アムロ転生記 騎士ガンダム物語 作:ティンティン
人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってから既に半世紀以上。人々はスペースコロニーという円柱の人工の大地を築きその大地で人を産み、育て、そして死んでいった。
時に宇宙世紀0093
地球にしがみつくアースノイドを強制的に宇宙に上げるべく小惑星アクシズを地球に落とす地球寒冷化作戦を実行に移したネオ・ジオン総帥『シャア・アズナブル』とそれを食い止めるべく決死の破壊工作を進めるロンド・ベル隊の戦いは、佳境を迎えていた。
地球へ向けて落下し続けるアクシズを背景に二機のモビルスーツが激闘を繰り広げていた。一機は真紅のモビルスーツ、ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの乗るサザビー。もう一機はロンド・ベル隊に所属しその卓越した操縦技術からいつしか『白い悪魔』『白い流星』とさえ呼ばれ後に伝説となるアムロ・レイが駈るモビルスーツνガンダム。
互いに武装を撃ち尽くし、破壊し、よもや武器を使わずモビルスーツ同士の殴り合いにまで発展していくが、やがてサザビーがパワーダウンし脱出ポッドが射出されνガンダムがそれを掴む。だが、状況はある変化を見る。
ロンド・ベルがアクシズに仕掛けた爆発はアクシズの分断には成功したが威力が強すぎアクシズの後部は地球の引力に牽かれて落下し始めた。
「フフフフ……ハハハハ!」
「何を笑っているんだ!」
「今計算したが、アクシズの後部は地球の引力に牽かれて落ちる! 貴様らの頑張り過ぎだな!」
「……ふざけるな!」
勝ち誇るシャアだが最後まで諦めない、諦められないアムロは落下するアクシズの正面に出る。
「たかが石ころ一つ、ガンダムで押し返してやる!」
「バカな事は止めろ!」
「やってみなけりゃ分からん!!」
「アクシズの落下は始まっているんだぞ!?」
「νガンダムは……伊達じゃない!」
脱出ポッドをアクシズの岩肌に押し付けνガンダムはパワーを全開にしアクシズを押し始める。
その姿を見た戦域のモビルスーツのパイロットはνガンダムの後に続けと一機、また一機とアクシズを押し始め、そしてネオ・ジオンの機体もアクシズを押す。
「ギラ・ドーガまで!? 無理だよ! みんな止めろ!」
「地球がダメになるかならないかなんだ! やってみる価値はありますぜ!」
だが、落下による摩擦熱と機体のオーバーロードに耐えきれず一機、また一機とアクシズから引き剥がされ爆発していく。
「もう良いんだ! みんなやめろぉぉぉ!」
その悲惨な光景に、アムロの虚しい叫びがコックピットに木霊する。
だが、敵味方を越えてアクシズを押し返そうとするこの戦域全ての人間の意思はνガンダムに登載されていたサイコフレームに集まっていき、そして共振が起こる。共振により起きたオーロラのような光はνガンダム除くモビルスーツ全てを引き離し、更には落下していたアクシズの後部までも軌道を変えて地球への落下コースから逸れていく。
「お母さん? ララァ……? うわっ!?」
そして、νガンダムのパイロットであるアムロ、脱出ポッドに乗っていたシャアもまたサイコ・フレームの光に飲み込まれていく。
宇宙世紀0093に起きたこの謎の現象は後に『アクシズ・ショック』と呼ばれ第二次ネオ・ジオン戦争終結の証となった。
そして同時にアムロ・レイ、シャア・アズナブル両名は宇宙世紀の世界から消息を絶ち、その姿を見た者は居ない……
◆◆◆
「う……ううっ……」
日に照らされるような暖かさを顔面に感じたアムロは、その意識をはっきりとさせた。目を開ければ見えるのは光の眩しさ、小鳥の囀ずり、近くに流れているであろう川の水の流れる音。
「……まさか、地球に墜ちたのか?」
目に映る光景や聞こえる音からそう考えるがすぐにまさか、と思う。いくらνガンダムでも大気圏突破用の装備が無い以上大気圏突破の摩擦熱で燃え尽きている筈である。だがこの目に映る光景は間違いなく自然の光景であった。
「ひょっとしたら気を失っている内に何処かのコロニーにたどり着いたのかな?」
そうも考えたが、それでもこの場に寝ていたのがやはり不自然だ。とにかくまずは立ってみようと体を起こそうとするアムロだが、何故か上手く立てずバランスを崩す。
「ン……? おかしいな、何処かケガでもしたのか?」
そうではない、むしろ体のバランスの取り方がまるで人間のそれとは違う気がする、とアムロは考える。メカを操縦している訳では無いのにまるで初めて何かを動かしているような気分。かつて15歳の時に初めてガンダムを動かしたあの時の事を思いだしながらもアムロは何とか大地に立つ。
「……妙だな? 何か視点が小さい気がする」
──自分はこんなにチビだったか? 平均的な成人男性の大きさであった事を自負していたつもりだがやはり何か感覚が違う。
やはり己の身体に何か異常があるのでは、と考えたアムロは己の姿を確認しようと近くを流れる川に向かって歩き出す。
一歩一歩踏み出す毎にアムロはやはりバランスのおかしさを認識する。歩幅が妙に小さいし歩く度に妙な足跡が聞こえる。
恐る恐る川の水面を覗くアムロだが、水面に写る姿を見て驚愕した。
「う、うおあぁぁぁ! なんだこれはぁぁ!」
情けなくも大声を出し、しりもちをついてしまうアムロ。水面に写ったのは全体的にデフォルメされた頭身に、西洋騎士のような鎧を身に纏い、そして何より己の顔。その顔は、己の頭に嫌と言うほど焼き付いている形の、『ガンダム』を想像させる顔付きをしていた。
「な、何かの間違いじゃあ……いや、やっぱり『ガンダム』だ……」
改めて川の水面を覗くが見間違いでは無く、写るのはデフォルメサイズの西洋騎士のような姿のガンダムとなっていた己の姿。
「……刻が見えないよララァ……」
こんな姿をアムロを知る人々が見たら情けなく思うだろう。流石に現実逃避したいばかりにアムロはかつて交信したニュータイプの少女の名を呟くしかなかった。