魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

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Number;17 舞い降りる戦士

「パルスレーザー、主砲、副砲、全砲門撃ちまくれ!!」

 

 

今、アースラにはヴィータ達も、なのはちゃんやフェイトちゃんもいない。

みんな、それぞれ魔物が出現した所に出撃していて、残っているのはロングアーチメンバーと私だけ。

 

 

――――――完全に孤立無援だ。

 

 

 

「……こんな時に、フィルが……ケインが……いてくれたら」

 

 

フィル……。

 

あんたはどんな状況でも最後まであきらめなかった。

そして、フェイトちゃんに全てを託していった……。

 

 

ケイン……。

 

 

あんたは、フィルがいなくなってしまった六課にとって、みんなのムードメーカーやった。

このシーリウスにくる前は、みんな表面上は明るく振る舞っていたけど、やっぱり大切な仲間を失った悲しみは計り知れなかった。

 

 

でもな……。

 

 

あんたがここに来て、みんなと一緒にいるうちに、いつのまにかみんな本当に笑うようになった。

あんたがいてくれることで、またみんなと一緒に笑顔でいられる。

 

 

そう……思っていたのに……。

 

 

 

「……なんで……なんで、私の大事な人たちはみんな……みんな……いなくなってしまうんやッ!!」

 

 

リインフォース、フィル、ティアナ、そして……ケイン。

 

 

「推力低下!! 艦の姿勢、維持できませんッ!!」

 

 

ルキノが必死になってアースラをコントロールしてくれてるが、ゆりかごでの戦い、そして、このシーリウスに来てからの魔物との長い戦いが蓄積し、アースラは、もう限界になっていた。

 

 

「エンジン出力25%まで低下、危険域です!!」

 

 

 

魔物の攻撃は、アースラのありとあらゆる所を破壊していく。

上空にいる魔物は、計測不能。

 

 

雑魚だけでなく、ファイヤーゴーレムや他のランクの高い魔物も多数いる。

 

 

――――――逃げ切れない!?

 

 

みんなの顔が恐怖に引きつった、その時――――。

正面の艦橋窓に、迎撃をかいくぐってきた魔物が肉薄する。

 

 

「!!」

 

 

あの魔物は『サンダーゴーレム』

空の機動性も高く、魔導師ランクでいったらSランク以上。

 

サンダーゴーレムの口が開き、強力なエネルギー弾が今にも放たれようとしている。

ここまでついてきてくれたみんなに申し訳ない……。

 

私のような未熟な指揮官についてきてくれたのに……。

その気持ちに何一つ報いることが出来なかった。

 

 

 

「せめて……せめて、私が戦えたら……」

 

 

でも、私は壊れてしまったアースラの魔導エンジンに動力を伝達するため、ここを離れるわけにはいかない。

私が出撃してしまったら、アースラはエネルギーを失ってしまうから。

 

 

 

――――――ごめんな。

 

 

みんなのこと、守りきれなくて。

 

 

 

サンダーゴーレムの砲撃が放たれようとしたその時……。

 

 

 

突然、一条の光が天から降り注ぎ、その光はサンダーゴーレムを貫いた。

 

 

 

「な、なんや、今の攻撃は!?」

 

 

別のサンダーゴーレムが上空を見上げると、その頭部を天から舞い降りた何かが切り落とす。

 

 

 

「ま……まさ、か」

 

 

舞い降りたのは、一人の男性。

少しぼさぼさの黒髪――――。

 

 

傷だらけの青い鎧。

 

 

そして、黒き輝きを放つ大きな剣。

 

 

 

 

「……う、うそや……ないよね」

 

 

 

現れたのは、次元の穴に吸い込まれて死んでしまったはずの……。

 

 

 

『嘘じゃねえよ。ただいま戻ったぜ、はやて!!』

 

 

 

ケイン・ラーディッシュだった。

 

 

 

嘘や無い――――――。

 

 

 

神様は私に大切な物を返してくれた。

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

『こちら、ティアナ・ランスター。今から援護しますので、アースラを安全な所に移動させてください』

 

 

 

別のスクリーンにティアナからの通信が入る。

 

 

 

「ティアナ!! あんたも……無事やったん……やね」

 

『はい。なんとか……帰ってこれました。みんなの所に……』

 

「……よかった。ほんまに……よかった」

 

『ああ……。だけど、再会の挨拶は後回しだ。まず、このうるさい雑魚どもを片付ける。ティアナ!!』

 

『ええ、行くわよケイン!!』

 

 

 

*    *    *

 

 

 

あたしは飛行魔法で、ケインのそばに行き、クロスミラージュをブレイズモードに変形させる。

 

 

 

「んじゃ、いくぜ、ティアナ」

 

「待ちなさいよ!!」

 

「な、なんだよ!?」

 

「……本当は、余力ないんでしょう。あんた、かなり無理したから……」

 

 

 

ソードマスターとの戦いの傷はかなりの物。

本当ならこうしてるのも辛いはずなのに……。

 

 

「やっぱ……。わかっちまうか」

 

「……バレバレよ」

 

 

あたしは、ずっとあんたと一緒に戦ってきたんだから……。

 

 

だから……。

 

 

あたしも一緒に背負ってあげるから、無理するんじゃないの!!

 

 

 

 

「じゃ、一緒にカタつけようぜ!!」

 

「ええ!!」

 

 

 

ケインは皇牙を構え、精霊力を引き出し、刃と自分自身に放電を纏わせる。

あたしは、その余剰エネルギーを集束し、自分のエネルギーへと変換する。

 

 

 

「んじゃ、いくぜ!!」

 

「いつでもいいわよ!!」

 

 

 

展開していたマキシマムビットとクロスミラージュの銃口からと、横一文字に一閃した皇牙の一撃が一斉に放たれ、その光は辺り一帯のゴーレムを一掃する。

 

 

その光景を見た他のゴーレム達は、一斉に撤退をしていった。

さっきの攻撃で、リーダー格の奴がやられたから、指揮系統が乱れたのね……。

 

 

ふぅ……。

 

 

どうやら、何とかなったわね……。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「ケイ、ン……。ほんまに……いきてたん…や、ね」

 

「すっげぇ、苦労したけど、何とか帰ってきたぜ……」

 

 

 

話したことはたくさんあるのにな……。

でも、なんかうまく言葉にできねえ――――――。

 

 

 

「聞きたいことが……たくさんあるけど」

 

「ああ、順番に話すさ。ここに戻ってこれたことや……」

 

 

俺は皇牙を抜き放ち、それをはやて達に見せる。

 

 

「この新しい剣、皇牙のこともな……」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「まさか、ソードマスターは『皇牙』の化身だというのか!? でも、どうして名剣『皇牙』が魔王三邪星に?」

 

「あたしだって分からないわよ。それに、さっきソードマスターが言ってた言葉も気になるけど……」

 

 

ティアナの言うとおり、最後のあの言葉は気になる。

そう思っていたとき……。

 

 

『それはまだ、教えるわけにはいかぬ……』

 

「「!!」」

 

 

突然、俺たちの頭に声がした。

ソードマスターの声だ。

 

 

「まさか!?」

 

 

俺は手にした皇牙を再び見つめた。

 

 

『そうだ、我は、直接貴公達の心に語りかけている。我は『皇牙』。我を破りし貴公を我の正当な所有者、主と認めよう。以後、我を使うが良い』

 

「良かったわね、ケイン!! 新しい剣が手に入って」

 

「まあな。でも、凍牙がな……」

 

 

 

確かに、皇牙が手に入ったのはすっげえ嬉しいんだけど……。

 

 

「そっか……。ずっと使い続けてきた剣だものね」

 

「ああ、こいつは親父からもらって、これまでずっと使ってきた相棒だからな……」

 

 

 

せめて、ちゃんと供養してやりたい。

こいつだって魂があるのだから……。

 

 

『凍牙の魂は死んではおらん。その魂は新たな肉体に宿らせればいい』

 

「そんなことできるのか!?」

 

『我が、凍牙の宝玉を、ティアナが持つその銃に移し替えれば可能だ』

 

「だったらお願い!! あたしのクロスミラージュに凍牙の宝玉を移して!!」

 

『……我を倒したお前なら、凍牙の力も使えるだろう。よかろう!!』

 

 

次の瞬間、凍牙が光り出し、宝玉が剣から外れ、クロスミラージュの左側の十字の中心に埋め込まれた。

 

 

 

「ありがとう、皇牙。あたしのわがままを聞いてくれて……」

 

『礼を言われることではない。武器にも、それだけの愛情を注いでくれる、貴公らの心に答えただけだ』

 

「よし、急いでシーリウスに戻らないとな!!」

 

 

 

こうしてる間にも、魔王はどんどん侵略をしているんだ。

はやて達、無事でいてくれよ……。

 

 

 

『それならば、我を使って空間を切れ、さすれば、シーリウスへの道は見つかろう』

 

「く、空間を切り裂く!? そんなことできないぞ!!」

 

『今の貴公の力なら出来るはずだ。シーリウスへ帰りたいという想いが強ければ、必ず道は開かれるであろう。後は貴公の想い次第なり!!』

 

 

――――――俺の想い…か。

 

 

「こうなったら、やってやるぜ!!」

 

 

俺は皇牙を改めて構える。

 

 

『さあ、心の底から願うのだ。シーリウスに帰りたいと』

 

 

皇牙の声が、俺とティアナの心に響く。

 

 

「ううう……おおおお……」

 

 

俺は、皇牙を持つ手に力を込める。

 

 

『心の底から、シーリウスのことだけを考えるのだ!!』

 

 

俺の脳裏に、シーリウスでの出来事が走馬燈のように蘇ってきた。

 

 

嫁探しのため、親父にたたき出されたこと――――。

 

 

フェイトとの初めての出会い。

 

 

マジックマスターとの戦い。

 

 

アンデッドマスターとの戦い。

 

 

 

『もっと、もっと思い出すのだ、シーリウスでの思い出を』

 

「そ、そんなこと言ったって……」

 

 

 

正直、これ以上どうしようもないぞ。

 

 

『もっと、もっと、もっと……もっと大切な思い出が、あるはずだ』

 

 

 

 

――――――もっと大切な思い出……!!

 

 

 

その時、俺の脳裏に浮かんだのは、キャロと一緒に戦った思い出。

 

 

 

なのはが自分のことで悩んでいたときのこと。

 

 

 

はやてが苦しんでいたアセスト病の出来事。

 

 

 

そして……。

 

 

 

次元の穴に吸い込まれていくティアナのこと。

 

 

 

 

『これだ!! 今だッッ!!』

 

「うおおおおおおッッ!!」

 

 

俺は皇牙を思いっきり振り下ろし、空間を切り裂いた。

 

 

ズブリ!!

 

 

確実な手応えがあった。

とたんに、ゴウゴウと風が吹き始めた。

 

空間が避け、次元の扉が開いたのだ。

 

 

 

「やった、次元の扉が開いたぞ!!」

 

「やったわね、ケイン!!」

 

「よし、行くぞ!!」

 

 

俺は、手を差し出し……。

 

 

「うん!!」

 

 

ティアナはその手をしっかりと握りしめた。

 

 

 

そして、俺たちは一緒に次元の穴に飛び込んだ。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「これが向こうで経験してきたことの全てだ……」

 

「……せやったんやね」

 

 

ケインは、次元の穴に吸い込まれても、決してあきらめなかったんや。

絶対に、私達の所に帰るって心を持ち続けて……。

 

 

「……はや、て?」

 

 

もう、こらえきれない――――――。

これ以上涙を抑えるのは無理や。

 

 

気がついたら私は、ケインの胸に飛びこんでいた。

 

 

 

「私……ほんまに悲しかった……。あんたがいなくなってしまってからの半年……。ほんまに……悲しかった」

 

 

 

ケインとティアナがいなくなってからの半年。

私もなのはちゃん達も、みんなケインが生きてるって信じて戦ってきた。

 

だからこそ、魔王軍の猛烈な侵攻にも必死で戦ってこれたんや。

 

 

 

「は、半年だと!?」

 

「そんな、あたし達はあっちに2日もいなかったのに!!」

 

 

 

そっか……。

時間軸が違う向こうとこっちでは、これだけのずれがあったんやな。

 

 

 

「もう……いなくなったり、しないでや……。いなくなるなら、せめて私も一緒につれてって……」

 

「そんなことしないさ。俺はもう、いなくなったりはしない」

 

「……約束、やで」

 

「おう!!」

 

 

 

私は、ケインの胸にもたれ、ケインのぬくもりを感じる。

あたたかいこのぬくもり……。

 

 

もう、私のそばから消えないで……。

 

 

 

『どうやら、貴公らに全てを話すときが来たようだな』

 

「皇牙?」

 

 

 

突然、聞き慣れない声が私達に話しかけてきた。

これがさっき話にあった皇牙の声なんやな……。

 

 

 

『時はきた。貴公らの仲間とともに、ある場所に行くが良い』

 

「行くって、いったいどこに?」

 

『その場所は……』

 

 

 

皇牙は、一呼吸をおいて、再び語り出す。

 

 

 

『光の神殿……『シャイン大神殿』だ……』

 

 

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