魔法少女リリカルなのは ~ Silver of Paladin ~ 作:アルフォンス
「うわぁ……ここって本当に綺麗だね」
「そうですね。空気も綺麗ですし……」
「まあな。レクター湖は観光地としても有名だからな。一般人は奥までいけないけどな」
レクター湖は水竜が住んでいることでも有名だけど、ここは観光地としても有名なところだ。
現にレクター湖の水を使った飲み物はかなり美味しい。
「ねぇ、ケイン。そのレアメタルって、どんな物なのかな?」
「俺も話でしか知らないんだけど、この金属はかなり堅いらしく魔力を通すのに最適な金属らしい。だから、バルディッシュとレイジングハートの強化にはピッタリということだ」
「へぇ……」
「それとな。戦う前に言っておくけど、水竜との戦いは短期決戦に持ち込むぞ」
「どういうことですか? ケインさん」
俺は考えながらキャロ達に説明することにした。
「いいか。今までもいくつものパーティが水竜に戦いを挑んだけれど、誰も致命傷を負わせることどころか、互角に戦うところにまでいっていない」
「つまりは、水竜にウォーミングアップをさせただけにとどまっているって事?」
「そういうことだ。だから長期戦になればなるほど、水竜が強くなってしまい、こちらが不利になってしまうってわけだ」
「と言うことは、やり直しは出来ないって事ですね。ケインさん」
「ああ」
俺は頷いて肯定の意志を示した。
「それじゃケイン。あたし達でドーンと倒しちゃおうよ!!」
「ったく、このお気楽娘が……。そう簡単にいけば苦労はしないっての。だけど、ここでウジウジしてもしょうがないか。スバル、キャロ、絶対に勝ってレアメタルを手に入れるぞ!!」
「「おおっ (はい)!!」」
* * *
「ここ、か」
レクター湖についた俺たちは、今までと違う空気を感じていた。
清浄さが違うのだ。
かすかに霧がかかっているが、その有様は荘厳で、どこか絵物語のようだった。
そんなことを考えてると、湖から大きな水音が響き渡っていた。
ザアン……ザアン……
水音は幾重にも響き、新しい音になればなるほど、段々大きくなっている。
「来たぞ!!」
スバル達はそれぞれデバイスをセットアップし、俺も、凍牙を抜き上段に構え、いつでも戦闘に入れるように体制を整えていた。
そして音は、俺たちの数メートル前の所で炸裂した。
水しぶきが俺たちを打ちのめしたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
視界が元に戻ると、そこには俺たちを見下ろす者がいた。
巨大な、人ならぬ存在。
鱗を銀色に輝かせ、頭を上げている……竜。
その瞳がレクター湖の底を思い起こさせる深い青に輝いた。
『人間よ、なぜに……我が湖を、侵すか』
低いが、水竜の声が俺たちの頭上から降り注いだ。
「大切な友人のために、この湖にあるレアメタル。アクエリアスがどうしても必要なんです」
『なにゆえアクエリアスを欲する。人間よ』
「俺の友人の魔力はかなり高く、普通の金属では耐えきれないんです」
『そんなの我には関係ない。早々に立ち去れ』
「そうはいかないんです!! このままじゃ彼女たちは力を使うことが出来なくなり、また無茶をすることになってしまう。それだけはさせたくないんです!!」
俺は水竜に懇願するが、しかし、その答えは望んでいた物ではなかった。
『そんなの知ったことではない。人間が無茶して死のうが、そんなのは関係ない』
「……なんだと。もういっぺん言ってみろ」
『何度でも言ってやる。人間ごとき、いくら死のうと知ったことではないと言ったのだ。たがが人間のために、大切な資源を渡すことなどできん……うおっ!!』
ドゴオオオオン
――――今の言葉だけ許せねえ。
俺は水竜の頭に魔力弾をぶちかましてやった。
「……ふざけるなよ」
『なんだと』
「何が世界の守護者の僕だ!! 魔王が復活しても、何もしないでこんな所でのうのうとしやがって!! いいか、よく聞きやがれ!! なのは達はな、この世界の住民でもないのに、この世界のために命を賭けて戦ってるんだぞ!!」
「ケイン……」
「ケインさん……」
「それを死のうと知った事じゃないだと……」
そして俺は凍牙に炎を纏わせ……。
「だったら、てめえはその人間以下の存在だ!! そのふざけた頭を冷やしてやるから覚悟しやがれ!!」
その切っ先を水竜に向け、戦闘の意志を示した。
* * *
『ふん、やれる物ならやってみるがいい。人間ごときが、我に逆らうなど身の程を知れ!!』
「ケイン、どうするの!! 完全に怒らせちゃったよ!!」
「スバル、どのみち戦闘は避けられないんだ。それに……」
「悪いが、俺はあのクソ竜を叩きのめさなきゃ気が済まねぇ!! あの台詞だけは絶対許せねえ!!」
「それは、そうだけど……」
確かにあの台詞は頭に来たけど、ここでケインが頭に来ちゃ駄目でしょう!!
ケインはあたし達のリーダーなんだから。
「スバルさん、こうなったらやるしかありません。わたしもあの言葉は許せません!!」
「キャロまで……」
普段自分から戦おうとしないキャロまで……。
一体どうなってるの!?
「やるぞ!!」
「はい!!」
「もう、こうなったら、やぶれかぶれだよ!!」
あたし達は、水竜にそれぞれ攻撃を仕掛けた。
* * *
「はぁ……はぁ……全く効かないね」
「さすがに竜族だけはあるな。攻撃は効いているはずだけど、それをこらえてタイムラグ無しで攻撃してきやがる」
「フリードのブラストレイも、ある程度は効いてるんですけど……」
実際、スバルのリボルバーナックルも、俺のフレア・ストライクも、フリードのブラストレイも効果はあるのだが、その痛みをこらえて、タイムラグ無しで攻撃してくるから、こちらが追撃をするのは難しい状態なのだ。
しかも、水竜の攻撃は水系魔法の広範囲型だから、この湖では強力な威力を誇る。
このままでは全滅は時間の問題だ。
「こうなったら、全力のフレアストライクで!!」
俺が再び、フレアストライクで斬りつけようとしたその時……。
《待ってください!!》
俺が持っていたフェイトのデバイス、バルディッシュが制止をかけた。
《このまま戦っても、勝つ確立は5%もないです》
「例え5%以下だとしても、やるしかないんだ!! フェイトのためにもな」
《頭を冷やしてください。このまま戦ったらと言ったのです》
「どういうことだ?」
《はぁ……あなたたちはそろいもそろって、突撃思考なんですね。闇雲に突っ込んでも、あの鱗には傷は付けられません》
見てみると、確かに傷があるのは鱗がないところや、鱗の継ぎ目の所だ。
「そっか、あたし達がこのままバラバラに攻撃していても、大したダメージは与えられないって事だね」
《あの竜に勝つには、ある一点に攻撃するしかありません》
「ある一点って?」
《先ほど、フレアストライクが首筋を切りつけましたよね。そこを見てください》
バルディッシュに言われ、首筋を見ると……。
「!! あれは」
「首筋の傷だけ……再生が遅い!?」
《そうです。他の部分は再生されてますが、あの部分だけは、再生が遅く、未だに傷口が残っています》
「そこを重点的に叩くって事か」
《そう言うことです。3人の攻撃を一点に集中すれば十分可能です》
「……すまねえ。本当は俺がやらなきゃいけないことなのにな」
現状でこのパーティのリーダーは俺だ。
リーダーがしっかりしないといけないのに……。
《いいえ、サー達のために怒ってくれたのだから……むしろ礼を言わせてもらいます》
「あたりめえだろ。俺たちの世界のために、あんなに一生懸命してくれるのに、それを貶されて黙っていられるほど冷静沈着じゃないんでな」
「ケイン……」
「スバル、キャロ、あの竜を倒すには、並半端な攻撃じゃ駄目だ。俺とキャロ、そしてお前の全力の一撃をこの一発にかけるぞ!!」
もう、スバルも、キャロも残り魔力が少ない。
この一発に全てをかけるしかない。
「うん!!」
「はい!!」
「キャロ、俺の合図で、フリードにブラストレイを俺に向かって放て!!」
「アンデッドバタフライを倒したときの奴ですね!?」
「ああ、超高熱のフレア・ストライクの一撃で仕留めてみせる!! そしてスバル。俺が剣を振り下ろしたら間髪入れず、全力の攻撃を放ってくれ!!」
「任せておいて!!」
「いくぞ!!」
俺は地面に黒銀の魔法陣を展開し、剣に炎を纏わせ、斬りつけるタイミングを狙っていた。
スバルも、ベルカ式の青い魔法陣を展開し、右腕に魔力をため込み、同じくタイミングを計っていた。
『人間風情が、良くここまで戦った。その事に敬意を払い、我の最大の一撃で葬り去ってやる!!』
水竜は口を開き、口元に魔力を集中し、今までよりも巨大な魔力を感じた。
この一撃で俺たちを消し去る気だ。
だけど……。
「待っていたぜ、この時を!!」
『何!?』
俺は上空高く飛び上がり、剣を上段に構え……。
「キャロ、今だ!! ブラストレイを撃て!!」
「はい!! フリード!!」
キャロの命令で、フリードは俺に向かって最大火力のブラストレイを放った。
それを俺は剣に絡め、炎を一つにし、より高温の魔力剣を作り出した。
『ま、まさか。きさま、我が魔力を溜めるこの時を待っていたというのか!?』
「てめえがタイムラグ無しで攻撃する以上、反撃のタイミングを掴むことが出来なかった。だけど、最大魔力を使うときなら、多少のタイムラグが発生すると思ったんだよ!!」
『くっ……』
「くらえ、フレア・ストライク!!」
ザシュッッ
『ぐおおおおお……だが、このていどでは……』
フレアストライクの一撃は、首の切り傷に正確に斬りつけたが、それでも倒れない。
だが……。
「スバル、いまだ!!」
「一撃必倒……」
スバルの右腕には、すでに、魔力の塊が作り出されていて、後はそれを放たれるのを待つだけだった。
「ディバイン……バスタァァァァーーー!!」
スバルから放たれた青の魔力球は、先ほどの切り傷に命中し……。
『ぐああああああああ』
水竜の巨体は、湖の岸辺に、ドスンと倒れ、もう戦闘は行えない状態になった。
それはこの戦闘の終わりを告げていた……。