魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

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Number;13 一角獣ラギア(前編)

フェイトとのことから一週間。

しばらくの間、魔王達からの進行もなく、穏やか日々を過ごしていたが、突然はやてが倒れてしまった。

 

最初ははやても無理を押し通して動いていたが、日が経つにつれて、どんどん顔色が悪化していき、とうとう今日、ブリッジで仕事中倒れてしまったのだ。

 

倒れたはやてを発見した俺となのはは、急いでシャマルのいる医務室に連れて行くことになった。

 

 

 

「はやてちゃん……」

 

「はやて……」

 

「心配せんでも…はぁ……はぁ……大丈夫や。疲れが……はぁ………溜まった……だけやで……」

 

 

 

そうは言うが、明らかに息も絶え絶えだし、熱も39℃以上で下がる気配は全くない。

アースラの艦内医のシャマルの診断でも、こんなのは見たことがないという。

 

だけど、俺はこの症状を見たことがある……。

 

 

 

 

「間違いない……これはアセスト病だ」

 

「「えっ……?」」

 

「ケイン、アセスト病って何なの?」

 

「ああ……アセスト病ってのはな……」

 

 

 

ケインの説明によると、この病気は魔力の高い人間がかかりやすい、このシーリウス特有の風土病だ。

しかもこの病に効く薬は、シーリウスのルカーノ火山にある特別な薬草でしか治すことが出来ない。

 

 

 

「それじゃ……はやては……」

 

「このままじゃ助からない。しかもこの病の厄介なところは、感染した人間の魔力を食い尽くしてしまう性質なんだ。ほっといたら……はやては……」

 

「そんな!! ケイン君。何とかはやてちゃんを助けて!!」

 

「分かっている!! だけど、ルカーノ火山はこないだの噴火騒ぎで、一般人は入ることが出来ないんだ。それに、はやてがこの状態では、六課隊長陣は動かすことが出来ない。どうしたら……」

 

 

 

俺たちが途方にくれてたその時……。

 

 

 

「あの……それでしたら、あたしがケインと一緒に行きます」

 

「ティアナ?」

 

 

ティアナがなのはに進言し、俺と一緒に行くと言ってくれた。

 

 

「確かにティアナなら、頼りにはなるが……」

 

「そうだね。それじゃティアナお願いね。後一人くらい行って欲しいところだけど……」

 

 

なのはがメンバー選出を悩んでいると、ブリッジの扉が開き……。

 

 

「そんなの決まってらぁ、あたし以外に誰がいるって言うんだよ」

 

「「「ヴィータ (ちゃん)!?」」」

 

 

 

別任務でアースラを離れていたはずのヴィータの姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「ヴィータちゃん……どうして?」

 

「シャマルの奴から連絡を受けたんだ。はやてが命の危機にさらされているってな……」

 

「でも、ヴィータ。そっちの任務は大丈夫なの?」

 

「心配すんな。そっちの方はシグナムとザフィーラに任せてる。それに……」

 

「はやての危機だってのに、はやての騎士であるあたしが、何もしないでどうするんだ!! はやてはあたしが絶対助ける!!」

 

 

 

ヴィータの決意は、俺にもビンビン伝わってくる。

あいつは、はやてを助けるために、必死で戻ってきたんだ――――。

 

 

 

「ヴィータ、はやてを救うため、力を貸してくれ!!」

 

「ったりめえだ!! ケイン、そっちこそぬかるんじゃねえぞ!!」

 

「おう!!」

 

「ちょっと……二人だけじゃないわよ。あたしだって、部隊長を絶対に助けたいんだからね。仲間外れは無いんじゃない」

 

 

 

――――そうだった。

もう一人、心強い味方がいたんだ。

 

 

 

「そうだったな。おめえも立派なストライカーだったな。いいか、絶対はやてを助けるぞ!!」

 

「はい!!」

 

 

ヴィータとティアナ。

この二人がいれば、何とかなる。

 

 

――――いや

 

 

絶対に助けるんだ!!

 

 

このまま、はやてを死なせてたまるか!!

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 

出発直前、俺ははやてがいる医務室に寄り、はやての様子を伺いに来ていた。

こうしている間も、状態はどんどん悪化していってる。

 

魔力もフルパワーの半分以下になってしまっていて、もはや立ち上がる体力もなく、話すことも困難になってしまっている。

 

 

 

「はやて……絶対にお前を死なせはしないからな……」

 

 

 

俺はそっとはやての手を握り、自分の魔力を注ぎ、少しでもはやての苦しみを取り除く。

こんな事をしても、雀の涙なのは分かっている。

 

だけど、何もしないのは絶対嫌だから……。

 

 

 

「行ってくるからな……はやて」

 

 

 

俺ははやての手を離し、そっと医務室から離れ、ヴァイスが待つヘリポートに急いだ。

ヘリポートに到着すると、すでにティアナとヴィータは乗り込んでいて、あとは俺待ちだったとのことだ。

 

 

俺が到着するのを確認したヴァイスは、ヘリのエンジンに火を入れ、全速でルカーノにヘリを飛ばした。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

ルカーノ火山に到着した俺たちを迎えてくれたのは、現地職員一人だった。

これ以上人員を割くことは難しくやむなくのことだった。

 

そこで説明されたのは……。

 

 

 

「……一角獣、ラギア……か……」

 

「はい……」

 

「ケイン、その……ラギアって何者なの?」

 

 

ティアナの疑問に、俺はラギアの説明をする。

ラギアというのは、ルカーノ火山に古くからいる伝説の魔獣の一匹だ。

 

特徴は馬型の魔獣で、頭にダイヤモンドの角があり、その巨体に似合わず高速の動きをする、とても厄介な魔獣だ。

 

 

「だがな、あたし達は、そんな魔獣程度にひるんでなんかいられないんだ。はやてを助けなきゃいけないんだからな!!」

 

「ああ、確かにラギアは手強い。だけど、今回はこれだけ頼もしい仲間がいるんだ。絶対うまくいく!!」

 

「あたりまえよ!! あたしとヴィータ副隊長までいるんだからね。大概の魔物なら大丈夫よ」

 

「ティアナ、ヴィータ……ああ、頼りにしてるぜ!!」

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「おらおらおら!! 邪魔する奴はアイゼンの錆にしてやる!!」

 

「邪魔だ!! どきやがれ!!」

 

 

 

ケインとヴィータ副隊長が、全力でやってくる魔物を片っ端からなぎ払っていく。

副隊長が鉄球をデバイスで撃ち放ち、ケインはダイヤモンドブレイカーぶっ放していた。

 

その姿はまるで羅刹のごとく……。

 

 

「!! ケイン、後ろ!!」

 

 

ティアナの声で、後ろの魔物に気づき……。

 

 

「……俺を……なめるな!!」

 

 

 

砲撃を受けた魔物は、形も残らず完全に消え去る。

 

 

魔物をなぎ払い終わると、東の方から光が差し込み、森の出口が見えてきた。

俺たちは光が差す方向に全力疾走をした。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「おい、ここじゃないか!?」

 

 

 

ヴィータの声で辺り一面を見渡すと、そこには薬草である【アドニス】の花が一面に咲き誇っていた。

花の色は綺麗な白をしていて、花びらの形はバラに近い物をしている。

 

 

 

「……綺麗な花ね。ケイン」

 

「ああ、アドニスの花は薬草にもなるけど、観賞用の花としても珍重されているんだ。さぁ、ティアナ、これを持って帰って、急いではやてに飲まそう」

 

 

俺はアドニスの花を摘もうとしたその時……

 

 

「危ねえ!!」

 

 

空から砲撃が降り注いだが、ヴィータの声で咄嗟に反応することが出来、なんとか交わすことが出来た。

俺がいたところは、直径2メーターくらいのクレーターが出来ている。

 

 

 

「……こんなまねが出来る奴は……」

 

「ラギア……だけよね。ケイン……」

 

 

上空を見ると、そこには……。

 

 

 

『人間よ……何故アドニスの花を欲す……』

 

 

 

大きな赤き馬――――。

 

 

 

――――頭には銀色に輝く角。

 

 

 

伝説の一角獣、ラギア。

 

 

 

その姿を現した。

 

 

伝説の名にふさわしく、その身体を覆うオーラはとても強力で、立っているだけでプレッシャーで押しつぶされてしまいそうになる。

 

 

だけど……。

 

 

「こんなところであきらめるわけにはいかないんだ。俺たちが薬草を持って行かなければ、はやてが死んでしまうんだ……」

 

「ああ、こんな奴に邪魔されるわけにはいかねえ!! ケイン、ティアナ、全力でぶっ倒すぞ!!」

 

「「ええ (おう)!!」」

 

 

 

俺たちはそれぞれデバイスを戦闘モードに展開する。

ヴィータはラケーテンフォームに、ティアナはダガーモードに、そして俺は凍牙を抜刀し身構える。

 

 

 

「いくぜ!!」

 

 

 

はやて、もう少しだけ頑張ってくれ。

絶対薬草を持ち帰り、その苦しみを解き放ってやるからな!!

 


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