魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「やっと片づいたな。ったく、ウジャウジャゾンビみたいに出てきやがって!!」
「でも、何とかなったわね。さすがに50体以上の魔物を相手するのは疲れたわね……」
ここは、シーリウスの都市の一つ、傭兵の国ハイード。
最近、この町で魔物が頻繁に現れるようになり、街の住人で対応していたのだが、如何せん何度退治しても復活してきてしまい、いくらこの町が傭兵の街といっても街の防衛が出来なくなっていた。
何とか、原因がハイードの町外れにある洞窟にあることまでは突き止めることが出来たが、残された戦力では街の防衛が精一杯なのだ。
そこで、ハイードギルドはシーリウス全域に賞金をかけて、このゾンビ現象を解決した者に金一封を出すことになった。
賞金に目がくらみ、数々の猛者達が挑んでいったが、何度も復活してくる魔物にやられてしまい、とうとう管理局に依頼が回ってきたのだ。
連絡を受けたアースラは、早速精鋭部隊として、2人の戦士を送ることになったのだが、なのは達は誰が俺と一緒に行くかを揉めてしまい、派遣メンバーが決まるまで相当の時間を要することになってしまった。
数時間の『お話』の結果。パーティのバランスを考えて、今回はティアナと決定した。ただし、選ばれなかった残りのメンバーは、ジト目の嵐だったが―――――。
「そうだな。これは、魔王が復活していることが影響しているのは間違いないな」
「そうね。こんな非常識な現象なんて、巨大な力がなくちゃあり得ない話ですものね」
元々、このシーリウスはこういったことは珍しくないのだが、ここまで魔物が暴走しているのは、近年ではあり得なかったのだ。
そうこうしているうちに、俺とティアナは、洞窟の最深部に到着する。
「これか……。魔物が暴走している原因は?」
「どうやらそのようね。邪悪な魔力がとんでもなく放たれてるわね」
俺たちの目の前になるのは、漆黒の巨大な魔石。
魔石というのは、光、風、火、水、土、闇の六つの力を宿している石。
それぞれ、自分の属性にあった石を使って魔法を使えば、魔力を増幅することが出来る。
魔石の色は、光なら白、風なら翡翠、火なら赤、水なら青、土なら黄、闇なら漆黒。
この魔石は漆黒と言うことは、闇の属性ということになる。
「闇の魔石か。だから魔物の邪気が増幅されたのね」
「いや、ティアナ。その見解はチョットだけ違う。闇と言っても、闇属性の人間もいるんだ。そしてその闇を司るのは、魔ではなく、闇の神なんだ」
少しだけ誤解されやすいのだが、闇だからと言って、決して悪というわけではない。
この世界を作ったのは、7人の神。
その神の一人は、かつての戦いで消滅してしまい、今では無となってしまっているが、闇の神もその中に存在しているのだ。
『ほほぅ……。少しは頭が切れるようだな。ケイン・ラーディッシュ』
「「!!」」
突如、洞窟内に低めの声が響き渡る。
この声、忘れもしねえ―――――。
ガシャリ
ガシャリ
あの独特の金属の足音。
こんな足音を立てるやつはあの野郎しかいねえ!!
俺とティアナは後ろを振り返ると、そこには―――――。
「久し振りだな。ケイン、そしてティアナ」
「……ソードマスター」
「……最悪ね」
現在、最強の敵とも言えるソードマスターが『砕牙』をかまえていた。
* * *
「こんなところまでご苦労なこったな。で、何のようなんだ? 魔石の破壊を防ぎにでも来たか?」
「ふっ、我にとって、魔石が砕かれようが関係はない。我の目的はただ一つ!!」
ソードマスターの砕牙が翡翠の魔力を纏い、その剣は風の魔力を得てさらに威力を増す。
「ケイン・ラーディッシュ、ティアナ・ランスター、貴公達を倒すこと。それが我の目的だ!!」
「へっ、上等じゃねえか!! この前の決着を付けてやるぜ!!」
俺は凍牙を抜刀し、剣に魔力を込める。
俺が最も得意とする炎の魔力。
こいつで勝負だ!!
「待ちなさい!! こいつは一人で戦って勝てる相手じゃないわよ!! あたしも一緒に戦うわ!!」
そう言って、ティアナがクロスミラージュをダガーモードにし、戦闘態勢になる。
だけど―――――。
「いや、ここは俺一人で戦わせてくれ。今の俺では勝てない相手なのは嫌って言うほど分かってる。だけど、俺の戦士としての意地があるんだ!!」
「ケイン……。あんた……」
ティアナには悪いが、俺にだって戦士としての意地と誇りがある。
あの時からかなりの修練を積んだんだ。
あの時の借りを返さなきゃ気が済まないんだ!!
「……分かったわ。だったら、あたしはあの魔石を破壊する方に回るわよ。だからケイン。思う存分戦いなさい!!」
「……サンキュー、ティアナ!! そっちは任せるぜ」
「余計な心配してないで、あんたはソードマスターに集中しなさい!! よそ見をしていて勝てる相手じゃないんだからね」
そう言って、ティアナは俺の背中につき、魔石を破壊するために、モードチェンジし、マキシマムビットを展開する。
「そうだな……。そんじゃ、俺も集中するとしますかね!!」
俺は付けていた養成ギプスをオフにし、全開モードになる。
こいつ相手に、こんな物を作動させていたら100%死ぬ!!
「来い!! ケイン・ラーディッシュ。貴公の腕、どれだけ上がったか、見せてもらおう!!」
「じゃ、行くわよケイン」
「おう、そっちは頼んだぜ」
「「Go!!」」
合図で俺はソードマスターに、ティアナは魔石に向かってダッシュした。
* * *
「うおおおおおおおおおお!!」
「せぇぇえぇぇぇいいい!!」
ガキイイイイイイイン
お互いの剣がぶつかり合い、洞窟内に金属音が響き渡る。
炎と風。互いの魔力の激突は、剣がぶつかり合う度に、洞窟の岩壁を破壊してった。
「腕を上げたな。以前よりも強くなってる」
「へっ、やられっぱなしというのは、俺の性分じゃないんでね。少しはあがいてるんだよ!!」
俺は剣を横薙ぎし、ソードマスターの剣を裁く。
「ならば、我も少しは本気になるとするか」
「何?」
ソードマスターは、魔法陣を足下に展開し、魔力を増大していった。
その魔力は、先ほどとは比べものにならなく、立っているだけでもプレッシャーで押しつぶされそうになるほどだった。
「マジかよ……。こりゃ洒落にならないぜ」
確かに修行で力はあげたが、いまのソードマスターは想像を遙かに上っている。
こりゃ、意地を張らないで、ティアナと一緒に戦えば良かったかなと、チョットだけ後悔かな。
* * *
「まずいわね。やっぱり相手の方が、一枚も二枚も上だわ」
ソードマスターとの戦闘力の差は、あたしとケインが二人がかりでやっても勝てるかどうかの相手。
ケインがいくらレベルアップしたと言っても、まだ一対一で戦える相手じゃないわ。
「なんとかこの魔石を、さっさと破壊して、あたしもケインのサポートに回らなくちゃね」
あたしはビットを展開し、銃口とビット先端に魔力を集中する。
本当なら、スターライトブレイカーを使えば、破壊は出来るんだけど、この狭い洞窟内で集束砲を撃ったら、間違いなく崩壊してしまう。
だから、魔力を一点集中して、魔石のウイークポイントにファントムブレイザーを叩き込む。
物というのは、分子の集合体だ。
その集合体の結合部分の脆いところを見つけ出し、そこに叩き込めば必ず破壊できる!!
「クロスミラージュ、まだ見つからない!?」
《もう少しです。あと少しで解析が完了します》
クロスミラージュをフル活動させ、ウイークポイントを探し出している。
これだけ巨大な魔石だと、ただ一つのポイントを見つけ出すのも至難の業よ。
数分の時間。
その時間がこれほど長いと感じたことはなかった。
このままだとケインがやられてしまう。
魔石の破壊を一旦中断しようとしたとき―――――。
《解析完了です。このポイントに砲撃を叩き込んでください!!》
クロスミラージュは、魔石の右端にレーザーポインターで狙いをあたしに指示する。
「オッケー。行くわよクロスミラージュ!!」
《yes.》
あたしは集中した魔力を、放つためにクロスミラージュのトリガーに指をかけ―――――。
「ファントムブレイザー……」
マキシマムビットの魔力が、さらに集中しその大きさは、一回り膨れあがる。
「ストライクモード」
そして、集中したすべての魔力が―――――。
「フルバーストッッッ!!」
一気に解き放たれた。
カッ
一瞬、閃光が走り――――――。
ドゴオオオオオオオオオオン
洞窟全体に爆発音が響き渡ると、魔石は右半分が完全に砕かれ、魔石からは邪悪な波動は消失した。
「やったわ。後は、ケインのサポートに行くだけよ!!」
待ってなさいよケイン。
あたしが行くまで、生き延びてなさいよ!!
* * *
「くそ……ったれ……が……」
「どうした、貴公の力はそんなものなのか?」
ソードマスターが放つ剣閃。
その一撃一撃が重く、俺は凍牙で受け止めるだけで精一杯だった。
反撃しようにも、その隙も与えてはくれない。
「ふん!!」
「ぐはっ!!」
一瞬、集中がきれ、その隙を見逃さなかったソードマスターは、俺の腹を一閃した。
何とか致命傷は避けたが、ダメージは深刻だ。
「……負けられねえ」
「ほほぅ……。まだ立ち上がる気力があるか」
俺はなんとか最後の気力を振り絞り立ち上がる。
「負けられねえんだよ……。この世界を……魔王の好き勝手にさせるわけにはいかねえ。例え俺の命に代えても、てめえらをブッ倒さなきゃならねえんだよ!!」
このシーリウスに住む人々のためだけじゃねえ。
花や動物たち。全ての生きるもののために、俺は戦っているんだ!!
絶対に、負けるわけにはいかねえんだ!!
俺は、凍牙の魔石から、全てのエネルギーを集め、最後の一撃に賭ける。
――――凍牙の水の精霊力。
そのエネルギーを攻撃エネルギーに変える。
ただし、これは最後の手段のため使ったら、しばらくの間、凍牙は普通の剣になってしまう。
でも、死ぬよりかは良い。
生きてなのは達の所に戻ることこそ、俺たちの勝利なんだ!!
「うおおおおおおおおおおおお!!」
青と翡翠の魔力流は、凍牙の刀身に絡まり、放電現象を起こしながら、力を増幅していく。
「……面白い。貴公の一撃、真っ向から受けて立とう!!」
ソードマスターの剣もさらに風を纏わせ、その威力は鎌鼬を作り出していた。
「いくぜえええええええええ!!」
「来いッッッッ!!」
「「うおおおおおおおおおおッッッ!!」」
俺とソードマスターの全力の一撃が激突する。
渾身の一撃の威力は、ほぼ互角。
凍牙と砕牙が交錯した次の瞬間――――。
バキャウム~~~~~!!
不気味な音と共に空間に亀裂が走った。
「こ、これは、次元の穴!? 名剣同士の激突が次元をも切り裂いたというのか!!」
ソードマスターが驚きの声を上げる。
「次元の穴だって!?」
渦を巻くように空間を飲み込みながら大きくなる次元の穴。
ゴウゴウと空気が音を立て、次元の穴の中に吸い込まれていく――――。
俺とティアナは必死に洞窟の壁にしがみついている。
「ティアナ、絶対にそこから動くな!! 動くと次元の穴に吸い込まれるぞ!!」
「うお、うおおおおおおッッ~~~~!!」
身を固くして耐えていたソードマスターが次元の穴に吸い込まれていく。
「ケイン、あたし、もうダメッッ!!」
ティアナも俺も、もう限界だ。
このままじゃソードマスターと同じ道をたどる。
すると、次第に次元の穴が狭まり始めた。
「次元の穴が閉じる。あと少しだ、頑張れ!!」
だが、次元の穴は最後の断末魔のように、吸い込む空気の風を震わせた。
「きゃあああ!!」
もろに空気の流れをかぶってしまったティアナは、岩肌から手が離れてしまい、次元の穴へ吸い込まれてく。
「ケインッッ!!」
ティアナが必死に手を伸ばすが、ほんの僅かに届かない――――。
* * *
(……もう……ダメね)
あたしは飛行魔法は使えないし、ケインの飛行魔法じゃこの気流は突破できない。
(最後なんて……こんなものなのね)
スバル、キャロ、エリオ、あたしがいなくても、もう大丈夫なんだからしっかり頑張りなさいね。
ケイン――――。
ごめんね、最後まで迷惑かけちゃって。
後のことは頼んだわよ。
覚悟を決めたその時――――。
「ティアナッッ!!」
ケインが岩肌から離れて、こっちに飛び出してきた。
「ば、ばかっ!! あんたまでいなくなったら、魔王はどうするのよ!!」
「バカはお前だ!! 仲間を犠牲にして何が世界を救うだ!! それに……」
「……そんな泣きそうな眼をした女の子を……見捨てられるかよ」
――――ばか。
本当にばかよ……。
あたしなんかを助けるために、あんたまで一緒に次元の穴に来ちゃうなんて。
でも……。
「……ありがとうね、ケイン」
「ティアナ、こうなったら一蓮托生だ。しっかり捕まってろよ」
「うん!!」
例え、この穴の先がどんな地獄だとしても大丈夫。
ケインが……。
最高の大ばかが一緒なんだから。
そして、あたしとケインは次元の穴に吸い込まれていった。