アムロ転生記 騎士ガンダム物語 作:ティンティン
アムロはこのムンゾの中央に位置する城へと通された。そして謁見の間において位の高い者に座ることを許された椅子に座るのは、この城の姫としてのドレスを身に纏ったオードリー、いやミネバの姿であった。
「改めて騎士ガンダム、先程は失礼しました」
「いえ、俺……いや私も所詮は余所の者です。誤解を受けても仕方がありません」
相手が位の高い存在と知ったからかアムロはミネバにかしずき言葉使いを改める。それ以前に己も色々と偽っている身なのでその後ろめたさもあった。
「迷惑をかけた身としては何かおもてなしをしたいのですが……」
「いえ、そんな事よりも失礼ながら貴女に聞きたい事があります」
「なんでしょう? 私に答えられる事であれば何でも」
「貴女は私が『ガンダム』と名乗った時かなり驚いていました。……お恥ずかしながら私は『ガンダム』の意味を精々名前でしか知らぬ身です。しかし貴女の反応を見る限り『ガンダム』というのは単に名前以上の意味合いがあると思いましたが……」
宇宙世紀ではガンダムはあくまでも基本ワンオフ仕様の高性能機の域を出ない。一年戦争末期からそれ以降にかけて多くのガンダムが開発された。従ってガンダム自体はそこまで珍しい物では無い。それにアムロの駆るνガンダムのようにアクシズを押し返したりするのはその場限りのイレギュラーである。
だがここは別世界。先程キュベレイが『魔術』という言葉を使ったようにメカとは別の技術が発展した世界だと云うことはこの世界に来たばかりのアムロにも理解できた。
アムロが知るべき事は一つ、『ガンダム』の姿になってしまった以上この世界における『ガンダム』、その意味と意義を知る事にあった。その先に己の在りかたを見出だす為に。
アムロの問いに対しミネバは目を閉じ、数秒経った後椅子から立ち上がり手を叩く。すると何処からともなくキュベレイが現れミネバにある本を渡した。
「……この本にはこの世界に伝わる伝承の片鱗が記されています。『ラプラスの伝記』と言いますが……その一節にこう記されています」
ミネバが読み上げる『ラプラスの伝記』その一節。
”この世に悪魔蔓延り、暗雲建ち込み地に数千の邪悪なる蛇走る時、天から来る光の騎士『ガンダム』地の蛇を切り裂き悪魔滅ぼさん”
「……これはあくまでこの辺りの地に伝わる伝承の一部。この世界の各地にそれぞれ伝承があり、それぞれの伝承毎にその一節が異なったり、更に詳細な事が記されていると聞きます。この伝承に従えば、貴方は伝説の光の騎士『ガンダム』」
「伝説、か……」
アムロもかつて15の頃にRX-78、つまり元祖ガンダムに乗り込み多大な戦果を上げた事からそれを神格化するように、特にジオン側に対しての威圧も込めてガンダムの開発計画が次々と行われた。図らずも『ガンダム』を伝説にしてしまったアムロからすれば別の世界にも意味合いこそ違うが『ガンダム』の伝説があるとは何とも因果な物を感じていた。
「なるほど、驚く訳だ。その伝説と同じ名前の存在が現れた訳だからな。……ですが私にその伝説にあるような力があるとは思えません。それにその伝説従ったとしても……それはこの世界に『悪魔』が現れるという事になりますが?」
「身内自慢になりますがこの側に控えるキュベレイは中々の魔術使い。その魔術に対し貴方は見事なまでに立ち回りました。素人目の判断ではありますが、伝説の片鱗たる力は備えているとお見受けします。それに……」
途端にミネバは言葉を濁す。アムロはそれが気がかりになるがミネバに変わってキュベレイが口を開いた。
「ここから先は私が変わりましょう……騎士ガンダム、その『悪魔』というのはその言葉に連想される怪物では無いのかも知れない。この地はまだ平和な方だが他の大陸では権力闘争による国同士の戦争やそれに伴う治安悪化により盗賊などの悪行が横行している。10年前もこの地は戦争に巻き込まれミネバ様の両親、つまり以前にこの地を治めていた王が戦死してしまったのだ……それに戦争とは別に革新的技術が発展する代わりに自然環境に影響が出ている大陸もあると聞く。つまり……」
「つまり、『悪魔』というのは他ならぬ人間達の事を指している可能性もある……という事だな?」
「あくまでも可能性だ。怪物というのはこの世界に溢れているからな。今の所伝説通りの大きな災いになりそうなモンスターは確認されていない」
もしそうなればこれほどまでに叶ってほしくも無い伝説も無い。『悪魔』の事を人間を指すのであれば所詮は人間同士の争いに始まり、そしてこの世界の限りなく生命の一部に入るであろうガンダムの手によって終わる。
──どの世界もそう変わらない物だ。
と、アムロは内心毒付いた。宇宙世紀でもコロニー落としや毒ガスによる虐殺など人道的観点から外れ過ぎた作戦はその地に住む者を虐殺し『悪魔』の如き所業だと言われた。その悪魔を生み、或いは悪魔となるのは他ならぬ人間だというのは、あながち間違いでは無い解釈かも知れない。
「……伝説はあくまでも伝説です。本当にそうなるとは限りません。とりあえず騎士ガンダム、貴方はこのムンゾに来たばかりのようです。詫びも兼ねてこの城の一室を与えましょう」
「うーん、話題を振るべきでは無かったな……」
謁見の間を出たアムロだが歓迎ムードが一転、随分暗い雰囲気になってしまった事を責任に感じていた。
だが『ラプラスの伝記』に記された伝説の一節。その捉え方の問題なのだがよくある力の強い怪物が暴れそれを伝説の勇者が倒す、という伝記にありがちな内容よりは人間同士の争いを記したと解釈する方が多くの戦争を体験してきたアムロにとって寧ろ身近に感じる考え方であった。
仮にミネバ達の捉えた伝説通りにこの世界の戦争を『ガンダム』となった己が食い止めるとする。元居た宇宙世紀の世界とやる事がそう変わらない、そう考えるとアムロは己の人生はやはり戦争の中にしか無いのかと落ち込む。
人は戦いの中で導くしか無い、とシャア・アズナブルが言っていたのを思い出す。アムロはそれを否定したが、他ならぬ己が戦争の渦中の中で人の革新『ニュータイプ』へとなってしまった。何とも言えない矛盾だろうか。
「むぅ……ここに来てまで戦争か……おっ!?」
「ウワッ!? なんだ?」
腕を組みながら角を曲がった所でアムロはまた何者かとぶつかる。その相手は今のアムロと同じくデフォルメされたモビルスーツの姿をし、頭部に白い一本角を持っていた。
「あ痛たた……誰です?」
「ああすまない考え事をしていた物で……俺は騎士ガンダムという。君は……?」
「ナ、騎士!? こ、これは失礼しました! 俺は……騎士見習いのユニコーンと言います!」
自分より格上の称号を持っていた、正確にはアムロがその見た目から勝手に名乗っているだけなのだがそんな事は露知らぬ若々しい存在は名乗った。ユニコーンと。