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楽しんでいってくだされば何よりです。
猫執事が語る、英雄召喚の真実とは・・。
「まず、説明の前にこの世界についての説明を致します。ここはエクディが居た時代よりも約1000年後の未来と思ってください。」
「思ってください?」
説明に不思議な言葉があった為、エクディはクワマンへツッコミをいれる。
対するクワマンは少し顔をしかめるが、慌てる事無く言い直す事にした。
「いや、失敬。ここは1000年後の未来にあたる時代です。
約1000年前に世界に蔓延っていた魔族を統べる王『魔王』。歴史上それを討ったのが貴方となっています。」
一旦区切り溜息混じりに再び口を開く。
「・・・まぁ、その様子ではまだ討つ前、英雄になる前のエクディのようですが、今更な話ですね。
・・話を戻しますと、この世界に再び魔王、いや、それに近い闇の魔王が生まれたと聞いています。」
「それと俺とどう関係があるんッスか?」
「どうやらその闇の魔王は因果を繰る者らしく英雄とされたものにしか討てないのです。」
「ははーん。それで俺ッスか。まぁ人助けは嫌いじゃないッスから別に構わないッスけど・・。」
一通りの説明を聞き、召喚された理由などを聞き入れ、納得した上で協力する事にしたエクディ。
でも、その前にどうしても猫執事に聞きたい事が出来たらしく、問いを投げる。
「一つ質問があるッス。
クワマンは何故その闇の魔王についてそこまで詳しいんスか?」
「詳しい、というのは些か御幣があります。
まず第一に先程の話は一応この町の神父様より聞いた話になります。
情報の発生源はおそらく教会の上層部。聖王教会かと思われます。
多分、そこに幾分かの未来視能力を持つ方が情報を集めているのでしょう。」
「成る程、理解したッス。
つまり今は『伝説』の加護があるからなんとかなるけど・・
その闇の魔王とやらを倒すにはその『伝説』と平行に『英雄』レベルの戦闘力が必要になる・・ってとこッスか?」
問いの返答を聞き、エクディは自身の推論を紡ぐ。
その言葉に猫執事は肯定の意を示した。
「その通り、世界を知り、己を知り、戦いを知り、そして人は英雄になる。
・・・まぁ憶測ではありますけどね。」
「とりあえず、私には理解できなかった!!」
クワマンとエクディの会話を傍らで聞いていたごろーはそんな事を呟いた。
今度は彼女が半ば空気である・・。
「まぁとりあえず旅支度を・・・。そうですね、道具屋とその神父様には会って置いたほうがいいかもしれません。」
「じゃあまずはふくにぃのとこだねっ!!」
「ふくにぃ?」
「道具屋亭主の方です・・・というかお嬢様。彼はそのあだ名は嫌だと前から・・。」
「私が呼ぶと決めたッ!この決定に変更は無いッ!!」
「「どこの暴君ッスか(なのですか)」」
全力で言い切ったごろーの言葉に猫執事と英雄予定は口を揃えてツッコミをいれたのであった・・。
――――――――――――――――――
―道具屋―
クウェルスという小さな町でも当然あるその場所は、
冒険者向けのアイテムから家庭用品、果ては雑貨とあらゆるモノを取り揃えている場所であった。
そこに二人と一匹の客が来店する。
どうやら顔見知りらしく、店主は客へ声をかけた。
「おや?二人揃っては珍しい。何か入用かな?」
しかしそんな問いを無視してごろーはエクディに力説を開始した。
「えっちゃんっ!紹介しよう。
彼が先程話しに出ていた道具屋亭主ふくろ殿だ。
私はもっぱら愛称で『ふくにぃ』と、そう呼んでいる。」
無い胸を張り偉そうにいうごろー。
本人の前でもブレない精神はすばらしいが、成長する方向性が間違っているようにも思える光景であった。
「だっ!もうっ!毎回言ってるけどその愛称はダメだって。」
クワマンの言ったとおり、全力で否定している亭主。
多分とても恥ずかしいのだろう。ちょっと顔が赤い。
「・・っと、申し訳ない。そこの紅い髪の少年。
俺はふくろだ。よろしく頼む。」
「あぁ、俺はエクディだ。こちらこそよろしく。」
いつものやり取りをしていたが、見知らぬ人物に気付き自己紹介を交わす二人。
するとエクディの名前を聞いた道具屋が驚愕の表情に変わった。
「エクディ・・っていうと・・クワマン?成功したのか?」
どうやら英雄召喚を行う事についてはクウェルスの人たちには知れ渡っているようである。
道具屋の言葉に肯定の意味を伝えつつ説明をするクワマン。
「えぇ、召喚自体は成功しました。ですが、まだ英雄の域には達していないようで、それ故旅にと・・。」
「OKだ。その話はなんだか面白そうだ。そのたび、俺も同行させてもらうぜ!!」
そういうと旅支度を開始しようとする道具屋亭主。
対してクワマンは怪訝な表情で問いをかけた。
「正直な所、とても助かりますが・・その、お店は大丈夫なのですか?」
たった一人されど町の亭主なのだ。
そんな人がふらり1人旅などして大丈夫なのだろうかという事である。
「万が一を見越して、防具屋の亭主殿には話を通してあるから。」
だから大丈夫だそうだ。
道具屋が大丈夫といっているのだ、それ以上の問いは野暮というものだろう。
一同は町の中央に位置する教会を目指した。
――――――――――――――――――
―クウェルス教会―
厳かな雰囲気の中、信者が集うその中央に位置する神父様のところに向かう一同。
途中信者の1人である冒険者に
「武器や防具はな、持ってるだけじゃダメだ。ちゃんと装備しないとな。」
といわれた。どうやら武器屋や防具屋で説明するのが疲れたらしい。
故に座っているらしいのだが・・・
ごろーの「歳ですね」なんて辛辣な一言に黙り込んでしまったのは言うまでも無い・・。
エクディがそんな事を考えているといつの間にか神父様との会話は終わったのか、
クワマンを筆頭として教会を出た。
「仕方ありません。我々は先に進みましょう。」
「Gさんは放置なの?」
どうやら探していた神父の名前らしい。
代行者:G。
「いえ、Gさんのことです。多分、仕事帰りに近くの村に滞在している可能性もありますので、途中で話を通せばよいかと。」
「うん!じゃあ先に進もうか!!」
そんなこんなで次の町へ向かう事と為った一同はクウェルスを後にした。
――――――――――――――――――
次の町に行く為に一同は越えなければならない場所があった。
―トレスティム鉱山―
昔はよく鉱石の採掘が行われていた場所だったが、今では掘り尽くされており魔物たちの住処と化していた。
そんな場所であった。
まだ人が作った当時の道があるだけ良かっただろう。
「っていうか・・・クワマン強すぎやしないッスか?」
「伊達に猫執事を名乗っていませんよ。」
正直エクディは不安だったのだ。このメンバーが。
何故なら、英雄予定と、魔法が使えない召喚士と、猫に、道具屋である。
明らかに前衛は自分だけだったからだ。
だが、戦ってみるとどうだろう。
正直、猫執事を侮っていたとしか思えない戦力だった。
その俊敏さを生かした一撃、その連撃である。
正直元の世界に戻った時、猫と普通に触れ合えるか疑問に思うエクディであった。
「いや~悪いねぇ~」
「助かるぜッ!」
「働けッスッ!!」
二人の力ない言葉に全力でツッコミをいれるエクディ。
いや、正確にはクワマンや自分が討ち漏らした敵を迎撃しているのがふくろなのだ。
故に一切働いてないのは一人・・ごろーだった。
「おおっと手が滑りましたッ!!」
そういいながらクワマンは自身の爪を投擲する、相手はごろーである。
「おおおおおお!?」
寸前の所で避けるごろーは恐怖か、驚愕か分からないが震えていた。
「な、な、なにするだぁ!!」
くわっ!!と言うごろーに猫執事であるクワマンは臆する事無く返答した。
「お嬢様言いましたよね?戦えない事と戦わない事は違うと。せめて警戒くらいはしてください。
次は当てますよ?」
「わっ、わかりましたっ!!」
言い返すと思ったが、やはりクワマンに頭が上がらないごろーであった。
「(いや、その前にその爪どうやって投擲したんッスか・・・)」
対してエクディからすれば・・・クワマンについての謎が深まる一瞬であった。
――――――――――――――――――
一同は奥へと進むと、出口まであと少しと言うところで今、立ち止まっている。
何故なら、目の前を巨大なスライムが居るからである。
「(どうでもいいッスけど、スライム率が高すぎやしないッスか?)」
そんな事を考えたエクディは悪くないはず。
「おそらくはこの鉱山におけるスライムの大将といったところでしょうか。」
「まぁ倒さねば先に進めないしな。ごろーさんも自分のみは自分で護ってくれよッ!」
「なっ!ふくにぃの薄情者っ!」
「我侭を言わないで下さい、お嬢様。
もとよりふくろ殿は戦闘職ではないのですから。」
「むぅ、仕方ないか。でもクー君、命令です。絶対勝ちさない。」
「yes my master.」
この一瞬だけをみれば、ごろーさんはお嬢様でクワマンは従者だろう。
変なメンバーではあるが悪くは無いな、などと思いながら一同はスライムの前に躍り出た。
「貴殿に恨みは無いが、道を通る為です。大人しく沈黙していただきましょう。お嬢様ッ!」
「うんっ!!ダイアナッ!!」
そういうとごろーを中心に魔法陣が展開し、その背後には巨大な植物のような生物が出現した。
ついでにごろーの前には一枚の鏡が出現する。
「な、なんなんッスか?それはっ!!」
そんな魔法はエクディの時代には存在しなかったのだから仕方が無い。
「クーくんに教わった召喚魔法だよ。
まぁ系統だけをいうなら・・って注意が付くけど。ついでに能力はアナライズ。
戦闘能力は皆無だから護ってねッ!!」
「なんつー馬鹿げた召喚ッスかッ!!」
そういいごろーに飛び掛るスライムを切り払う。
どうやらスライムもまたあの異物の危険性に気付いたらしい。率先して攻撃を仕掛けている。
「私の力量じゃ全てとはいかないけど、敵の親玉の情報を開示できるんだよっ!」
自信満々に無い胸をはるごろー。
どうやら自分の魔法でエクディを驚かす事に成功したのがよほど嬉しかったのだろう。
・・どうでもいいが、戦闘中である。
「・・あぁ、そうだったね。
大将の名前は『スライムキング』。ステータス的には妙にタフで、チュートリアルスライムのさらに二倍の耐久力。
液体なのに水が弱点みたいだね。戦闘能力自体は並みのスライムと同様程度みたい。
ただ、恐ろしいくらいに幸運に満ちているみたいなんだ。多分状態異常系の攻撃は効かないとみて間違いないね。
えっと、座右の銘は『金さえあれば何でも出来る!!』の通り、珍しくお金を持っているみたい。
どうせ冒険者から奪ったんだから奪われても文句は言えまい!!討ち取って我等の軍資金にしよう!!」
恐ろしく長い説明を終えると気合十分の表情を見せるごろー。
役目をおえたのか背後からダイアナは姿をけし、ごろーのその手に鏡が残る程度であった。
「(アナライズ・・恐るべし。というか、アレ座右の銘でいいのか?)」
などとエクディが1人思ったのも言うまでも無い。
――――――――――――――――――
戦いは正直ワンサイドゲームといっても過言ではなかった。
まぁ先読みが出来る頭脳とソレに対応できる存在がいたのだから当然の結果かもしれない。
エクディとふくろはそんなごろーの護衛だったが、殆どの活躍はクワマンに奪われてしまった。
本当に猫なんだろうか・・疑いたくなるのも無理は無かった。
程なくして、スライムキングは消滅した。
「って、なんでさっ!!」
1人叫ぶのはごろー。
「あ、そうか。スライムキングはお金は持っているが、代わりにかけらはないのか。」
そして納得したように口を開いたのはふくろである。
尚、欠片<かけら>とは、不思議な効力をもった魔石の一種である。
主に魔物のコアを指す言葉でこれをギルドなどにもっていくと戦闘力などを挙げてくれるのだ。
どうやら先程の魔物はそんな欠片とお金が融合してしまった存在らしく、もとよりコアはなかった。
消滅と同時にお金もただのお金に成り果てたのだから、どうにもなるまい。
「くっ、酷いやっ!!戦い損じゃないか!!」
「金を奪っておいて何が損ッスか。」
全力で駄々をこねるごろーに容赦のないツッコミを入れるエクディ。
段々ではあるが、ごろーの扱い方が分かってきたようである。
「ここさえ抜ければ、町はもうすぐのはずです。さぁ行きましょう。」
「ようやく鉱山を抜けるのか、長かったような短かったような・・・だな」
「もうスライムはうんざりッス。早く出るッスよ。」
一同は駄々をこねるごろーを放置して先導をきるクワマンについていく。
正直エクディの言っていることに全員賛同しているようである・・と。
「のァッ!無視するなぁあ~!!」
無視された事に腹を立てたのか、置いていかれた事に腹を立てたのか・・
定かではないが、叫び声をあげながら三人の下に向かうごろー。
結果、その叫びを聞いて集まってきたスライムと第2戦目を繰り広げる羽目となったのであった。
ゲームにはない展開も一部あります。
・・・まぁ身内しかその違いは知れませんけどね(笑)
ありがとうございました。