魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

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Number;19 聖剣『凰牙』

俺たちは『神の国・ジオード』の中心にある神の城の巨大な階段を駆け上っている。

飛行魔法で一気に飛ぼうとしたが、ここでは飛行魔法はキャンセルされてしまう。

 

しかたがなく、内部から魔王の元に向かうことになった。

長い階段を走り抜けると、やがて最上階に辿り着き、そこは広大な大広間であった。

 

 

「よくきたな、人の子よ」

 

「なに!?」

 

 

大広間の一番奥、一段高くなった所に玉座があった。

そこに魔王『ダークロード』が、闇の創造神『ロディス』が座っていた。

 

身の丈は3メートルあまり。

藍色の身体の背から伸びた触手。臀部から伸びる尾。

 

そして、威厳に満ちた雰囲気にその数倍はあるかのように感じてしまう。

 

 

「これが、闇の創造神。惑星シーリウスを造った6人の1人……」

 

「さすがに神と言うだけはあるわ……」

 

「……隙が全くないわね。キャロ、大丈夫?」

 

「は、はい……。でも、正直ここにいるだけで震えが止まりません」

 

 

 

正直、俺だってこのプレッシャーはかなり堪える。

だけど、いつまでもこうしてるわけにはいかない。

 

俺は一歩前に進み――――。

 

 

「闇の創造神、ロディス!!」

 

「その名は捨てた。今は魔を統べる魔王、ダークロードだ」

 

 

ダークロードの声は凛として、そして重かった。

 

 

「何故です? 何故、神であるあなたが人を殺し、シーリウスを滅ぼそうとするなんて……」

 

「定めだ。この世界が造られたときからの、いや、造り出す前からのな」

 

「勝手なこというんやない!!」

 

「そうです!! 人はあなた方の道具じゃないんです!!」

 

「ずいぶん勝手なこと言ってくれるじゃない……」

 

 

だが、ダークロードは俺たちの声を無視するかのごとく――――。

 

 

ズズン!!

 

床を踏みしめてゆっくりと立ち上がった。

 

 

「滅びたくなければ、その力で我を倒せ!!」

 

 

立ち上がると、更に巨大に見える。

何て半端無いプレッシャーなんだ……。

 

 

「闇の創造神、ロディス、いや、ダークロード!! あなたは今、俺たちのこの世界に『ダークジー』が迫ってることを知ってますよね」

 

「……」

 

 

ダークロードはスッと視線をそらすと……。

 

 

「知っている……」

 

「ならば、ダークジーを倒すためにあなたの力を貸してください!!」

 

 

俺は自分の思いを必死にぶつける。

だが……。

 

 

「出来んな」

 

「!!」

 

 

今度はダークロードが俺の目を見据えて……。

 

 

「いずれ滅ぼされる世界ならば、その前に我が滅ぼしてくれる!!」

 

「なんだと!!」

 

「ならばかかってくるがよい!! 力尽くで我に言うことを聞かせてみよ!!」

 

 

 

すると、ダークロードの全身が光りだし、その光は辺り一帯を覆い尽くす。

 

 

「まさか!!」

 

「「きゃああああッッ!!」」

 

 

その瞬間、はやてがリインとユニゾンが解けてしまい、はやての髪も銀髪から栗色に戻ってしまった。

 

 

「ダメです!! ケリュケイオンも全く反応しません!!」

 

「私も魔法結合ができへん。これは……」

 

「貴様らの頼みの綱の魔法は、ここでは全く使えない。皇牙をもつお前以外はどうしようもないぞ。さぁ、どうする……」

 

 

この空間は、全ての魔法をキャンセルしてしまう。

名剣の力で何とか力は使えるが、創造神の力がこれほどとは……。

 

 

 

「観念するがいい!!」

 

 

ダークロードは腰の剣を抜き、衝撃波をこちらに放とうとしている。

 

 

「まずい!!」

 

 

俺ははやて達の前に出て、自分の身体を盾にする。

こっちの攻撃態勢を整える時間はない。

 

防御結界が張れない俺じゃこれしか手段はない!!

 

 

 

「ケイン!! 私達のことはええ!! ダークロードと戦って!!」

 

「ケインさん!!」

 

「ふざけるな!! 仲間を……女の子を犠牲にしろってか。それだったら、俺の命をくれてやる!!」

 

 

 

これじゃフィルのこと怒れねえな……。

俺も同じ事をしようとしてるんだからな――――。

 

 

ダークロードの攻撃が放たれようとしたその時――――。

 

 

「クッ!!」

 

 

オレンジの閃光が、ダークロードの頬をかすめ、ダークロードが体勢を崩した。

 

 

 

「……さっきから黙って聞いていれば、勝手なこと言ってるんじゃないわよ!!」

 

「「「ティアナ(さん)!!」」」

 

 

今の魔力弾はティアナが放ったのか――――。

だけど、はやてもキャロも魔法が使えなくなってしまったこの空間でどうして?

 

 

「凍牙の宝玉よ。これのおかげであたしは魔法を使えるのよ。それとケイン!!」

 

 

俺はティアナに胸倉をつかまれ、引き寄せられ……。

 

 

「馬鹿言ってるんじゃないの!! 死ぬこと前提で創造神に勝てるわけないでしょう!!」

 

「ティアナ……」

 

「あたしも一緒に戦う。あたし達の思いをあいつにぶつけるのよ!!」

 

 

 

――――そうだ。

聖剣を完成させるには、人の強い想いも必要だって……。

 

 

 

「やるぞ……。俺たちの力を全てぶつけるんだ!!」

 

「そうときまれば……」

 

 

俺とティアナは、皇牙とクロスミラージュを構え、戦闘態勢になる。

 

 

 

「いくぜ、ダークロード!!」

 

「あたし達の力を見せてあげるわ!!」

 

 

ダークロードは、ふとした笑みを浮かべ……。

 

 

「お前達のような人間が、もっと早く現れていたのなら。『ヨラート』は……」

 

「「えっ!?」」

 

「良いだろう、お前達の想い、我に見せてみろ!!」

 

 

ダークロードは先ほどと違い、剣にとてつもない魔力を集めている。

間違いなくこの一撃は、必殺の攻撃。

 

 

 

 

*     *    *

 

 

 

 

――――どうする。

正直言って、あたしの魔法じゃ魔王には全く通用しない。

 

スターライトブレイカーは周りの魔力があって初めて威力が発揮する技。

マキシマムビットだって、あたしの魔力だけじゃフル活用は無理。

 

 

あたしはマルチタスクをフル活動させる。

そして導き出した答えは……。

 

 

「……単純な事ね。魔法は通用しない。あたし達にあるのは、皇牙とあたしの凍牙の宝玉だけ」

 

 

だったら……。

 

 

「ケイン、おそらく次の一撃は魔王にも、あたし達にも最後の一撃になるわ。今のあたし達に出来るのは……剣に自分の想いを込めて放つだけよ!!」

 

「剣に……、想いを込める……」

 

「そう、真実を語る者が言ってたでしょう。聖剣を完成させるには、魔王の力とあたし達の力が一つにならなければならないって」

 

「分かったのよ。魔王が、いや創造神があたし達に何を求めてたのかがね……」

 

 

そう、創造神ロディスがあたし達に求めてたのは、魔法の力なんかじゃない。

あたし達の心の力――――。

 

 

そして、今がそれを示すとき!!

 

 

 

「ケイン、皇牙に自分の想いを全て込めて!! 未来の世界から帰ってきた時みたいに、すべてを込めて!!」

 

『ティアナの言うとおりだ。それしか、ロディス様に勝つ手段は無い。剣に全てを込めるのだ』

 

「わかった……。ティアナ、皇牙」

 

 

 

あたしとケインは目を閉じ、ケインは皇牙に、あたしはクロスミラージュのダガーに全ての想いを込める。

 

 

 

今までのことを思い出すのよ……。

 

 

 

なのはさん達と一緒に戦ったゆりかご事件のこと。

 

 

クアットロのせいで、あたし達の大切な仲間を失ってしまったこと。

 

 

そして、シーリウスに来て、ケインとの出来事。

 

 

 

あたしは……。

 

 

今の素直な気持ちを、この一撃にぶつける!!

 

 

 

 

「部隊長、リイン曹長、ケインさんとティアさんは……」

 

「魔法が通用しない今、小細工は通用しない。あの二人は次の一撃に全てをかけるつもりや……」

 

「……残念ながら、それしか方法がないです」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

一歩、一歩ダークロードがこっちに近づいてくる。

すさまじい魔力波動がビンビン伝わってくる。

 

 

――――想いを剣に込める……。

 

 

剣に想いを……。

 

 

俺は今までの旅のことを振り返っていた。

 

 

みんなと初めてあったときのこと。

 

シンマでの初戦闘。

 

ラーワでの戦い。

 

レクター湖の竜とのこと。

 

 

はやての病気のこと。

 

 

ティアナと一緒に戦ったソードマスターのこと。

 

 

――――そして、旅で出会った仲間たちのこと。

 

 

 

みんなの住むこの世界を、俺の愛するこの世界を滅ぼさせはしない!!

 

 

 

「滅するが良い!! 人間達よ!!」

 

 

ダークロードの闇の魔力を纏った剣が、俺たちに振り下ろされる。

この一瞬に全てをかける!!

 

 

「「はあああああああっっ!!」」

 

 

 

迫るダークロードにめがけて、俺たちは刃を一閃させた。

ダークロードの剣と、俺の皇牙とティアナの魔力刃の三つの刃が交錯した瞬間――――。

 

 

辺りは眩い光の中に包まれた。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「『ロディス』、なぜあなたが、そこまでしなくてはならないのです!!」

 

 

光の中に突然聞こえた女性の声に、俺とティアナは振り返る。

すると、そこにダークロードにすがりつく女性の姿が浮かび上がった。

 

 

「これは……ダークロードの意識なのか!?」

 

「どうやらそうみたいね……」

 

「これ以上、犠牲を出したくないのだ。『ヲーグ』」

 

 

――――ヲーグ!?

そうか、あの女性は『ヲーグ』様。

 

見たことがあると思ったら、シャインの大神殿の石像で見たんだ。

 

 

『ロディス』と『ヲーグ』

二人の創造神は、俺たちに気付くことなく話し続けていた。

 

 

 

「我々は今までいくつもの世界を造り上げ、ダークジーを倒せる者の出現を待った。しかし、幾ら世界を造っても、ダークジーに呑み込まれ、消滅するばかり……」

 

 

 

ロディス様はヲーグ様に背を向けて言葉を続けた。

 

 

 

「残された時間は少ない。私はこの世界『惑星・シーリウス』に賭けてみようと思う。私の強力な闇の力と人を想う強い心の力がぶつかれば、皇牙は必ず完全な聖なる武器になるはずだ。かつて、ヨラートが聖剣を生み出そうとした時みたいに……」

 

「ロディス……。しかし、それでは……」

 

「いいのだ。聖なる武器が造れるのならば、私は人々に罵られようともかまわん!! ダークジーが倒せるならば幾らでも汚名をかぶろう!!」

 

「ロディス。あなたはそこまでヨラートのことを……。私も、私も残ります!!」

 

 

決意をしたヲーグ様は、ロディス様に必死にすがりつく。

しかし、ロディス様は、ヲーグ様の肩に手をかけて引きはがした。

 

 

「君を巻き込むことは出来ない。君は他の神と共に新しい世界を造り続けて欲しい」

 

「ロディス……。分かりました、でも、死のうなんて絶対に思わないでください!!」

 

「約束する。それに、私には君たちの残してくれた守護者達もいる」

 

 

ヲーグ様は後ろ髪を引かれながらも去っていく。

そして、ロディス様もヲーグ様の背をじっと見つめていた――――。

 

 

 

「すまない、ヲーグ。君の気持ちに答えてあげられなくて……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

キィ~~~~~~~~~ン!!

 

 

耳をつんざく金属音が光の中に響いた。

次の瞬間、視界が元に戻っていた。

 

 

俺たちの前にダークロードの巨体があった。

 

 

「くっ……ケイン、ティアナよ、力は……確かに貸したぞ」

 

 

そう言うとダークロードは片膝をついてしまった。

その時、右手に握られていた剣に気がついた。

 

 

――――黄金色に輝く柄の白亜の剣。

 

 

さっきまでの皇牙とは全く違う剣。

今の皇牙は神々しさにあふれている。

 

――――これが聖剣、『凰牙』。

 

 

皇牙の真の姿なのか……。

 

 

「ダークロード、いや、ロディス様!! やっぱりあなたは、人間のことを考えて……」

 

「ケイン、そしてティアナ……。お前達二人の想いの力を感じたぞ。この剣ならばダークジーを倒せる……はず、だ……。うっく……」

 

 

苦しそうに顔をゆがめるロディス様。

そして……。

 

 

「……どうやら……うまく、いった、よ、う……ね」

 

 

ティアナもまたそばに倒れてしまっていた。

 

 

「ティアナ!! しっかりしろ!!」

 

「大丈夫、よ……。魔力を使い、果たしただけだから……」

 

 

 

聖剣を作り出すには、とてつもないエネルギーがいる。

俺とロディス様での足りない分を、ティアナが全部埋めてくれたんだ……。

 

 

 

「ありがとな……。ティアナのおかげで、聖剣を完成させることが出来たんだ」

 

「言った、でしょう……。あたしは、あんたの力になるって……」

 

「どうして……どうして、おまえはそこまで、俺に……」

 

 

力もない、何も取り柄がない俺に、どうしてそこまで思ってくれるんだよ……。

 

 

 

「あんた……本当に……ばかね……」

 

 

 

そういってティアナは俺のおでこに……。

 

 

「好きだからに……決まってるでしょう。ばか……」

 

 

人差し指でツンとしながら、優しい笑みで答えてくれた。

 

 

「……ま、マジ?」

 

 

今の俺は、すっごく間抜けな顔をしてるに違いない。

 

 

「こんなときに、嘘なんか言わないわよ。フィルでもここまで鈍感じゃないわよ」

 

「ティアナ……」

 

 

 

――――ありがとうな。

 

 

 

 

俺を好きになってくれて……。

 

 

 

その時……。

 

 

 

グオオオオオオオオ~~~~~!!

 

 

轟音と共に、惑星全体が揺れたかのような振動がジォードを襲った。

 

 

「あれを見てください!!」

 

 

キャロが窓の外を指し示した。

窓の外に広がるシーリウスの上空に墨が染み出すように黒い影が広がりだしていた。

 

影の各所に黒い放電が稲妻のように飛び交っている。

 

 

「なんやあれは!?」

 

「あれこそ、ダークジー!! とうとうここまでやってきたのか!! うっく……」

 

 

ロディス様は胸を押さえてうずくまってしまった。

 

 

「ロディス様!!」

 

「今、手当しますね!!」

 

「いかん!!」

 

 

ロディス様は駆け寄る俺たちの手を振り払う。

 

 

「そんな時間はないのだ、『コールダ』!! 『ソガイア』!!」

 

「ハッ!!」

 

「こちらに!!」

 

 

 

何もない空間から、マジックマスターとアンデッドマスターが現れた。

そっか、あの二人も守護者。

 

水の守護者『コールダ』様と地の守護者『ソガイア』様ということか。

 

 

 

「どちらで呼べば良いんだろうな……」

 

「どっちでも好きにしてくれたまえ」

 

「おっと、剣は置いてくれ。私達はもう、お前達と戦うつもりはないんだ」

 

 

そういえば、この二人はなのはとフェイトと戦っていたはず……。

まさか、なのは達は……。

 

 

「心配しなくても良い。負けたのは……我らだ」

 

「正直言って、ここまで転移するのもきつかったんだぞ。あの娘に、思いっきり砲撃ぶちかまされたからな……」

 

 

まちがいなく、コールダ様はスターライトブレイカーを喰らったんだな。

というか、手加減なしのなのはのブレイカーを受けて、よくここまでこれたな。

 

 

「我も似たようなものだ。まだ雷のダメージが残ってるぞ……」

 

 

 

フェイトもソガイア様に勝つことが出来たんだな。

今でも、ソガイア様の身体からフェイトの雷が放電してるし……。

 

 

「コールダ、ソガイア、今すぐケインをダークジーの元に送るのだ」

 

「かしこまりました」

 

 

二人はロディス様に一礼すると俺を挟むように左右に立った。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。それよりもロディス様の手当を……」

 

「そんな時間はないと言ったはずだ!!」

 

 

 

大広間にロディス様の声が響いた。

 

 

「今、すぐにダークジーを倒さなければ、この星は奴に滅ぼされてしまうのだぞ!!」

 

「そ、それは……」

 

「行って、ケイン」

 

 

はやてが俺の前に飛び出してきて……。

 

 

「このときのために、私らずっとやってきたんやで。私達の本当の目的、ダークジーを倒すこと。この星シーリウスを守ること」

 

「ロディス様はわたし達がついてます。行ってください、ケインさん!!」

 

「そうです!! 私達のことを信じて、ダークジーを倒してください!!」

 

「……」

 

「わかった……。ロディス様のことは頼むな、はやて、キャロ、リイン、ティアナ」

 

 

すると、ティアナが俺の前に来て……。

 

 

「あたしはあんたについてくわよ」

 

「はぁ!? お前、何言ってるんだよ!!」

 

 

 

ダークジーの中心部に行くということは、生きて戻れないかもしれないんだぞ。

そんな所に連れて行けるわけ無いだろうが!!

 

 

「その剣に書かれてる文字、よく見てみなさいよ」

 

「文字?」

 

 

 

俺は、凰牙の刀身に書かれていた文字をよく読んでみると……。

 

 

 

「セイクリ…ッド…ティ、ア……。はぁ!?」

 

「そう、凰牙のもう一つの名前。別名、聖剣『セイクリッドティア』よ。その名が示してるとおり、あたしの名前が入ってるのよ。それに、その聖剣はあたしとあんたの想いで完成させたのよ。だから、あたしも行かなくちゃ真の力は発揮できないでしょう」

 

「だけどな!!」

 

 

俺が言葉を続けようとしたとき、聖剣が光り出し……。

 

 

『ケイン、そなたの負けだ。ティアナは貴公のそばで力になりたいのだ。それにティアナの言うとおり、真の力を引き出すには二人の想いが必要だ』

 

「……分かった。一緒に行こう、ティアナ」

 

「うん!!」

 

 

ティアナは俺の手をとり、その手をしっかりと握りしめた。

 

 

「おっと、その前に」

 

 

コールダ様が魔法詠唱すると、俺とティアナが水の魔法球で包まれる。

すると、体力と魔力が殆ど回復をした。

 

 

「完全には無理だが、何とか戦えるくらいにはしておいたぜ」

 

「ありがとうございます。コールダ様」

 

「ありがとう……。本当に助かったわ」

 

「よせや。なんかむず痒い……」

 

 

回復がすむと、二人の守護者が印を組んで呪文を唱え始める。

 

 

「いいか、ケイン、ティアナ」

 

 

コールダ様が俺とティアナを見つめ―――。

 

 

「例え、凰牙を聖剣にすることが出来ても、そのままでは『名剣』の皇牙と変わらないんだ」

 

「想いを込めるのだ。お前とその娘の想いをな。我らを、この半年、幾度も手こずらせた、お前達の想いを!!」

 

 

ソガイア様は冗談交じりの口調で言った。

 

 

「想いを込める……」

 

 

その時、俺たちの前の空間が歪み、次元の穴が口を開いた。

 

 

「さあいけ、ケイン、ティアナよ!!」

 

「人間の、いや、全ての生命の最後の希望よ!!」

 

「じゃ、いってくる!!」

 

「いってきますね!!」

 

 

俺たちは、はやて達を見回すと、次元の穴に飛び込んだ。

 

 

この先に全てを滅ぼすもの、ダークジーがいる。

 

 

闇の力が全てを滅ぼすか、俺たちの想いが勝つか。

 

 

すべては俺たちにかかってるんだ――――。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

俺たちは真っ暗な空間に立っていた。

 

 

 

――――見渡す限り漆黒の闇。

 

自分の足下すらよく見えない。

しかし、ダークジーの気配は感じていた。

 

 

まるで獲物をねらう肉食獣のような鋭い視線を感じる。

 

 

 

――――しかし、奴はどこだ、どこにいるんだ!?

 

 

「ケイン、まさか……」

 

「ああ……。この闇自体がダークジーなのか!?」

 

 

 

俺たちの前にいたのは、魔物というより、人間に似た姿――――。

だが、その姿は……。

 

 

 

「ま、まさか!?」

 

「そんな!?」

 

 

 

その姿は見間違えるはずがない。

 

 

 

 

その人物は――――。

 

 

 

 

俺たちの親友……。

 

 

 

 

フィル・グリードだったのだから――――。

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