斯くして、一色いろはの小悪魔生活は終わりを迎える。   作:蒼井夕日

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一話の時点でお気に入りがごじゅう、だと……?
本当にありがとうございますっ!!
評価者もいてくれて、ほんとにマジでガチ嬉しいです!!
テンションあがってヒトカラいっちゃいました。


………………ええ、ひとりですとも。


2話 死にかけのカエルさん

 「……馬鹿なの?」

 

 先輩が生徒会長になるという私の渾身のひらめきは、低い先輩の声で一蹴された。

 

 確かにおつむは弱いかもしれないけど、馬鹿ではないと思うんですよー?

 ほら、馬鹿っぽく見せたほうが女の子的に~みたいなこと言うじゃないですか。…………あれ、言うよね?

 

 「え~、いいじゃないですかぁ。立候補が一人しかいないなら、生徒たちもやむなしってなりません?選挙で真面目に投票する人なんてほぼいないですよ、たぶん」 

 「残念だが、30人もの推薦人を集められないんだ。そもそも立候補ができない」

 

 集まったとしてもやるわけないんだけどと窓の外を眺める先輩。

 真正面から見たらどうしても目の方に注目しちゃうけど、こうやって横から見たらそこそこかっこいい顔をしてると思う。この角度だけならあの奉仕部の二人にも釣り合ってるかも……なんて、すぐ査定しちゃうのがわたしの悪いとこだなぁ。

 

 「確かに、先輩友達いなそうですもんねー」

 「今日会ったばっかの人にこんな罵られるの?いや、ぐうの音も出ないほどその通りなんだけどさ」

 

 うっかり口に出てしまった言葉も、先輩は全く気にしてないというふうに自虐する。

 

 いつものわたしなら言葉のひとつひとつを計算して喋るのに、この人の前だと思ったことがそのまま口に出ちゃうのはなんでだろう。

 たぶん、わたしも先輩も、お互いに興味がないからなんだと思う。普通の男子なら好かれようと必死になったり、下心丸出しだったりするけど先輩はちょっと違う。葉山先輩みたいな感じかな?うーん、葉山先輩とも違う気がする。

 

 そんなわけで、いつもより毒舌なわたしなのでした。ちなみに、女子と口喧嘩するときはもっと毒舌だし言葉遣いも悪くなる。男の子はみんな女子に幻想抱き過ぎだと思うけど、逆に言えば勝手に美化してくれるからチョロい。

 

 「ていうか……お前にとっては生徒会長になっといた方が何かと都合がいいんじゃねえの」

 「都合って、何がですか?」

 「推薦したやつらは、みんなお前が生徒会長をやりたくないと思っているから推薦したわけだろ。なら、仮にお前が生徒会長になりたかったとしたらどうだ」

 「え?だから私はやりたくないって……」

 「ブランドだ」

 

 ずっと気だるげに話していた先輩は、真剣そのものという眼差しで見つめてくる。

 突然の態度変更に、思わず背筋が張った。

 

 「生徒会長で得られるもの、内申とか経験とかいろいろあるが、一色にとってはそれだけじゃない」

 「……はあ、なんですか?」

 

いろんな人をこき使える・・・とか?それだったら今のままで間に合ってるんですよ。戸部先輩とか雑用に関しては10人力です。

 

「それはな・・・」

 

 もったいぶった言い回しをする先輩に危うく「いいからはやく言え」ってでちゃうとこだった。ひっこめ、一色くろは!

 

 先輩はこほんとわざとらしく咳払いをすると、ほっぺに人差し指を当てて、顔を傾けた。そして────

 

 「『一年生で生徒会長やってるわたし~♪』 だ」 

 「うっわぁ・・・」

 

 え、これわたしの真似なの?今の死にかけのカエルみたいな声がわたし……? 

 この人、魚とかカエルとか変身できる能力でも持ってるのかな。脊椎動物変身能力とかなにそれいらなっ!

 

 「……ま、まあつまりだ。一年生で生徒会長というブランドはデカい。男子からの注目を集められるだけでなく、学園トップという玉座で片肘ついてるお前にちょっかいを出す女子なんていなくなる」

 

 死にかけのカエルを引っ込め、死にかけの魚の目で説明を続ける先輩。

確かに、生徒会長になることで他の女子からちょっかいを出されなくなるという話にはちょっとだけ惹かれたけれど。それ以上に困ることもあるのだ。説得する先輩に、ちょっとばかしの反抗を試みる。

 

 「で、でも大変ですよね。ほら、私サッカー部のマネージャーもやってますし、両立できるかどうか……」

 

 そう、それは、サッカー部に顔を出せなくなることが増えるということだ。

 ──そうなってしまうのは大変困るのです。わたしは今、絶賛乙女中だからなのです!関係ないけど、乙女って『乙な女』だから失敗する未来しか見えないよね。

 と、心の決意を固めたわたしに、先輩はとどめの一撃をお見舞いしてくる。

 

 「なんかあったら葉山にでも泣き付け。あいつならなんでもしてくれるだろ、知らんけど。それに、生徒会が大変なら部活に逃げればいい。逆もまた然り。ヘルプという大義名分で生徒会室にでも呼び出せば、『アタシの葉山』の完成だ」

 

 あ、やばいおされそう。このままだと先輩の思うつぼだ。

 ──そう、サッカー部には我らがキャプテン、葉山先輩がいるのだ。今まさに、葉山先輩に気に入られようとしている真っ最中。まぁ、見事に玉砕してるんだけどね……。

 

 「……ていうか、なんで葉山先輩なんですか?」

 

わたしが葉山先輩のこと気になってるなんてこと、言ったっけ。いや、さすがにそれはないと思うんだけど・・・・・・。

 

 「葉山目的以外が理由でサッカー部のマネやってるやつなんていんの?」

 「全員が全員そうだと思わないでくださいよー」

 

 確かにうちの部の女マネの9割が葉山先輩狙いだけど。

 と、わたしの一言を聞いてちらとこっちをみる先輩はちょっとだけ驚きの表情を見せながら。

 

 「え、お前葉山好きじゃないの?」

 

 いやまあ、そうなんですけどね。その9割の中に私も含まれてますけど、そこで「はいそうです!」なんていう女子いるわけないですし。

 ──────ん?

 

 「なんですか口説いてるんですか好きな人がいないとわかった途端態度変えるとか下心丸見えだし好きな人がいるので無理です」

 「いやそういうんじゃねえよ……。普通に聞いただけだ。てか振られるスピードえげつなくない?なに、ガトリンなの?」

 

 男子によくありがちなパターンそのいち──遠まわしに好きな人がいないことを確認してくる。

 まさか先輩がそんな手を使ってくるとは、油断大敵ですね。っていうかガトリンって何?

 

 まくし立てて喋ったせいで肩で息をする私を見ながら、「まあなんでもいいけど、生徒会長も案外悪くないんじゃねえの」と帰り支度を始める先輩。呆れ顔しているように見えるのは気のせい気のせい。

  

 「もうかえるんですか?」

 「あぁ。今日はちょっと疲れてるんだよ」

 

 「小町と喧嘩しちゃったし」とゾンビ顔を浮かべる先輩の腰はどこか重そうに見える。コマチ……?お米?

 

 「わたしがお話きいてあげてもいいですよ~?」

 

 今日お話聞いてもらいましたし。人情うすなわたしが珍しくお返しをしてあげようというのに、この先輩ときたら。

 

 「いらん」

 

 すんごい真顔で言われましたとさ。

 …………なんかもう、逆に面白くなってきちゃった。

 

 「可愛い後輩の親切を三文字で切り捨てるなんてひどいです」

 「はいはい、あざといあざとい。てか、初対面からなんでこんなに馴れ馴れしいんだよこの後輩は」

 「あ、待ってくださいよ~」

 

 適当にあしらってそそくさと店をでていく先輩だったけど、わたしがコーヒーを全部飲み終わったのをさりげなく見計らってたみたいだ。それに、もう暗いからと駅まで送ってくれた。落として落として最後にちょっとだけ上げるって、先輩の方があざとくないですかね。

 

 「先輩ってエレベーターみたいな人ですね」

 「なんだよそれ……。人間エレベーターとか、どこの奴隷だよ売れねえよ」

 「先輩が人間とか、何十年前の話ですか?」

 「いやゾンビじゃないから。ちゃんと生きてるから」

 

 初対面とは思えない、気が置けない会話。

 普通の男子が相手ならひたすらに自分を繕って、声もちょっとだけ高くするけれど。先輩のこのやる気のない喋り方に、わたしもちょっとだけ気が抜けてるのかもしれない。本音で話すってこんな感じなのかな?勝手に生徒会に推薦されたというストレスが、すーっと晴れて、引いていく感じがした。

 

 「あっそういえば……」

 

 自転車を押す先輩の横で、思い出したポーズをとるわたし。わざわざとったポーズも、先輩は微塵もこっちを見る気配がないのがちょっとだけむかついた。

 

 「わたし、先輩のこと知ってたかもです」

 「え、なんで?ツイッターで俺の悪口でも書かれてたの?泣いていい?」

 「違いますって。比企谷先輩のことを呟くひとなんて誰一人いないと思いますから」

 「やっぱ泣いていい?」

 

 それはそれで悲しいだろうが……と肩を落として見せる先輩だけど、本気で落ち込んでるわけじゃなさそうなのでそのまま続ける。

 

 「まあツイッターではなく、噂で聞いたことがあるんですよ」

 「噂?」

 「文化祭で女子を言葉責めして泣かせた……とか」

 「い、いや、まあ大体あってんだけどさ。にしても、尾ひれの付き方に悪意しか感じないんだけど」

 「あとは…………修学旅行で告白を横取りした、という話も聞きました。主に戸部先輩から」

 

まあこんな噂を聞いた時はそんな変な人もいるんだな、関わらないようにしなきゃ程度にしか考えてなかったんだけど、もうここまで来たら後戻り出来ないしね。確かに目付きだけだとやらかしかねないけれど、話してみると悪い人ではないということくらいはわかる。

 

 「くそ、あいつには教育が必要だな」

 

 あ、珍しく先輩の顔がちょっとゆがんだ。先輩、戸部先輩みたいなの苦手そうだもんね。でも、アレでも手懐ければ案外便利ですよ?

っべー、ヒキタニくん、まじべーわ。っべー!

 あれ、おっかしーなー。なんだか幻聴が聞こえてきた。わー、うるさ。

 

 「噂って全部、奉仕部が関係してたりするんですか?」

 「まあな。ほんとろくでもないぞあの部活。上司の厳しさとか、ブラック企業といい勝負してるぞ」

 「でも先輩、ブラック企業似合いますよ」

 「全然嬉しくねえ……ブラックで言うなら、お前の腹の方だろうが」

「もう、お腹は肌色に決まってるじゃないですか〜」

 

そうとぼけるわたしに「あざとい・・・・・・」と呆れ顔をする先輩。そういうことは口に出さないものですよー?初対面からあざとくない女子なんていないんですから。

 

 そんな会話をしていると、あっという間に駅についた。 

 久しぶりに、会話が楽しいって思ったかも。なんて。

 

 「送ってくれてありがとうございました」

 「これも仕事だ。気を付けて帰れよ」

 

仕事だからやるという先輩はやっぱりブラック企業が似合うんじゃないかと思ったけれど、口には出さないでおいた。

 

 「はい、これからよろしくお願いします!」

 

 あ、ちょっとこのセリフ取り消したい。ほら、なんかプロポーズのお返事みたいだし。そういうのはもっと特別な日に取っておきたいし…………むー、こうなったら。

 

 「もしかして今ので恋人になったとか思っちゃいましたか別に深い意味は一切合切これっぽっちもないので勘違いしないでくださいごめんなさい」

 「もうなんでもいいけどね……」

 

 疲れ顔を浮かべる先輩に、「では」とお辞儀する。

 

 改札を抜けてもまだ待ってくれていた先輩の目は────うん、遠目から見てもやっぱり目死んでるんだよなぁ。

 

帰り道の足取りが、いつもよりも軽かった気がした。

 

* * * * *

 

 「はあぁぁ……」

 

 一色を駅まで送った後には夕日はすっかり沈み、晴れた空には星が煌めいていた。

 ペダルをこぐ足はいつもよりも重い。

 傍からみたら、煌煌と輝く星の光で体内エナジー吸われているゾンビにでも見えてるんじゃないかと思う。

 ロハでも朝から気分重かったというのに、あざとい後輩から面倒くさそうな依頼もくるしで絶賛大忙し八幡の特売セールだ。

 

 「帰りたくねえなぁ」

 

 人がいないことを確認して、ぼそっとぼやく。

 冬の夜は音がよく響くんだったっけか。まあ、冬っていうには少し早い気もするが。

 

 いつもの俺なら下校中に店によってコーヒーを洒落こむなんてことはせずに光の速度で直帰するのだが、今日はそんな気も起きなかった。

 ことは今朝に遡る。

 

 『また何かやらかしたんでしょ?一つ一つ話してみそ』

 『ん、やっぱなんもないわ』 

 『え~またまた。で、何があったの?』

 『……しつけえよ。いい加減にしろ』

 

 いやはいここだけ聞くと完全に俺が悪いですね。てか、切り取るところ他になかったのん?トリミングセンスなさすぎでしょ……。いやどことっても多分俺が百悪いんだけどさ。

 

 とはいえ、兄弟喧嘩なんてこんなものだ。些細な事でいらいらするし、それで数日顔すら合わせなくなることもよくある。兄妹だからこそ、干渉されたくないことだってあるのだ。今までの俺なら、そんなこともなかったんだが……。

 …………くそ、小町へどう謝ろうかを考えたいのになぜか先のあざとい後輩、あざ後輩が脳裏を横切る。もう頭の中一色フィーバーなんですけどやだもう好きかもっ!

 

 「生徒会長、ねぇ」

 

奉仕部に来た時には確信はなかったが、先程マンツーで話してから一色という人間がわかった気がする。一色があのあざとキャラを計算して作っているなら、逆にそれを手玉にとって生徒会長に押し上げるということは可能だ。方法はまあ、さっきもやった通り説得しかないんだが・・・・・・今のところは望み薄なんだよなぁ。

 

 そもそも我々部外者からすれば、生徒会なんて何してるかわからないけど何かすごいことをしてる人たちの集まり程度にしか認識がない。そのくらい無関係者にとって生徒会という組織に興味なんてないのだ。正直生徒会に入るやつらは何が楽しくて立候補するんだろうか。クラスという組織にすら溶け込めていない俺にとっては、気が狂っているとしか思えないんだが。

 いやしかし、何しているかわからない組織、か。秘密結社というか、四天王感あってちょっとかっこいいな……。

 

 ──と、中学時代の病気が目を醒ましかけたところで、ポケットの中からスマホのバイブレーションが響いた。

 なんだ?前の迷惑メールは着拒したはずなんだが……

 あ、これ電話の着信音か。し、知ってたんだからね!誰からも電話こないから着信音を忘れてたとかそんなんじゃないんだからっ!

 『平塚先生』と表示された液晶に怯えを抱きつつ、恐る恐るスマホを耳に近づける。

 

 「もしもし……?」

 『あー、比企谷、私だ。遅くにすまんな』

 「どうかしたんですか?」

 

 電話の理由を問うと、平塚先生はどこか気まずそうに「いや……」とためらってから、先を続けた。

 

 『比企谷お前、生徒会長になりたいのか?』

 

 「…………は?」

 

 だいぶ間抜けな声が、夜空に響いた。




女子視点ってこんなにムズいんだね・・・・・・もっと女の子と話す練習しとかなきゃ・・・・・・。なんかいろはの初期好感度が高い気もするし・・・・・・でもっ!!(苦悩)

更新頻度、もっと上げたいんだけどなぁ・・・。さすがに一週間一本じゃあ遅いですよね。
もっと頑張りたい。頑張ってヒトカラ行ってきます。

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