魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「そ、そんな……。そんなことって……」
「うそだろ……。おい!!」
信じられなかった……。
でも、目の前にいるのは、紛れもなくあたし達の大切な仲間、フィル。
すると、『フィル』が、口を開き……。
「ふふふ、その驚きに満ちた表情、実に良い。まさに最高のごちそうだな」
―――――違う。
こいつはフィルじゃない。
フィルは、こんなまがまがしい笑い方は絶対にしない!!
あいつは、いつも、あたし達のことを思ってくれてて、あたたかい笑みをしてくれた。
こいつは、ダークジーだ。
「なぜ……なぜ、あんたがフィルの姿をしてるのよ!?」
すると、ダークジーがいやらしい笑みを浮かべ喋り出した。
「何だ、もう気がついてたのか? まぁ、よかろう……。その質問に答えてやる。この者は、別世界で戦いの中で死んだ。それは女、貴様がよく分かってるな」
そんなこと言われなくても分かってるわよ。
あたし達の大切な仲間だったんだから――――。
「だが、この者が抱えていた闇は、我にとって最高のごちそうだったのだ。怒り、悲しみ、憎しみ、どれをとっても普通の人間では得られない物。それを、むざむざ天に返してしまうのは惜しいと思ってな……」
「なん、だと……」
「だから、我はこの者の魂を、天に帰る前に喰らい、全ての知識と共に我の物にしたのだ。これだけの知識も得られるとは思わなかったがな。フハハハハハハハッッ!!」
――――ふざけるんじゃないわよ。
未来であれだけの悲しみを背負って、ここに戻ってきて、やっとささやかな幸せを得られたと思ったら、大切な人を庇って死んで――――。
そして、死んでまであたし達と戦わされる。
「……許せねえ。世界を喰らい尽くすだけじゃ飽きたらず、俺たちのダチまで……」
ケインの握りしめている拳から、血がしたたり落ちている。
怒りで魔力が放電現象まで起きていた。
「ダークジー……。フィルの魂まで汚したこと、絶対に許さないわッッ!!」
もう、怒りを抑えるのは限界だった。
本当なら、あたしが冷静になって、ケインをサポートしなきゃいけないんだけど、こんなことされて、頭に来ない奴なんていやしないわ!!
「ならばやってみるが良い!! 無力な人間無勢が!!」
すると、ダークジーは、魔力で大刀を作りだし、その刀を一降りし、あたし達の周りを巨大なドームで覆い尽くした。
「これは!?」
「……魔力封じの結界!!」
ロディス様と戦ったときと同じ結界。
あたし達の魔法を完全にキャンセルしてしまう魔法。
「やっかいな物を……してくれたわね」
いくらあたし達が剣の加護があっても、完全には結界をキャンセルできない。
ダークジーに決定的なダメージを与えるためには、距離を詰めなければならない。
あたしたちには、ダークジーを倒すための手段はたった一つしかない。
聖剣『凰牙』の力で、完全に消滅させるしかない。
魔法が限られてしまう以上、あたしが出来る攻撃方法はそうはない。
ダークジーがフィルを吸収してる以上、あたし達の癖とかは見抜かれてる。
数の上では2対1だけど、戦力的には全く不利――――。
勝機はケインの剣技にかかっている。
いずれにしても、ケインが接近戦で挑み、あたしが中距離からの援護しかないわね。
短いにらみ合いの中、一瞬のうちに作戦を決める。
その瞬間――――。
「……いくぞ」
ダークジーが動いた!!
「くっ!!」
ダークジーが駆け出すと同時に、ケインもまた速攻で迎撃へと向かう。
あたしも、迎撃の魔法を展開するが――――。
瞬間、ダークジーの姿がかき消える。
「空間跳躍!?」
まさか、フィルの得意技を!?
フィルを吸収したのなら、十分考えられる。
ならば出現場所は――――。
反射的に振り向きかけたが……。
「遅い」
しかし、目の前にダークジーが現れる。
――――しまった!!
考えてみれば当然!!
あたしとケインのコンビじゃ、あたしには接近戦で、ケインには中距離戦を挑むのが有利なのは明白!!
ましてや、フィルの戦略知識も持っている。
それを読まなかったのはあたしのミス!!
ダークジーの刃が振りかぶり、あたしに振り下ろされるのがはっきりと分かる。
間近で感じる『死』の匂い――――。
「させるか!!」
ケインの聖剣の刃が、ダークジーの刃を受け止め、その一瞬にあたしは距離を取る。
本来なら間に合わない所にいたケイン。
だけど、ケインは、フェイトさんに教わった高速移動魔法を、無理矢理、高速展開し、あたしの所まで来てくれた。
その代わり、足へのダメージもかなりの物になってしまった。
無理矢理展開した魔法は、自分へとダメージとして返ってくる。
あたしは何とか回復魔法で、ケインの足を回復させる。
それでも、付け焼き刃程度なので、そうは持たない。
「どうした。それでお終いか」
ダークジーの淡々とした声に、現実を思い知らされる。
「このままじゃ、本当にまずいぜ……」
確かにこのままじゃ、やられるのは確実。
ダークジーの力とフィルの知識が融合すると、これほどやっかいなんて――――。
――――まてよ。
フィルの知識……。
「……勝算、あるかもしれないわ」
かなり分が悪い掛けだけど、もうこれしか手段がない!!
あたしは念話でケインに作戦を伝える。
「……やってみる価値はあるな」
「ええ……。それじゃいくわよ」
「「Go!!」」
あたしとケインは、正面から突撃した。
同時にあたしはクロスファイアをダークジーに放った。
「おろかな……。まだわからぬか」
ダークジーが、剣を一閃し、クロスファイアを全て切り裂く。
同時に辺り一帯が爆風で包まれた。
「……目くらましのつもりか。だが……」
「そこだ!!」
ダークジーの剣は、ケインの聖剣を完全に受け止めていた。
だが……。
「何がおかしい、人間」
「ダークジー、お前、俺にばかり気を取られて、何か忘れてないか?」
「何?」
そう、ケインの攻撃はあくまで囮。
フィルの知識は、あくまでケインを主体の物として構成されている。
だから、あたしはその裏をかいて、あたし主体の攻撃方法へと切り替えたのだ。
爆風に身を隠しながら、あたしはダークジーの左横腹に、クロスミラージュの魔力刃を突き刺した。
「そんなもの、我には効かぬぞ」
「そんなこと分かってるわよ!!」
これは、これからすることの準備。
本命の攻撃のためのね!!
「星よ集え!! 全てを撃ち抜く光となれ!!」
あたしは辺り一帯の魔力素を全て集中させる。
ダークジーによって空間が封鎖されてしまい、魔力素はかなり少ないけど、それでも、あたしの魔力と掛け合わせれば、何とかなる!!
「集束魔法だと!? バカな!! 貴様ごと消し飛ぶぞ!!」
「そうね。本来のスターライトブレイカーなら、こんな使い方は無理ね……」
だけど、今、あたしには凍牙の精霊石がある。
この宝玉の力で、あたしは魔法をこの距離で撃っても、宝玉の魔法障壁の力で守られる。
「あたしは魔法障壁で守られる。だけど、あんたには中和する術はない。体内で発動するスターライトブレイカーに耐えられるかしらね!!」
「ぐっ!! ちぃい……」
「スターライトブレイカーーーーッッッ!!」
ダークジーの体内で発動したブレイカーは、そのままダークジーの身体を貫き、その破壊力であたりの障害物を吹き飛ばしていた。
「や、やったか!?」
「たぶんね……」
これでダメなら、正真正銘の化け物よ。
爆風が晴れ、あたし達の前にいたのは……。
* * *
グロロロロロロ~~~~!!
俺たちの目の前にいたのは、フィルの姿ではなく、不気味なモノが姿を現していた。
巨大なミジンコにも似た異形のモンスター。
それが見る間に一角獣に変形した。
続いて、怪鳥に、ナマズの化け物にとメタモルフォーゼしていく。
全てが不気味な、身の毛もよだつ姿をしている。
『許さん、許さんぞッッ!! 貴様ら、魂までも喰らい尽くしてくれる!!』
「これが……ダークジーのコア……」
「コアだけでこんなすごい化け物なのか!?」
――――本当に勝てるのか?
こんな化け物に……。
グロロ、グロロロロロロ~~~~~~!!
――――その時。
俺たちの脳裏にダークジーの意識が流れ込んできた。
「うっ、ううう……」
「あっ……うぁ……」
そこにあったのは破壊のイメージだけだった。
ダークジーがこれまで消滅させてきた世界の映像。
全てを呑み込み、砕き、打ち砕いていく。
逃げまどう人たちの阿鼻叫喚。
心に悪意を吹き込まれた人たちの争い、紛争、戦争。
そして、核の炎が世界を焼き尽くす――――。
心の底からむかついてきやがる。
『どうだ、これが人間の真実だ』
どこからともなく声がした。
頭に響く、不気味な声。
『人間とは愚かな者だ。自分のことしか考えない。ほんの少し心を揺らすだけで、互いに憎しみあい、殺しあう。救う価値さえもない生き物だ。滅んで当然の生き物なのだ』
「ふざけんじゃないわよ!! その人間を利用するだけ利用して、自分の餌としか考えないあんたなんかに言われたくないわ!!」
「そうだ!! 人間は相手のことを思いやる素晴らしい生き物だ。愛する人のこと、友のこと、仲間のことを思い、想いの心を持っている。俺は、ティアナ達と一緒にいてそれを実感した」
――――そうだ。
俺は、ティアナ達と一緒にいて、知ることが出来た……。
人は、愛する人のためなら、強くなれるってことをな!!
「ダークジー!! お前に俺が想う人たちの……生きるこの世界を……決して滅ぼさせはしない!!」
『グロロロロ~~~~!! 愚かな!! 死ぬがいいッッ!!』
「うわああッッ~~!!」
「きゃあああッッ~~!!」
俺たちは風圧だけで吹き飛ばされてしまった。
フィルの姿をしていたときとは比べものにならない魔力。
まさに、全てを喰らい尽くす魔王―――――。
「どうしたら……どうしたら、勝てるんだ!?」
あきらめかけていたその時……。
『あきらめるな!! ケイン、ティアナ!!』
「「凰牙!!」」
凰牙が、俺たちに語りかけてきたのだ。
『ケイン、ティアナ、確かにダークジーは、強大で、人知を越えてる存在だ。だが、貴公らには、魔を滅する聖なる武器があるのだぞ!!』
「そうだった……」
「まだ、あたしたちには……希望が残されていたわ」
ロディス様と俺たちの想いが込められた聖剣。
俺たちには、まだ最後の希望があった。
『良いか。コールダも言ってたが、聖剣は、このままじゃただの剣にしか過ぎない。貴公らの想いが闇を滅するのだ!!』
そうだ―――――。
ダークジーを倒すのは人間の想いの力。
見せてやる!!
俺の……。
俺たちの想いの力を!!
「みんな、俺に力を貸してくれ!!」
俺は聖剣を構え、心の中で呟いた。
「ケイン君!!」
脳裏に浮かんだのはなのはの姿……。
「負けないで!! 心を強く持って!!」
「ケイン!!」
次に現れたのはフェイトだ。
「あきらめちゃダメ!! フィルみたいになっちゃダメ!! 絶対生きて帰ってきて!!」
「ケイン!! しっかりしぃ!!」
今度ははやてが現れた。
「……約束したやろ。絶対に生きて帰ってくるっていったやないか!! だから、こんなことであきらめないで!!」
「ケインさん!!」
最後に現れたのはキャロ―――。
「大丈夫です!! ケインさんには、みんなが……わたしがついてます!! だから、思いっきりやってください!!」
聖剣を通じて、みんなの思いが伝わってくる。
なのは達だけじゃない。
スバルやエリオ、ヴィータ達、そしてシーリウスの全ての命の力が集まってくるのを感じる。
そして――――。
聖剣を握る俺の手に、そっと、あたたかいぬくもりを与えてくれるのは――――。
「あんたは一人じゃない……。あたしが……いるんだから」
ティアナ。
ずっと一緒に戦ってきて、俺のことを支えてくれた。
そして――――。
俺の一番大好きな女の子。
「おう!!」
お前がいるから、俺はどこまでも強くなれる。
その想いに反応し、聖剣が白く、あたたかい光を放ち始める。
『グロロロロ~~~~……。な、なんだ、この光は!?』
「お前には分かるまい!! これが!!」
「あたし達の……」
「「想いの力だ(よ)ッッ!!」」
光はどんどん大きくなり、この一帯を覆い尽くすほどの強い光になる。
『グロロロロ~~。く、苦しい~~~~!!』
光から逃げようとするダークジー。
しかし、光はダークジーを呑み込み、ダークジーを消滅させていく。
「逃がすものか!!」
「これが最後の魔法よ!!」
俺とティアナは、もう一度、凰牙の柄を握りしめ、力ある言葉を紡ぎ出す。
その言葉は自然と紡ぎ出されていた……。
―――――魔を滅する魔法を!!
「星を紡ぐ聖なる光よ!! その力もて、黄昏よりもなお昏き存在(もの)……」
ティアナが唱えてる、星を紡ぐ聖なる光は『人々の想い』、黄昏よりもなお昏き存在は『ロディス』様を示すもの―――――。
「暁よりもなお眩き存在(もの)、その導かれし力を束ね、我らにただ……」
俺が唱えてる、暁よりもなお眩き存在は、『ヲーグ』様を示すもの―――――。
そして、その力を束ねるのは……。
光と闇の間に存在する人間―――――。
「天空を切り裂く……」
辺りを覆い尽くしていた光が、俺たちに集まり―――――。
「「神をも滅する剣を!!」」
凰牙の刀身を中心に、巨大な光の剣をつくりだした。
これが神をも滅する剣―――――。
”セイクリッド・ブレード”
「あとは……頼んだわよ。ケイン」
「……ああ、任せておけ!!」
俺は、残された魔力で、空高く飛び上がり……。
『や、やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉおーーーーー!!』
聖剣を上段に構え……。
「滅せよッッ!! 闇に生きる者よッッッ!!」
光の剣―――――。
いや……。
セイクリッド・ブレードを、力の限り思いっきり振り下ろし……。
―――――ダークジーを一刀両断する。
切られた箇所から、光の力が体中に広がり、ダークジーのコアを消滅させていき……。
『グギャアアアアアアアアアアアアア~~~~~~~~~~~~~~~~!!』
―――――ダークジーの断末魔が響き渡った。
* * *
「……終わったわね」
「ああ……」
ダークジーの闇の波動はもう感じない。
完全に消滅したんだ!!
ダークジーが消え、周りの闇も消滅していく。
闇が消え、光が差し込み、俺たちの目の前に広がった景色は……。
「空の……上……」
「そっか……。ここは、フロールなんだ」
空中都市フロール。
かつて、浮遊大陸に存在していた古代都市。
もう、大昔に文明は滅び、伝説となっていた大陸だったが……。
「この大陸も、ダークジーが喰らっていたんだな」
―――――そう、ダークジーが消えたことで、全ての魂が解放されたんだ―――――
「「!!」」
聞き覚えのある声―――――。
忘れるもんか。自分の親友の声をな!!
俺たちが振り返るとそこには……。
「「フィルッッ」」
フィル・グリードが、身体に光を放ちながら立っていた。
「ありがとう、ケイン、ティア。俺は、お前らのおかげで、ダークジーから解放されたんだ」
「礼なんかいいわよ。こうして、あんたともう一度……会えたんだから……」
ティアナは涙を抑えることも忘れていた。
もう、二度と会うことが出来ない人と再会できたのだから……。
「この……ばかやろうが……。フェイトを泣かせやがって……」
「……すまない。でも、俺は……フェイトさんを護れてよかった、よ……」
てめえはそれで良いだろうが、残された方はつらいだけなんだぞ!!
それはお前が一番分かってるだろうが!!
「フィル……。あんたも、一緒にフェイトさん達の所に帰れるんだよね」
ティアナのその問いに、フィルは、黙って首を横に振り―――――。
「……ティア、死者は生きてる人の枷になっちゃ駄目なんだ。だから、フェイトさんに会うことは……出来ない」
「そんな!!」
つらいだろうが、フィルの言うとおりだ。
ここでフィルがフェイトに会ってしまったら、それこそフェイトは、生涯、フィルを忘れられなくなってしまう。
「だから……」
そう言って、フィルは左手をかざし、俺たちの近くに次元の穴を作り出した。
「お前、その力!?」
「ダークジーから解放されたときに、少しだが、魔力を奪ってやったからな……。多少のことなら無茶が効く……。最後の力ってやつかな」
そして、フィルはふと寂しい笑みをし……。
「ティア達は、俺の分まで幸せになってくれ……。そうだろ、ケイン」
「まさか……」
「分かるよ。ケイン、お前、ティアのことが……好きなんだろ」
フィルの奴に言い当てられ、俺は動揺を隠せなかった。
ったく……。
少しは気を利かせろっての。
「お前の言うとおりだよ。俺は、ティアナのことが大好きだ。世界の誰よりもティアナのことを……愛してる!!」
こんなかたちで、返事なんかしたくなかったのにな……。
「そっか……。だそうだ、ティア」
「!!」
ティアナの方を見ると、顔を真っ赤にしていて、どうしたら分からないって感じになっていた。
そして、フィルはしてやったりといった表情になっている。
* * *
「あ、あのな……。こんなかたちで言っちまったけど、さっきの言葉は、俺の……マジな気持ちだ」
「うん……うん」
ケインがこんな時にふざけたこと言わないのは分かってる。
聖剣を造ったときに、ケインの気持ちが伝わってきたから、あたしへの気持ちも分かってたんだけど……。
こうして、言葉にして伝えてくれると、全然違う。
「だから、その……な……。泣かれてるより、笑顔のティアナの方が……嬉しい」
ばかね……。
これは悲しくて泣いてるんじゃないわよ。
嬉しくて泣いてるんだからね!!
あたしはその気持ちを伝えるために……。
ケインの唇にキスをする。
「……ティ、アナ?」
「伝わった……。あたしの今の気持ち……」
「……思いっきりな」
ケインは顔を赤くして、そっぽ向いてしまった。
こういう所は、フィルより純粋なのよね……。
すると、フィルが……。
「……その様子なら、大丈夫だな」
すごく優しい笑みで、あたし達をみていた。
いつも、フェイトさんやあたし達を見守ってくれたフィルの優しい笑顔―――――。
そして……。
「あんた!! そのからだ……」
フィルの姿が、足下から消え始めている。
「……お別れだな。ケイン、ティア」
「そう、だな……」
「フィルッ!!」
あたしは必死に手を伸ばそうとするが―――――。
フィルの身体は、瞬く間に消えていき―――――。
そして……。
光となって天に昇っていってしまった。
* * *
「……フィルは、みんなの所に……帰ってったのね」
「だな……」
やっと、あいつに安らかな時間が来たんだ。
未来から戦い続けてきたフィル。
その傷ついた心と魂。
―――――ゆっくりと休めてくれよな。
「……帰るか」
「そうね、帰りましょう。みんなの所に」
フィルが最後に残してくれた次元の穴を通り、俺たちはシーリウスへと戻っていった。
こうして、世界の平和は守られたが、俺たちの心には深い悲しみが残された。
だが、いつまでも悲しんでばかりはいられない。
俺たちは前に進まなきゃいけないんだ。
それがフィルとの最後の約束だから―――――。