転職やら引っ越しやら忙しかったところに某ウィルスで中々執筆時間が取れませんでしたがなんとか続きが書けたので投稿再開します。
「……質問に質問で返すことになって申し訳ないのですが、モモンガさんはどうですか?」
リアルに帰りたいかという質問は、俺にとっては少し難しい質問だ。
リアルが充実していなければ、この不思議な体験に身を任せてこのままの人生を享受するのがいいだろう。
だが、惜しくもというのは貧困層の人には随分な言い分だろうか。
俺は恵まれているのだ。
だから、考えが纏まっていない。
答えを先延ばしにするために、モモンガさんに聞き返す。
「俺は、このままナザリックの子供達と生涯を共にします。不老なので、何かしらの事情で滅ぶまでという条件付きですが」
ヘルムを消したモモンガさんの赤い光を灯した眼光が、その意思の強さを表すかのように強く燃え盛り俺を射ぬく。
その目の強さに圧されるが、俺は友の心の強さに負けじとヴィダールの仮面を消ししっかりと目を見る。
ここで退いては、いけない気がした。
「それで、モモンガさんはいいんですか?」
「えぇ。俺には家族も、恋人も居ませんから。それにブラックギリギリの会社でギリギリ生活できる金銭を稼ぐだけの人生なら、ナザリックの方が、何倍も大切です」
もう一度、モモンガさんの眼光が光る。
紛れもない覚悟の光だ。
誰かに強要されたわけではない、強い自我の光。
「ガエリオさんは、どうですか?」
「……俺は」
答えに困る。
だから俺は、強く歯を食い縛り、思いの丈をぶつけることにした。
「嘘をつきたくないから、本当のことを言います」
「……はい」
「俺は、どうしたらいいかわからないままここにいます」
いや、自分を肯定するわけではないがこれからのすべてがこれで決まってしまうとなったら誰が迷わず答えられる。
……これは、逃げなのか。
モモンガさんがはっきりと答えを出したことで俺の気持ちが強く揺れているのがわかる。
「俺は……俺は、リアルでは、経済を動かすほどの金持ちでした。……想像が出来ないかもしれませんが、貴族というやつです。だから、仮にリアルに戻っても俺は何不自由なく、何事もなかったかのように生活していくんだと思います。……だから、答えが、今ここでは出せません」
「ガエリオさんにとってナザリックは、大切ではないのですか?」
「そんなことはない!断じて違う!モモンガさんと一緒にいるのは楽しい!守護者が俺のことを心配して声を掛けてくれるのは嬉しい!プレアデスとお茶をしたのも、楽しかった!だが、それでも……今、ここで選択することは、あまりにも難しすぎる……!」
爪が皮膚に食い込み、出血したことの痛みでそれだけの力で拳を握りしめていたことを知る。
どちらが、一番大切かではない。
リアルに戻っても、大丈夫だという安心感が、ナザリックが全てだという思考に繋がらないのだ。
俯いている視線を上げ、モモンガさんを見る。
感情は読み取れないが、何か考えているのだろうか。
「なら、それで構いせんよ」
「え?」
「もし、答えが出たら必ず最初に教えて下さい!それまでは、楽しく過ごせばいいじゃないですか!」
「モモンガさん」
ユグドラシル時代なら笑顔マークのアイコンが出ているような優しげな言葉に俺も笑みを浮かべる。
「えぇ、その時は必ず」
「……俺は、どうしたいんだ」
真っ暗な宿屋で独り言を言うモモンガ。
ガエリオの告白を聞いたモモンガの心は、濁っていた。
「一緒にいてほしい。ずっとここにいましょう。……あの時と同じだ。……また、言えないまま終わってしまうかもしれない」
脳裏に浮かんだのはヘロヘロに対して言えなかった『せっかくだから、最後までいませんか?』の一言。
「これで、俺が言えなかったからガエリオさんまで去ってしまったら……どうすればいい」
いや、ガエリオさんは俺を見捨てたりしない。
そもそも他のメンバーも、アインズ・ウール・ゴウンを捨てたわけではない。
分かっていても、心を満たす怒りと仲間への渇望は消えたりしないのだ。
「ガエリオさんは、これから考えると言ってた。……だから、失望されないように、ナザリックを、見捨てないようにしないと」
そう溢すモモンガの目は、強く輝いていた。
「シャルティア!少しは自重しないと解任だぞ!」
「懐妊……?ついに私は初めてを……!!」
貞操を賭けた深夜の抗争は人知れず終戦を迎えたので、ちゃんとシャルティアを叱っておく。
しかしなにやら勘違いしているようだが。
「シャルティア様」
「あぁ?ユリ!私とガエリオ様の会話に口を挟むとは――」
「こら!」
「も、申し訳ありません!ガエリオ様!」
「失礼ながらシャルティア様。懐妊、つまりご妊娠ではなく解任、つまり任を解かれるという意味かと思います」
「……え?」
あぁ、そういう勘違いね。
俺は頭を抱えると、小さく溜め息をつく。
「シャルティア。気持ちは嬉しいが、自重してくれ。俺たちは遊びでこうやって外に出ている訳じゃない。例えばアルベドやアウラが任務で外に出ていて遊んでいたらどうする?」
「殺すでありんす」
「……まぁ、怒るということだな」
「任務と偽り遊び呆けるなど至高の御方に対する冒涜でありんすから、死をもって償うのが正しい行いだと思いますえ」
「そうだ。殺すのはやりすぎだが、俺の寝込みを襲うのは任務か?」
「うっ!」
自分の発言の矛盾に気付いたシャルティアは顔を青くさせプルプルと震え出す。
まるで脅しているようだが、守護者の責任感はともかくとして所々欲求が前面に出てくるのはいけない。
「いいか。あくまでも任務は護衛兼冒険者としての相棒だ。ある程度は自由にしても構わないが……あー、いや、すまんやめておこう」
「ガエリオ、様……?」
ナザリックの者達に対して最近は怒りすぎか。
いや、貞操を守るためには必要な事だと分かってはいるんだがどうも感情的になってしまう。
そもそもシャルティアが俺のことを好きだということを多分に含んだ視線で見ているのは分かっていたことだ。
俺がどこかではっきりさせないからこんな事態が度々起こるわけだしな。
モモンガさんもアルベドの過剰な接触に困ってるって言ってたし、そろそろ何か対策を考えるべきかもしれないな。
「とにかくだ。抱くとか抱かないとかそういう感情は今は無しだ。未知の土地で俺たちは無知なのだ。今はナザリックを守るため、情報を集めることが第一。わかったな」
「……はい」
シュンとしてしまったがこればかりは今どうこうできる問題でもないからな。
可哀想だが、しっかりとしてもらわないと困る。
「あと、俺のことはヴィダールだ。昨日は感情的になったときにガエリオと呼んでいたが次からはなにかしらの罰を与える。いいな」
「わかりんした」
「ユリも、細かいフォロー頼むぞ」
「畏まりました」
部屋を出てモモンガさんと待ち合わせをしていた冒険者組合へ向かう。
相変わらずジロジロと鬱陶しい視線だが我慢して冒険者組合までたどり着いた。
二階にいたモモンガさんとナーベラルとは別の冒険者が一緒にいる。
ナーベラルは俺たちを見つけると頭を下げようとするので手で制しておく。
「モモン、ナーベ」
「ガ、ヴィダールさん」
「これは、ヴィダール様!お出迎えもせずうっ!!?」
主従関係をバレないように頼むように言ってあったが、素が出てモモンガさんに拳骨を落とされてしまう。
ユリに視線を向けると呆れの視線を冷たく送っている。
姉妹仲はいいのだろうが、仕事は仕事と割り切るナザリック特有の空気だ。
でもモモンガさんも間違えかけてましたよね。
「まぁまぁ。二人とも、おはよう」
「えぇ、おはようございます」
「おはようございます!」
「おはようでありんすえ、モモンさん」
「おはようございます。モモンさん、ナーベ」
挨拶を一通り終えると一緒にいる冒険者に目を向ける。
「モモン。そちらの方々は?」
「あぁ、我々が困っているところに声を掛けてくれた優しい冒険者の方々ですよ」
「初めまして!俺達は冒険者チーム『漆黒の剣』です。私はリーダーのペテル・モークです」
ペテルという青年は金髪に碧眼と街中でもよく見かけた人種だ。
強い力は感じず、雰囲気のいい好青年といった感じ。
「そしてこいつがチームの目と耳、レンジャーのルクルットです」
「はぁい!ナーベちゃん!あとそちらの、えっと」
「失礼。自己紹介の途中になってしまうが軽く自己紹介をしたほうが良さそうだな。俺はヴィダール。ドレスの彼女がシャルティア、そして眼鏡の彼女がユリだ」
「んー!美しい名前!ナーベちゃん!シャルティアちゃん!ユリちゃん!」
「……ハリガネ虫ごときが」
「潰すでありんす」
「お戯れを」
俺とモモンは視線を会わせて肩を落とす。
やはり人選ミスか?いや、ユリは大丈夫か。
「ルクルット!すみません、うちのメンバーが」
「いえ、構いませんよ。ただ、本人達があまりそういうのに乗り気ではないので自重してくだされば幸いです」
ペテルは苦労人っぽいな。
いや、メンバーからの信頼があるからメンバーが伸び伸びやれているという考え方もあるか。
「ありがとうございます。では、続きを。彼が
「よろしくお願いする」
ダインと呼ばれた男は恰幅のよく髭を蓄えた外見的には年齢を重ねていそうな雰囲気だ。
温厚そうで好感度が高い。
「そして、彼がうちの
「……よろしく」
濃い茶色の髪と碧眼であり、中性的な美しさを持つ少年……だろうか。
うっすらと目を細め、睨むような視線にこちらは目を逸らす。
なにかしてしまっただろうか。
「ペテル、その恥ずかしい二つ名は辞めません?」
「え?良いじゃないですか」
「こいつ、タレント持ちなんだ」
「ほう」
モモンガさん達はタレントの話で盛り上がっているが、ニニャと呼ばれた少年が俺を睨んでいるので、隣のシャルティアの視線がえげつないことになっている。
殺気こそ飛ばしていないのは単純にニニャから明確な敵意が見えないからだろう。
だが、一触即発とまではいかないもののタレントの話をしているペテルやルクルット含めた漆黒の剣のメンバーの顔色も良くない。
なにがなにやらわかったもんじゃない。
「シャルティア」
「っ!?が、ヴィダール様!?」
小さくシャルティアに声をかけ、頭に手を置く。
辞めろと言うと話が拗れそうなので行動に出てみたがこれは逆効果か。
ぽわぽわしているシャルティアは放っておいて会話に加わる。
「なにやらそちらにも事情があるようだが、もしアレなら俺達は退散するが」
「……すみません。ニニャ」
「……すみません」
「いや、構わないさ」
しかし、どうして敵意にも似た感情をぶつけられたのだろう。
「すいません!モモンさん!ご依頼が入っております!」
「え?」
昨日冒険者登録したのに、個人を指名しての依頼?
依頼者は金髪の前髪を伸ばした少年『ンフィーレア・バレアレ』。
エ・ランテルで薬師をしているらしく今回はポーション生成などに使う薬草を取りに行くのでモモンガさんたちに道中の護衛を頼みたいようだ。
新米冒険者に頼むのも、安く、さらにはいつもの冒険者が別の依頼で出てしまっていると、一応の理屈は通っている。
モモンガさんの冒険者姿であるモモンは確かに強そうだし、ここで繋がりを作っておくのも悪くはないだろう。
モモンガさんは漆黒の剣と協力し依頼を受けるらしく、そうなると俺たちは邪魔だろう。
「ヴィダールさんはどうするんですか?」
「漆黒の剣にモモンたちもいるのなら俺たちまで行くのはおかしいだろう。依頼を受けたのはモモンだし、薬草を取りに行くくらいで3チーム合同はやりすぎだ。大人しく別の依頼を探すさ」
「たしかに、この依頼で3チームは多いですね」
「ならそこのボウフラ達が辞めればいいだけの話では?」
またとんでもないことを言い出したな。
「ナーベ。モモンが漆黒の剣と協力し依頼をやると言っているんだ」
「……申し訳ありません」
不満がありありと顔に出ているが表面上は納得してくれたようでなによりだ。
剣呑な雰囲気を少しは隠してほしいが。
「……すいません。もしお邪魔なら我々が抜けましょうか?」
「いや、ナーベには私からも注意しておきます。せっかく誘っていただいたのにそれを断り、別の依頼を他の人と請けるなど許されない行為です」
「そうですか。なんか申し訳なくて」
ペテルいい人だな!
苦労人のような雰囲気も出てるし頑張ってほしい。
「じゃあヴィダールさんはこの後どうするんですか?」
「俺たちは王都に戻るとするさ」
「王都にですか?」
「あぁ。モモンはエ・ランテルで冒険者をやるようだが俺たちは王都の冒険者だ」
「なぜわざわざ別の場所で……」
ペテルの疑問ももっともだ。
だが、情報を集める上でそこそこの立場が必要な上戦力が固まりすぎはよくないから別れる……とは無関係な奴等には口が避けても言えないか。
「俺たちには目的があるからな。情報収集をするなら固まってるよりいいだろ?」
「その通りです。特にヴィダールさんは私が尊敬し、戦士として到底追い付くことのできない高みにいますからね。同じ場所で冒険者をしては仕事を取られてしまいます」
「ははは」
見るからに強そうなのはモモンガさんだからな。
漆黒の剣の面々の驚く顔がこちらに向けられる。
「……では、我々はもう行くとしよう。モモン、次会うときはお互い最上級冒険者だ」
「えぇ」
……ナザリックに戻れば会えるけどここはそれっぽいことを言っておくのがいいだろう。
「漆黒の剣の皆さんと、ンフィーレアさんもぜひ我々に依頼してください」
そう伝えると俺たちは組合を出て宿屋に戻る。
「あんなよわっちぃニンゲンではなくガエリオ様とモモンガ様で依頼を受けた方が良かったのではありんせん?」
「依頼を完遂するだけならな。でもそれだと評判が良くないだろ?」
「実力があればそのような事些事では?」
「人間ってのは評判を気にするから細かいところに気を配っておくのさ」
それにンフィーレアという少年は随分とこの辺りでは有名な薬師らしいし、今後彼からの依頼が来たりするなら名声にも繋がっていくだろう。
「とりあえず俺たちは王都に戻るか。本格的に動くのはモモンガさんの報告を待とう」
「しかし、我々の主であるモモンガ様に報告係をさせるのは……」
「元はモモンガさんがやりたいと言い出したことだ。それに報告を受けるのは俺だし、俺とモモンガさんは対等な友だと思っている。だからあんまり深く考えるなよ」
まぁ、守護者やシモベの考え方的には難しいのかも知れないがいつかは柔軟な考え方が出来るようになってもらいたいものだ。
『ガエリオさん!ミスリル級冒険者に昇格しました!』
『え、はや』
『お、なんか久しぶりに素のガエリオさんが出てますね』
『いや、この前登録したばかりなのにミスリルって早すぎて素も出ますよそりゃあ』
あれから数日俺達は王都を拠点に小さい依頼をなんとかこなしつつ冒険者として経験を積んでいた。
戦闘力という面では圧倒的だが、近接職×3の構成でしかも戦闘特化だ。
シャルティアは魔法も得意だが攻撃魔法ばかりだし、俺の職業構成も戦闘特化で採集依頼などは出来ないのでモンスター討伐ばかりしていた。
モンスター討伐もゴブリンなど弱いモンスターばかりなので当然銅のプレートのままである。
そんな日のある日<
詳しく話を聞くとあのあとズーラーノーンという組織がエ・ランテルを襲い、それを撃退したらしい。
なんという展開。
しかしこれはまずいぞ。
このままではモモンガさんたちに置いていかれてしまうではないか。
<伝言>を切った俺は頭をフル回転させ、考える。
朝組合で見たが、大きな依頼はなくあっても秘密裏にアダマンタイト級冒険者などに回されるのが落ちだろう。
と、すれば仕方がない。
「やるしかないか」
「アルベド、デミウルゴス」
「はい」
「そう畏まるな。呼んだのは俺だ、普通にしていろ」
「ありがとうございます」
俺はシャルティアとユリに臨時の休暇を与え、アルベドとデミウルゴスを自室へと呼んでいた。
普段ならここにはマクギリスがいるが今は任務でセバス達に同行しているのでこの部屋には三人しかいない。
「わざわざ済まないな。お前達にも与えられた仕事が多いだろう。しかもお前たち二人はナザリックの知恵の要、特に仕事も多いだろう」
「何を仰います!我々は至高の御方方に仕え、ナザリック、ひいてはアインズ・ウール・ゴウンのために身を費やすことこそ幸せにございます!」
「デミウルゴスの言うとおりにございます。アインズ様よりガエリオ様の言葉を時にアインズ様より優先しろと承っておりますゆえ何なりとお申し付けください」
相変わらず固いがそれだけ忠誠心があると思えば可愛いものだ。
それに真面目な話をするときはこれくらいの空気がちょうどいい。
「そうか。ではさっそく本題に入るが、俺が行っている冒険者としての活動だがどこまで理解している?」
「私どももアインズ様が冒険者に成られた際に事前に確認しましたが実に面白味のないシステムだと感じました」
「私もアルベドと同じ意見です。実力があってもそれまでの実績によって積み重ねた大した価値もない階級に縛られているのは無駄の極みかと」
「その通りだ。俺や守護者最強と言っても過言ではないシャルティア、それにプレアデスの副リーダーであるユリは現地でしか手に入らない情報を得るために冒険者として活動しようとしたが、現在行える依頼は良くて魔物退治、悪ければ薬草採集などばかりだ」
「なるほど。ガエリオ様、でしたらこちらでいくつか騒ぎを起こすのは如何でしょうか」
王国冒険者組合に張り出された一枚の依頼、それは王都を震撼させるには十分すぎる内容だった。
『王都近郊にギガント・バジリスクの巣を発見。討伐に自信のある冒険者は受付まで。最低オリハルコン級冒険者』
そして事態はさらに加速する。
『王都近郊にて発見されたギガント・バジリスクの巣の討伐は当面見送りが決定。続報を待たれたし』
「おい、これは一体どういうことなんだ?」
「静かにしろガガーラン。お前が猛ってもなんの解決にもならん」
王国の宮殿、それも王国の黄金とまで呼ばれる姫である『ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ』の自室である。
そこで岩のような巨漢、いや可憐なる戦士(自称)『ガガーラン』は仮面の魔法詠唱者である『イビルアイ』に窘められる。
「ガガーラン。私たちが別の依頼をしている間に出てしまった犠牲に対して憤るのはわかるけど、まずは話を聞きましょう」
「ガガーランは血の色がオークと同じになった」
「だから知能レベルも……うぅ……」
黄金とまではいかないまでも健康的な美しさをもつ神官『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』と瓜二つの容姿に忍び装束の双子である『ティア』と『ティナ』に窘められ、おちょくられる。
彼女たちは王国に二組しか存在しないアダマンタイト級冒険者の一組『蒼の薔薇』だ。
「ガガーランさんも待ちきれないようですので、始めさせていただきますね」
紅茶で口を潤し、言葉を紡ぐのが部屋の主であり王国周辺国家に名を轟かせる黄金の姫ラナーその人である。
「まず、事の発端は王国近郊にギガント・バジリスクの巣が発見されたことです。皆様ギガント・バジリスクについての説明は必要でしょうか」
「要らねーよ。一匹で国一つ滅ぼすことができる伝説の魔獣……実際に俺達蒼の薔薇も何度か戦ったことがあるが確かに強力な魔獣だった」
「では続けさせていただきますね。その巣を何とかしようと冒険者組合は依頼掲示板に依頼を出しました。最低オリハルコン級冒険者求む、と」
「それがそもそもおかしいだろ。オリハルコン級冒険者じゃギガント・バジリスク一匹にすらまともに相手出来ねぇ!初めから俺達か『朱の雫』を待つべきだ」
「黙って話を聞け」
「……ごめんなさい、ラナー。続けて」
「大丈夫ですよ、ラキュース。オリハルコン級冒険者を雇いましたのは朱の雫も蒼の薔薇も待てないほど状況が切迫していたからです。事前に確認しただけでも巣の周りに五匹」
「ごっ……!?」
「巣の内部までは把握できていませんが少なくともあと二、三匹はいるのではないかと予想されました」
「なるほど、餌の問題か」
「餌?」
イビルアイは組んでいた腕を組み変えると、疑問を浮かべるガガーランに向き直る。
「一匹ですらどれ程の量の餌が必要か分からん巨体だ。その数なら餌を求めて王国に来るのも時間の問題だろうな」
「その通りです。ですので事態は緊急を要し、アダマンタイト級冒険者ではなくオリハルコン級冒険者に依頼を出しました」
「なら、なんでギガント・バジリスクは攻めてこない。失敗したんだろ?」
「とりあえずの餌が出向いてきたんだ」
「イビルアイ!そんな言い方!」
ラキュースが責めるがイビルアイはどこ吹く風。
「事実は事実として確認しなければならないだろう」
「そうだけど……」
「避けては通れん話だ。どのみち腹が減れば次は王国に攻めてくる。そうなれば、私たちがどれだけ頑張ろうとも百や二百では足りない犠牲者がでるぞ」
言い方は悪いがイビルアイの話は事実だ。
オリハルコン級冒険者が餌となったお陰で王国が無事だと言うのは間違いない。
他の依頼を放ってでも駆け付けるだろうが間違いなく数匹のギガント・バジリスクに蹂躙され尽くした王国に未来などない。
そもそも市街地にギガント・バジリスク級の魔物が入り込んだ場合その村や街は見捨てるのが定石である。
「朱の雫はどうなんだ、ラナー」
「……残念ですが、不参加です。朱の雫が行っている依頼の重要度はギガント・バジリスクの巣を駆除する事と同レベルだと判断されました」
「なっ……にぃ!?」
「馬鹿な考え」
「どうせ貴族」
「依頼主についての名言は避けますが想像通りだと思います」
「それだけ王派閥を貴族派閥の力が上回り出したということだろうな。まともな頭があれば王都より重要視する依頼などほとんどないはずだ。早々に『八本指』を何とかする必要性が出てきたな」
「……叔父様が居ないのは残念ですが、私たちが何とかするしかないわね。王国のアダマンタイト級冒険者として、命懸けで王国を守りましょう」
『青の薔薇』が考案した作戦は概ね順調と言えた。
複数のギカントバジリスクと真正面から馬鹿正直に戦って勝つのは不可能だという判断から大きく分けて三つの作戦を立てたのだ。
まずその一、各個撃破。
ギカントバジリスクは強大な魔物ではあるがアダマンタイト級冒険者であり個々の力も大きい青の薔薇にとってギカントバジリスク一匹ではそこまでの驚異ではない。
もちろん油断できるほどの余裕があるわけではないが人類ではトップクラスの戦士であるガガーランが前衛をし、かつて『国落とし』とまで言われた吸血鬼の魔法詠唱者イビルアイが援護と火力を担当する。
更には青の薔薇のリーダーであるラキュースの指示は的確であり、双子の忍者の所々での敵への妨害は間違いなく戦局を大きく動かすだけの影響があるのだ。
ギカントバジリスクの巣は巨大な縦穴でありそこからのそのそと這い出てくる巨大な魔獣は嫌悪感と生物の根源的恐怖を滲ませる。
「しかし各個撃破は確実だが穴もある」
「イビルアイにも穴はある」
「ガガーランにも……」
「おい、真面目な話だぞ!あとあるに決まってるだろ!私をなんだと……!」
「やめとけイビルアイ。それで?作戦の穴ってのはなんだ?」
憤慨するイビルアイは舌打ちをすると溜め息をつき視線を戻す。
「各個撃破するにはどうしても一匹ずつ誘い出さなければならん。一匹なら余裕があるが二匹だとどうしても片方は相当分が悪い」
「そうね。二匹だと一匹はイビルアイに見てもらわなきゃいけなくなるしイビルアイの援護が無くなると決定打を与えにくいわね」
「あぁ。それに一匹二匹ならともかく対象は巣だ。何匹もわらわらと出てきたら私たちだけではどうにもならん」
「そうなるとこの作戦は……」
「残念だが保留だな。次の作戦を考えよう」
その二。毒殺。
強力なギカントバジリスクといえど生物には違いない。
となれば強力な毒を用意し巣に毒を流し込めば安全に殺すことが可能なのではないか。
「だがこれにも穴がある」
「イビルアイにも」
「穴が」
「静かにしてろ!」
ぷんぷんと怒りのマークが大量に仮面に付いていると錯覚するほどの怒気に、さすがのおふざけシスターズも口を閉じる。
「まぁまぁ」
「ともかくだ。ギカントバジリスクなんて生態系もよくわからん魔物に効く毒を用意できない」
「ギカントバジリスク自体も毒を持ってるし毒に対する耐性も高そうだものね」
「あぁ。効くかわからん毒なんぞ流し込んでそれが巣に溜まれば今度はこちらから攻めることすら厳しくなる。自分で流した毒にやられては本末転倒だからな」
「ならこれも保留か」
その三。爆発物、及び魔法を巣に撃ち込む。
爆発物で巣を破壊しつつ遠距離から安全にダメージを与えるというのは非常に有効な手段であり更に爆発物よりもダメージを与えやすい魔法を使える魔法詠唱者であるイビルアイならばこの作戦が一番いいのではないか。
「まぁ悪くはないが下手につついて暴れられるのが一番厄介ではあるぞ」
「でも安全なことに代えられないわ。命を賭ける覚悟と命を粗末にするのは違うことだもの」
「となるとこの作戦しかないな。駄目なら駄目でやり方を変えよう」
「結局どうすんだ?あれもダメ、これもダメじゃなんにもできねーぞ」
「そんなことはわかっている」
そう。まともにやりあうことが一番の解決策にならないのならばどうすべきか。
戦って倒すのが一番早いのだがそうもいかない。
青の薔薇にとってこれは大きな問題だったのだ。
青の薔薇のメンバーが頭を抱えているとガチャりと扉が小さく開くと失礼しますといって入ってくる純白の鎧を纏った少年。
「……なんだ、クライムじゃねぇか。今忙しいんだ用件なら後にしな」
「いえ、大至急お伝えした方がよろしいことだと思い失礼させていただきました」
クライムはラナーの側近であり青の薔薇とも交流がある。しかも王女であるラナーの側近らしく礼儀正しく真面目、青の薔薇の面々も戦士としての才能はともかくその性格は認めている。
だからこそこの重要な話し合いに割り込んでまで伝えるとなると相応の内容なのだろう。
「今ギルドでも大問題となっているギガントバジリスクの巣ですが」
「えぇ、今まさにその話をしていたの」
「簡潔に内容だけお伝えさせていただきます。三人組の銅の冒険者が『命の保障は不要。その代わり達成した暁には実力を認めて昇級を考えてほしい』と言い残しギガントバジリスクの巣へ向かったそうです」
「はぁ!?」
言い訳っぽくなりますが書いている日時にばらつきがあるので文章がおかしな所があったらすみません。
青の薔薇結構好きなので活躍させたいですねー。
また次回よろしいお願いします。