魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~   作:アルフォンス

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Number;20 最後の約束

「そ、そんな……。そんなことって……」

 

「うそだろ……。おい!!」

 

 

 

信じられなかった……。

でも、目の前にいるのは、紛れもなくあたし達の大切な仲間、フィル。

 

 

すると、『フィル』が、口を開き……。

 

 

 

「ふふふ、その驚きに満ちた表情、実に良い。まさに最高のごちそうだな」

 

 

 

 

―――――違う。

 

 

 

こいつはフィルじゃない。

フィルは、こんなまがまがしい笑い方は絶対にしない!!

 

 

あいつは、いつも、あたし達のことを思ってくれてて、あたたかい笑みをしてくれた。

こいつは、ダークジーだ。

 

 

 

「なぜ……なぜ、あんたがフィルの姿をしてるのよ!?」

 

 

 

 

すると、ダークジーがいやらしい笑みを浮かべ喋り出した。

 

 

 

「何だ、もう気がついてたのか? まぁ、よかろう……。その質問に答えてやる。この者は、別世界で戦いの中で死んだ。それは女、貴様がよく分かってるな」

 

 

そんなこと言われなくても分かってるわよ。

あたし達の大切な仲間だったんだから――――。

 

 

 

「だが、この者が抱えていた闇は、我にとって最高のごちそうだったのだ。怒り、悲しみ、憎しみ、どれをとっても普通の人間では得られない物。それを、むざむざ天に返してしまうのは惜しいと思ってな……」

 

「なん、だと……」

 

「だから、我はこの者の魂を、天に帰る前に喰らい、全ての知識と共に我の物にしたのだ。これだけの知識も得られるとは思わなかったがな。フハハハハハハハッッ!!」

 

 

 

――――ふざけるんじゃないわよ。

 

 

未来であれだけの悲しみを背負って、ここに戻ってきて、やっとささやかな幸せを得られたと思ったら、大切な人を庇って死んで――――。

 

 

そして、死んでまであたし達と戦わされる。

 

 

 

「……許せねえ。世界を喰らい尽くすだけじゃ飽きたらず、俺たちのダチまで……」

 

 

ケインの握りしめている拳から、血がしたたり落ちている。

怒りで魔力が放電現象まで起きていた。

 

 

 

「ダークジー……。フィルの魂まで汚したこと、絶対に許さないわッッ!!」

 

 

 

もう、怒りを抑えるのは限界だった。

本当なら、あたしが冷静になって、ケインをサポートしなきゃいけないんだけど、こんなことされて、頭に来ない奴なんていやしないわ!!

 

 

 

 

「ならばやってみるが良い!! 無力な人間無勢が!!」

 

 

すると、ダークジーは、魔力で大刀を作りだし、その刀を一降りし、あたし達の周りを巨大なドームで覆い尽くした。

 

 

 

「これは!?」

 

「……魔力封じの結界!!」

 

 

ロディス様と戦ったときと同じ結界。

あたし達の魔法を完全にキャンセルしてしまう魔法。

 

 

 

「やっかいな物を……してくれたわね」

 

 

いくらあたし達が剣の加護があっても、完全には結界をキャンセルできない。

ダークジーに決定的なダメージを与えるためには、距離を詰めなければならない。

 

 

あたしたちには、ダークジーを倒すための手段はたった一つしかない。

聖剣『凰牙』の力で、完全に消滅させるしかない。

 

 

魔法が限られてしまう以上、あたしが出来る攻撃方法はそうはない。

ダークジーがフィルを吸収してる以上、あたし達の癖とかは見抜かれてる。

 

 

数の上では2対1だけど、戦力的には全く不利――――。

 

勝機はケインの剣技にかかっている。

いずれにしても、ケインが接近戦で挑み、あたしが中距離からの援護しかないわね。

 

 

 

短いにらみ合いの中、一瞬のうちに作戦を決める。

その瞬間――――。

 

 

「……いくぞ」

 

 

ダークジーが動いた!!

 

 

「くっ!!」

 

 

ダークジーが駆け出すと同時に、ケインもまた速攻で迎撃へと向かう。

あたしも、迎撃の魔法を展開するが――――。

 

 

瞬間、ダークジーの姿がかき消える。

 

 

「空間跳躍!?」

 

 

まさか、フィルの得意技を!?

フィルを吸収したのなら、十分考えられる。

 

 

ならば出現場所は――――。

 

 

反射的に振り向きかけたが……。

 

 

「遅い」

 

 

しかし、目の前にダークジーが現れる。

 

 

――――しまった!!

 

 

考えてみれば当然!!

 

 

あたしとケインのコンビじゃ、あたしには接近戦で、ケインには中距離戦を挑むのが有利なのは明白!!

ましてや、フィルの戦略知識も持っている。

 

それを読まなかったのはあたしのミス!!

 

 

ダークジーの刃が振りかぶり、あたしに振り下ろされるのがはっきりと分かる。

間近で感じる『死』の匂い――――。

 

 

 

「させるか!!」

 

 

ケインの聖剣の刃が、ダークジーの刃を受け止め、その一瞬にあたしは距離を取る。

本来なら間に合わない所にいたケイン。

 

 

だけど、ケインは、フェイトさんに教わった高速移動魔法を、無理矢理、高速展開し、あたしの所まで来てくれた。

 

 

その代わり、足へのダメージもかなりの物になってしまった。

無理矢理展開した魔法は、自分へとダメージとして返ってくる。

 

 

あたしは何とか回復魔法で、ケインの足を回復させる。

それでも、付け焼き刃程度なので、そうは持たない。

 

 

「どうした。それでお終いか」

 

 

ダークジーの淡々とした声に、現実を思い知らされる。

 

 

「このままじゃ、本当にまずいぜ……」

 

 

確かにこのままじゃ、やられるのは確実。

ダークジーの力とフィルの知識が融合すると、これほどやっかいなんて――――。

 

 

――――まてよ。

 

 

フィルの知識……。

 

 

 

「……勝算、あるかもしれないわ」

 

 

かなり分が悪い掛けだけど、もうこれしか手段がない!!

あたしは念話でケインに作戦を伝える。

 

 

 

「……やってみる価値はあるな」

 

「ええ……。それじゃいくわよ」

 

「「Go!!」」

 

 

 

あたしとケインは、正面から突撃した。

同時にあたしはクロスファイアをダークジーに放った。

 

 

「おろかな……。まだわからぬか」

 

 

ダークジーが、剣を一閃し、クロスファイアを全て切り裂く。

同時に辺り一帯が爆風で包まれた。

 

 

「……目くらましのつもりか。だが……」

 

「そこだ!!」

 

 

ダークジーの剣は、ケインの聖剣を完全に受け止めていた。

だが……。

 

 

「何がおかしい、人間」

 

「ダークジー、お前、俺にばかり気を取られて、何か忘れてないか?」

 

「何?」

 

 

 

そう、ケインの攻撃はあくまで囮。

フィルの知識は、あくまでケインを主体の物として構成されている。

 

だから、あたしはその裏をかいて、あたし主体の攻撃方法へと切り替えたのだ。

爆風に身を隠しながら、あたしはダークジーの左横腹に、クロスミラージュの魔力刃を突き刺した。

 

 

 

「そんなもの、我には効かぬぞ」

 

「そんなこと分かってるわよ!!」

 

 

 

これは、これからすることの準備。

本命の攻撃のためのね!!

 

 

 

「星よ集え!! 全てを撃ち抜く光となれ!!」

 

 

あたしは辺り一帯の魔力素を全て集中させる。

ダークジーによって空間が封鎖されてしまい、魔力素はかなり少ないけど、それでも、あたしの魔力と掛け合わせれば、何とかなる!!

 

 

 

「集束魔法だと!? バカな!! 貴様ごと消し飛ぶぞ!!」

 

「そうね。本来のスターライトブレイカーなら、こんな使い方は無理ね……」

 

 

だけど、今、あたしには凍牙の精霊石がある。

この宝玉の力で、あたしは魔法をこの距離で撃っても、宝玉の魔法障壁の力で守られる。

 

 

 

「あたしは魔法障壁で守られる。だけど、あんたには中和する術はない。体内で発動するスターライトブレイカーに耐えられるかしらね!!」

 

「ぐっ!! ちぃい……」

 

「スターライトブレイカーーーーッッッ!!」

 

 

 

ダークジーの体内で発動したブレイカーは、そのままダークジーの身体を貫き、その破壊力であたりの障害物を吹き飛ばしていた。

 

 

 

「や、やったか!?」

 

「たぶんね……」

 

 

 

これでダメなら、正真正銘の化け物よ。

爆風が晴れ、あたし達の前にいたのは……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

グロロロロロロ~~~~!!

 

 

 

俺たちの目の前にいたのは、フィルの姿ではなく、不気味なモノが姿を現していた。

 

 

巨大なミジンコにも似た異形のモンスター。

それが見る間に一角獣に変形した。

 

 

続いて、怪鳥に、ナマズの化け物にとメタモルフォーゼしていく。

 

 

全てが不気味な、身の毛もよだつ姿をしている。

 

 

 

『許さん、許さんぞッッ!! 貴様ら、魂までも喰らい尽くしてくれる!!』

 

「これが……ダークジーのコア……」

 

「コアだけでこんなすごい化け物なのか!?」

 

 

 

――――本当に勝てるのか?

 

 

こんな化け物に……。 

 

 

グロロ、グロロロロロロ~~~~~~!!

 

 

――――その時。

 

 

俺たちの脳裏にダークジーの意識が流れ込んできた。

 

 

「うっ、ううう……」

 

「あっ……うぁ……」

 

 

 

 

そこにあったのは破壊のイメージだけだった。

 

 

ダークジーがこれまで消滅させてきた世界の映像。

 

 

全てを呑み込み、砕き、打ち砕いていく。

 

 

逃げまどう人たちの阿鼻叫喚。

 

 

心に悪意を吹き込まれた人たちの争い、紛争、戦争。

 

 

そして、核の炎が世界を焼き尽くす――――。

 

 

 

心の底からむかついてきやがる。

 

 

 

『どうだ、これが人間の真実だ』

 

 

どこからともなく声がした。

頭に響く、不気味な声。

 

 

 

『人間とは愚かな者だ。自分のことしか考えない。ほんの少し心を揺らすだけで、互いに憎しみあい、殺しあう。救う価値さえもない生き物だ。滅んで当然の生き物なのだ』

 

「ふざけんじゃないわよ!! その人間を利用するだけ利用して、自分の餌としか考えないあんたなんかに言われたくないわ!!」

 

「そうだ!! 人間は相手のことを思いやる素晴らしい生き物だ。愛する人のこと、友のこと、仲間のことを思い、想いの心を持っている。俺は、ティアナ達と一緒にいてそれを実感した」

 

 

 

――――そうだ。

 

 

 

俺は、ティアナ達と一緒にいて、知ることが出来た……。

 

 

 

人は、愛する人のためなら、強くなれるってことをな!!

 

 

 

 

「ダークジー!! お前に俺が想う人たちの……生きるこの世界を……決して滅ぼさせはしない!!」

 

『グロロロロ~~~~!! 愚かな!! 死ぬがいいッッ!!』

 

「うわああッッ~~!!」

 

「きゃあああッッ~~!!」

 

 

俺たちは風圧だけで吹き飛ばされてしまった。

フィルの姿をしていたときとは比べものにならない魔力。

 

まさに、全てを喰らい尽くす魔王―――――。

 

 

「どうしたら……どうしたら、勝てるんだ!?」

 

 

あきらめかけていたその時……。

 

 

『あきらめるな!! ケイン、ティアナ!!』

 

「「凰牙!!」」

 

 

凰牙が、俺たちに語りかけてきたのだ。

 

 

 

『ケイン、ティアナ、確かにダークジーは、強大で、人知を越えてる存在だ。だが、貴公らには、魔を滅する聖なる武器があるのだぞ!!』

 

「そうだった……」

 

「まだ、あたしたちには……希望が残されていたわ」

 

 

 

ロディス様と俺たちの想いが込められた聖剣。

俺たちには、まだ最後の希望があった。

 

 

 

『良いか。コールダも言ってたが、聖剣は、このままじゃただの剣にしか過ぎない。貴公らの想いが闇を滅するのだ!!』

 

 

 

そうだ―――――。

 

 

 

ダークジーを倒すのは人間の想いの力。

 

 

 

見せてやる!!

 

 

 

 

俺の……。

 

 

 

 

俺たちの想いの力を!!

 

 

 

「みんな、俺に力を貸してくれ!!」

 

 

 

俺は聖剣を構え、心の中で呟いた。

 

 

 

「ケイン君!!」

 

 

 

脳裏に浮かんだのはなのはの姿……。

 

 

 

「負けないで!! 心を強く持って!!」

 

「ケイン!!」

 

 

次に現れたのはフェイトだ。

 

 

「あきらめちゃダメ!! フィルみたいになっちゃダメ!! 絶対生きて帰ってきて!!」

 

「ケイン!! しっかりしぃ!!」

 

 

今度ははやてが現れた。

 

 

「……約束したやろ。絶対に生きて帰ってくるっていったやないか!! だから、こんなことであきらめないで!!」

 

「ケインさん!!」

 

 

最後に現れたのはキャロ―――。

 

 

 

「大丈夫です!! ケインさんには、みんなが……わたしがついてます!! だから、思いっきりやってください!!」

 

 

 

聖剣を通じて、みんなの思いが伝わってくる。

なのは達だけじゃない。

 

 

スバルやエリオ、ヴィータ達、そしてシーリウスの全ての命の力が集まってくるのを感じる。

 

 

 

そして――――。

 

 

聖剣を握る俺の手に、そっと、あたたかいぬくもりを与えてくれるのは――――。

 

 

 

「あんたは一人じゃない……。あたしが……いるんだから」

 

 

 

ティアナ。

 

 

ずっと一緒に戦ってきて、俺のことを支えてくれた。

 

 

そして――――。

 

 

俺の一番大好きな女の子。

 

 

 

「おう!!」

 

 

 

お前がいるから、俺はどこまでも強くなれる。

その想いに反応し、聖剣が白く、あたたかい光を放ち始める。

 

 

 

『グロロロロ~~~~……。な、なんだ、この光は!?』

 

「お前には分かるまい!! これが!!」

 

「あたし達の……」

 

「「想いの力だ(よ)ッッ!!」」

 

 

 

光はどんどん大きくなり、この一帯を覆い尽くすほどの強い光になる。

 

 

 

『グロロロロ~~。く、苦しい~~~~!!』

 

 

 

光から逃げようとするダークジー。

しかし、光はダークジーを呑み込み、ダークジーを消滅させていく。

 

 

 

「逃がすものか!!」

 

「これが最後の魔法よ!!」

 

 

俺とティアナは、もう一度、凰牙の柄を握りしめ、力ある言葉を紡ぎ出す。

 

 

その言葉は自然と紡ぎ出されていた……。

 

 

 

―――――魔を滅する魔法を!!

 

 

 

 

「星を紡ぐ聖なる光よ!! その力もて、黄昏よりもなお昏き存在(もの)……」

 

 

 

ティアナが唱えてる、星を紡ぐ聖なる光は『人々の想い』、黄昏よりもなお昏き存在は『ロディス』様を示すもの―――――。

 

 

 

 

「暁よりもなお眩き存在(もの)、その導かれし力を束ね、我らにただ……」

 

 

 

俺が唱えてる、暁よりもなお眩き存在は、『ヲーグ』様を示すもの―――――。

 

 

 

そして、その力を束ねるのは……。

 

 

 

光と闇の間に存在する人間―――――。

 

 

 

「天空を切り裂く……」

 

 

 

辺りを覆い尽くしていた光が、俺たちに集まり―――――。

 

 

 

「「神をも滅する剣を!!」」

 

 

 

 

凰牙の刀身を中心に、巨大な光の剣をつくりだした。

 

 

 

 

これが神をも滅する剣―――――。

 

 

 

 

”セイクリッド・ブレード”

 

 

 

 

 

「あとは……頼んだわよ。ケイン」

 

「……ああ、任せておけ!!」

 

 

 

俺は、残された魔力で、空高く飛び上がり……。

 

 

 

『や、やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉおーーーーー!!』

 

 

 

 

聖剣を上段に構え……。

 

 

 

 

「滅せよッッ!! 闇に生きる者よッッッ!!」

 

 

 

 

 

光の剣―――――。

 

 

 

 

いや……。

 

 

 

 

セイクリッド・ブレードを、力の限り思いっきり振り下ろし……。

 

 

 

 

―――――ダークジーを一刀両断する。

 

 

 

 

 

切られた箇所から、光の力が体中に広がり、ダークジーのコアを消滅させていき……。

 

 

 

 

 

『グギャアアアアアアアアアアアアア~~~~~~~~~~~~~~~~!!』

 

 

 

 

 

 

―――――ダークジーの断末魔が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

 

「……終わったわね」

 

「ああ……」

 

 

 

ダークジーの闇の波動はもう感じない。

完全に消滅したんだ!!

 

 

ダークジーが消え、周りの闇も消滅していく。

闇が消え、光が差し込み、俺たちの目の前に広がった景色は……。

 

 

 

「空の……上……」

 

「そっか……。ここは、フロールなんだ」

 

 

 

空中都市フロール。

 

かつて、浮遊大陸に存在していた古代都市。

もう、大昔に文明は滅び、伝説となっていた大陸だったが……。

 

 

 

「この大陸も、ダークジーが喰らっていたんだな」

 

 

 

 

―――――そう、ダークジーが消えたことで、全ての魂が解放されたんだ―――――

 

 

 

 

「「!!」」

 

 

聞き覚えのある声―――――。

忘れるもんか。自分の親友の声をな!!

 

 

俺たちが振り返るとそこには……。

 

 

 

「「フィルッッ」」

 

 

 

フィル・グリードが、身体に光を放ちながら立っていた。

 

 

 

「ありがとう、ケイン、ティア。俺は、お前らのおかげで、ダークジーから解放されたんだ」

 

「礼なんかいいわよ。こうして、あんたともう一度……会えたんだから……」

 

 

 

ティアナは涙を抑えることも忘れていた。

もう、二度と会うことが出来ない人と再会できたのだから……。

 

 

 

「この……ばかやろうが……。フェイトを泣かせやがって……」

 

「……すまない。でも、俺は……フェイトさんを護れてよかった、よ……」

 

 

 

てめえはそれで良いだろうが、残された方はつらいだけなんだぞ!!

それはお前が一番分かってるだろうが!!

 

 

 

「フィル……。あんたも、一緒にフェイトさん達の所に帰れるんだよね」

 

 

ティアナのその問いに、フィルは、黙って首を横に振り―――――。

 

 

「……ティア、死者は生きてる人の枷になっちゃ駄目なんだ。だから、フェイトさんに会うことは……出来ない」

 

「そんな!!」

 

 

 

つらいだろうが、フィルの言うとおりだ。

ここでフィルがフェイトに会ってしまったら、それこそフェイトは、生涯、フィルを忘れられなくなってしまう。

 

 

 

「だから……」

 

 

そう言って、フィルは左手をかざし、俺たちの近くに次元の穴を作り出した。

 

 

「お前、その力!?」

 

「ダークジーから解放されたときに、少しだが、魔力を奪ってやったからな……。多少のことなら無茶が効く……。最後の力ってやつかな」

 

 

 

そして、フィルはふと寂しい笑みをし……。

 

 

 

「ティア達は、俺の分まで幸せになってくれ……。そうだろ、ケイン」

 

「まさか……」

 

「分かるよ。ケイン、お前、ティアのことが……好きなんだろ」

 

 

フィルの奴に言い当てられ、俺は動揺を隠せなかった。

 

 

ったく……。

 

 

少しは気を利かせろっての。

 

 

「お前の言うとおりだよ。俺は、ティアナのことが大好きだ。世界の誰よりもティアナのことを……愛してる!!」

 

 

こんなかたちで、返事なんかしたくなかったのにな……。

 

 

 

「そっか……。だそうだ、ティア」

 

「!!」

 

 

 

ティアナの方を見ると、顔を真っ赤にしていて、どうしたら分からないって感じになっていた。

そして、フィルはしてやったりといった表情になっている。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「あ、あのな……。こんなかたちで言っちまったけど、さっきの言葉は、俺の……マジな気持ちだ」

 

「うん……うん」

 

 

 

ケインがこんな時にふざけたこと言わないのは分かってる。

聖剣を造ったときに、ケインの気持ちが伝わってきたから、あたしへの気持ちも分かってたんだけど……。

 

 

こうして、言葉にして伝えてくれると、全然違う。

 

 

 

「だから、その……な……。泣かれてるより、笑顔のティアナの方が……嬉しい」

 

 

 

ばかね……。

これは悲しくて泣いてるんじゃないわよ。

 

 

嬉しくて泣いてるんだからね!!

 

 

 

あたしはその気持ちを伝えるために……。

 

 

 

ケインの唇にキスをする。

 

 

 

 

「……ティ、アナ?」

 

「伝わった……。あたしの今の気持ち……」

 

「……思いっきりな」

 

 

 

ケインは顔を赤くして、そっぽ向いてしまった。

こういう所は、フィルより純粋なのよね……。

 

 

すると、フィルが……。

 

 

 

「……その様子なら、大丈夫だな」

 

 

 

 

すごく優しい笑みで、あたし達をみていた。

 

 

 

いつも、フェイトさんやあたし達を見守ってくれたフィルの優しい笑顔―――――。

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

「あんた!! そのからだ……」

 

 

フィルの姿が、足下から消え始めている。

 

 

 

「……お別れだな。ケイン、ティア」

 

「そう、だな……」

 

「フィルッ!!」

 

 

あたしは必死に手を伸ばそうとするが―――――。

 

 

フィルの身体は、瞬く間に消えていき―――――。

 

 

そして……。

 

 

光となって天に昇っていってしまった。

 

 

 

 

 

*   *    *

 

 

 

 

 

 

「……フィルは、みんなの所に……帰ってったのね」

 

「だな……」

 

 

 

やっと、あいつに安らかな時間が来たんだ。

未来から戦い続けてきたフィル。

 

 

その傷ついた心と魂。

 

 

―――――ゆっくりと休めてくれよな。

 

 

 

「……帰るか」

 

「そうね、帰りましょう。みんなの所に」

 

 

 

フィルが最後に残してくれた次元の穴を通り、俺たちはシーリウスへと戻っていった。

こうして、世界の平和は守られたが、俺たちの心には深い悲しみが残された。

 

 

 

だが、いつまでも悲しんでばかりはいられない。

俺たちは前に進まなきゃいけないんだ。

 

 

それがフィルとの最後の約束だから―――――。

 

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