魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

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Number;16 新たなる絆

「……う、う……ん、ここは?」

 

 

辺りを見渡してみると、そこは見慣れない都市の廃墟が広がっていた。

 

 

「……どうやら、次元を超えて別の所にきちまったみたいだな。はっ!! ティアナは!?」

 

「う……んっ……」

 

 

少し離れた所にティアナが倒れていた。

 

 

「ティアナ、ティアナ!!」

 

「んっ……。ケイン……」

 

 

ティアナはうっすらと目を開いた。

顔や服が泥で汚れてるが、怪我とかは見あたらない。

 

 

「お、おい!? て、ティアナ!?」

 

 

 

突然ティアナが俺に抱きついてきた。

 

 

 

「あたし……あたし、本当は怖かった。あのまま死んじゃうんだって……」

 

 

ティアナの身体が震えているのが俺にも伝わってくる。

あたりまえだよな……。

 

 

死ぬのが怖くない奴なんて、誰もいやしない。

 

 

 

「でも、あんたが……ケインが、あたしの手を掴んで、必死であたしを助けてくれようとしたとき……本当に嬉しかった」

 

「仲間を助けるのは……当たり前だろ」

 

「ねぇ……。あたし達、元の世界に戻れるのかな?」

 

 

 

ティアナが不安な表情で俺に聞いてくる。

いつもなら、ティアナの方が俺を引っ張ってリードするのに……。

 

 

「戻れるのかなじゃない。戻るんだ!!」

 

 

生きてる限り、最後まであがいてあがいて、あがきまくる!!

どんなにみっともなくてもな!!

 

 

「ケイン……そう、よね!! あたし達は絶対に戻るのよ!!」

 

「ああ!! 絶対にみんなの元に帰るんだ!!」

 

 

ティアナの眼に強い光が戻った。

これなら大丈夫だ!!

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「――――――さっきから、辺りを調べてみたんだけど」

 

「なんだ?」

 

 

あれから俺たちは、廃墟都市を調べていた。

何てこと無い廃墟――――。

 

 

だけど、ティアナは、辺りを調べれば調べるほど顔色が悪くなってきている。

 

 

 

「……もしかしてなんだけど、ここは……」

 

「ミッドチルダ……。クラナガン……かもしれないの」

 

「!!」

 

 

どういうことだよ!!

スカリエッティも逮捕され、ミッドの危機はなのは達が解決したのに――――。

 

 

 

「……正確に言うと、今のあたし達の……時間じゃないの。クロスミラージュで調べて分かったんだけど、ここの時間は……新暦78年……今から2年後の世界」

 

 

はぁ、なんだそりゃ!!

今は、確かミッドの暦では、新暦76年だろ。

 

いや、まてよ……。

可能性がないとは言い切れない。

 

 

――――――さっきの次元の穴。

 

 

 

「ま、まさか……俺たちは」

 

「そう、あたし達は、未来……正確に言えば……。並行世界に……飛ばされたかもしれない」

 

「並行……世界……だ、と?」

 

 

 

並行世界って事は、未来じゃなくて、未来とは違う世界ってことだよな?

 

 

 

「わかったのよ……。ここは……ここは……フィルがたった一人で戦ってきた未来の世界……」

 

「どういうこと……なんだよ!?」

 

「……本当は部外者には話しちゃいけないんだけど、あんたがフィルの親友って、なのはさん達から聞いてるから……話すわね」

 

 

 

ティアナから聞いた話は衝撃的な物だった。

本来ならJS事件は、管理局の全面的敗北でミッドチルダは死の星になってしまったこと。

 

 

フィルがみんなの死を背負って、たった一人で戦い続けてきたこと。

 

 

そして、運命の女神がフィルに力を貸して、この世界に戻ってきてJS事件を戦ったけど……。

 

 

 

 

「フィルの奴は……。フェイトを庇って……だったよな」

 

「うん……」

 

 

 

あいつらしい最後といったらそれまでだけど、大切な女性を泣かせてたら意味がないだろうが――――。

あの、ばかやろうが……。

 

 

「でも、どうしてここがミッドって分かったんだ?」

 

「これをみて……」

 

 

ティアナが指を指した方を見ると、小さな石碑があった。

そこに書かれていた言葉は――――。

 

 

 

『俺の大切な仲間達へ。いつの日か必ず平和を取り戻します。   フィル・グリード』

 

 

 

 

「これは……」

 

「フィルが、みんなが殺されたときに小さな石碑を作ったんだって。それに誓いを立てたって、あいつから……聞いたことがあったの」

 

「それがこの石碑って訳か」

 

「……まさか、この目で、フィルがいた未来の世界をみることになるなんてね」

 

 

 

一歩間違えれば、俺たちの時間の世界もフィルがいた未来と同じ道をたどっていたのか――――。

それをさせないために、あいつはたった一人で奮闘してたのかよ。

 

 

「……フィルが、女神から聞いた話だと、この世界はクアットロのせいで、星全体が雲に覆われてしまって、二度と太陽の光を見ることが無くなってしまったの。だから、フィルがいなくなった後、戦いが終わって何とか生き残った人々は……移住していったらしいわ」

 

「だから、この星には誰一人いないってわけか……」

 

「そういうことね……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「……さっきさ、あたしがあきらめかけていたとき……必死で元気づけてくれたね」

 

「まぁ、熱血馬鹿な俺は、ああ言った励まししかできないけどな」

 

 

ケインは、頬をポリポリかきながら笑いながら答える。

 

 

「あんたって、いつもそうだよね。普段はおちゃらけてるけど、誰かが助けを求めてるときは……必死になって助けてくれる」

 

 

ケインは、普段はおちゃらけていて、軟派な面が目立つんだけど……。

 

 

でも……。

 

 

誰かが泣いてたり苦しんでるときは、全力で支えてくれる。

 

 

 

「俺は、可愛い女の子が泣いてるのが嫌いなだけだ。だから、優しいのも女の子限定!!」

 

「ふふっ、だったらそう言うことにしておくわね」

 

 

こんな事言ってるけど、同世代のヴァイス陸曹とも仲が良いし。

エリオやキャロのことも、すっごく面倒見が良い。

 

 

「おめえ、絶対に信じてないだろ……」

 

「さあね~」

 

「ったく……。とりあえず少し休め。見張りは俺がしといてやるから」

 

「寝てる間に襲わないでよね」

 

「するか!!」

 

 

 

そんなあからさまに否定されると、ちょっと傷つくわよ。

あたしだって、女の子なんだし……。

 

 

 

「……ったく、勘弁してくれっての。ティアナみたいな、可愛い女の子と一緒なだけでいろいろ我慢してるんだぞ……」

 

 

あっ……。

 

 

聞こえるかどうかの声だったけど、ケインの声がしっかりと聞こえた。

 

 

――――あたしのことちゃんと女の子としてみてくれてたんだ。

 

 

からかってごめんね……。

もう、こういうからかいはしないから……。

 

 

だから、これからもあたしのこと、女の子としてみてね……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「……ねむっちまったか」

 

 

 

よっぽど疲れてたんだな。

あたりまえだよな。いろいろありすぎたもんな……。

 

 

ふと、空を見上げると、星一つ無い真っ黒な空――――。

 

 

 

「二度と晴れることのない空か……」

 

 

戦争のせいで、人々が苦しめられ、住む所さえ失ってしまう。

 

 

「シーリウスを……絶対にそんな世界になんかしてたまるか!!」

 

『――――それは貴公の心がけ次第なり』

 

「何ッ!?」

 

 

突然、俺の前に影が起き上がってきた。

影は次第に見覚えあるシルエットへと変化していく。

 

 

「お前は、ソードマスター!!」

 

「どうしてここに!?」

 

「貴公達をさがしていたのだ」

 

「なんだと!!」

 

「シーリウスに戻れぬのなら、せめて苦しまずに殺してやろうと思ってな」

 

 

 

言うが早いか、ソードマスターは砕牙を抜いて俺を襲おうとしたが……。

 

 

 

「ちぃぃ……」

 

 

オレンジ色の魔力弾が、ソードマスターの頬をかすめた。

 

 

「やれる物ならやってみなさいよ!! あたし達を舐めないでよね!!」

 

 

いつの間にか、ティアナが起き上がっていて、クロスミラージュの銃口をソードマスターに向けていた。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「やるな。眠ってるふりをして攻撃のチャンスを窺っていたとはな……」

 

「悪いけど、あたしは騎士道精神なんて無いの。生きるためならどんな汚い手だって使うわ……」

 

 

 

ちっぽけなプライドなんか、戦場じゃ何の役にも立たない。

フィルだって、勝つためならどんな汚いと言われる手だって使ってきた。

 

 

あたしだって、生きるためならどんな手だって使ってやるわ!!

 

 

 

「ティアナ……お前……」

 

「ケイン、二人がかりで一気に勝負をつけるわよ。ソードマスター相手にタイマンなんて愚の骨頂よ!!」

 

 

一対一で戦いたいケインだけど、あたしは生きて、なのはさん達の所に帰るためなら、例え嫌われたって一緒に戦うわ!!

 

 

 

「……ありがとな、ティアナ」

 

「えっ?」

 

「俺……肝心なこと忘れてた。洞窟じゃプライドでタイマンでやろうとしてたけど……。それは大きな間違いだった。戦いは生きて帰ってこそ勝利だと言ってるのにな。だから……」

 

 

 

ケインは凍牙を抜き放ち――――。

 

 

 

「ソードマスター!! 俺たちと最後の勝負だッッ!!」

 

 

 

ソードマスターに剣先を向け宣言した。

 

 

 

「フッ、ハハハハハハハッッ!! 下手なプライドを取らず、自分らの全力で戦うか……。ケイン・ラーディッシュ、ティアナ・ランスター。それでこそ我が認めた宿敵だ!!」

 

 

 

ソードマスターは砕牙を上段に構え、風の魔力を剣に纏わせ……。

 

 

 

「いざ、尋常に勝負ッッ!!」

 

 

 

高速でケインの元に近づき、剣を一閃する。

 

 

 

「うおっ!!」

 

 

間一髪ケインはかわすが、ソードマスターの攻撃の前に、凍牙で受け止めるのがやっと。

このままじゃ、いつかやられる!!

 

 

 

(……ティアナ、何か策があるか!?)

 

(……あるわ、たった一つだけね)

 

 

 

あたしは念話でケインと話しながら、マルチタスクを駆使して作戦を考える。

そして出た結論は……。

 

 

(ケイン、なんとかソードマスターをあたしから引き離して。その隙に準備するから)

 

(……わかった。お前を信じるぜ。時間稼ぎは任せなって!!)

 

 

 

「うおおおおおおおッ!!」

 

「ぬおおおおおおッ!!」

 

 

 

凍牙と砕牙の激突で、辺り一帯の木が倒れ、枝が飛び散り、交錯する音が響き渡る。

ケインは、ソードマスターに悟られないように、少しずつあたしから距離を取ってくれている。

 

 

チャンスは今しかない――――。

 

 

 

「行くわよ、クロスミラージュ」

 

《OK、Blaze Mode》

 

 

 

あたしはクロスミラージュを遠距離狙撃砲形態(ブレイズモード)に切り替える。

 

 

 

「いくわよ……」

 

 

あたしは辺り一帯の魔力を集め、スターライトブレイカーの発射態勢を取る。

 

 

 

「スターライト……」

 

 

レーザーポインターがソードマスターを捉え……。

 

 

 

「ブレイカッッッッーーーー!!」

 

 

 

渾身の一撃を放った。

 

 

 

――――だが。

 

 

 

「うおおおおおおおおおッッ!!」

 

 

 

あたしのブレイカーは、ソードマスターの一閃によって切り裂かれてしまう。

 

 

 

「我に同じ手が通じると思ったか!! 舐めるなッッ!!」

 

「……フッ」

 

「何がおかしい!!」

 

 

 

あんた相手に、こないだと同じ手が通じるなんて思ってないわよ。

スターライトブレイカーは、あくまで陽動。

 

 

あたしの本命の攻撃は――――。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

ソードマスターが辺りの異変に気がつき、見上げると、そこには……。

 

 

「む、無数の……ビットだと!?」

 

 

 

20以上のマキシマムビットが魔力集束して、ソードマスターを捉えていた。

 

 

 

――――そう。

 

 

これが、あたしの本当の本命。

 

 

 

「マキシマムビット……コード・スナイプ。これがあたしの切り札よ!!」

 

 

 

マキシマムビットに集めたのは、重力魔法。

一つ一つが小さくても、これだけの数から発射される砲撃に耐えられるかしら!!

 

 

 

「いっけぇえええええええ!! クロスファイア・フルバースト……モード・グラビティッッ!!」

 

 

 

ビットから放たれた砲撃は、ソードマスターに降り注ぎ、魔力で発生した重力地場がその動きをロックする。

 

 

 

「ぐっ……ぬおおッッ!! う、動けんッッ!!」

 

「今よ、ケインッッ!!」

 

 

 

あたしの全魔力を使っても、ソードマスターを止められるのは一瞬だけ。

ケイン、あとはあんたに全てを託すわ!!

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「おめえが作ってくれたチャンス……無駄にはしねえ!!」

 

 

 

ここに来る前、凍牙の精霊力を全て使ってしまい、俺自身の魔力も殆どない。

だけど、命がけで俺にチャンスを作ってくれたティアナのため、俺はこの一撃に賭ける!!

 

 

 

「うおおおおおおおおおッッ!!」

 

 

 

俺の魔力を、すべて剣に集め、魔力の刃と化す。

俺の今の魔力じゃ、炎とか氷とかに変換しても通用しない。

 

 

こうなったら純粋な魔力エネルギーをたたき込んでやる!!

 

 

 

 

「いくぞッッッッ!!」

 

 

 

俺は高速飛行魔法で、ソードマスターにめがけて思いっきり突撃をかける。

 

 

 

「ケインッッッ!!」

 

「ソードマスターッッ!!」

 

 

 

ガキイィィィィン――――――!!

 

 

 

次の瞬間、ソードマスターの砕牙が根本から折れ、渾身の一撃がソードマスターを捉えてた。

 

 

 

 

「……み、みごとだ……。き、貴公達の……の勝ちだ。この力があれば……もしや、シーリウスを……いや、世界を救えるやも……しれ、ん」

 

「なんだって!? それはどういう意味だ!!」

 

 

だが、ソードマスターはその問いに答えることはなく――――――。

 

 

鎧の隙間から吹き出した黒い光に包まれ、そのまま消滅してしまった。

 

 

 

そして――――――。

 

 

 

バキィィィン――――――!!

 

 

 

「凍牙が!?」

 

 

 

凍牙もまた、砕牙と同じく根本から刃が折れてしまった。

 

 

 

「やっぱり……耐えられなかったんだな」

 

 

元々精霊力を使い果たしてしまい、さらにさっきの無茶な使い方だ。

よく持ってくれたと言った方が良い……。

 

 

 

「……ケイン」

 

「命が助かったんだ。名剣が無くなったってなんとかなるさ!!」

 

 

 

 

凍牙のこと思って、ティアナが今にも泣きそうなっていた。

 

 

 

「確かに凍牙が無くなって辛いさ。だけどな……。お前の命の方が、剣よりもずっと大事なんだ。だから、気にするな!!」

 

「……でも」

 

「魔王だって、お前がいてくれれば絶対に倒せる!! もし、凍牙のことを気にしてくれるなら、これからも俺と一緒に戦ってくれ。その方が万倍も嬉しい!!」

 

「ええ!! あんたが嫌だと言ったって最後まで付き合うからね!!」

 

 

 

俺にとって、名剣よりも仲間との絆の方が大切だ。

ティアナ達がいてくれる限り、俺も強くなれるから――――――。

 

 

 

「あれ? ケイン、あれを見て!!」

 

 

ティアナがソードマスターの消えた地点を指さした。

 

 

「なんだ!?」

 

 

そこには見慣れぬ剣が地面に突き刺さっている。

 

 

 

――――――重厚で、黒き輝きを放つ両刃の剣。

 

 

 

俺はそれを手にすると、剣からものすごい精霊力が伝わってきた。

 

 

 

「なんて力だ。凍牙よりも遙かに力がある……。まさか、この剣は!!」

 

「もしかして……この剣って!?」

 

「――――――ああ、間違いない」

 

 

 

こんな力を持つ剣は、俺の知る中で一つしかない。

 

 

 

「これはシーリウスに伝わる名剣中の名剣。最強の名剣……『皇牙(オウガ)』だ!!」

 

 

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