うちはイタチと賢者の石   作:おちあい

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1981年6月9日

1981年6月7日

 

イラク上空。カール・マダックス少尉は覚悟を決められず顔を歪めていた。

俺は軍人だ。人を殺す覚悟も恨まれて殺される覚悟も出来ている。

(しかし、これは…)

彼の眼下にはフランスの技術協力によって完成間近の原子力発電所が広がっている。彼の任務はこの原発を空爆することだ。まだ未稼働という情報ではあるが、もし放射性物質が垂れ流しになれば、俺自身の手でヒロシマやナガサキのような悲劇を引き起こす事になる。

いや、もう俺は十分過ぎる程他国に空爆を行っている。

既に殺した人間の数も2桁じゃ収まらない。

今更何を迷う。イスラエルやユダヤの為だなんて自分の行動に理由を付けて誤魔化すつもりもない。

 

(怨むのならば、俺を怨んでくれ!)

 

マダックス少尉は、涙を流しながら発射ボタンに手をかけた。

 

--

 

1981年6月9日

 

マリオ・ボッシはロンドン郊外の住宅街を歩いていた。

マリオは元カモッラ(イタリアのマフィアの通称)である。

ナポリでそれなりの勢力を誇るカモッラに所属し、スナッフムービーを撮るための子供の人攫いを行っていた。

スナッフムービーとは、子供を残虐に傷つける様子を撮影した映像の事だ。

まだ年端もいかない子供を攫い、麻薬を打ち、正常な判断が出来なくなった子供の腕を切り刻み、腹にナイフを突き刺し、暴行する。

その子供の命が尽きるまで撮影は続き、正常な人間なら吐き気を催すそのムービーは腐った性癖の金持ちが高額で買い取る。

 

元々裏路地のチンピラだったマリオは特に嫌悪感も感じることなく子供達を攫い続けていたのだが、妻に出会って愛を知り、子供が産まれたあたりから、スナッフムービーを許せない物だと思うようになっていった。

その後マリオは組織を裏切り、五共和国派のテロリストに武器援助している証拠を持ってイタリア軍警察に駆け込み、家族ごとイギリスに亡命する事に成功した。

だが、カモッラという組織はそんなに甘い集団ではない。愛すべき妻も子供も組織の残党に殺されてしまった。

 

もはや理想も目的も無く、マリオはロンドン郊外を煙草を吸いながらトボトボと歩いていた。

彼がこの道を歩いていたのは、いや、その異変に気付いたのは神様のイタズラだったのか、マリオの存在がその悲劇の結末を大きく変えることとなる。

 

 

--

 

同日

内葉家ではささやかなパーティーが開かれていた。

(この世界はどうやら相当平和なようだ)

イタチがこの世界に産まれてから1年、イタチの意識が覚醒してから約1年。

祖父母がこの家に来るのは初めてではないが、両親も含めて全員がここまで満面の笑顔なのは初めてだ。

テーブルの上にはケーキと豪華な料理が並べられ、囲む大人たちの話題は尽きない。

どうやら自分を含めた3人の家族は、日本という国の遠野という地に移り住むらしい。まぁどこにいようがもう少し成長しない限りこの体ではなにもできないが…。

 

イタチがチャクラを練ることが出来ない理由は一つ。赤ん坊であるイタチの体には身体エネルギーが圧倒的に足りていないのだ。さらにスタミナもない彼の体では、仮にチャクラを練ることができてもすぐにばてて眠ってしまうだろう。

そんなことを考えていたイタチは家の外からもれる殺気に気が付く。

(この世界は平和だと思ったが…撤回しよう。どうにも平和ではなさそうだ)

 

イタチの次に異変に気付いたのはアンナとその母であった。

(明確な殺意を含んだ複数の気配が家を囲んでいる?)

外の気配に気付いたアンナは家族に声をかける。

「アナタ!イタチを連れて家を出て沢山の人がいる所まで走って!!父さんは私の後ろに!母さん、杖は?」

「もちろん準備済みよ」

急に臨戦態勢に入った妻に夫は、

「ち、ちょっと待ってくれ!一体何が…」

説明を求めようとしたが、アンナの切羽詰まった目を見て、

「分かった。くれぐれも無理はしないでくれよ」

言われた通りに動くことを選択した。

 

「さぁ、ちょっとお外まで行くよイタチ。義父さんも気を付け…」

イタチを抱えた父が振り返って見たものは、緑色の光を当てられた義父の姿だった。

 

--

 

その男は正にスリザリンという寮に相応しい人間だった。

古くから続く純血の家柄。行き過ぎた純血主義。闇の魔術への傾倒。目的の為なら手段を選ばない冷血さ。

ホグワーツを卒業すると、彼は父に言われるまま魔法省の闇祓いとなった。

死喰い人を必要以上に傷付けるその手法は、仲間達にすら恐れられたが、彼はその実力でのし上がっていった。

 

例のあの人がどんどん力をつけると、闇祓いの人材不足問題が表面化。

今まで闇祓いは基本的に純血によって組織されていたのだが、アラスター・ムーディの「実力があるのであれば純血でなくとも構わん」という鶴の一声で純血以外からも闇祓いを探すことになった。

混血であるアンナ・内葉はその第1号である。

純血主義の男は大反対をしたが、アンナの実力が認められ、彼の言葉に耳を貸す人間はいなくなった。

男はまるでストレスを発散するように死喰い人を攻撃するようになる。

そんな折、男に例のあの人が接触してきた。

決闘に敗れた男は死を覚悟するが、そんな彼に闇の帝王は意外な言葉をかける。

「貴様の事はよく知っている。」

闇の帝王は男を殺すことはせずに、静かに男に語りかける。彼の話した純血主義やその思想は、よくよく聞いてみると自分のそれに近かった。

「これは契約だ。貴様の仲間である混血の女の居場所を言うのだ。我が従順なるしもべ達が殺してやろう。それ以降の接触はしない。もちろん前に立ちはだかる時は死の呪文が貴様を襲う事になるが…」

闇の帝王がなぜ自分を殺さないのかは疑問だったが、その提案は彼にとって魅力的な内容だった。

確かにあの女はそれなりの実力を持ってはいるが、確か子供を産んで育児休暇中だったはずだ。家族を守りながらではまともに戦う事も出来ないだろう。

もちろんヴォルデモートの提案は闇祓いの一員として、了承できる内容ではないが、今の彼は冷静ではなかった。

死力を尽くした決闘に負け、断れば恐らく殺される事は目に見えているし、自分に近い思想を持つ闇の帝王のカリスマ性を間近で感じてしまったのだ。

考えてみれば、闇祓いになったのも父に言われたからであって、本気でなりたかった訳ではなかった気もする。

 

自分自身に言い訳を重ねて、

男は、

闇の帝王に首を垂れた。

内葉家への襲撃は、1番油断しているであろうあの女の子供一歳の誕生日、6月9日に決まった。

 

ヴォルデモートはほくそ笑む。

予言の子の襲撃前に厄介な闇祓いを2人も無効化できるのだ。

 

そう、何か大きな「想定外」がない限り。




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今回は無し

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