魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「はぁ……くぅ……はぁ……」
「はやてちゃん……」
「はやて……」
アセスト病にかかってしまってから、はやての病態はどんどん悪化していってしまっている。
今ケイン達が必死に薬草を採りに行ってくれているけど、それでもはやての体力が持つのはあと数刻……。
ケイン、ヴィータ、ティアナ、急いで!!
このままじゃはやては……。
* * *
「こんちくしょう!! これでもくらいやがれ!! シュワルベフリーゲン!!」
ヴィータの周囲に4つの鉄球が現れ、それをグラーフアイゼンを使って、強烈な力で打ち出す。
だが……
『無駄だ』
ラギアは自分の正面に魔力の盾を作り出し、シュワルベフリーゲンを止め、さらに……。
『返すぞ』
そのまま鉄球を俺たちにリフレフクトしてきた。
「「「うわあああああ!!」」」
地面にめりこみ、鉄球に込められていた魔力の爆発で、俺たち全員吹っ飛ばされてしまった。
なんとか体勢を立て直すが、初っぱなからかなりのダメージを負ってしまう。
その後も、色々攻撃を繰り出すが、やはり同じように跳ね返されてしまい、こちらの攻撃は全く届いていなかった。
さらにラギアは……。
『では、こちらからも行くぞ!!』
「何!?」
突然光り出したかと思ったら、姿が消え、その鋭い爪で俺たちを攻撃してくる。
「うわっ!!」
「こんちくしょう!!」
ヴィータが鉄球を放つが、相手のスピードが速く捕らえきれない。
「それだったら、これならどう!!」
ティアナもクロスファイアを撃って攻撃するが、やはり捕らえることが出来ない。
『無駄だ……そんな攻撃など当たりはしない』
さらにラギアは追撃をかけてくる。
一撃一撃はそうでもないが、何度も受けているうちに、バリアジャケットも損傷してきて、防御力も低下してくる。
その結果、俺たちは体力も魔力も奪われていった。
* * *
「……やっぱり、半端無く強いわね」
「ああ、あたしの攻撃を難なく跳ね返しやがった。あれでも全力でぶっ放してってのによ!!」
「二人とも、ラギア相手にバラバラに攻めていては駄目だ。俺が上空からラギアに接近して一気に叩く!!」
「そうね。防御に関しては、ケインがこのメンバーの中で一番堅いわ。ケイン、サポートはあたし達がするから、ラギアに攻撃して!!」
確かにサポートをティアナ達にしてもらえれば、俺は攻撃に専念できる。
「……ティアナ、ヴィータ、お前らにかなりの負担をかけるが頼むぜ」
「あの野郎の注意はあたしが引きつける。ケイン、必ずぶっ倒せよ!!」
俺たちが立てた作戦とは、まず、ヴィータとティアナがラギアの注意を引きつけ、俺から逸らさせる。
その間に俺は、一気に上空高く上がり、ラギアの弱点であろう角に斬撃をぶちかます。
但し、あの堅い角を破壊するほどにエネルギーをチャージしなければならないため、時間がかかる上に出来て1回が限度になる。
失敗は許されない。
「じゃ、行くわよ……散って!!」
ティアナの合図で、俺たちはそれぞれの位置に散っていった。
フェイクシルエットで俺の姿は隠していたから、そう簡単には気づかれないと思うけど、油断は出来ない……。
* * *
『ほう……人間よ。まだ足掻くというのか。力の差は歴然だというのに』
ラギアは余裕の笑みを見せ、あたし達をさげすむ。
確かに、あたし達はあんたに比べて力は遙かに弱い。
だけどね……。
「あたしはね……昔からあきらめがとても悪いの。出来ないから、はい、そうですかっていうのはありえないのよ!!」
あたしはラギアに銃口を向け、魔力を集中する。
そして……。
あたしの周囲に六つの青い飛行物体を出現させる。
『んっ? 何だ。宙に浮かんでいる、その妙な物は?』
これは、あたしが切り札として出した新装備【マキシマムビット】だ。
これはなのはさんのブラスタービットをヒントに、フィルが残したくれた新しい形のビットだ。
あたしはなのはさんみたいに巨大な魔力は持ち合わせていない。
だから、ブラスタービットを使いこなすのはとても無理な話だった。
だから、あたしの魔力で使え、さらにあたしの力を最大限に使える装備と言うことで考えられたのが、このビットだ。
これは、ブラスタービットみたいに集束砲を使うのには、あまり向いてないが、高速機動と汎用性はブラスタービット以上だ。
「……ティアナ、おめえ、いつの間にそんだけのことが出来るようになったんだよ?」
「副隊長達が別任務でいなくなってから、あたしはケインに言われて、ずっと鍛え続けてきたんです。そして、その事をなのはさんに相談して、ようやく形になったのがこの戦闘スタイルなんです」
「……なるほどな。独りよがりじゃなく、ちゃんとなのはと一緒に確立してるってのが昔との違いだな。ティアナ、あたしが思いっきり突っ込んであの堅いシールドをぶっ壊すから、後は頼むぜ」
「はい!!」
ヴィータ副隊長もカートリッジをロードし、グラーフアイゼンをモードチェンジし、シールド破壊型のラケーテンに変える。
「覚悟しやがれよ。こいつでてめえの盾をぶっ壊してやる!!」
『やれる物ならやってみるが良い。人間よ』
ラギアはさらにシールドを強化し、さらに口に魔力を集めだし、集束砲を放つ。
『くらえぇぇぇぇ!!』
砲撃があたし達に迫る。
「マキシマムビット展開。クリスタルウォール!!」
『何!?』
次の瞬間、六つのビットは六角形のシールドを作り出し、ラギアの砲撃を完全に防いだ。
『ま、まさか……そんなおもちゃで私の砲撃を防ぐとは……』
「人間を甘く見ないでよね。今度はこちらの番よ!!」
「いっけぇぇぇえええええええ!!」
『何!?』
シールドを破壊すると同時に、ヴィータ副隊長がラケーテンハンマーのブースターを発動し、回転しながらラギアに突撃していった。
『舐めるな!!』
シールドでラケーテンを受け止めるが……
「てめえこそ、あたしをなめるんじゃねええええええええ!!」
ヴィータ副隊長のハンマーは、シールドを貫き、ラギアの胸部に命中し、そのまま岩場に叩きつけた。
「はぁ……はぁ……どうだ……このやろう……」
『人間無勢が……私の身体に傷を……許せん!!』
ラギアは完全に頭に来て、あたしとヴィータ副隊長に追撃の砲撃を放とうとしている。
だけど、それがねらいなのよ!!
* * *
「これが最後のチャンス……。残りの全魔力をこの一撃にかける!!」
俺は凍牙に自分の魔力を集中し、さらに、辺り一面から、魔力素を集めだし、それをさらに力に変える。
「なのはから、集束技術を少し習っておいてよかったぜ。これを利用する!!」
凍牙の魔力は、自分の魔力だけの時よりも二回り以上も光が強くなっている。
これをあいつに決めてやる!!
「いくぞ!!」
俺は自然落下を利用し、全速で落下していく。
身体に強烈なGがかかるが、こんなのたいしたもんじゃねえ。
* * *
『これで、最後だ。人間よ!!』
ラギアの砲撃がまさに放たれようとしている。
だが、もう、あたしとヴィータ副隊長の役目は終わっているのだ。
「ふふっ……」
『何がおかしいのだ!! これから死ぬというのに!!』
「まだ気づかないの。この場には3人いたのよ」
『!!』
ラギアがようやく気づき、上空を見上げるが、すでにケインがラギアに向かって突撃をかけていた。
『貴様ら!! 謀ったな!!』
「気づくのが少し遅すぎたのよ!!」
『おのれ!! だったら、貴様から殺してやる!!』
ラギアの砲撃は、ケインに向かって放たれるが……。
「こんなもん、くらうかよ!!」
ケインが凍牙でラギアの砲撃を、そのままラギアにはじき返す。
『ぐおおおおおおおお!!』
自分の砲撃を受けたラギアは、かなりのダメージを負い、身体をふらつかせる。
「うおおおおおおおおおお!! 必殺……」
ケインは上段に剣を構え……。
「ノヴァ・ストラッシュ!!」
『小僧おおおおおおお!!』
ラギアもケインに突撃をし、両者が空中で激突した……。
『ぐ……ぐおおおおおおお!!』
ケインのノヴァ・ストラッシュはラギアの角を切り落とし、ラギアの身体が蒼き炎に焼かれていた。
『き、きさまら……』
それでもラギアは最後の力を振り絞り、砲撃を放とうとしていたが……
『ぐっ……があああああああああ!!』
炎が完全に全身を焼き、黒き灰になり、ラギアは消滅した。
* * *
「ふぅ……何とか倒したわね」
「マジでギリギリだったな。二人がフォローしてくれなかったらやばかったな」
「まったくよ。本気でヒヤヒヤしたんだからね!!」
「でも助かったぜ。そのおかげで最後の一撃に集中できたんだ。あれはまだ未完成だから、隙が多いしな」
ノヴァ・ストラッシュはフレア・ストライクの上位版の技だ。
確かに集束技術は能力的には高いが、集まるまでの時間がかかりすぎてしまう。
なのはならもっとうまくやれるけど、俺ではまだ使いこなせていない。
「さぁ、この花を持って帰って、急いではやてを助けるぞ!!」
「「「ええ(だな)!!」」」
こうして無事アドニスの花を手に入れることが出来、俺たちは、ヴァイスが駆るヘリで全速でアースラに向かった。
* * *
全速でアースラに帰還した俺たちは、急いでシャマルにアドニスの花を渡し、その花の蜜から特効薬を作り、それをはやてに飲ませた。
「……すぅ……すぅ……」
「シャマル、はやては!! はやては大丈夫なんだろうな!?」
「心配しなくても、もう大丈夫よ。薬が効いて今は眠っているだけだから……」
「良かった……」
熱も引き、顔色も良くなっている。
どうやらもう大丈夫だ。
「さてと、みんな、これだけ大人数で医務室にいたら、はやてが休めないぞ」
「そうだね。みんな、各部署に戻って自分の仕事をしてね。さぁ、ヴィータちゃんも外に出ようか」
「お、おい!! あたしは、はやてのそばに!!」
「良いから外に出るの!!」
「おい!! なのは、話を聞けって!! おーーーーい!!」
はやてが心配でヴィータが残ろうとしたが、なのはに襟首を捕まれて強制退場になってしまった。
「あーあ……いっちゃったよ。おっと、俺がここにいてもしょうがないな」
俺が扉の方へ向き、外に出ようとしたとき……。
ぎゅっ
「えっ……?」
はやてが俺の服の裾を掴んでいた……
「……行かないで」
「はやて……?」
「……もう少しだけ……ここにいてくれへんか……」
はやては瞳に涙を溜め、悲しい表情をしている。
「……いいのか? 俺がいたらロクに休めないだろう?」
「……今は、ケインに……いて欲しいんや」
「……分かったよ……はやて」
今のはやては心細いんだろう。
俺で少しでも力になれるのなら、何でもしてやりたい。
そして、今はやてが俺にそばにいて欲しいのなら、いくらでもいよう。
「……ケイン」
「んっ?」
「……本当に……ありがとうな……」
「礼を言われることなんかしてないって、仲間が危なかったんだ。助けるのは当然だろ……」
俺が出来ることはこれくらいしかない。
だから、出来ることなら全力でやるさ。
「……仲間………そっか………そうなんやな……」
「はやて?」
どうもさっきから、はやての様子がおかしい。
何か思い詰めているというか、何というか……?
「ケイン……私は……私は……ケインのことが……」
「えっ……?」
はやてが言おうとしたその時……。
「はやてちゃん、おかゆ持ってきましたよ」
「!!」
シャマルがおかゆを持って医務室に戻ってきた。
「しゃ、シャマル!?」
「ど、どうしたんや!?」
「はやてちゃん? どうしたんですか。そんなに慌てて?」
「な、なんでもあらへん!! 夕食を持ってきてくれたんやな」
「はい、今日は私が腕によりをかけて作りましたよ」
「「えっ……?」」
シャマルの言葉に、俺とはやては頭の中でピシッと言う音が鳴り、完全に石化状態になってしまった。
シャマルの料理の腕は俺も知っている。
シャマルが持っているおかゆは、明らかに色もオドロオドロしていて、とてもおかゆとは言えない代物だ。
こんな食べ物、今のはやてが食ったら、間違いなく……召されてしまう。
覚悟を……決めるか……。
「ああっ、そう言えば思いっきりお腹がすいたなー。おおーここに丁度良い物があるなーー。いただきまーーーす」
俺は意を決して、シャマルのおかゆ (?)を鍋ごと奪い取り……。
「ああああ!! それははやてちゃん用の!!」
そのまま一気に流し込む……。
「ぐっ……あがあああああ……」
バタン
「ちょ、ちょっとケイン君、どうしたの!?」
「(……ケイン、ほんまにありがとう……)」
結局シャマルのおかゆ (?)を全部一気に食べてしまった俺は、次の朝まで目を覚ますことが無く、そのまま医務室で過ごすことになってしまった。
恐るべし、シャマルクッキング……。
後日、シャマルから聞いた話だが、はやての横で寝ていた俺を見て、はやてがずっと微笑んでいたとのことだった。
こんな間抜けなことになってしまったが、どうやら少しは、はやてを元気づけることが出来たのかな?