魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

10 / 22
Number;09 ルカーノ火山

「……はぁ……はぁ……どうにか、倒したな」

 

「うん……もう魔力殆ど無いけどね」

 

「わたしも、フリードも、もう戦う気力はありません……」

 

 

何とか水竜を行動不能にすることができたが、もうこれ以上戦うことは出来ない。

 

 

 

『ま、まさか……人間ごときに我が倒されるとはな』

 

「はぁ……はぁ……人間を舐めるなよ。その驕った考えがてめえの敗因なんだよ」

 

『どうやら、そのようだな……我に勝ったんだ。アクエリアスは持って行くが良い』

 

 

そう言って、湖から水柱が立ち、水が消えた後には、光り輝く球体が空中に浮かんでいた。

 

 

「あれは?」

 

『あれが、レアメタル【アクエリアス】だ。この金属は貴様らが知るように、魔力を高めるのに最適な金属だ。それゆえに乱獲を使用とする輩が、古代から絶えなかった。だから、我はレクターの水を守る番人として、人間を追い払ってきた』

 

「確かに悪用すれば、とんでもないことが起きるしな」

 

『人間よ。このアクエリアスを正しき使い方をすることを祈る』

 

 

 

そう言って水竜は、空中に浮かんでいた光の魂を、俺たちに渡してくれた。

 

 

 

「ありがとう、水竜」

 

『礼を言われる筋合いはない。貴様らは我に勝ったのだ。それを受け取ったら、さっさとこの湖から立ち去るが良い』

 

「ああ……俺たちも湖を荒らす気はないさ。すぐに立ち去るよ。いくか、スバル、キャロ」

 

「うん!!」

 

「はい!!」

 

 

 

俺たちがレクター湖から去ろうとしたその時……。

 

 

 

『ケインさん!! スバル、キャロ、応答して!!』

 

 

 

アースラのシャーリーから緊急通信が入った。

ずいぶん血相変えているが、何かあったのだろうか?

 

 

 

「一体どうしたんだよ。そんなに血相を変えて?」

 

『ケインさん、急いで八神部隊長を助けてもらえませんか!!』

 

「はやてを? 一体俺がいない間に何があったんだ!!」

 

『はい、実はケインさん達がそっちに行ってる間に、ルカーノの火山が大爆発したんです!!』

 

「何だと!! 馬鹿な。あの火山は死火山だぞ!! それが大爆発を起こすなんて……」

 

 

 

この星の都市の一つ、ルカーノ。

そこには今は死火山になっている、ルカーノ火山がある。

 

だけど、あの火山はもう50年以上前に活動は停止したはず……。

 

 

 

『理由は分かりませんが、今、溶岩が街に向かおうとしているのを、八神部隊長が出撃して、何とか食い止めているんですが、魔法で溶岩を凍らせても、すぐに解けてしまい、その繰り返しで、このままじゃ八神部隊長が!!』

 

 

 

シャーリーがはやての様子をこちらに送ってくれ、それを見ると、確かに凍らせてもすぐに解けてしまい、はやての魔力もつきかけている。

 

 

『お願いです、何とか救援に向かってもらえませんか!! ティアナがルカーノで救援活動支援をしてますけど、救援活動が精一杯で、八神部隊長の応援には行けないんです!!』

 

「シャーリー、俺たちも行きたいのは山々だけど、俺たち3人とも、殆ど魔力は残っていないぞ」

 

 

 

あの水竜と戦ったんだ。

むしろ生きているだけでも奇跡に近い。

 

そんなときはやてから通信が入ってきた。

 

 

 

『ケイン、心配……せんといてや。こっちは……はぁ……はぁ……私が……必ず食い止めるよ』

 

「何言ってるんだ!! さっきから凍結魔法を連発してるけど、効果が無いじゃないか!! それにお前の魔力も殆ど無いだろうが!!」

 

 

はやての魔法は、普通なら一発で溶岩くらいなら凍らせることが出来るはずなのに、溶岩はまるで意志を持っているかのように、魔法を解除している。

 

 

 

『確かにそうや。けどな。はいそうですかってあきらめるわけにはいかんのや!! なのはちゃんやフェイトちゃんが今まで戦ってくれた。そして今もケインが必死で水竜と戦った。だから、せめてこれくらいは私がせんとあかんのや!! そして……』

 

『私の目の前で、これ以上死なせはしない。絶対助けてみせる!!』

 

 

 

はやては再び凍結魔法の詠唱に入り……。

 

 

 

『アーテム・デス・アイセス!!』

 

 

空中に4つの魔法陣が現れ、発射された光は、眼下の溶岩を凍らせるが……。

 

 

ピシ……ピシ・ピシ……

 

 

ひび割れと共に、氷は砕け、再び溶岩は街に向かって流れ出した。

 

 

 

「くそったれが!!」

 

 

 

魔力が少ない今の俺が行っても、どうしようもない。

俺はその様子を只見ているしかないのか。

 

 

 

「ケイン……」

 

「ケインさん……」

 

『……人間よ。一つ聞きたい』

 

「何だ……」

 

『貴様もそうだが、なぜあの者はああまでして、ルカーノを助けようとするのだ?』

 

「人間はな。大切な人や物のためなら、どんなことをしても助けてやりたいという心があるんだ。はやてだって、自分の信念でルカーノの火山を止めようと必死でやっている。それは打算なんかじゃない!!」

 

『……』

 

 

水竜はしばらく無言の状態でいたが……。

 

 

『人間よ。これを持って行くが良い』

 

 

 

そう言って、水竜は自分の右牙を折り、俺に渡してくれた。

 

 

「これは……?」

 

『我の牙は、ありとあらゆる物を凍らせる。例え意志を持っている溶岩といえど例外ではない』

 

「だが、なぜこれを?」

 

『……少しだけ見てみたくなったのだ。貴様らがどれだけのことを見せてくれるのかを……』

 

「水竜……お前……」

 

『ルカーノには我が転送してやる。さっさと行くが良い』

 

 

 

水竜は、岸辺に転移用の魔法陣を作り出し、俺をルカーノに導いてくれるようだ。

 

 

「それじゃ、キャロ、スバル。後のことは頼んだからな。アクエリアスをアースラに届けてくれよ」

 

「うん!! こっちのことは任せておいてね。ケインは八神部隊長とルカーノの火山を!!」

 

「ああ、任せておけ!! 必ず、火山は止めてみせる!! そしてはやてもな!!」

 

「ケインさん。これを受け取ってください」

 

 

そう言ってキャロは、俺の右手を握り、残った魔力を俺に手渡してくれた。

 

 

「はぁ……はぁ……少ないですけど、少しはお役に立てるはずです」

 

「ありがとなキャロ。お前だって、魔力が残り少なかったのに……」

 

「いいんです。今は戦えるのはケインさんだけです。それを考えた上でのことです」

 

「ケイン、あたしの魔力も持っていって!!」

 

 

 

そしてスバルも、残った魔力を渡してくれた。

そのおかげで、フルパワーとまで行かなかったけど、半分近くは回復することが出来た。

 

 

 

「二人とも、本当にありがとうな。後のことは任せてくれ!!」

 

『急ぐが良い。あの者はそうはもたないぞ』

 

 

スクリーンのはやては、魔力の使いすぎで、今にも力尽きようとしていた。

 

俺は、転移魔法陣をくぐり、ルカーノに向かった。

 

 

俺が行くまで持ちこたえててくれよ!!

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「はぁ……はぁ……どうして……どうして止まってくれへんのや」

 

 

 

さっきから何発も凍結魔法を放っているが、結果は同じだ。

アーテム・デス・アイデスだって、ラグナロクほどじゃないけど魔力を使う。

 

リインとユニゾンしてるとはいえ、撃ててあと一発……。

 

 

 

『はやてちゃん、これ以上は無理です!! これ以上撃ったら、はやてちゃんが!!』

 

「リイン、確かに私ももう限界や。だけどな……」

 

「私は機動六課部隊長、八神はやてや。部下が必死で戦ったのに、私が頑張らないでどうするんや!! この火山を止めるのは私の役目なんや!!」

 

 

私は再び、魔力を集中し……。

 

 

 

「これが……これが最後の一発や!!」

 

『いくです!!』

 

「『アーテム・デス・アイセス!!』」

 

 

 

白銀の魔力は、火口へ一直線に放たれ直撃と同時に、溶岩は全て凍り付くが……。

やはり今までと同じで、すぐに活動を再開してしまい、再びルカーノの街に迫っていた。

 

 

 

「……もう……あかん……」

 

『……リイン……もです……』

 

 

 

力尽き、リインともユニゾンアウトしてしまい、地面に激突するのを待つだけだったその時……。

 

 

一条の光が現れ……。

 

 

 

「……ったく、そんなボロボロになるまで無茶しやがって」

 

 

 

私とリインは……。

 

 

いつの間にか、誰かに抱えられていた。

 

 

太陽の光で、見えにくかったけど、目を細めてみてみると……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「け、ケイン……?」

 

「ケイン……さん?」

 

「おう、どうにか間に合ったな。はやて、リイン。遅れて済まん」

 

「……助けに……来てくれたんか」

 

「当たり前だろ。仲間が、大切な奴らが危機にさらされてるのに、駆けつけないわけないだろ。それに……」

 

「可愛い女の子達なら、なおさらだしな♪」

 

 

そう言って、ケインは私とリインの頭を、それぞれポンと置いてニカッと笑った。

 

 

 

「あ、あほ……」

 

「ケインさんったら、こんな時までおちゃらけて……」

 

「あはは、悪い、悪い。……でも、間に合って良かった。二人ともあんまり無茶をするな。マジで心配したんだからな」

 

「「ケイン (さん)……」」

 

「今はゆっくり休め。後のことは俺に任せろ」

 

「せやけど、どうやってあの火山を止めるんや。悪いけど、ケインの凍結魔法ではあの火山は……」

 

 

 

氷結系の魔法が苦手なケインでは、私より強い凍結魔法を撃つことは出来ない。

一体どうやって止めるというんや。

 

 

 

「心配無用。これを見てくれ」

 

 

 

ケインが懐から取り出したのは、水色の光を放つ牙――――。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「それは……?」

 

「水竜がくれた水竜の牙だ。これであのルカーノの溶岩は凍り付くはずだ」

 

 

 

水竜の話が本当なら、あの意志を持っている溶岩さえも沈黙させられる。

話を信じるなら、投げ込めば、力が解放され、あっという間に溶岩は沈黙するはず。

 

 

 

「それじゃ、二人とも今地上に降ろすから、そこで休んでいてくれ」

 

「あ、あのな、ケイン。私も一緒にルカーノ火山を止めるところ見たいんや。我が侭を言ってるのは分かってる。でも、どうしても自分の目でちゃんと見ておきたいんや!!」

 

「はやて、お前……」

 

「ごめんな。こんなことを言って……」

 

 

はやての気持ちは、痛いほど分かる。

自分の力が足りなくて、ルカーノの人々を危機にさらしてしまった。

 

そんな気持ちがヒシヒシと伝わってくる。

 

 

 

「分かったよ。でも、お前もリインも飛行魔法を使う魔力は残っていないだろ。こうやって俺に抱えられてになるが、それでも良いか?」

 

「……う、うん……ええよ。嫌や無いし……」

 

「そ、そっか……」

 

 

 

まさか、はやてからこんな切り返しが来るとは思わなかった。

もっと、ノリ突っ込み的な会話で来ると思っていたのに……。

 

 

 

「むぅ……はやてちゃん、ケインさん、さっさと行くです!!」

 

「あ、ああ……リイン、なに怒ってるんだよ?」

 

「怒ってないです!!」

 

 

そう言ってるが、頬をぷくっとふくらしている姿は、どうみても怒っているとしか見えないぞ。

 

 

 

「リイン、そんなに怒ってると、ケインに嫌われるで。ケインだってそんなにプンスカしている女の子は、苦手やろ?」

 

「えっ……? そ、そうなんですか?」

 

「そんなことねえよ。でも、やっぱ女の子は笑ってくれてると嬉しいな」

 

「……だったら、リインも女の子として見てくれますか?」

 

「最初から見てるって、大きくなれることは聞いてるし、それに……」

 

「あっ……」

 

「そうやって色んな感情を見せてくれる可愛いリインを、女の子と思わないなんてことは無いから」

 

「……あ、ありがとうです」

 

 

リインは、顔を真っ赤にしてしまったが、もう怒ってはいないようだ。

 

 

 

「さて、これを火口へ投げて、溶岩を止めなきゃな……」

 

 

俺は思いっきり振りかぶって……。

 

 

「水竜の牙よ!! ルカーノの溶岩を止めてくれ!!」

 

 

水竜の牙を火口へ投げ込んだ。

 

 

そして……。

 

 

溶岩は凍り付き……。

 

 

再び活動を開始しようとするが、その度に凍りついていく。

 

 

ついに溶岩は活動を停止し……。

 

 

ルカーノの街は溶岩の驚異から救われた。

 

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

「や、やった……」

 

「やりましたです!!」

 

「ケイン!! やったで!!」

 

 

 

俺たちは空の上で、ルカーノ火山が停止したのを確認すると、大声を上げて喜んだ。

 

 

 

「これで、ルカーノは大丈夫だ。後は街に行って、ティアナの手伝いをするだけだな」

 

「そやな。ティアナが何とか救助活動をしてくれてるけど、まだ人手は足りないしな」

 

「そうです!! 私達も駆けつけるです!!」

 

 

 

俺たちがルカーノの街に向かおうとしたその瞬間……。

 

 

 

「危ない!!」

 

 

 

光の刃が空を裂いて、俺たちに向かってきた。

咄嗟に横にかわせたので、何とか難を逃れたが、あと少し気付くのが遅かったら……。

 

 

 

「何や!! いったい何があったんや!!」

 

「しっ!! 静かに!!」

 

 

 

このまま空中にいるのはまずい。

俺は地上に降り、はやてたちをおろし、凍牙を構える。

 

 

それと同時に……。

 

 

ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ……。

 

 

金属の擦れ合う音がこちらに近づいてくるのが分かる。

 

 

そして段々とシルエットが見えてきた。

 

 

それは、背の丈が二メートルはあろうかという鎧であった。

しかも、その関節部に見える鎧の中は闇に包まれていた。

 

まるで鎧が魂を持って生きているかのようだった。

 

 

 

「貴公、ケイン・ラーディッシュか?」

 

 

 

魔物は兜から覗く一つ目を輝かせながら言った。

 

 

 

「なぜ、俺の名前を!? まさか、きさまも!!」

 

「いかにも、我はダークロード様にお仕えする、魔王三邪星の【ソードマスター】なり。我、貴公の腕を試させていただく!!」

 

「試す? 殺すの間違いだろ」

 

 

 

俺は半ば自棄に言った。

だが、ソードマスターは冷静そのものだった。

 

 

 

「いずれでも、問題なし」

 

 

 

ソードマスターはそう言って剣を構える。

ソードマスターの持つ剣にオーラの輝きを感じたのだ。

 

『凍牙』と同じ輝きを持つオーラを――――。

 

 

 

「ま、まさか!? その剣は!!」

 

「いかにも、我持ちたる剣は、名剣『砕牙』なり」

 

「……本当にあったんだな。凍牙以外の名剣が……」

 

「何や? その名剣っつてのは?」

 

「ああ、名剣は、大昔の戦いで砕けたある名剣が分かれて、5つの剣になったと言われてる。分かってるのは俺が持つ凍牙、そしてあいつがもつ砕牙……」

 

 

だが、他の名剣はすでにこの世にはないと言われてたのに……。

 

まずいな。はやて達はもう魔力は残ってないし、俺も魔力が半分もない。

この状況で戦うのはかなりまずい。

 

 

せめて、もう一人いてくれれば……。

 

 

ティアナ、早く来てくれ。

ここを乗り切れるのは、お前次第なんだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。