえじゃぶじゃぶ課金している俺は爪弾きにされるのではないかと思っていた。

確かにアインズ・ウール・ゴウンに入る入らないの時、リアルのことは明かさないという条件で入ったが、まぁたぶん金持ちなのは察されているだろう。

でも、そんなことは気にせずに接してくれて本当に嬉しかった。

リアルじゃどこ行ってもペコペコされることに、慣れすぎて当たり前になっていたが、人と人の関わりってそんなもんじゃねぇだろ。

……エリート街道を爆走してきた。優秀な部下とかは居たけど、友達は居なかった俺にはリアルより居心地のいい場所だった。

そんなユグドラシルも遂に終わりを迎えようとしていた。

単純に企業が利益を取れなくなってきたのだろう。

俺が企業に出資してもいいけど、そんなもので続けてもゲームの寿命が僅かに延びるばかりでなんの解決にもなっていない。

運営のイベントのマンネリ化とかに俺が口を出して、それを俺は楽しめない。そもそもそれなら俺が運営に回ったようなものじゃないか。

 

だがらこそ、ユグドラシル最後の日にモモンガさんには引退してた人との会話を楽しんでもらって俺は自室の書斎に来ていた。

入り口のすぐ横に立っている俺が作ったNPCに話しかける。

NPCに話しかけるなんて馬鹿らしいかなとも思うが、最後だと思うと言葉が止まらなかった。

 

「……マクギリス。これで最後になるわけだが、最後までよく守護してくれた」

 

マクギリス・ファリドは鉄血のオルフェンズに登場した人物であり、俺の作ったNPCはそのマクギリスの姿そのままだった。

アインズ・ウール・ゴウンのメンバーは各々想いを込めて制作している。

例えばペロロンチーノの作ったNPC『シャルティア・ブラッドフォールン』には自分の趣味のエロゲの設定などを反映している。

俺がマクギリスに組み込んだ設定の大きな部分は、『友である』こと。

ガエリオだからマクギリス。という安直な部分も確かにあったが、それ以上に俺が真に求めていたものはガエリオにとってのマクギリスのような存在であり、マクギリスにとってのガエリオのような存在だったのだ。

だから、俺はメンバーの力と課金力を駆使しマクギリスを産み出した。

 

「長々と話すと別れが辛くなるな。俺はモモンガさんのところに行く。……また、機会があれば必ず戻ってくる。それまでの、別れだマクギリス」

 

俺は『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を使い、モモンガさんのいるであろう玉座へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

「……で?」

 

と、かっこつけたは良いものの俺はどうやら異世界に転移したらしい。

そういうこともあるだろうとは思っていたが、精神状態はかなり落ち着いている。

むしろ種族特性で精神作用が無効化しているモモンガさんの方がこちらをチラチラと見てきて落ち着きがないように感じたくらいだ。

わかるよ、モモンガさん。俺がリアルに帰りたいんじゃないかと不安になってるんだよね。

モモンガさんは貧困層代表かのような典型的な貧困層の民……いや、失礼なのは承知だが、他に表す言葉が見つからない。

なので、愛するナザリックと生きていくことになんの不満もないのかもしれない。

……俺は、今は戻りたいという気持ちはない。

俺もそれだけ、ナザリックを、アインズ・ウール・ゴウンというギルドを愛しているから。

スッと机をなぞるとその手触りはリアルでは触ったことの無いほど上質な素材を使っているとわかる。

これに、なんか贅沢が付いてきたら二度とリアルに戻りたくなくなるかもな。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ!ガエリオ様!ペロロンチーノ様が認めた我が伴侶!」

「……え?」

 

第六階層に到達し、『第六階層 大森林』の守護者であり、ダークエルフの双子。金髪のショートカットであり男装をしているのが姉の『アウラ・ベラ・フィオーラ』女装をしているのが弟の『マーレ・ベロ・フィオーレ』だ。両者とも緑と青のオッドアイであり、双子で逆になっている。

仲良し姉弟の服装が男女逆なのは制作者『ぶくぶく茶釜』さんの趣味なのだろうか。キャラは立っているがリアルでは弟がいる茶釜さんの闇を感じる。

アウラやマーレと談笑していると<異界門>(ゲート)の靄の中から現れた銀髪赤眼ボールガウンの見目麗しい吸血鬼であり制作者はバードマンの『ペロロンチーノ』。

『シャルティア・ブラッドフォールン』が姿を現した。

やっぱりペロロンチーノの趣味嗜好というかエロゲ設定を盛り込まれたとはいえ、見た目は最高だな!

白蝋のような白い肌を仄かに赤く染めてすり寄るその姿……可愛すぎる。ドストライクです。

とか考えていたら抱き付かれて……え?伴侶?

 

「シャルティア?何を……?」

「あぁぁ~ガエリオ様の尊き香り……うへへへ」

 

可愛い。

いやいやいや、そうじゃない。

ペロロンチーノ……!一体何をしたんだ……!

 

「ちょっとシャルティア!ガエリオ様に失礼だよ!は、な、れ、な、さ、いー!!」

「うへへ、うへへへへ」

 

アウラがグリグリと俺の腹部に顔を擦り付けるシャルティアの肩を掴み引き剥がそうとするが、さすが総合値では守護者最強。

ステータスのごり押しでアウラに一歩も引かないか。

 

「モモンガさん」

「え?あ、ああ」

 

モモンガさんもあまりのことにフリーズしていたが、俺の言葉で我に変える。

どうやら精神作用無効が働くほどの衝撃はなかったようだ。

 

「シャルティア、落ち着け」

「……はっ!モモンガ様……大変失礼を」

 

急に体を離したものだからシャルティアの頭突きがアウラの鼻に直撃して苦しんでいる。

 

「大丈夫か?アウラ。見せてみろ」

「う、うぅ……ガエリオしゃま、そんなおふぃになしゃらずに」

 

アウラの手を退かし、頬に手をかけ鼻を指で触る。

頬も柔らかく、鼻も柔らかい。

が、どうやら鼻が折れていたりはしないようだ。

さすがはレベル100のNPC。

痛そうだったがそこまでのダメージはないみたいでよかった。

 

「が、ガエリオ様……」

「あっ!チビ助!ガエリオ様に何を色目を使ってるでありんすか!?」

「う、うぇぇ!?な、何を言ってるのさシャルティア!い、色目なんて……」

 

跳び跳ねるかのように俺から離れると、シャルティアに詰め寄られ、ゴニョゴニョと言い訳をするアウラ。

残念だがシャルティア。元はと言えばお前の頭突きのせいだぞ。

 

「ガエリオさん、まさかシャルティアに手を……?」

 

ジト目で見てきているのはわかるが、やめてくれ。

さすがに短時間にそういう行為に及んだとしたらとんだ凶行だ。

それにユグドラシルでは18禁行為は禁止されているので行ったことがない。

しかもクソ運営だがその辺の取り締まりはめちゃくちゃ厳しく、18禁行為は即アカウントBANというのが実態だ。

だからこそエロゲーイズマイライフなんてアホなことを掲げていたペロロンチーノは何度か危なかったが、なんとか引退までそのようなことは起こさなかったので円満に去っていったのが懐かしい。

 

「いや、たしかにペロロンチーノの作ったNPCだからよく見に行ったりはしていたが……というかそんな設定シャルティアにあったか?」

「たしかに、そうですね。あとで確認しようと思いますが、ペロロンチーノさんが設定を書き換えたんでしょうか」

 

伴侶と言われて嬉しくない訳じゃない。

ペロロンチーノがシャルティアを作ったときあまりにもドストライクすぎて、天才かと誉めちぎったことも記憶に新しい。

まぁ、シャルティアは置いておいて……マクギリスはどこへ行ったんだ。

階層守護者ではないが、俺の作ったNPCだから一応ここに呼ばれているはず。

しかも先に来ていたはずなんだが。

 

「騒ガシイナ。至高ノ御方ノ前ダゾ」

 

視線を声の方に移すとそこには蟻とカマキリを融合させたような姿に背中からは氷柱が何本か生えているのが見える。

制作者は武人建御雷『第五階層 氷河』の守護者『コキュートス』だ。

 

「コキュートス!シャルティアが!」

「コキュートス!チビ助が悪いでありんす!」

「……すまん、コキュートス。俺の責任だ」

「イエ!ガエリオ様ガ謝ルコトナド!」

 

コキュートスに合わせてシャルティアとアウラも謝り出すので収拾がつかない。

この空気は楽しいけどやりづらいな。

 

「おや、遅れてしまいましたか」

「申し訳ありません、モモンガ様」

 

現れたのは、階層守護者のまとめ役、守護者統括の『アルベド』。制作者は『タブラ・スマラグディナ』。その姿は黒髪を腰の辺りまで伸ばし、豊満な胸と女性にしては長身の身長はまるで一流の女優やモデルのようである。そして美貌は傾国の美女という言葉では足りないほどの容貌であり、頭部からは羊のような角、腰からは漆黒の天使の羽が非人間だと言うことを強く主張している。

もう一人は日焼けのような肌に丸眼鏡、黒髪オールバック赤のスーツと言った出で立ちは周囲にそぐわないが、銀色の尻尾と眼鏡の奥の瞳がダイヤモンドであることが非人間だと主張する。

彼は『第七階層 溶岩』の守護者であり、制作者はウルベルト・アレイン・オードルの最上位悪魔(アーチデヴィル)『デミウルゴス』。

 

「マクギリスはどうしたんだろう。モモンガさんは知ってますか?」

「たしかに居ませんね。ガエリオさんは知らないんですか?」

 

先に来ていると思っていたが、どこへ行ったんだ。

 

「アルベド、守護者と共にマクギリスを呼ぶように伝えたはずだが」

「はっ!申し訳ありません、モモンガ様。確かにマクギリスにはこちらに来るように伝えたのですが、実際に来ていないのであれば私の失態。なんなりと罰をお与えください」

 

そういうと恭しく頭を垂れ、まるで首を差し出すかのような姿勢になる。

モモンガさんもその忠誠心に動揺しているようだ。

しかしマクギリスは俺の作ったNPC、その罰をアルベドに与えるのは可哀想すぎる。

俺が罰を受けてもいいくらいの話だ。

 

「アルベド、頭を上げろ。マクギリスには追って罰を与えるので構わん。伝えてくれたならそれでいい」

「ガエリオ様……申し訳ありません」

「いや、いい。モモンガさんもそれで大丈夫か?」

「えぇ、構いません」

「……ご慈悲に感謝いたします」

 

すでにわかっていたが、忠誠心が凄い。

ちょっと怒ったら、本気で自害してしまうのではないかと心配になるほどだ。

マクギリスにはきつめの罰が必要だな。

 

「…それでは、我ら守護者の忠誠を至高の御方に」

 

改めて行われた忠誠の儀は正直言って過剰な物だった。

俺はまぁ、リアルでの事情もあり慣れたものだがモモンガさんは動揺しているのかスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを握り締め<絶望のオーラⅤ>を垂れ流している。

ここにいるのは全員大きな影響を受けないレベル100なので大丈夫だが、<絶望のオーラⅤ>は即死の効果がありスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの強化を受けた今の状態ならかなりのレベルまで即死させられるだろう。

 

「では、最後にガエリオさん。一言お願いします」

「うむ。俺は、アインズ・ウール・ゴウンを愛している。そして、ナザリックを、お前たちを愛している。だからお前たちの忠誠しかと受け取った。これからも励んでくれ」

 

そういうとリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで俺とモモンガさんは転移する。

簡潔になるが、自分よりも上の立場からの言葉というのは長々と聞くとプレッシャーになりかねない。

ないとは思うが、パワハラで自殺とかになったら去っていったメンバーに顔向けで気ないではないか。

一旦玉座へと向かい、今後のことを相談しようと忠誠の儀の最中にモモンガさんから<伝言(メッセージ)>が来ていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごかったねお姉ちゃん」

「うん、凄い迫力だった」

「モモンガ様も凄かったが、その隣で平然としていたガエリオ様も凄まじかったね」

 

マーレとアウラの言葉にデミウルゴスが同調する。

忠誠の儀が終わったあと、守護者同士の会話が始まったのだ。

 

「確カニ、アレダケノ力ヲオ見セニナッタアインズ様ノ隣デ平常ヲ保ツノハ大変ナコト。流石ハガエリオ様」

「それにしてもマクギリスはどこへ行ったのかしら……?私に恥をかかせるなんて、許せないわ」

「確かにガエリオ様の作られた者というのには会って見たかったでありんすが、それよりも……」

 

うへへと笑うシャルティアに視線が集中する。

 

「が、ガエリオ様が、わ、私をあ、愛しているって……うへへへへ」

 

涎を垂らし笑うシャルティアに周囲は呆れの色を隠せない。

ガエリオの言葉は確かに守護者の心に響いたが、『シャルティアを』とは言っていないのだ。

 

「こら!偽乳!シャルティアを、なんて一言も言ってなかったでしょ!?」

「むふふ。いいでありんすよ、チビ助。婚儀には呼んであげるでありんすえ。式の後には初夜……おっと、下着が大変なことに」

「アルベドー!この偽乳話を聞かないー!……アルベド?」

「あぁ……よくよく思い出すとモモンガ様……なんて素晴らしき力の波動……あらやだ、私も下着が……」

「えぇ……!?もー!やだこの二人ー!」

 

ナザリックの貴重な常識人アウラには、ロリ美少女吸血鬼ビッチと黒髪清楚系腹黒元ビッチのトリップを相手するのは中々荷が重いのかもしれない。

頑張れアウラ。

ナザリック守護者界隈の平和は君のその小さな肩に掛かっているだろう。




転生者というか転移者というか、まぁこの設定はあってもなくてもいい設定ですがガエリオとキマリスヴィダールをぽんっと出すよりはスムーズにことが運ぶので盛り込みました。
今後この設定が活きることはないと思うので、物語の導入部分の潤滑油くらいに思っておいてください。

それでは。
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