魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「……はぁ……はぁ……どうにか、倒したな」
「うん……もう魔力殆ど無いけどね」
「わたしも、フリードも、もう戦う気力はありません……」
何とか水竜を行動不能にすることができたが、もうこれ以上戦うことは出来ない。
『ま、まさか……人間ごときに我が倒されるとはな』
「はぁ……はぁ……人間を舐めるなよ。その驕った考えがてめえの敗因なんだよ」
『どうやら、そのようだな……我に勝ったんだ。アクエリアスは持って行くが良い』
そう言って、湖から水柱が立ち、水が消えた後には、光り輝く球体が空中に浮かんでいた。
「あれは?」
『あれが、レアメタル【アクエリアス】だ。この金属は貴様らが知るように、魔力を高めるのに最適な金属だ。それゆえに乱獲を使用とする輩が、古代から絶えなかった。だから、我はレクターの水を守る番人として、人間を追い払ってきた』
「確かに悪用すれば、とんでもないことが起きるしな」
『人間よ。このアクエリアスを正しき使い方をすることを祈る』
そう言って水竜は、空中に浮かんでいた光の魂を、俺たちに渡してくれた。
「ありがとう、水竜」
『礼を言われる筋合いはない。貴様らは我に勝ったのだ。それを受け取ったら、さっさとこの湖から立ち去るが良い』
「ああ……俺たちも湖を荒らす気はないさ。すぐに立ち去るよ。いくか、スバル、キャロ」
「うん!!」
「はい!!」
俺たちがレクター湖から去ろうとしたその時……。
『ケインさん!! スバル、キャロ、応答して!!』
アースラのシャーリーから緊急通信が入った。
ずいぶん血相変えているが、何かあったのだろうか?
「一体どうしたんだよ。そんなに血相を変えて?」
『ケインさん、急いで八神部隊長を助けてもらえませんか!!』
「はやてを? 一体俺がいない間に何があったんだ!!」
『はい、実はケインさん達がそっちに行ってる間に、ルカーノの火山が大爆発したんです!!』
「何だと!! 馬鹿な。あの火山は死火山だぞ!! それが大爆発を起こすなんて……」
この星の都市の一つ、ルカーノ。
そこには今は死火山になっている、ルカーノ火山がある。
だけど、あの火山はもう50年以上前に活動は停止したはず……。
『理由は分かりませんが、今、溶岩が街に向かおうとしているのを、八神部隊長が出撃して、何とか食い止めているんですが、魔法で溶岩を凍らせても、すぐに解けてしまい、その繰り返しで、このままじゃ八神部隊長が!!』
シャーリーがはやての様子をこちらに送ってくれ、それを見ると、確かに凍らせてもすぐに解けてしまい、はやての魔力もつきかけている。
『お願いです、何とか救援に向かってもらえませんか!! ティアナがルカーノで救援活動支援をしてますけど、救援活動が精一杯で、八神部隊長の応援には行けないんです!!』
「シャーリー、俺たちも行きたいのは山々だけど、俺たち3人とも、殆ど魔力は残っていないぞ」
あの水竜と戦ったんだ。
むしろ生きているだけでも奇跡に近い。
そんなときはやてから通信が入ってきた。
『ケイン、心配……せんといてや。こっちは……はぁ……はぁ……私が……必ず食い止めるよ』
「何言ってるんだ!! さっきから凍結魔法を連発してるけど、効果が無いじゃないか!! それにお前の魔力も殆ど無いだろうが!!」
はやての魔法は、普通なら一発で溶岩くらいなら凍らせることが出来るはずなのに、溶岩はまるで意志を持っているかのように、魔法を解除している。
『確かにそうや。けどな。はいそうですかってあきらめるわけにはいかんのや!! なのはちゃんやフェイトちゃんが今まで戦ってくれた。そして今もケインが必死で水竜と戦った。だから、せめてこれくらいは私がせんとあかんのや!! そして……』
『私の目の前で、これ以上死なせはしない。絶対助けてみせる!!』
はやては再び凍結魔法の詠唱に入り……。
『アーテム・デス・アイセス!!』
空中に4つの魔法陣が現れ、発射された光は、眼下の溶岩を凍らせるが……。
ピシ……ピシ・ピシ……
ひび割れと共に、氷は砕け、再び溶岩は街に向かって流れ出した。
「くそったれが!!」
魔力が少ない今の俺が行っても、どうしようもない。
俺はその様子を只見ているしかないのか。
「ケイン……」
「ケインさん……」
『……人間よ。一つ聞きたい』
「何だ……」
『貴様もそうだが、なぜあの者はああまでして、ルカーノを助けようとするのだ?』
「人間はな。大切な人や物のためなら、どんなことをしても助けてやりたいという心があるんだ。はやてだって、自分の信念でルカーノの火山を止めようと必死でやっている。それは打算なんかじゃない!!」
『……』
水竜はしばらく無言の状態でいたが……。
『人間よ。これを持って行くが良い』
そう言って、水竜は自分の右牙を折り、俺に渡してくれた。
「これは……?」
『我の牙は、ありとあらゆる物を凍らせる。例え意志を持っている溶岩といえど例外ではない』
「だが、なぜこれを?」
『……少しだけ見てみたくなったのだ。貴様らがどれだけのことを見せてくれるのかを……』
「水竜……お前……」
『ルカーノには我が転送してやる。さっさと行くが良い』
水竜は、岸辺に転移用の魔法陣を作り出し、俺をルカーノに導いてくれるようだ。
「それじゃ、キャロ、スバル。後のことは頼んだからな。アクエリアスをアースラに届けてくれよ」
「うん!! こっちのことは任せておいてね。ケインは八神部隊長とルカーノの火山を!!」
「ああ、任せておけ!! 必ず、火山は止めてみせる!! そしてはやてもな!!」
「ケインさん。これを受け取ってください」
そう言ってキャロは、俺の右手を握り、残った魔力を俺に手渡してくれた。
「はぁ……はぁ……少ないですけど、少しはお役に立てるはずです」
「ありがとなキャロ。お前だって、魔力が残り少なかったのに……」
「いいんです。今は戦えるのはケインさんだけです。それを考えた上でのことです」
「ケイン、あたしの魔力も持っていって!!」
そしてスバルも、残った魔力を渡してくれた。
そのおかげで、フルパワーとまで行かなかったけど、半分近くは回復することが出来た。
「二人とも、本当にありがとうな。後のことは任せてくれ!!」
『急ぐが良い。あの者はそうはもたないぞ』
スクリーンのはやては、魔力の使いすぎで、今にも力尽きようとしていた。
俺は、転移魔法陣をくぐり、ルカーノに向かった。
俺が行くまで持ちこたえててくれよ!!
* * *
「はぁ……はぁ……どうして……どうして止まってくれへんのや」
さっきから何発も凍結魔法を放っているが、結果は同じだ。
アーテム・デス・アイデスだって、ラグナロクほどじゃないけど魔力を使う。
リインとユニゾンしてるとはいえ、撃ててあと一発……。
『はやてちゃん、これ以上は無理です!! これ以上撃ったら、はやてちゃんが!!』
「リイン、確かに私ももう限界や。だけどな……」
「私は機動六課部隊長、八神はやてや。部下が必死で戦ったのに、私が頑張らないでどうするんや!! この火山を止めるのは私の役目なんや!!」
私は再び、魔力を集中し……。
「これが……これが最後の一発や!!」
『いくです!!』
「『アーテム・デス・アイセス!!』」
白銀の魔力は、火口へ一直線に放たれ直撃と同時に、溶岩は全て凍り付くが……。
やはり今までと同じで、すぐに活動を再開してしまい、再びルカーノの街に迫っていた。
「……もう……あかん……」
『……リイン……もです……』
力尽き、リインともユニゾンアウトしてしまい、地面に激突するのを待つだけだったその時……。
一条の光が現れ……。
「……ったく、そんなボロボロになるまで無茶しやがって」
私とリインは……。
いつの間にか、誰かに抱えられていた。
太陽の光で、見えにくかったけど、目を細めてみてみると……。
* * *
「け、ケイン……?」
「ケイン……さん?」
「おう、どうにか間に合ったな。はやて、リイン。遅れて済まん」
「……助けに……来てくれたんか」
「当たり前だろ。仲間が、大切な奴らが危機にさらされてるのに、駆けつけないわけないだろ。それに……」
「可愛い女の子達なら、なおさらだしな♪」
そう言って、ケインは私とリインの頭を、それぞれポンと置いてニカッと笑った。
「あ、あほ……」
「ケインさんったら、こんな時までおちゃらけて……」
「あはは、悪い、悪い。……でも、間に合って良かった。二人ともあんまり無茶をするな。マジで心配したんだからな」
「「ケイン (さん)……」」
「今はゆっくり休め。後のことは俺に任せろ」
「せやけど、どうやってあの火山を止めるんや。悪いけど、ケインの凍結魔法ではあの火山は……」
氷結系の魔法が苦手なケインでは、私より強い凍結魔法を撃つことは出来ない。
一体どうやって止めるというんや。
「心配無用。これを見てくれ」
ケインが懐から取り出したのは、水色の光を放つ牙――――。
* * *
「それは……?」
「水竜がくれた水竜の牙だ。これであのルカーノの溶岩は凍り付くはずだ」
水竜の話が本当なら、あの意志を持っている溶岩さえも沈黙させられる。
話を信じるなら、投げ込めば、力が解放され、あっという間に溶岩は沈黙するはず。
「それじゃ、二人とも今地上に降ろすから、そこで休んでいてくれ」
「あ、あのな、ケイン。私も一緒にルカーノ火山を止めるところ見たいんや。我が侭を言ってるのは分かってる。でも、どうしても自分の目でちゃんと見ておきたいんや!!」
「はやて、お前……」
「ごめんな。こんなことを言って……」
はやての気持ちは、痛いほど分かる。
自分の力が足りなくて、ルカーノの人々を危機にさらしてしまった。
そんな気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
「分かったよ。でも、お前もリインも飛行魔法を使う魔力は残っていないだろ。こうやって俺に抱えられてになるが、それでも良いか?」
「……う、うん……ええよ。嫌や無いし……」
「そ、そっか……」
まさか、はやてからこんな切り返しが来るとは思わなかった。
もっと、ノリ突っ込み的な会話で来ると思っていたのに……。
「むぅ……はやてちゃん、ケインさん、さっさと行くです!!」
「あ、ああ……リイン、なに怒ってるんだよ?」
「怒ってないです!!」
そう言ってるが、頬をぷくっとふくらしている姿は、どうみても怒っているとしか見えないぞ。
「リイン、そんなに怒ってると、ケインに嫌われるで。ケインだってそんなにプンスカしている女の子は、苦手やろ?」
「えっ……? そ、そうなんですか?」
「そんなことねえよ。でも、やっぱ女の子は笑ってくれてると嬉しいな」
「……だったら、リインも女の子として見てくれますか?」
「最初から見てるって、大きくなれることは聞いてるし、それに……」
「あっ……」
「そうやって色んな感情を見せてくれる可愛いリインを、女の子と思わないなんてことは無いから」
「……あ、ありがとうです」
リインは、顔を真っ赤にしてしまったが、もう怒ってはいないようだ。
「さて、これを火口へ投げて、溶岩を止めなきゃな……」
俺は思いっきり振りかぶって……。
「水竜の牙よ!! ルカーノの溶岩を止めてくれ!!」
水竜の牙を火口へ投げ込んだ。
そして……。
溶岩は凍り付き……。
再び活動を開始しようとするが、その度に凍りついていく。
ついに溶岩は活動を停止し……。
ルカーノの街は溶岩の驚異から救われた。
* * *
「や、やった……」
「やりましたです!!」
「ケイン!! やったで!!」
俺たちは空の上で、ルカーノ火山が停止したのを確認すると、大声を上げて喜んだ。
「これで、ルカーノは大丈夫だ。後は街に行って、ティアナの手伝いをするだけだな」
「そやな。ティアナが何とか救助活動をしてくれてるけど、まだ人手は足りないしな」
「そうです!! 私達も駆けつけるです!!」
俺たちがルカーノの街に向かおうとしたその瞬間……。
「危ない!!」
光の刃が空を裂いて、俺たちに向かってきた。
咄嗟に横にかわせたので、何とか難を逃れたが、あと少し気付くのが遅かったら……。
「何や!! いったい何があったんや!!」
「しっ!! 静かに!!」
このまま空中にいるのはまずい。
俺は地上に降り、はやてたちをおろし、凍牙を構える。
それと同時に……。
ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ……。
金属の擦れ合う音がこちらに近づいてくるのが分かる。
そして段々とシルエットが見えてきた。
それは、背の丈が二メートルはあろうかという鎧であった。
しかも、その関節部に見える鎧の中は闇に包まれていた。
まるで鎧が魂を持って生きているかのようだった。
「貴公、ケイン・ラーディッシュか?」
魔物は兜から覗く一つ目を輝かせながら言った。
「なぜ、俺の名前を!? まさか、きさまも!!」
「いかにも、我はダークロード様にお仕えする、魔王三邪星の【ソードマスター】なり。我、貴公の腕を試させていただく!!」
「試す? 殺すの間違いだろ」
俺は半ば自棄に言った。
だが、ソードマスターは冷静そのものだった。
「いずれでも、問題なし」
ソードマスターはそう言って剣を構える。
ソードマスターの持つ剣にオーラの輝きを感じたのだ。
『凍牙』と同じ輝きを持つオーラを――――。
「ま、まさか!? その剣は!!」
「いかにも、我持ちたる剣は、名剣『砕牙』なり」
「……本当にあったんだな。凍牙以外の名剣が……」
「何や? その名剣っつてのは?」
「ああ、名剣は、大昔の戦いで砕けたある名剣が分かれて、5つの剣になったと言われてる。分かってるのは俺が持つ凍牙、そしてあいつがもつ砕牙……」
だが、他の名剣はすでにこの世にはないと言われてたのに……。
まずいな。はやて達はもう魔力は残ってないし、俺も魔力が半分もない。
この状況で戦うのはかなりまずい。
せめて、もう一人いてくれれば……。
ティアナ、早く来てくれ。
ここを乗り切れるのは、お前次第なんだ。