魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「パルスレーザー、主砲、副砲、全砲門撃ちまくれ!!」
今、アースラにはヴィータ達も、なのはちゃんやフェイトちゃんもいない。
みんな、それぞれ魔物が出現した所に出撃していて、残っているのはロングアーチメンバーと私だけ。
――――――完全に孤立無援だ。
「……こんな時に、フィルが……ケインが……いてくれたら」
フィル……。
あんたはどんな状況でも最後まであきらめなかった。
そして、フェイトちゃんに全てを託していった……。
ケイン……。
あんたは、フィルがいなくなってしまった六課にとって、みんなのムードメーカーやった。
このシーリウスにくる前は、みんな表面上は明るく振る舞っていたけど、やっぱり大切な仲間を失った悲しみは計り知れなかった。
でもな……。
あんたがここに来て、みんなと一緒にいるうちに、いつのまにかみんな本当に笑うようになった。
あんたがいてくれることで、またみんなと一緒に笑顔でいられる。
そう……思っていたのに……。
「……なんで……なんで、私の大事な人たちはみんな……みんな……いなくなってしまうんやッ!!」
リインフォース、フィル、ティアナ、そして……ケイン。
「推力低下!! 艦の姿勢、維持できませんッ!!」
ルキノが必死になってアースラをコントロールしてくれてるが、ゆりかごでの戦い、そして、このシーリウスに来てからの魔物との長い戦いが蓄積し、アースラは、もう限界になっていた。
「エンジン出力25%まで低下、危険域です!!」
魔物の攻撃は、アースラのありとあらゆる所を破壊していく。
上空にいる魔物は、計測不能。
雑魚だけでなく、ファイヤーゴーレムや他のランクの高い魔物も多数いる。
――――――逃げ切れない!?
みんなの顔が恐怖に引きつった、その時――――。
正面の艦橋窓に、迎撃をかいくぐってきた魔物が肉薄する。
「!!」
あの魔物は『サンダーゴーレム』
空の機動性も高く、魔導師ランクでいったらSランク以上。
サンダーゴーレムの口が開き、強力なエネルギー弾が今にも放たれようとしている。
ここまでついてきてくれたみんなに申し訳ない……。
私のような未熟な指揮官についてきてくれたのに……。
その気持ちに何一つ報いることが出来なかった。
「せめて……せめて、私が戦えたら……」
でも、私は壊れてしまったアースラの魔導エンジンに動力を伝達するため、ここを離れるわけにはいかない。
私が出撃してしまったら、アースラはエネルギーを失ってしまうから。
――――――ごめんな。
みんなのこと、守りきれなくて。
サンダーゴーレムの砲撃が放たれようとしたその時……。
突然、一条の光が天から降り注ぎ、その光はサンダーゴーレムを貫いた。
「な、なんや、今の攻撃は!?」
別のサンダーゴーレムが上空を見上げると、その頭部を天から舞い降りた何かが切り落とす。
「ま……まさ、か」
舞い降りたのは、一人の男性。
少しぼさぼさの黒髪――――。
傷だらけの青い鎧。
そして、黒き輝きを放つ大きな剣。
「……う、うそや……ないよね」
現れたのは、次元の穴に吸い込まれて死んでしまったはずの……。
『嘘じゃねえよ。ただいま戻ったぜ、はやて!!』
ケイン・ラーディッシュだった。
嘘や無い――――――。
神様は私に大切な物を返してくれた。
そして……。
『こちら、ティアナ・ランスター。今から援護しますので、アースラを安全な所に移動させてください』
別のスクリーンにティアナからの通信が入る。
「ティアナ!! あんたも……無事やったん……やね」
『はい。なんとか……帰ってこれました。みんなの所に……』
「……よかった。ほんまに……よかった」
『ああ……。だけど、再会の挨拶は後回しだ。まず、このうるさい雑魚どもを片付ける。ティアナ!!』
『ええ、行くわよケイン!!』
* * *
あたしは飛行魔法で、ケインのそばに行き、クロスミラージュをブレイズモードに変形させる。
「んじゃ、いくぜ、ティアナ」
「待ちなさいよ!!」
「な、なんだよ!?」
「……本当は、余力ないんでしょう。あんた、かなり無理したから……」
ソードマスターとの戦いの傷はかなりの物。
本当ならこうしてるのも辛いはずなのに……。
「やっぱ……。わかっちまうか」
「……バレバレよ」
あたしは、ずっとあんたと一緒に戦ってきたんだから……。
だから……。
あたしも一緒に背負ってあげるから、無理するんじゃないの!!
「じゃ、一緒にカタつけようぜ!!」
「ええ!!」
ケインは皇牙を構え、精霊力を引き出し、刃と自分自身に放電を纏わせる。
あたしは、その余剰エネルギーを集束し、自分のエネルギーへと変換する。
「んじゃ、いくぜ!!」
「いつでもいいわよ!!」
展開していたマキシマムビットとクロスミラージュの銃口からと、横一文字に一閃した皇牙の一撃が一斉に放たれ、その光は辺り一帯のゴーレムを一掃する。
その光景を見た他のゴーレム達は、一斉に撤退をしていった。
さっきの攻撃で、リーダー格の奴がやられたから、指揮系統が乱れたのね……。
ふぅ……。
どうやら、何とかなったわね……。
* * *
「ケイ、ン……。ほんまに……いきてたん…や、ね」
「すっげぇ、苦労したけど、何とか帰ってきたぜ……」
話したことはたくさんあるのにな……。
でも、なんかうまく言葉にできねえ――――――。
「聞きたいことが……たくさんあるけど」
「ああ、順番に話すさ。ここに戻ってこれたことや……」
俺は皇牙を抜き放ち、それをはやて達に見せる。
「この新しい剣、皇牙のこともな……」
* * *
「まさか、ソードマスターは『皇牙』の化身だというのか!? でも、どうして名剣『皇牙』が魔王三邪星に?」
「あたしだって分からないわよ。それに、さっきソードマスターが言ってた言葉も気になるけど……」
ティアナの言うとおり、最後のあの言葉は気になる。
そう思っていたとき……。
『それはまだ、教えるわけにはいかぬ……』
「「!!」」
突然、俺たちの頭に声がした。
ソードマスターの声だ。
「まさか!?」
俺は手にした皇牙を再び見つめた。
『そうだ、我は、直接貴公達の心に語りかけている。我は『皇牙』。我を破りし貴公を我の正当な所有者、主と認めよう。以後、我を使うが良い』
「良かったわね、ケイン!! 新しい剣が手に入って」
「まあな。でも、凍牙がな……」
確かに、皇牙が手に入ったのはすっげえ嬉しいんだけど……。
「そっか……。ずっと使い続けてきた剣だものね」
「ああ、こいつは親父からもらって、これまでずっと使ってきた相棒だからな……」
せめて、ちゃんと供養してやりたい。
こいつだって魂があるのだから……。
『凍牙の魂は死んではおらん。その魂は新たな肉体に宿らせればいい』
「そんなことできるのか!?」
『我が、凍牙の宝玉を、ティアナが持つその銃に移し替えれば可能だ』
「だったらお願い!! あたしのクロスミラージュに凍牙の宝玉を移して!!」
『……我を倒したお前なら、凍牙の力も使えるだろう。よかろう!!』
次の瞬間、凍牙が光り出し、宝玉が剣から外れ、クロスミラージュの左側の十字の中心に埋め込まれた。
「ありがとう、皇牙。あたしのわがままを聞いてくれて……」
『礼を言われることではない。武器にも、それだけの愛情を注いでくれる、貴公らの心に答えただけだ』
「よし、急いでシーリウスに戻らないとな!!」
こうしてる間にも、魔王はどんどん侵略をしているんだ。
はやて達、無事でいてくれよ……。
『それならば、我を使って空間を切れ、さすれば、シーリウスへの道は見つかろう』
「く、空間を切り裂く!? そんなことできないぞ!!」
『今の貴公の力なら出来るはずだ。シーリウスへ帰りたいという想いが強ければ、必ず道は開かれるであろう。後は貴公の想い次第なり!!』
――――――俺の想い…か。
「こうなったら、やってやるぜ!!」
俺は皇牙を改めて構える。
『さあ、心の底から願うのだ。シーリウスに帰りたいと』
皇牙の声が、俺とティアナの心に響く。
「ううう……おおおお……」
俺は、皇牙を持つ手に力を込める。
『心の底から、シーリウスのことだけを考えるのだ!!』
俺の脳裏に、シーリウスでの出来事が走馬燈のように蘇ってきた。
嫁探しのため、親父にたたき出されたこと――――。
フェイトとの初めての出会い。
マジックマスターとの戦い。
アンデッドマスターとの戦い。
『もっと、もっと思い出すのだ、シーリウスでの思い出を』
「そ、そんなこと言ったって……」
正直、これ以上どうしようもないぞ。
『もっと、もっと、もっと……もっと大切な思い出が、あるはずだ』
――――――もっと大切な思い出……!!
その時、俺の脳裏に浮かんだのは、キャロと一緒に戦った思い出。
なのはが自分のことで悩んでいたときのこと。
はやてが苦しんでいたアセスト病の出来事。
そして……。
次元の穴に吸い込まれていくティアナのこと。
『これだ!! 今だッッ!!』
「うおおおおおおッッ!!」
俺は皇牙を思いっきり振り下ろし、空間を切り裂いた。
ズブリ!!
確実な手応えがあった。
とたんに、ゴウゴウと風が吹き始めた。
空間が避け、次元の扉が開いたのだ。
「やった、次元の扉が開いたぞ!!」
「やったわね、ケイン!!」
「よし、行くぞ!!」
俺は、手を差し出し……。
「うん!!」
ティアナはその手をしっかりと握りしめた。
そして、俺たちは一緒に次元の穴に飛び込んだ。
* * *
「これが向こうで経験してきたことの全てだ……」
「……せやったんやね」
ケインは、次元の穴に吸い込まれても、決してあきらめなかったんや。
絶対に、私達の所に帰るって心を持ち続けて……。
「……はや、て?」
もう、こらえきれない――――――。
これ以上涙を抑えるのは無理や。
気がついたら私は、ケインの胸に飛びこんでいた。
「私……ほんまに悲しかった……。あんたがいなくなってしまってからの半年……。ほんまに……悲しかった」
ケインとティアナがいなくなってからの半年。
私もなのはちゃん達も、みんなケインが生きてるって信じて戦ってきた。
だからこそ、魔王軍の猛烈な侵攻にも必死で戦ってこれたんや。
「は、半年だと!?」
「そんな、あたし達はあっちに2日もいなかったのに!!」
そっか……。
時間軸が違う向こうとこっちでは、これだけのずれがあったんやな。
「もう……いなくなったり、しないでや……。いなくなるなら、せめて私も一緒につれてって……」
「そんなことしないさ。俺はもう、いなくなったりはしない」
「……約束、やで」
「おう!!」
私は、ケインの胸にもたれ、ケインのぬくもりを感じる。
あたたかいこのぬくもり……。
もう、私のそばから消えないで……。
『どうやら、貴公らに全てを話すときが来たようだな』
「皇牙?」
突然、聞き慣れない声が私達に話しかけてきた。
これがさっき話にあった皇牙の声なんやな……。
『時はきた。貴公らの仲間とともに、ある場所に行くが良い』
「行くって、いったいどこに?」
『その場所は……』
皇牙は、一呼吸をおいて、再び語り出す。
『光の神殿……『シャイン大神殿』だ……』