魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

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Number;12 Last Memory

「さて、これで今日の書類整理は終わりだな」

 

「うん、ありがとうね。ケイン」

 

 

訓練が終わった俺とティアナ達は、今日の書類をまとめていたんだけど、スバルの奴が中々終わらなくて、このままでは時間外になってしまうと言うことで、俺が少し手伝うことにした。

 

 

 

「スバル、ティアナから聞いていたけど、もう少し書類仕事出来るようになれよな……」

 

「えへへ、ごめん。でも、以外だね。ケインがこんなに書類仕事が出来るなんて」

 

「一応、親父に全てのことはたたき込まれたからな。スペシャリストにはかなわないけど、そこそこのことは出来るぜ」

 

 

 

あの親父は我が親ながら未だに謎の部分がある。

事務系をやらせても、マイスター並みの実力があるし、戦闘に至っては今更言うことでもなく化け物だ。

 

 

 

「スバル、あんたねぇ……前から言ってるけど、このままじゃエリオ達にも追い抜かれるわよ。特にキャロなんてケインが教えてるから、どんどん出来るようになってるし……」

 

「えへへ♪ ケインさん、とっても教え方がうまいんですよ」

 

「ええっ!! キャロ、ずるい。ケイン、あたしにも教えて!!」

 

「お前は訓練校主席だろう。これくらいのことは出来るだろうが……」

 

 

本来なら、スバルの方が出来て当たり前なのだ。

本格的な勉強をしていない俺ができて、スバルに出来ない道理はない。

 

 

「でも、なんか苦手なんだよね……事務仕事」

 

「確かにお前は頭を使うってより、体力を使う方が性にあってるかもな」

 

「「「うんうん」」」

 

「ああ!! みんなであたしを馬鹿にするぅ……」

 

「「「はははは!!」」」

 

 

スバルは口をとんがらせて、いじけてしまったけど、すぐにエリオ達がフォローをしていた。

何とか、今日の仕事も終わり、エリオ達はそれぞれの部屋に戻っていった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「はぁ……マジで疲れた」

 

 

 

仕事が終わり、俺はアースラのロビーでコーヒーを飲んでいた。

部屋に戻る前に、缶コーヒーを飲みたかった気分だったので、ちょっと一息を付いていた。

 

考えてみれば、ここ二週間休み無しでぶっ通しで訓練や仕事をしている。

これじゃ疲れて当たり前だな。

 

六課の任務は、かなり過酷だ。

スケジュールだって調整はかなり難しい。

 

 

 

「さすがに訓練ばっかりだときついな。どっかに気分転換に行きたいな……」

 

 

遊びに行くとまで行かなくても、どっかに行ってみたいよな。

そんなことを考えてたら……。

 

 

「……それだったら、私と一緒にどっかに行かない」

 

「フェイト、いつの間に?」

 

 

 

いつの間にかフェイトが俺のそばに来ていた。

こんなに近くに来てたのに、気がつかなかった。

 

 

 

「さっきから、ここにいたよ。ケイン、こんなに近くにいたのに、全然気づかなかったんだ……」

 

 

そう言ってフェイトが俺の目の前に来て、自分の顔をかなり近づけていた。

なんか、フェイトから良い匂いがするな。

 

女性特有の匂いって奴なのかな。

 

 

「んっ? どうしたのケイン、顔が真っ赤だよ」

 

「……何でもない」

 

「?」

 

 

言えるわけ無いだろう。

フェイトのいい匂いに、ドギマギしてるなんて……。

 

 

 

「で、どうしたんだ。なにか話があったんじゃないのか」

 

 

とにかく、今は話をそらさないと……。

 

 

「あっ……。うん、だからね……。私と一緒に……遊びに行かないって言ったんだよ」

 

「それはすっげぇ嬉しいけど、フェイトだって仕事があるだろうに……」

 

「仕事は大丈夫だよ。何とか目処は立ってるし」

 

「そっか……でも、いいのか俺で?」

 

 

正直、俺で良いのか迷う。

普通に女の子に誘われるのなら嬉しいけど、フェイトはフィルの……大切な人だったんだ。

 

 

「うん……。ケインさえ良かったらなんだけど」

 

 

考えて見れば、フェイトの性格から言って、自分から男性を誘うなんて本当に勇気がいるだろうに。

 

 

 

「ありがとう。じゃ、一緒に遊びに行くか」

 

「うん!!」

 

 

フェイトは満面の笑みを見せてくれた。

 

 

「じゃ、明日、10時に格納庫でね!!」

 

 

そう言って、フェイトは自分の部屋に戻っていった。

女の子と……デートか。

 

 

なんか、すっげぇ、緊張してきたぞ……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

翌日

 

 

 

 

「じゃ、はやて、なのは、行ってくるから」

 

「気をつけてな、フェイトちゃん」

 

「フェイトちゃん、しっかり楽しんできてね」

 

 

 

結局俺たちは、ミッドにあるテーマパークに行くことにした。

ミッドなら、非常事態になっても、トランスポ-ターですぐに戻ることが出来るし、フェイトもミッドならよく知っているからと言うことになった。

 

 

 

「なに、考えてるの?」

 

「いや、なんでもない。それよりも俺の我が侭に付き合ってもらってすまなかったな……」

 

「そんなこと無いよ。私がケインと一緒に行きたいから、誘ったんだから。それは心配しないでね。それに……」

 

「それに?」

 

「……なんでもない」

 

 

なんでもない……ね…。

本当にそうなら良いんだけどな―――――。

 

 

 

「今は楽しもう。今日は私に任せてね」

 

「あ、ああ……」

 

「じゃ、何から乗ろうか!!」

 

「そうだな……」

 

 

 

俺とフェイトは、まず、最初はジェットコースターから乗ることにした。

キャッチコピーが世界一怖いジェットコースターというのが気に入った。

 

俺もフェイトもこういった絶叫系の乗り物は大好きなので、急降下の時は手すりを離していた。

さすがに謳い文句通り、普通の人にはものすごく怖い物だろう。

 

 

その後も色んな乗り物に乗って、夕方になるまで遊び尽くした。

こんなこと本当に初めてだから、俺もすごくはしゃいでしまった。

 

そして、夜になり、俺たちが最後に乗ったのは……。

 

 

 

「観覧車……か」

 

「うん……ここからみる夜景はすごく綺麗なんだよ」

 

 

そう言ってフェイトは、観覧車の窓から夜景を見て楽しんでいる。

 

 

「ケイン……。今日は……ありがとうね」

 

「なあに、俺の方こそ良い休暇になったよ。リフレッシュも出来たし」

 

 

すると、フェイトは少し悲しそうな表情して窓を見る。

 

 

「……本当は気付いてたんだよね。私が誘った本当の理由」

 

「まあ……な」

 

 

 

何となくだけど分かっていた。

フェイトが俺を誘った理由。それは……。

 

 

「フィルの……ことだな」

 

「……うん」

 

 

少しして、フェイトは絞り出すように語り出した。

 

 

 

「……聞いて……くれる、かな……」

 

 

 

 

フィルが亡くなった時のことを……。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「う……うそ……だよ……ね……」

 

 

 

そこには背中から、左胸部にかけてゆりかごの鋭利な破片が突き刺さり――――。

破片の先から、赤い血をポタポタと流しているフィルの姿――――。

 

 

 

 

「……よかっ……た」

 

 

 

そして―――――。

 

 

 

「フィルッッッ―――――!!」

 

 

 

こんなの悪い夢なんだよね……。

 

 

うそなんだよね……。

 

 

 

でも、現実はそれを許さない。

フィルの身体から、体温がどんどん感じなくなってきている。

 

 

 

「……ごめ、ん……ね……」

 

 

 

いやだよ……。

フィル言ったじゃない。

 

平和になったら。一緒になって、結婚しようって……。

 

 

「……私を……幸せにしてくれるんでしょう。あなたがいなきゃ……幸せになんて……なれないんだよ」

 

「……だい…じょう、ぶ。……イトさんなら、……に……る、か…ら…」

 

 

フィルが必死に伝えようとすることは嫌でも分かっちゃう。

血だらけになった右手で、フィルが、私の頬にそっと触れ―――――。

 

 

「……しあわせ、に……ね……」

 

 

 

そして……。

 

 

 

フィルはそのまま帰らぬ人になった……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「……フィル」

 

 

 

あれから、どれくらい経ったんだろう。

フィルがいなくなってしまい、私の心はポッカリと穴が開いてしまってる。

 

 

こうして、フィルとの思い出を思い出す度、涙が止まらなくなる。

 

 

 

「……なんで、なんで、私なんかを庇って……」

 

 

 

死ぬなら、あの時、私が死ねば良かったんだ。

愛する人がいない世界で、私はこれからどうやって生きていけばいいの……。

 

 

誰か、教えてよ……。

 

 

 

「結局、私はティアナとの約束も……守れなかった」

 

 

未来のティアナとの約束。

フィルのことを託されたのに……。

 

 

「……ごめん……本当に……ごめんなさい……」

 

 

恨んでるよね……。

フィルのこと、守ってあげられなかった私のことを……。

 

 

でも、これで私がフィルの所に行こうとしたら、二人とも本当に怒るよね。

ティアナもフィルも、そういう人だから……。

 

 

―――――そうですよ。フェイトさん―――――

 

 

「えっ?」

 

 

今の声は、まさか……。

 

 

 

―――――あたしは、フェイトさんを恨んでいませんし、フィルが死んだのは、あいつ自身の選択なんですから―――――

 

 

 

ティア、ナ……なの?

 

 

 

―――――だから、もし、フィルやあたしのことを思ってくれるのなら、生きてください。そして……。

 

 

―――――幸せになってくださいね。

 

 

 

「ティアナッッ!!」

 

 

 

 

かなわないよ……。

本当なら、フィルのこと守れなかった私を、もっと罵っても良いのに……。

 

 

そんな私を、ティアナは、逆に励ましてくれた。

 

 

 

―――――ありがとう、ティアナ。

 

 

きっと、私はもう、愛する人は作れないけど……。

それでも、フィルに助けられた命を大切にするから……。

 

 

 

 

「ごめんね……。フィルの所に行くの……もう少しだけ……待っててね」

 

 

 

私、もう一度だけ精一杯生きるから……。

だから、私のことを見守っててね。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「これが……フィルとの最後の思い出……」

 

「……そうだったんだな」

 

「うん……。あれ? 私、どうしたんだろ……。なんで、涙が出てるのかな……」

 

 

 

 

いくら心の整理をしたといったって、最愛の人を亡くした悲しみは消えはしない。

フェイトの悲しみは痛いほど伝わってくる。

 

 

なさけねえ……。

俺はフェイトに何もしてやれねえ……。

 

 

今の俺がしてやれることは……。

 

 

 

「あっ……」

 

「……誰もみてねえ。今は思いっきり泣いちまえ……」

 

「……う……う……うぁぁぁぁあああん!!」

 

 

 

こうして、フェイトを包み込んで思いっきり涙を出させることくらいだ。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「なんか……みっともない所見せてばかりだね」

 

「そんなことないって、だけど、ちょっとだけフィルが羨ましいっておもっちまった」

 

「……なんで?」

 

「こんなにもフェイトに……思われてるんだからな」

 

 

 

まったく、おまえは死んでからもこんなに思われてるんだからよ。

少しは自分の存在価値ってのを分かれって言うんだ!!

 

 

 

「大丈夫、ケインならきっといい人すぐに見つかるよ」

 

「そっか……。それならいいんだけどな。元々俺は嫁探しで旅に出たんだし……」

 

「そうなんだ。それ初耳だね」

 

「一応20までに嫁もらうことが家訓なんだけど、この調子じゃいつの日やら……」

 

 

 

俺は、フィルみたいに女性とのコミュニケーションは得意じゃないし、マジで結婚できるのかな。

 

 

 

「だったら私をお嫁さんにもらってくれる」

 

「はぁ!?」

 

「ふふっ、冗談だよ~♪」

 

「ったく……からかうのは勘弁してくれよな」

 

 

 

でも、いつの日かフェイトが新しい人を見つけて幸せになってくれることは、きっとフィルも望んでいるから……。

その日までは見守ってやってくれよ、フィル……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「ということだ」

 

「ありがとなケイン君、辛いことお願いして……」

 

「気にするなって、俺はフィルのダチなんだから、その大切な人が悲しんでるのは……つらいからな」

 

 

 

フェイトちゃんとケイン君が出かけることになったのは偶然やったけど、そのおかげでフェイトちゃんの気持ちが一歩進むことが出来たのは、ほんま幸いやった。

 

 

 

「でも、ケイン君も嫁探ししてるなんてびっくりやわ」

 

「まあな。こんな変な家訓のせいで、親父にたたき出されたからな……」

 

「そうなんや。このことを知ってるのは?」

 

「今のところ、はやてとフェイトだけ。まったく……恥ずかしいことを知られちまったぜ」

 

 

 

ケインはちょっと照れつつ、頬をポリポリかいていた。

 

 

「そっか。そしたら、私なんてどうや♪」

 

「お、おい!! そ、そりゃ、はやてみたいな可愛い女の子なら……な。でも、冗談なんだろ」

 

「よう、わかっとるやないか♪」

 

「ちくしょう!! どうせ、そんなこったろうと思ったよッッ!!」

 

 

 

ケイン、あながち冗談やないんやで。

すこしは女の子の事をしっかり勉強してや。

 

 

鈍感朴念仁なところまで、ほんまにフィルそっくりやで……。

 

 

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