東方波響録 ~異能力者達の学園!?~ 作:月と風
今日も1日の授業が終わった。
転校生の灰谷は、とにかく強いということがわかった。
性格も陰気だが、話しやすい。
僕には及ばないけどね。やっぱり僕強いな。
ていうか風吹を操る能力って結構便利だな。
「なんで俺はいつも日々響に当てる前にチャイムが鳴るんだ。」
妹紅先生がなんか悔しがってる。
危ないな。
「はい。じゃあ解散!」
みんなが寮に戻っていく。
「日々響戻ろう。」
「うん。」
僕等も戻ろうとしたのだが、
「あれ?あの首は......」
「え?首......って本当に首が浮いてる!」
「すいません。」
「ん?ああ君か。遅刻さんだな。」
遅刻さんって......どんだけあだ名出回ってんだ。
「え?日々響会ったことあるの?」
「うん。最初の遅刻した日にね。」
「あぁ、だから遅刻って呼ばれてるのね。」
う、うるさいな。
「なんだかうれしいぞ。私を見える人が少なかったもんだから。」
「見える人って、見えない人がいるんですか?」
「ああ。というかほとんどの人が見えてないと思うよ。」
「あなたは何者なんですか?」
「私はフェリックス・クリスチャン・コルテス。約100年前のアイナ王国の副首相だ。コルテス卿と呼びたまえ。」
「ふ、副首相?」
「そうだ。だがアトラ公国に使者としていったとき、首を切られたのだ。だから今は幽霊となってこの学校を見守っているのだ。」
副首相かよ。誰も見えてないとか可哀想だな。
「いつも何をしているんですか?」
フランが聞く。
「いつもは学校の中を漂っている。時々授業を聞いたり、生徒を驚かせたり。」
前言撤回。全然可哀想じゃないわ。
なに生徒を驚かせてるって。たち悪すぎだろ。
「ほれ。君達ももう部活の時間だろ。」
「そうだよ日々響。今日部活あるじゃん!」
「そうだ!ヤバい!」
僕等は駆け出した。
階段をかけ降りる。もう部活は始まっているだろう。
急げ!急げ!
「ふざけんじゃねえよ!!!!」
その怒鳴り声に僕等の足は止まった。
「いいから早く金出せよ!!!」
そして鈍い音。呻き声。
「転校生のくせして調子のってんじゃねえよ!!」
僕等は顔を見合わせた。
「転...校生?」
「それってあいつしかいなくね?」
「ちょっと見てみよう。」
――――――――――――――――――――――
教室に向かって忍び足で歩く。
いつもへらへらしている日々響も今回は顔を緊張させている。
「お前の能力は封じてるんだから。どんなに足掻こうと使えねえよ。雑魚が。」
「おとなしく俺らに従えばいいんだよ。」
罵声が聞こえる。
教室はどうやら弓道室らしい。
そういえば灰谷は弓道部だな。
窓から覗いてみる。
誰もいない弓道室に、四人ほどの人がいて、誰かを囲んで罵声を浴びせている。
「早く。金を出せばいい話だろ。」
「い、嫌だ...」
「お前に拒否権があると思ってんのかよ。」
ドスッと鈍い音がする。
「...っう」
誰かが呻く。
私は声も出なかった。これがいじめってやつ?
怖かった。
男子たちに隙間が開いて、そこからいじめられているやつの顔が見えた。
灰谷だった。
数人の男子たちに囲まれ、カツアゲされているようだ。
灰谷は確かに胡散臭いが、何かいじめられるようなことをするやつではないはず。
「フラン。」
「ん?ど、どうしたの?」
私は平静を装って聞いたつもりだったのだが、声が震えるのを押さえられなかった。
「これ、どうする?」
「まずは先生にいいに言った方が...」
「しっ。静かにして。こっち来て。」
日々響に従って隣の教室に入る。
「いじめてた奴らがでてくる。」
「やっぱりあいつ雑魚だよな。」
「いや。リーダーの能力が強いんすよ。」
「そうっすよ。相手の能力を使えなくする能力なんて強すぎますよ。この学校で一番強いんじゃないすか?」
そう言いながら虐めっ子たちは去っていった。
ドクンドクンと心臓がなっていた。
「それにしても相手の能力を使えなくする?そんなことが出来るのか?」
「ねえ日々響。そんなとこ考えてる場合j......」
私はまた、口を閉じた。
弓道室のドアが開いたからだ。
中から灰谷が出てきた。全身傷だらけだ。
「おい、灰谷。大丈夫か?」
誰かが灰谷に声を掛ける。誰だ?
「ねぇ日々響。あれは誰?」
「あれは、確か......森近霖之助っていった気がする......」
森近霖之助と呼ばれた人は、眼鏡をかけた白い髪の男子だった。一年生というか、もっと老けて見えるのは気のせいだろう。
「灰谷。行くよ。」
「うん。」
霖之助は、灰谷と共に廊下を渡っていった。
「音楽室行く?」
「なんか行く気にならない...」
「だよね。今日は寮に戻ろう。」
寮は誰もいなかった。
「ねえ日々響。私達も灰谷のこと助けた方がいいのかな?」
「いや、助けなきゃいけないと思うよ。」
「でも私怖いよ。相手は虐めっ子だよ?しかも能力持ちの。」
本音を口にする。
本当に怖いのだ。虐めっ子に何をされるかわからない。
もしかしたら、殺されるかも知れない。
もし殺されてしまうのならば、はじめから関わらない方がいいと...
「それでいいのかよ!!!」
日々響が怒鳴る。私は驚いて日々響を見つめた。
「敵に立ち向かうことを教えるのがこの学校だろ!敵はきっともっと強い!こんな小さなことから目を背けてたら敵になんて勝てないぞ!」
日々響の言葉が腹にストン、と落ちる。
そうだよね。敵に立ち向かうために私達はこの学校の教育を受けてるんだもんね。
「ごめん......日々響。」
「こっちこそ怒鳴ってごめん。僕だって怖いよ。でも、でも、本当の敵はもっと怖いから......」
そこで言葉が続かなくなってしまった日々響に私は声を掛ける。
「わかったよ。ありがとう。」