魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「エリオ、そっちの被害状況は!!」
「はい、東地区は殆ど住民の避難は終わっています。あとは西地区だけです!!」
あたしとエリオは八神部隊長の指示で、ルカーノの救助活動に参加していた。
部隊長が何度も凍結魔法を放っているが、効果はなく、もうどうしようもないと思っていたが、ケインが駆けつけてくれ、ルカーノ火山は活動を停止したけど……。
「火山は停止したけど、街の被害は収まったわけではないのよね……」
「はい、でも、もう少ししたら応援が来ますよ」
もうすぐ現地の管理局員も到着から、そこまで持ちこたえれば、何とかなるわ。
そんなときアースラから緊急通信が入った。
『エリオ、ティアナ、大変なの!!』
「どうしたんですか、ルキノさん。そんなに慌てて?」
「一体何があったんですか?」
『実は、部隊長とケイン君が、謎の敵に遭遇して現在戦闘中なの!!』
「何ですって!!」
『しかも、部隊長もケイン君も、もう残り魔力がないから、いつやられてもおかしくないの!!』
確かに部隊長もルカーノ火山を止めるのに、大量の魔力を使っていた。
ケインは、水竜と戦っていたから、全力とはほど遠い。
『ティアナ、エリオ、何とか火山に行って部隊長達の応援に回れない!?』
「応援に行きたいのは、山々なんですけど……」
「まだ、交代局員が来ないんです……」
予定の時間になっても、まだ交代の局員は来ていない。
そう思っていたら、空からヘリが降りてきた。
「済みません。救援物資をそろえるのに時間がかかってしまって!!」
「やっと来たわ。これで交代が出来る。エリオ、悪いけど後のことはお願いね!!」
「はい、まかせてください!!」
あたしはエリオ達に、ルカーノの救助活動を任せ、ケイン達の救援に向かった。
何とか持ちこたえてなさいよ、ケイン。
* * *
「このぉぉぉぉおお!!」
「なんの!!」
俺が全力で凍牙を振り下ろすが、ソードマスターは砕牙であっさりと受け止める。
しかも、こちらは余力は残されてないのに対し、あちらはまだまだ余裕が感じる。
「それが貴公の全力か……」
「あいにく、これでも全力でね……」
「その程度ではダークロード様はおろか、我にも勝つことはできんぞ!!」
ソードマスターの剣閃で俺は岩に叩きつけられてしまった。
「「ケイン (さん)!!」」
「貴公にはもう少し期待をしていたのだがな」
砕牙が俺の首元に突きつけられ……。
「くっ……」
「これで貴公も終わりだな……」
「ソードマスター、一つだけ聞かせろ。ルカーノ火山を噴火させたのはお前の仕業か!?」
「……冥土のみやげに聞かせてやろう。いかにもあれはダークロード様のご命令で、我がしたのだ。ダークロードの魔力で溶岩に意志を持たせてな」
「それで、凍結魔法が効かなかったのか!!」
これで納得がいった。
ダークロードなら、そのくらい簡単にできる。
死火山が目覚めたのも、合点がいく。
「これで分かったろ。では、さらばだ」
上段から振り下ろされた砕牙が、俺を斬ろうとしたその時……。
ドゴオオオオオオン
「むぅ……」
オレンジの魔力弾が砕牙の軌道をそらし、刃は俺の頬の横をかすめた。
「何者!?」
ソードマスターが弾が飛んできた方向を見ると……。
そこにはいたのは……。
「ケイン、部隊長、大丈夫!?」
「「ティアナ!!」」
ルカーノで救助活動をしていたティアナだった。
そして、ティアナは持っていた閃光弾を投げ……。
カッ
「くっ!!」
強烈な光と共にソードマスターは視界が効かなくなり、その隙に俺たちは近くの岩場に姿を隠した。
「ティアナ、どうしてここに!?」
「ルキノさんから、あんた達のピンチを聞いてね。丁度現地局員が来てくれたから、後のことはエリオとその連中に任せてきたのよ」
「そうやったんやな。助かったで……」
「助かったですぅ」
「安心するのはまだ早いです。二人とももう殆ど戦えない状態ですし、ケインもかなりのダメージがあります」
ティアナの言うとおり、ここで戦えるのは、俺とティアナだけだ。
しかも俺は、ソードマスターにかなり傷を負わされている。
「逃がしてくれるような相手ではないしな」
「無理ね……。それだったら、とっくに撤退を選んでるでしょう」
「せやな」
「ケイン、あたしに一つ考えがあるんだけど……」
「考え?」
「ええ……」
* * *
「ソードマスター!!」
「ほう……出てきたか。貴公と、そのオレンジ髪の少女だけか?」
「あんたのねらいは俺だけだろ。だったら関係のないはやて達はいいだろ」
「我は貴公の腕を確かめるだけに来ただけだ。他の人間は関係ない。少女よ。死にたくなかったら、他の女と同じく退くがいい」
「そうはいかないのよね。確実に全滅させられるって分かってるのに、足掻かないのは性に合わないの。だから……」
そう言ってティアナは―――――。
「最後まであがかせてもらうわ!!」
自分のデバイスの銃口をソードマスターに向け、戦う意志を見せた。
「……良い眼だ。ならばそなたも一人の戦士として見させてもらう!!」
ソードマスターは、再び砕牙の切っ先を俺たちに向け……。
「見せてみろ!! 貴公達の意地を!!」
「ティアナ……奴さん。マジになってるぞ」
「そんなことは分かってるわよ。ケイン、さっき説明した作戦は、あんたがソードマスターを足止めしてくれるかにかかってるんだからね」
ティアナの作戦はこうだ。
ここら一体は、さっきからはやてが凍結魔法を放ち続けてきたので、魔力素が充満している。
それを利用して、集束砲を撃とうと言うことだ。
いつものティアナでは、ソードマスターを倒す威力はないけど、これだけの魔力素を集めれば、充分な威力を持たせることが出来る。
俺たちはこれにかけることにした。
「やってみせるさ。俺がここで意地を見せないでどうするんだ。持ちこたえてみせるさ、お前のためにもな……」
「期待してるわよ。ケイン」
「おう……いくぜ!!」
俺は残りの魔力を使い、フレア・ストライクの体制に入った。
「ほほぅ……その技は先ほども使い、通じなかったのを忘れたのか」
今の俺の魔力では、フレア・ストライクもダイヤモンドブレイカーも、通用しないのは分かっている。
だけど……。
「この俺を……人間を舐めるなよ!!」
上空に飛び上がり、凍牙を振り下ろし……。
「ハアアアアア!!」
「ムウウウウン!!」
凍牙と砕牙が激突し、辺り一帯が魔力の嵐がおこり、周りの岩とかが崩れていった。
* * *
「ケイン!!」
「今だ!! ティアナ、思いっきりぶっ放せ!!」
「何だと!?」
ソードマスターがティアナの方を向くと、そこにはすでにここら一体の魔力をかき集めて、集束砲の発射態勢に入っていたティアナの姿があった。
銃口にはオレンジの魔力が集中し、魔力球も上半身を覆い尽くすほどの大きさになっていた。
「まさか!! 貴公はおとりか!!」
「今頃気づいたか!! 俺は囮だよ!!」
ソードマスターは俺と距離を取り、ティアナに向かおうとしたが、もう遅い。
「気づくのが遅かったわね。喰らいなさい!!」
「スターライトブレイカァァァーーーーーー!!」
放たれたオレンジの奔流は、ソードマスターに一直線に向かうが……。
「なんの!!」
ソードマスターは、砕牙でスターライトブレイカーを受け止める。
「う、嘘!! あれを受け止めるなんて!!」
「……大した物だ。だが、これまでだ!!」
「安心するのは早いぜ!!」
「何!?」
ソードマスターが空を見ると、そこには……。
「俺がいるのを忘れるんじゃねえ!!」
残された魔力を全て凍牙に集め、魔力球を作り出す。
「凍える魂持ちたる精霊達よ……。我に与えん氷結の怒り!!」
この辺り一帯は、はやての凍結魔法の魔力素で充満している。
通常なら、俺の凍結魔法じゃ通用しない。
だが、これを利用すれば、高い攻撃力を得られる。
そして、ライトニングブレスを詠唱する時間はない。
手持ちの魔法で、詠唱時間が短くて、攻撃力が高い魔法はこれしかない!!
「……これが最後の一発だ!!」
「ダイヤモンドブレイカァァァァーーーー!!」
「グオオオオオオ!!」
上空から放たれたダイヤモンドブレイカーと正面からのスターライトブレイカーは、魔力融合し、ソードマスターを中心に大爆発を起こした。
* * *
「……これで……どう、だ」
「はぁ……はぁ……もう、撃てないわよ」
俺もティアナも、もう一発たりとも撃つことは出来ない。
これで駄目なら……。
「……大した物だ。二人がかりとはいえ、我をこれだけ脅かしたのは、貴公達が初めてだ。少女よ。そなたの名前は?」
「ティアナ……ティアナ・ランスターよ」
「ティアナ……か。その名、覚えておこう。今回はそなたに免じてこの場を退こう。また会おう」
ソードマスターは、風を自分の身に纏わせ、竜巻と共にその姿を消した。
* * *
「どうにか……助かったわね」
「ああ、ありがとうなティアナ。お前がいなかったら、俺たちは死んでいた」
「別にあたしが駆けつけなくても、あんたならどうにかしてたんじゃない?」
「いや、俺もはやても、もう対抗手段はなかったんだ。逃げるにしても、逃がしてくれるような相手じゃないしな」
逃げることは何度も考えたけど、相手の実力からして逃げるのは無理だろう。
それに、逃がしてくれるとは思えなかったし……。
「だから、お前が来てくれて、本当に助かったよ。ありがとう……」
「ケイン……」
「大したもんだよ。あれだけの状況で冷静に行動できたんだからな」
「そんなこと無いわよ。あんたが絶対足止めしてくれるって思ったから、あたしは思いっきりやれたんだから……」
「それは俺も同じかな。ティアナがやってくれるって思ったから、あの作戦に乗ったんだから」
「ふふっ……」
「ははっ……」
「「あはははは!!」」
俺もティアナも気がついたら、大笑いをしていた。
「ケイン、あたしもっと強くなるわね。あんたがくれた腕輪でコアを鍛えて、もっと魔力を高めてみせるわ!!」
「ああ、俺ももっと強くなるさ。そんなお前と一緒に胸を張って戦えるように」
「じゃ、約束ね」
「だな」
俺はティアナと指切りをし、ここに約束を誓った。
ティアナだけじゃない。
俺はみんなのためにも、もっと強くなりたい。
せめて自分の大切な人を守れるくらいの力は、身につけなきゃな。
* * *
「おーい、ケイン、ティアナ」
「八神部隊長、リイン曹長。ご無事でしたか!?」
「私らは何とかな……。でも、ティアナ、ケイン。二人ともようやったで」
「本当です。なのはさんもフェイトさんもいないのに、三邪星を相手に良く戦ったです!!」
「はやてもリインも、ルカーノ火山を止めるのに、必死だったからな。本当にありがとう。この星のために……」
「気にしないでや。私は救える命があるのに、見捨てるのが嫌なだけや。本当はこの考えは上に立つ者としては甘いかもしれんけどな」
「いや、俺はそんなはやての考え、好きだぜ。優しいはやてらしいと思うぞ」
「……ありがとうな……ケイン」
はやては顔を赤くしてしまい、下に向いてしまった。
「「むぅ……」」
ギュゥゥゥゥゥッッ
いきなりティアナとリインの二人が、俺の両腕を思いっきり抓り……。
「あいたたたたた!! 何で二人とも俺を抓るんだよ!!」
「知らないわよ!!」
「知らないです!!」
二人とも、ぷんすか怒り出してしまい、さっさと歩き出してしまった。
「あははは!! ケイン、あんたはもう少し女心を勉強した方がええな」
「えっ、どういう意味だ?」
「それは自分で考えや。鈍感さん♪」
はやては笑いながら、ティアナ達の方に行ってしまった。
うーむ。
女心はやっぱ難しいな。
こんなので本当に俺、嫁さんを見つけられるのかな?
ある意味、魔王を退治するのより大変かも……。