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「死ね」
俺は右手にドリルランスを取り出すと、全力で騎士の体目掛けて突き出す。
俺のマックスでの突きならたっちさんくらいしか対応出来ないが、まともなレベルなら反応してくるだろうと思ったが騎士はぐがっ?何て言う理由を持たない言葉を口から吐き出しながら胴体を爆散させた。
「……え?」
「な、なんだ貴様!」
その言葉に俺は反応を返さず力一杯拳を突き出すと、当たった頭部は跡形もなく消し飛んでしまった。
怒りに染まる脳内に冷静な部分が生まれ思考する余裕ができると、一つ言葉が浮かぶ。
弱すぎる。
「あ、あ、あ」
「だ、大丈夫!ネムは私が守るから!」
少女達の声に視線を向けると少女達の前に
再び警戒して見つめると中から出てきた見慣れた骸骨に警戒心が自然と溶ける。
「ガエリオさん!大丈夫ですか?」
「あぁ、見ての通りだ」
ドリルランスで騎士の死体を指すとなるほどとモモンガさんも納得したようだ。
「どうやらこの騎士達はガエリオさんなら十分対処できるレベルのようですね」
「ドリルランスはともかく、拳にすら全く反応してなかったからな」
「いや、レベル100の近接職の拳は十分凶器ですよ」
たしかにそうか。
だが、それにしてもだ。
「恐らくレベルは50未満下手したら30にも満たないだろうな」
「……警戒するには越したことないですね。その程度なら大丈夫だとは思いますが気を付けてくださいよ」
「あぁ」
ふと視線を少女達に向けるとびくりと体を震わせ、先程ネムと呼ばれた少女を姉だろうか年上の少女が強く抱き締める。
どことなく似ているので恐らく姉妹だろう。
俺はドリルランスを消し、座り込んでいる二人に目線を会わせる。
「大丈夫か?」
「た、助けてくださりありがとうございます」
「ありがとうございます!」
姉の方は怪我をしているが、妹の方は元気そうで何よりだ。
俺はそっと姉の頭に手を置くとわしわしと撫でる。
驚いたように目を見開くが、先程の光景を見ていたので抵抗はしてこない。
もちろん何かするつもりもないが。
「妹を守るために立ち向かったのを見てたぞ。……よくやった」
「え?」
「姉妹か?」
「はい」
「……そうか。俺はお前の行動を高く評価する。よくやったな」
「っ!?」
もう一度強く撫でると、姉の方は泣いてしまう。
緊張の糸が途切れたのだろう。
妹の方も姉に釣られて泣き出してしまった。
困ったようにモモンガさんを見ると、いつの間にかフルフェイスの全身漆黒の鎧を纏った騎士が一緒に立っていた。
「アルベドか」
「はい、アルベドでございます。準備に時間がかかり申し訳ございません」
「いや、構わない。俺がモモンガさんに無理言ったんだ」
「それで、そこの下等生物は如何なさいますか?ガエリオ様のペットになさるのであればこちらで調教も辞さないですが」
ジロリと殺気に近い視線を向けられた姉妹は泣くのを辞め、また震えてしまう。
下等生物、ねぇ。
「アルベド」
「はっ!モモンガ様!」
「ガエリオさんは村人を助けに来たのだ、脅してどうする」
「その通りだ。むやみやたらと威圧するな」
「……申し訳ありません」
シュンっと落ち込み肩を落とすアルベドをよそにモモンガさんはアイテムボックスに手を突っ込み
「怪我をしているのか。これを飲むといい」
「……」
完全に怯えている。
まぁ見た目は凶悪なアンデッドが、血の色をした謎の薬を飲ませようとしているようにも見えるから仕方ないか。
俺の仲間というのは分かっているだろうが、アルベドが殺気をぶつけたことで少しややこしいことになっている。
「大丈夫。見たこと無いのかもしれないが、治癒のポーションだ。傷、痛むだろ。少しは楽になるはずだ」
「は、はい」
モモンガさんからポーションを受けとると一息に飲み干してしまう。
見た目は薬に見えないからな。
だが、効果がユグドラシルのままならば治癒の効果があるはずだ。
「……え?傷が、治った?」
「ふむ。効果があってなによりだ」
「……俺は村に向かう。この程度の相手なら物の数じゃない」
「それは構いませんが、顔は隠した方がいいですよ。どこで何があるか分かりませんから」
顔か。ふむ。
俺もアイテムボックスから一つの仮面を取り出す。
後頭部から顎までを覆う黒に、顔全面を隠す銀。
前を見えるように目元に二本の穴が開いている。
「これでいいか」
「……嫉妬マスクは無いんですか?」
「嫉妬マスク?いや、持ってないな」
「……ふーん」
あれの取得条件ってなんだろう。
まぁいいか。
俺はマスクを被り、モモンガさんたちに背を向ける。
「先に行く。その姉妹のことは任せた」
「わかりました。くれぐれも気を付けてくださいね」
「あ、あの!私の両親が居たら助けてください!お願いします!」
「お願いします!」
頭だけ向けると姉妹は俺に土下座の姿勢をとり、頭を下げている。
いい子たちだ。
「わかった。生きていれば必ず助ける。いいな?」
「はい、ありがとうございます!」
俺は全力で踏み締め、駆け出す。
レベル100の近接職の速度は、比喩ではなく音を置き去りにした。
「な、なんだあいつは!」
村の真ん中に集められた人を取り囲むようにいる騎士に走って近寄り、ドリルランスを振り回す。
やはり俺の攻撃に対応できるレベルは無いようで、端から粉々になっていく。
「誰か止めろ!相手は一人だぞ!?何をモタモタしている!」
一際声がデカいだけのゴミが居るようだが、うるさいだけだ。
俺の攻撃力ならランスが当たりさえすれば、こいつらは一撃。右から来るやつに当て、そのまま回転するかのように同時に攻めてきた騎士を巻き込み殺す。
そしてさらに一薙ぎすれば時間差で攻撃してきた騎士を両断する。
「あ、あぁ!わかった、金だな!?あいつを止めた者に金貨300枚だ!」
「……」
あいつ、ただの騎士じゃないのか?
「俺はこんなところで死んでいい人間じゃないんだぞ!?俺は、選ばれた人間なんだ!こんな、村民ごときゴミとは違うんだ!わかったら早くやつを殺せ!殺したやつには金貨500枚だぁ!!」
俺は、怒りで頭がどうにかなりそうだ。
すぅっと空気を胸一杯に吸い込み、怒りに任せて大声を出す。
「黙れ!!!」
俺の大声にびくりと体を硬直させる騎士達。
「このぉ……ゴミがぁぁぁぁぁ!!選ばれた人間だと?村人ごときゴミだと?お前がゴミだと言った人間達に選ばれてこそ、選ばれた人間なんだろうがァ!!」
ギリギリとランスの柄を握り締める。
こんな非道が、許されるわけないんだ!
「は、ははは!偉そうに!なんだ、金がほしくて説教か?どうだ?俺に付け。その力、俺が買ってやる!金貨1000枚、っだ!?」
俺はランスを持っていない左手でそいつの頭を握っていた。
一言一言が相容れない。
何を言っても無駄なのだ。
だから……いや、最初からこいつらは皆殺しにする予定だったな。
少しずつ力を込めていくと苦しみの声をあげる。
「や、やめ、止めてくれ!金なら」
「いくらだ」
「1000!いや2000だ!」
助かると思ったのか嬉々として枚数をつり上げる。
好きなだけ喜べ。
それが、最後の言葉だ。
「2000だな?」
「あぁ!2000だ!」
2000というのがどれだけの金額なのか検討も付かないが、ただ一つだけわかることがある。
「お前程度が差し出せる金額なら、大したことはないんだろうな」
「へ?」
「お前の命の金額だよ」
左手に力を込め、頭を握り潰す。
筋力が上がったからだろう。卵よりもさらに柔らかい殻を割り、そのまま中身まで潰したような感覚だ。
温かな液体を振り払う。
俺と貴族らしき男のやり取りを見ていた騎士達は動揺しているようで動きがない。
「っ!撤退だ!馬をこちらへ連れてこい!一部は足止めだ!」
「……一人も逃がさん」
その後はモモンガさんとアルベドが現れ村長とモモンガさんが話をしている。
モモンガさんは辺境の地で研究していた
うん、まぁ間違ってないな。
亡くなった村人の葬儀も終わり、そろそろ帰ろうかみたいな雰囲気になったころだ。
「騎士風の人達が向かってくる?」
「えぇ。それで私たちはどうしたらいいか……」
「モモンガさん」
「……わかりました」
さすがモモンガさん。
そうでなくとも態々守ったものを破壊されるのを良しとするバカなどいないだろうけど。
しかし駆け付けたのは王国戦士長なる役職の人物だ。
名前はガゼフ・ストロノーフ。
部下らしき戦士とは一線を画す雰囲気に部下と同じ鎧を纏っているが、腕などの太さなど戦士としては明らかに鎧と釣り合いがとれていない。
恐らく本来の装備ではないのだろう。
村人を救ったという事実を教えた際の雰囲気、そして目からも見てとれる優しさなど、人の上に立つべき人間の器だ。
目を見れば人としての本質がわかる。
優秀な人材は何にも変えられないものなのだ。
「随分と恨まれているのですね、戦士長殿は」
「次から次へと、この村にとっては厄日だな」
「えぇ、ですから私に雇われませんか?望むだけの報酬を約束しよう」
俺はいいけど。
正直死なせるには惜しすぎる。
「いえ、お断りします」
「……そうか。では、厚かましいが、もう一つのお願いだ。この村を、守っては頂けないだろうか。この通りだ」
そして膝を折り、土下座の姿勢をとろうとする戦士長の肩をモモンガさんが押し留める。
「その願い、確かに聞き届けました」
「あぁ。任せてくれ」
「それと戦士長、これを」
「……これは?いや、貴方ほどの御仁からの贈り物だ。大事にさせてもらおう」
あれはたしか、500円ガチャのハズレアイテムのはず。
人と人の場所を入れ換えるアイテムだったか。
言わずもがな普通にゴミアイテムだ。代わりを探せばいくらでも出てくる程度の代物だ。
「……モモンガさんあの人の事結構気に入ってるでしょ」
「なんのことかわかりません」
「またまたー。もしなんなら俺が出てっても良かったけど」
「ガエリオさん。たしかにたっちさんと同じくらい強いガエリオさんなら大抵の敵は大丈夫でしょう。それにヴィダールも出せるようになってるんですよね?……ですが、我々はこの世界に関して余りにも無知です。知識は力。ぷにっと萌えさんも戦いとは始まる前に終わっているという言葉を残してくれてます。……ユグドラシルと同じモンスターが出てきた以上、これからはさらに油断なくいきましょう」
モモンガさんのぐうの音も出ない正論にさすがに黙るしかない。
たしかに怒っていたとはいえ、短絡的すぎたのは否めない。
「それは、あの男を捨て駒に使ったということでしょうか」
「それは違うぞアルベド。先程渡したアイテムは両者の位置を入れ換えるものだ。殺すには些か惜しい人材ゆえ、慈悲をくれてやったのだ。様子見をしたあと此方から出向こうではないか」
「なるほど、現地にて使える駒として運用するために恩を売るわけですね!さすがモモンガ様!私の愛しい御方!」
くふーっ!と興奮を押さえられない様子のアルベドをモモンガさんは無視し、俺へと視線を向ける。
「とにかく、少しばかり俺も怒ってます。……まぁ、たしかに最良かはともかく周辺事情を知るにはいい機会でした。しかし、次からは感情に流されないようにお願いしますね!」
「……了解」
「……はぁ。ガエリオさんは一旦ナザリックに戻っていてください。こちらは俺とアルベドで対処しますから」
え?
「大丈夫なのか?」
「見ている限り大した相手ではないです。俺とアルベドなら余裕でしょう」
「はい。私とアインズ様の二人の愛の力でどんな困難も立ち向かって見せます!」
「アインズ様?」
あー、うー、と突然歯切れが悪くなるモモンガさん。
そういえばさっきも名乗ったときアインズ・ウール・ゴウンって言ってたな。
「……すいません、ガエリオさん。他にもメンバーがいるなら分かりやすいように名前にギルド名を使わせて貰いました。ほら、モモンガってのは、ねぇ」
「なるほど。俺は今まで通りモモンガって呼ぶけどいいですか?」
「はい、大丈夫です。外では出来るだけアインズでお願いします」
モモンガって小動物だし、格好付けたいのはわからなくはない。
名前一つとっても噂になれば上等だ。
「名前はさておき、<転移門>を開きますのでナザリックで待機しておいてくださいね!わかりましたか?」
「……了解。アルベド、モモンガさんのこと頼むぞ」
「はい!アインズ様のことは命に替えても御守り致します!」
全員に同じこと言うのは疲れるから、統括であるアルベドを通して全員に伝えてもらうか。
「アルベド」
「はい、なんでしょうか。ガエリオ様」
「他のシモベにも伝えてほしいが、命に替えるのは本当に最後の手段にしろ。モモンガさんは当然一番大事だが、俺もモモンガさんもお前たちのことだって大切なんだ。……わかったな?これは、命令だ」
「……はい。慈悲深きお心遣いに感謝致します」
「その通りだ、アルベド。決して忘れるでないぞ。それではガエリオさん。<転移門>!」
現れた転移門に俺は踏み込むと、一瞬で玉座の間へと移動していた。
さて、何をするかな。
「ユリ」
「はい」
ユリ・アルファ。戦闘メイド『プレアデス』の一人でその副リーダー。プレアデスの長女であり種族は『
キッチリと決められたメイド服の上からでもわかる豊満な胸、例に漏れず美人という言葉の枠では収まりきらない美しさ。
メガネを掛けていて、髪の毛は夜会巻きにしてある。
「ルプスレギナ」
「はい」
ルプスレギナ・ベータ。プレアデスの次女で、種族は『
褐色の肌に赤の髪の毛は三つ編みにしてある。
前にメコン川さんに聞いたときにはたしかイタズラ好きで、人を驚かせたりするのが好きだったはずだ。
「ソリュシャン」
「はい」
ソリュシャン・イプシロン。プレアデスの三女。種族は『
「ナーベラル」
「はい」
ナーベラル・ガンマ。プレアデスの三女でソリュシャンとは双子になるのか。種族は『
「シズ」
「はい」
シズ・デルタ。正式名称は『
「エントマ」
「はい」
エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。他のプレアデスと違い見た目は人だがよく見ると人感が薄い。それもそのはず、種族は『
能面のような顔は美しく、髪の毛はシニョンと呼ばれる髪型で触覚が生えている。
うーむ。プレアデスのリーダーであるセバスはいないが、こうやって並んでいるのを見ると壮観だ。
大きな用事がないため彼女等はお茶会をしていたらしい。
俺、モモンガさんとアルベドが出撃した段階でナザリックは厳戒警戒態勢になったのだが俺が解除した。
贔屓目に見たとしてナザリック最強の戦力は俺なのだ。
一応シャルティアに連絡を取り、上層部は未だに強めの警戒態勢だが下層部のシモベには簡易的な休みを与えている。
モモンガさんとも話したが、休みを与えないと永遠に働き続けるのだ。
労働力としては最高だが、友人の娘や息子が自分のために休まず働いているなどこっちが悲鳴を上げたくなる。
そんなわけで顔合わせを兼ねてプレアデスたちのところへやってきたのだ。
「さっきまでと同じように座ってくれ」
「いえ、至高の御方で在らせられるガエリオ様を差し置いて座るなど我々には出来ません。更には我々はメイド、ガエリオ様に尽くすことこそ幸せでございます。こうして出向いて戴いたことが既に至高の幸せ。是非ともガエリオ様に尽くすことを御許しください」
「私たちも同じ意見でございます」
うんうんと頷くメイド姉妹。固い。
意識改革は必要だろうな、これは。
モモンガさんも困ってたことだし、後々に残すより少しずつ改善していく方がいいな。
「お前たちの気持ちはありがたく受け取ろう」
「はっ!ありがとうございます」
「待て」
跪こうとするプレアデスを止める。
「立ったままでいい」
「いえ、そのような失礼を働くわけにはいきません!」
「その心意気はさすがはナザリックの戦闘メイド、プレアデスだ」
嬉しそうに頬が緩むプレアデス一同。
ユリのクールな普段とのギャップなどこっちが墜ちそうだ。
「だが、タイミングを見極めなければならない。わかるか?」
「申し訳ありません。無知な我々プレアデスにご教授戴けないでしょうか」
「構わん。いいか、ユリ」
そう言うと俺はユリの手を引き抱き寄せ、腰に手を回し片手を頬に添える。
困惑したような瞳に驚愕の表情。白い頬に朱が差す。
俺もユリの美貌に多少の動揺はありつつも噛み殺し、続ける。息が掛かるような至近距離で眼を見つめ、次の言葉を紡ぐ。
「な、ななな、ななな!?ぼ、僕はシモベで」
「例えばこの場でお前を好き放題すると俺が言うとしよう。どうだ?」
「し、至高の御方のお言葉であれば」
「いや、そうじゃないな。妹達の前で好きにされるって、どうだ?ユリの言葉を聞かせてくれ」
ぷるぷると震えながら目を白黒させ、困ったようにプレアデスに目配せをする。
助けて欲しいのだろうが、このセクシャルなハラスメントには理由があるのだ。許せ。
「こ、困ります」
180点。目を反らし、俯きながらのその弱々しい言葉は100点を越え、120点すら超越し、180点となった。
満点は100点でだ。
スッと腰から手をはずし離れる。
「だろう。俺も同じさ。……いや、ユリがどうこうではなくてな」
ゴホンと一つ咳払い。
「つまり、俺やモモンガさんは休めと命令を出した。そして休んでいるところに俺が現れたからといって無理に仕事しなくていいんだ。何が言いたいかわかるか?ルプスレギナ」
「え?あ、はい!失礼しました!休めるときに休んでおけ、ということでしょうか」
「そうだな、それもある。ソリュシャン」
「はい。休めと言っているのに仕事を優先されてしまうと至高の御方がお困りになられるということでしょうか」
「さすがだな、ソリュシャン」
「ありがとうございます」
まぁ、セクハラする必要はなかったんだけどね。
その前のユリの所作が可愛すぎた。
……いや、それにしてもこんなに欲望に忠実だったか?
少なくとも可愛い女の子が居るからといってあんなに軽率に抱き締めたりはしない人間だったはずだが。
今は悪魔だけど。
「ユリ」
「ふぇ?あ、え、いや、はい。申し訳ありません!ガエリオ様!」
「……いや、不快にさせたのは俺のミスだ。構わん。とにかくだ。モモンガさんも同じ事を言うと思うが配下の必要以上の無欲は支配者を不快にさせると知れ」
「失礼ながらガエリオ様。発言をよろしいでしょうか」
ナーベラルか。自発的に質問するのは非常に良いことだ。
「いいぞ」
「ありがとうございます。私たちプレアデス及びシモベは至高の御方に仕えることこそこの上ない喜び。私たちにとって今回のような事例は無欲とは成り得ません。ですので、無知な私どもに今回のような事例を無欲と判断された要因をお教え願えればこれ以上ない喜びにございます」
ワーカーホリックすぎる。いや、ブラック企業に心まで汚染されているというべきか。
……違うな。純粋なんだ。本当にナザリックのために働くことが幸せだと、それだけが幸せだということしか知らないんだ。
設定を与えられ、その通りに命が与えられ動き出した彼女等にはこれからは多くのことを教えなければならない。
モモンガさんとも話をしなきゃな。
俺は、無知な娘に言葉を授けるように、親戚の子を慈しむように、自然とナーベラルの頭を撫でていた。
「が、ガエリオ様?」
「いや、いいんだナーベラル。素晴らしい質問だ。ナーベラル、姉妹でいるのは楽しいか?」
「はい。姉妹で過ごす時間は心地よく感じております」
「そうか。ならば、それが俺に休みを与えられたお前たちが享受し、楽しまなくてはならない欲だ。そして俺とモモンガさんはそれを望んでいる」
「!?なるほど、申し訳ありませんでした」
頭から手を離し、席に目を向ける。
「さて、長々と話して悪かったな。せっかくの休みなんだ。楽しく過ごしてくれ」
「はい。では、お茶会を再開したいと思います」
俺は苦笑いを隠しきれずに笑ってしまう。
そんな事務的なお茶会ある?
まぁいいけどさ。
「俺も混ぜてもらって良いか?色々お前たちと話もしてみたいし」
「!?……では、おもてなしさせていただきます!」
席順は時計回りにユリ、ルプスレギナ、ソリュシャン、ナーベラル、エントマ、シズの並びだ。
俺はユリとシズの間に入れて貰う。
順番的にも最後尾に着く形だな。
「……」
全員分の無言が続き、俺もどうしたらいいかわからない。
静寂を破ったのはソリュシャンだ。
いいぞ!いいタイミングだ。
「が、ガエリオ様!」
「どうした?」
「どうぞ、お茶を注がせていただきます!!」
「あぁ、気にするな。自分でやるさ」
位置的に少し離れているのでと遠慮したのだが、落ち込んでしまった。
くっ!上位者としては間違ったか?
アットホームなナザリックを目指しているんだがなぁ。
「ガエリオ様は距離を気にしていると思う。私が入れます」
「シズの言うとおりだ。ソリュシャン、気にするな。シズ、頼めるか?」
「わかりました」
シズはメイドらしく丁寧な入れ方で紅茶を入れてくれる。
高級な紅茶のいい香りだ。
「ありがとう、シズ」
「いえ、当然のことですので」
「あぁ、あと、今は俺が無理を言って話す時間をとって貰ったんだ。無礼講だから多少普段と違う失礼な態度をとっても構わないぞ」
別にタメ口でも俺は構わないが、ナザリックを統べる上位者の二人のうちの片方が俺である以上嘗められる訳にはいかない。
だが、今はナザリックアットホーム化計画(仮)の準備中なのだ。
休みのときであり、俺がお邪魔しているのだから今は無礼講で構わないだろう。
「そ、そんなことは我々には……」
「ユリ姉、それじゃまたガエリオ様にお説教されるっすよ?」
「ルプスレギナ!ガエリオ様の前でそんな……!」
「いや、限度さえ弁えればそれでいいぞ」
「ではガエリオ様!質問があるっす!」
いいぞルプスレギナ。
そのフランクな感じ、高評価だ。
「もしも妃にするなら、プレアデスの中ならだれがいいっすか?」
時が、止まった。
前話
???「ヴィダールを出す」
敵が弱すぎてヴィダールは出ませんでした。
別のヴィダールは出ましたが(笑)
そしてプレアデス。
プレアデス可愛いのでもっと絡みを増やしたいです。
最後のルプーの爆弾投下。
ガエリオの明日はどっちだ。
次かその次か、その次くらいに主人公の設定投下。
ガエリオ・ボードウィンというキャラメイクしたキャラになった別人だということを念頭においてこの作品はご覧下さい。