東方波響録 ~異能力者達の学園!?~ 作:月と風
「そう......だな。水橋先輩かも知れないね...」
僕は思考を纏める。フランが言っていることは正しい。
でも、水橋先輩はそんな人じゃないと信じたい。嫉妬に突き動かされて人を殺めるような人じゃないと信じたい。
それでも、やっぱりフランは正論で、その答えしか僕も浮かばないのだ。
「じゃあこれからどうするの?」
灰谷がおかしくなった今、その元凶である可能性が高い、水橋先輩を問い詰めないといけない。
「まずは水橋先輩を探そう。後、鈴仙にこの事を...」
そう言って僕は口をつぐんだ。そうか。灰谷も水橋先輩も鈴仙の好きな人じゃないか。
しかも鈴仙は、水橋先輩が優しい先輩だってことを、誰よりも知り、誰よりも信じている。
少しショックが大きいだろう。
「いや、何でもない。さ、水橋先輩を探しに行こう。」
「うん。」
未だ寝ている少年と鈴仙を残して僕等は出ていった。
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私は白い風景をじっと眺めていた。
一面に広がる白い物は、シーツだ。
先ほどまでいた、フランと日々響の言葉が頭から離れなかった。日々響が気を使ってくれたのはありがたかったけれど、やはり心は動揺を隠せない。
―水橋先輩が、黒幕?
そんなはずはない。
だって水橋先輩は、とっても優しい。こんな異装の私でも、優しい接してくれた。だからこそ私は、水橋先輩が好きになった。そんな水橋先輩が黒幕の訳がない。
日々響とフランが間違ってる。
先程、灰谷に襲われた時を思い出す。灰谷も、性格こそ暗いが、とても優しい。好い人だ。
でも、あの灰谷は違った。目に光がなく、無言で襲いかかってきた。あれは、私が起こす狂気ににていた。
だからこそ、私がかけてしまったのかと思って絶叫したのだ。
ただ、薬を持っていて助かった。なかったら今頃、あのリーダーみたいになっていただろう。
しばらく考えていると、猛烈な眠気が襲ってきた。
もう疲れたし寝よう。
もし、フランと日々響が水橋先輩を殺そうとするなら命を張ってでも止めないとな。
――――――――――――――――――――――
寮に水橋先輩はやはりいなかった。
「寮じゃなかったからどこにいるんだ?」
「教室とか?」
「何で教室に―」
そこで僕は飛び退いた。
ビュン、と空を切る音がして、銃弾が飛んでくる。
「伏せて!」
何も言わずにフランが伏せる。
誰だ?
音波防壁【メタルコ】
と呟き、銃弾を跳ね返す。
恐らく水橋先輩の手下だろう。
「いくよ。」
「わかった。」
相手が見えた。
僕等の声が消えたため、やみくもに銃を乱射している。
僕はそいつに見覚えがあった。
あれは、一年生じゃないか?
僕がそれを言う前に、フランが足を破壊する。
「うぐっ...」
銃を撃っていた奴は、一瞬こっちを見た。
目が......目が怖い。
なにも見ていないような目だった。
その目がこちらを睨み、倒れていく。
水橋先輩が襲わせたのか。
本当に水橋先輩なのだろうか?
「ねえ、なんだったの今の?」
「わからない。でも操られていたとしか思えない。」
「そこにいるのは誰だ?」
「やっべ、先生だ。逃げろ。」
僕等は寮に向かって駆け出した。
その先に何があるのかも知らずに。
ちょっと短かったな......すみません。