斯くして、一色いろはの小悪魔生活は終わりを迎える。 作:蒼井夕日
それと!UAが10万を突破していました!ありがとー!
正月ボケがまだ抜けてませんが、どうぞー!
ドアの向こうに映る、パーマがかった茶色の髪。
肩よりも短いそれが揺れると、片耳ピアスがキラリと輝く。
それが因縁の相手、倉敷ほのかだとわかると、わたしは無自覚に後ろへ下がっていた。
後退し続け、やがてゴンッと長机にぶつかる。わずかにだけど、自分の膝下が震えているのがわかった。
彼女がここに来た理由はなんだ。
ミーティングだって終わったはずだし、もちろん第二部なんてのもない。
もしかして、わたしと対立するため?
わたしがこの教室に入っていくのを見て、ついに恋敵ぼこぼこにできるチャンスだと思ったとか?
だとしたら勘弁してほしい。取っ組み合いとかになれば負け必至だ。生徒会室から全力疾走した疲れがまだ抜けてないし、なによりも彼女は結構高身長だ。150半ばのわたしよりも頭一個分高く、体格差で敵うはずもない。
そうなると如何にして逃げるかなんだけど、ドアの前にそうも仁王立ちされたら逃げようもない。
彼女は胸の下で腕を組んだまま、威圧するように詰め寄ってくる。
あ、もうだめかもと半ば諦めて目をぎゅっと瞑ると、その瞬間、こんこんとドアのノック音が響いた。
「ここで何してるのかね?サッカー部のミーティングはすでに終わっているはずだが」
珍しく白衣ではなくスーツ姿の平塚先生だ。
先生は訝しむようにわたしたち二人を交互に見やっていたけど、倉敷ほのかは威圧的な態度を一変させた。
「私はただ忘れ物を取りに来ただけですよぉー、せんせ」
「なら早く済ませなさい。鍵を閉めなければならないのでな」
「はーい」
倉敷さんはわたしの横を通り過ぎて机の中のポーチを取ると、すぐに教室を出ていった。
思わずわたしがこぼしたため息に、平塚先生も同様に苦笑を飛ばすようにため息をはいた。
「優れた女は報われないな」
「ほんとそうですねぇ。平塚先生が結婚できない理由がよくわかります……」
「それは褒めているのかね……」
「もちろんです。…………助けていただいてありがとうございました。超危なかったです」
「私は何もしてないさ。それに、一時的な抑止力にしかならないだろうな」
「…………」
そうだ。倉敷ほのかが未だ直接的に関与してこないのは、いつも誰かに助けてもらっていたからだ。奉仕部の先輩方はもちろん、葉山先輩たちや平塚先生がその場に居合わせなければどうなっていたかわからない。このままじゃきっと何も変わらない。わたし自信が解決しなければいけないことだ。
「やっぱ部活やめるしかないですかねー。正直、今やめてもそんなに悔いとか名残惜しさとかはない気がするので」
「…………ふむ、なるほど」
平塚先生はにやりと口角を上げて、わたしをじっと見た。一体なにに納得したのかはわからないけれど、少しだけ居心地の悪さを覚える。
「部活以外のところで充実してるのだろう。…………そんな君に、先生からクリスマスプレゼントだ」
「はい?」
先生はたわわな胸元からシュッと何かを取り出すと、こちらに「じゃーん」と見せびらかした。
「ディスティニーランドペアチケットだ。先日忘年会のビンゴ大会で当ててなぁ……。『ペアチケット(笑)』と鼻で笑ったあのハゲ頭野郎のことは絶対に忘れないぞクソッ!」
「ちょ先生、チケットくしゃくしゃになりますって!」
「あ、ああ、すまんな。………とにかく、これで羽を伸ばしてくるといい。ワタシには!使いどころがないのでなぁ!がっはっは!」
「あ、ありがとうございます。…………ていっても、わたしも一緒に行く相手なんてそんなにいるわけじゃ……」
「ちょうどいい暇な男がいるだろう?生徒会室に」
「………………えっ、先輩と!?」
咄嗟に大声で口に出してしまって、ぱっと口元を押さえる。しかしそれも遅く、平塚先生はまたもニヤニヤしながら前かがみになっていた。
ディスティニーに、先輩と二人……?
いやいや、さすがにそれは色々と飛ばし過ぎだ。おまけに数分前のことだってあるし、今は先輩に顔を合わせるのもアレっていうか……。いやべつに深い意味はないから決して。ほんとだよ?
「思ってた以上に可愛い反応するじゃないか」
「い、いや!そういうわけじゃなくてですね!?遊園地デートってもっとエスコートしてくれる人が相手じゃないと気が乗らないですし、待ち時間のトーク力とか絶対必要ですし……。それに先輩こういうの絶対来ないですよ。めんどくさいとか言って!」
捲し立てて両手をブンブンと振っても、平塚先生はまた煽るように腕を組んだ。
「断られるのがそんなに怖いか?」
「なっ……!」
「なんてな」
ニカっと笑って舌を出す平塚先生は、いつもの大人の雰囲気なんてどこにもなく、ただ悪戯好きな子供のようにしか見えなかった。わたしだって先輩から小悪魔呼ばわりされるくらいなのに、この人には一生勝てる気がしない。
「…………」
「一色」
静まり返った教室に、平塚先生の精悍な声が響いた。
そこにはさっきまでのふざけた様子は全然なくて、真面目で真剣で、焦がれた表情が浮かんでいた。
「本当は気づいているのだろう。ただ、初めてだから受け入れるのが怖い。知ってしまうのが怖い。自分が自分でなくなるような感覚が、何よりも怖い。…………でもね、逃げてはいけないよ。答えを出さなくてもいい。しっかり向き合うんだ。それは君にとって、とても大切なことだから」
「………………平塚先生も、そういうのあったんですか?」
「ああ、あった。何もできなかった自分が悔しくて何度も後悔したよ。あの時に拗れたせいで今頃独身なんてやってんのかもしれないしなぁ……」
平塚先生の言葉を咀嚼して、わたしは先輩のことを思い出してみたけど、すぐにやめた。
考えるのはもう疲れた。それが先輩のこととなればなおのことだ。あの何考えてるのかわかんない人のことを考えてもしょうがない。もともとわたしは考えるのは得意じゃない。だから今まで、全部行動で示してきたじゃないか。今更何をビビってるんだ、一色いろは!
「とはいえ、大人がこどもたちの恋愛に口出しするのはご法度だからな。それをどう使うかは君が決めろ」
「……ていうか、わたしが先輩を好きみたいな流れになってますけど、全然そういうんじゃないですからね?」
「どっかの誰かに似て君も強情だな。じゃあそのチケットは奉仕部員のどっちかに……」
「やっぱり使わせていただきます。平塚先生の甘酸っぱい想いと怨念も背負って、先輩を連れまわしてきます」
「言ってくれるじゃないか。…………じゃあ、行ってこい」
「はいっ!」
ピシっと敬礼して、小走りでまた生徒会室へ走り出す。
床を蹴る足がさっきよりも軽くて、なんだか不思議な気分だった。
* * * * *
「なんだこれクソ終わんねぇ……」
昼休憩を挟んで数十分、カタカタカタカタ……ターンッ!!(Enter)とキーボードを打ち続けたが一向に終わる気がしなかった。オタク兼引きこもりの俺にとってパソコンは虎の子のような存在だが、ビジネス用のソフトとかになると滅法弱い。普段dアニメストアくらいしか使わないし、一生働かないから必要ないんだよな。てかこれ完全に会計の仕事だろ。話したことないから頼みづらいんだよなぁ……。
ギシッと椅子にもたれかかって、机に置かれた弁当箱を眺める。
──これ、なんて言い訳すりゃいいんだ……。
洗うために家に持ち帰らないといけないし、そうなれば小町に見つかってしまう。
可愛らしい弁当箱を持って帰ってきたお兄ちゃん。こんなの小町に面白がられるに決まっている。戸塚に作ってもらったって言えばセーフか?セーフだな。こんな愛妻弁当セーフどころかホームランに決まってるな(迷)。
と、腕を組んで一人頷いていると、視界に亜麻色が映った。
見ると、扉を数センチだけ開けて、小悪魔……もとい小悪魔がこちらを覗き込んでいた。
「何してんの」
訝しんで聞くと、小悪魔一色は無言のままギギッと扉を開ける。
後ろに手を組んで、そろりそろりとどこかの狂言師ばりにそろりしながら生徒会室へ入ってきた。
「………………」
睨む一色。睨み返す俺。一歩前に踏み出す一色!身構える俺!!さえずる小鳥!!!
と謎の臨場感が生まれてるのは俺の脳内だけで、実際にはそこそこの気まずさが残っていた。
だってまださっきの誤解解けてないし。もう今ネタ晴らししちゃおう。別に誤解されてもされなくてもいいんだけど、後々言いふらされても面倒だ。
「さっきの、戸塚だから」
「……………………………………へ?」
「だからさっきの好きな人、戸塚だから。戸塚男だから」
「いやいや、え?男?…………え?」
そうそう、その反応を望んでたんだよ。やったね、ドッキリ大成功!
「せ、せんぱい?男が好きって、そういう意味で?」
「いやそうじゃなくて。友達としてって意味だから」
「………………」
うん、俺を一瞬でもホモ認定したことはともかく、お前友達いないだろと言わなかったことは褒めてやろう。しかし一色は『戸塚』という名前を聞いてもピンと来てないらしく、暫く考え込んでいた。
「前に会っただろ。テニス部のキャプテンの」
「…………あ、あー!!えっ!?アレ男の子なんですか!?」
「残念ながらな……」
テニス部と聞いてどうやら思い出したらしい。
一色と戸塚は以前帰宅する途中で会ったことがある。こいつのことだから一回見ただけの相手をいちいち覚えることなどしないだろうが、戸塚の可愛いインパクト、略してトツカワインパクトで覚えていたらしい。わかるわかる。俺もあのトツカワインパクトは忘れられないし。
「そうだったんですか。…………ウザいんでああいう面倒くさい言い回ししないでもらえます?」
「お、おう……」
急に言葉遣い悪くなってどうしちゃったんだよいろはす……。由比ヶ浜の言う「ウザい」と違ってダメージえげつないんですけど。小町の「気持ちわる……」くらい傷ついたぞ。
「ていうか、ミーティングはもう終わったのか?」
「あー…………あれです、はい。終わりました」
「んじゃもう帰れよ。こっちだってすぐ終わらせたいんだよ」
「そんな冷たいこと言わないでくださいよ。わたしだって生徒会副会長ですよ?別にいてもいいじゃないですかー」
「…………」
とかいってどうせ手伝わないんだよなーこいつ。なんならずっとしゃべり続けるから邪魔まである。
しかしそんな俺とは裏腹に、一色はずんずんと会長机の前まで歩み寄ってくる。その表情はなぜかニッコニコしている。これはもうラブライバーになるしかない。にっこにっこにー!
「そういえば、わたしクリスマスイブは暇じゃないですかー?」
「じゃないですかーって、知らないけど」
「なんと、ここにディスティニーのペアチケットがあるんですよ」
「……」
「しかも、先輩もクリスマス予定ないじゃないですかー?これもうデートするしかなくないですか?」
「俺の予定を勝手に決めるな。てかデートって何?誰と?俺と?」
唖然とする俺に、ニコニコと無言を貫く一色。これはアレか。無言は肯定みたいなことか。
いやいや、こいつ何言ってんだ?俺がクリスマスイブに?女子と?ディスティニー?
何目当てだよこいつ。金しかないですねはい。金すら持ってないので勘弁してほしいんですけどね。
「いや、無理でしょ。イブのディスティニーとかどんだけ混むんだよ」
「でも妹さんへのクリスマスプレゼントとか選んだりできるんじゃないですか?」
「まあそうだけど……」
「他に予定でもあるんですか?」
「ないけど……」
「わたしと行きたいですよね?」
「行きたくないに決まってるけど……」
「じゃあ、決定ー!細かい時間と集合場所はLINEで連絡しますね♪」
こいつ、モノローグを入れる隙すら与えてくれねえ……。俺の心読んでるレベルの即答で怖いんだけど。マジで心読まれてそうだから怖い。とはいえ、俺のセンスだけで小町へのプレゼントを買うのは不安だ。若い女子の意見もおれば参考になるだろう。
「俺がディスティニーに行く理由はわかったけど、お前にメリットないだろ?」
「いえいえ、ありますよ。イブに予定もなく家でゴロゴロとか、女子高生として超ダサいじゃないですか。お母さんとお父さんにそう思われるのも嫌ですし、平塚先生からのクリスマスプレゼント無駄にしたくないですし、他に誘える友達なんていないですし……」
「わ、わかった。もういい。なんかすまん」
嘘だろおい。ボッチ検定免許皆伝の俺ですら悲しくなってきたぞ。マジでこいつ友達いないのかよ。今度材木座でも紹介してやろう。案外いい仲になりそうだよな。
「じゃあ、行くってことでいいですか?」
「行く行く。超行くわ」
「やった!それじゃ、お仕事終わるまで待ってますねー」
ルンルンと弾んだ声で言うと、ソファに座る一色。
最近マジで多忙すぎだろ、俺。
* * *
本日12月15日火曜日。海浜総合高校と2度目の合同活動である。
時刻は17時を過ぎ夕陽も沈んだ中で、千葉コミュニティセンターに集うのは両校生徒会の8名と、みずきをはじめとする小学生だ。
前回の会議で大体イベントの眼目は決まり、玉縄は「イベントに参加してくれる小学生を集めてほしい」という俺の依頼をちゃんとやってくれたらしい。今日参加している小学生だけでも20人ほどで、思ったよりも多くてビビってる。小学生がいっぱいだね(犯罪)。
ロ型のテーブルで絵を描いたり粘土をこねたりしてる小学生たちをぐるぐると見渡していると、部屋の端っこでもじもじしている材木座を発見。どうせ暇だろうしと思って今日も呼んだのだが、相変わらず所在無さ気にしていた。こいつと小学生をセットで置いたらマジで犯罪の臭いしかしないんだけど、実際こいつも俺と同様、どうやって小学生と接すればいいかわからないだけだろう。材木座もこちらに気づくと「はちまーん」と手を振ってきた。実にウザいが気持ちはわかるので助け舟でも出してやろう。
「そろそろ交代の時間だな。海浜総合と交代して設営に回るぞー」
「了解でーす」
「ふむん!力仕事は我に任せよ!」
一色、材木座の返事を聞いて、廊下で設営をする海浜総合と交代。
絵や工作を展示する廊下は玄関に直結しているだけあって若干寒く、長机を運ばなければならないので体力的にはそこそこきつい。そういう時にこそ分業だ。小学生たちを見守るグループと、設営グループでローテーション。なんて俺らしい効率的なやり方なんだ。
「総武と海浜総合で分けるあたり、先輩らしいですよねー」
「いや、お互いよく知る者の方が効率的だし、分けることで競争し合ってより良い結果を生むんだよ。別に人見知りだからとかじゃないから。戦略的撤退だから」
「撤退って言っちゃってるじゃないですか」
苦笑してため息を吐く一色だが、「まあわかりますけど」と納得してくれたらしい。材木座はいわずもがな。
「そういえば、今日は雪乃先輩と結衣先輩いないんですねー」
思い出したかのように言う一色に、俺は閉口した。本来今日も来るはずだったのだが、大した仕事はもうないから来なくてもいいと伝えたのだ。乗りかかった舟だと雪ノ下は最初食い下がったが、俺の意見が曲がらないのを見て取ったのか、了承してくれた。
なぜ断ったのかというと、単純に手伝ってもらうほどの仕事ではないからという理由もある。確かに部活に出れないほど忙しい時は手伝ってほしいと言ったが、かといって奉仕部を何日も活動休止にするわけにもいかない。
しかし本当の理由はほかにあった。
そもそもの話、俺が生徒会長をやると決めたのは雪ノ下の立候補を阻止するためだった。あの時は無理してやる必要はない、一色の件は俺がなんとかすると言ったが。
もし、雪ノ下が本当は生徒会長をやりたかったとしたら、俺がしたことは間違ってるのではないかという疑念が残る。ずっと馴れ合いのように依存しあっていたことを雪ノ下は誰よりも早く気づき、自分は一人でもできるのだということを誇示するために、生徒会長をやろうとしたのではないか。
しかし俺は、共依存だとわかっていながらも、奉仕部を存続する方法を提示してしまった。その罪悪感が、きっと俺が彼女らを避けている理由で、はけ口のない違和感なのだと思う。
「先輩?どうかしましたか?」
「あれだ、珍しく依頼人でも来てんじゃねえの。それに、生徒会役員になってそうそう頼りっきりって訳にもいかないしな」
「ま、そうですよねー」
エントランスから講義室までは10メートルほどあるが、壁には絵を展示する用の額縁のような掲示板が張られ、長机の運搬もすでに終えているようだった。あとはクリスマス仕様にツリーやらの飾り付けをすれば廊下の設営は終わるだろう。なんだよ、結構仕事できるじゃねえか、玉縄。めっちゃ舐めてたわ。
「ツリーはエントランスでいいですよね?」
「ああ。ちなみに、みずきが通ってる小学校がモミの木と飾りを提供してくれたらしいぞ」
「八幡、ツリーのてっぺんにのせるこの星はベツレヘムという名前でな、古くはキリストの誕生を導く……」
「ああはいはい。んじゃ飾り始めるぞ」
得意げに顎を撫でる材木座を手であしらって、各々飾り付けを開始してから5分が経過した。
雑談を交わしつつ作業を進め、結構それっぽくなってきたところでひゅうっと冷たい風が肌を撫でた。誰かが来たのだろうと玄関の扉を見やると、そこから見覚えのない男が入ってきた。
コートを着ていてズボンしか見えないが、おそらく海浜総合の制服だろう。痩身で身長も高く、肌は病気を疑うほどに白い。幸薄そうな顔立ちだが、十分イケメンといえる類だと思う。
「海浜総合高校の者なんだけど、総武の生徒会ですか?」
「え、あ、はい」
急に話しかけてきたからびっくりしたじゃねえか……。海浜総合の生徒と名乗ったその男は、近くで見るほど肌白で、力の抜けた目はこちらまで脱力させる。なんだよこの喋り方が独特な美青年は。端的に言えば、ただ者の雰囲気ではなかった。アニメで例えると某巨人アニメのミ〇サみたいな感じだ。女じゃねえか。
「妹を迎えに来たんだけど」
「小学生は奥の講義室にいますけど………………って、えっ!!もしかして裕君!?」
講義室を指さして説明した一色が、男の顔を見て驚愕の表情を浮かべた。知り合いだろうか。
「え?………………いろは?」
「わ、すごい久しぶりだねー!元気だった?雰囲気もなんか変わったよね?」
「そうかな?いろはだって、なんか今どきの女子高生って感じだし……可愛くなった?」
「そんなことないよー」
お、おう……。なんかすっかり二人だけの空間になってんだが……。アレだ。休み時間に友達と話してたら友達の友達が来て一気に気まずくなったみたいな感じなんですけど。戸塚と話してたらたまにあるんだよなぁ。あれクッソ邪魔なんだよなぁ……。
未だわんやわんやと久しぶりの邂逅を喜び合う二人を眺めていると、横の材木座がメガネをカチャッとかけなおして俺の肩にボンと手を置いた。
「八幡よ、案ずることはない。自分と仲良くしてくれる女子には大体友達がいるものよ。その類の勘違いで傷つくなんて今まで散々してきたであろう?」
「いや、別にそんなんじゃないから。これはあれだ。お兄ちゃん子の妹が彼氏連れてきたみたいなそんな感じだから」
「十分傷ついてんじゃん……」
喋り方が素に戻ってるぞおい。
まあ、材木座の言ってることを全否定はできないことは確かだ。一色に友達といえる友達がいないことに、俺はどこか親近感のようなものを感じていたのかもしれない。だからといって裏切られたとかそんなのは全くない。こいつに元彼的なのがいてもなにも不思議なことではないし。強いて言うならこの男がイケメンなことだけが俺の癪に障ってはいる。なんだよこのミ〇サ。巨人なら俺の横にいるからこいつ連れて一刻も早く帰ってほしい。
「へぇ、いろは副会長やってるんだ」
「うん。この人が会長だよ」
「あ、ええと、どうも」
「僕は九条裕介。いろはとは中学の時塾で一緒だったんだ。よろしくね」
「あ、はい」
やべぇ、この男の方が上だと本能が言っている。この天才的なオーラにやられているのか材木座も影を潜めている。俺はせめてもの反抗として、「初対面には敬語使えやクソガキがッ!」と心の中でつぶやくことにした。
「しかも裕君ってあだ名じゃね、八幡」
「材木座うるさい」
こういうイケメンはなんで名前までイケメンなんだろうな。九条とか、金持ち以外許される苗字なんですかね?
「ところでさ、いろは。来週のイブにうちでパーティをするんだよ。せっかく再会したんだし、よければ来ないかい?」
「え?あー……」
九条の提案に、気まずそうにちらとこちらを見る一色。
知り合ってからまだ一か月ちょいの俺と中学からの知り合いでは言うまでもなく後者を優先すべきだろう。そこに俺が介入するのも気が引ける。
「?なんか予定あるの?」
「んーと、まぁ……」
「別に気使わなくていいぞ。そっち行って来いよ」
「え?いや、そういうことじゃなくて……」
まあこの程度では気使いの一色なら申し訳なさで引き下がらないだろう。自分から誘っておいてドタキャンほどしづらいものはない。ここは徹底的に俺が後押ししてやろう。
「クリスマスに人んちのパーティに招待されるとかそうないぞ。こっちはまた別日に行けばいいし」
「会長さんもこう言ってるし、どう?」
「……………………うん、じゃあ行こっかな」
よし、これにてめでたしめでたし。沈黙の間に一色がすごい睨んでた気がするけど気がするだけだ。超気のせい。
「我なにも話についていけないんだけど、今の選択はまずかったのではないか?」
材木座が何か言っているが気のせいだ。実際ディスティニーに行くにしてもチケットの期限は年末まであるし、九条の方を優先するのが得策なのは確かだ。未だ一色の視線が気になるが、俺は止まっていた作業を再開した。
「それじゃあ、僕は妹を迎えに行くよ。またね」
爽やかに黒い髪を靡かせ、奥の講義室へ消えていく九条を見送ると、一色は笑顔で俺の足を踏んできた。
「先輩はあっちの飾り付けお願いします♪」
「いや、まだここ終わってないんだけど……」
「いいから行け♪」
「あ、はい……」
…………っべー。マジで背筋が凍った。なんであんな怒ってるのん?女心難しすぎない?
「だからまずいと言ったのに……」
何はともあれ、今日材木座連れてきたの失敗だったわ。
なんだか不穏な空気が漂ってきた本編ですが…………。
ここで出てきた九条祐介(くじょうゆうすけ)ですが、ビジュアルイメージは髪が短いミカサです(伝われ)。喋り方は食戟のソーマの薙切薊(学生時代)です(伝わらない)。
そんなことよりもうセンター試験だね。懐かしいなぁ。センターを目前にこのssを読んでる受験生は多分いないと思うけど、頑張ってね!
知らない人から言われる「頑張れ」ほど力にならないものはないけどそれでもいうよ!がんばれー!