初めの攻防は私の有利に進んでいた。ヒステリア・ベルセの金次くん相手でも、近接戦闘では私に分があった。
「桜花」や「秋水」のような技にだけ注意していれば、あとは私の「自動反撃(オートカウンター)」でじわじわと削っていけばいいだけだ。
しかし彼も馬鹿ではなく、思考が攻撃一辺倒に偏っていてもその攻撃手段を変えるだけの冷静さは残っていたようだ。
彼はベレッタM92Fとバタフライナイフの「色金止女」を用いて私の武装解除にかかった、要するに私にダメージを与えられないので防弾チョッキや拳銃等の装備を私から切り離して端から見て無力化させるつもりのらしい。
「そんなつまらん決着には“断じて”させん!」
私にとって、そんな装備は只の飾りに過ぎない事は彼も理解しているだろう。
私は金次くんに崩された体勢を立て直す為に咄嗟に距離を離してしまった。
その瞬間彼は後ろに飛び退きベレッタの間合いから銃弾を連射する、しかし私の身体は防弾チョッキ越しの銃弾の衝撃程度で怯みはしない、それは理子戦で実証済みだ。
だが、金次くんの狙いは私の胴や足ではなく、外したように見せた弾丸による跳弾射撃(エル)を私の膝裏に吸い込ませることにあった。
名付けるなら「跳弾膝カックン」といった所か。
いや、まんまやんけそれ。
並の人間なら武偵生命を絶たれるぞ、それ。私でも膝が割れるどころではすまないだろうそれを避けれたのは偏に変態シューターの金次くんが銃弾を外す筈がないという信頼ありきだった、故に私はそれを避けることに成功した。
しかしそれも想定していたのか金次くんは私の避けた銃弾を更に撃ち返して一人銃弾撃ち(ひとりビリヤード)による多角的射撃を私にお見舞いしてくれやがった。
やっぱ化物だわ、原作主人公。
ダメージ覚悟に突っ込まなければ距離も詰められないとか、こいつ本当に人間か?
だが私も武偵を目指す身、ただ突撃するだけが日本人ではないのだ。私は近接武器を解禁した。
それは遠心力を用いて扱い、尚且つ人間の最も優れた投擲能力を遺憾なく発揮し持ち運びも楽であり職質にあっても誤魔化しやすい暗器としても人気の高い小型の鎖分銅である。
私はこれを用いて一人銃弾撃ちの弾丸を「HUNTER×HUNTER」のクラピカよろしく全ての弾丸を鎖で受けとめた、結局脳筋じゃねぇかよ…
私は空中で身を捻り、驚愕に目を見開く金次くんの腕に鎖を巻き付け勝負を決めにかかる。
強引に彼を間合いにたぐりよせ怪腕流の「魔槍」を自分の型に昇華させた手刀、「魔仭」自らの手によって大地に千〟仭〝の谷を創らんばかりの手刀という意味で名付けた、もちろん比喩表現だが、を金次くんの異常に硬い頭蓋にむけて振り下ろした。
大丈夫だ、遠山家の頭蓋骨はこの部分だけギャグ漫画の世界なんじゃねえの?と疑う程に頑丈にできているので軽い脳震盪で済むだろうと割り切った渾身の一撃は、金次くんの真剣白羽取りと「絶閂」により防がれた。
「なッ?!…馬鹿な!!」
この主人公まさか私が数年かけて名前を考え、昨日完成させた技をこうもあっさり防ぐのか!
それが人間のすることかよぉォォォ!Σ(×_×;)!
しかも私の魔仭の衝撃を受け、老朽化の進んでいた床はひび割れて穴が開き私達は一つ下の階にまで落下中である。
しかも、金次くんはその間も私の手を離さずに合気道の要領で私の関節を破壊しにかかる!
☆HA☆NA☆SE☆!!!
私は足による魔槍で金次くんの腹部を突き刺し無理矢理離れる。
空中だったのでお互い体勢が悪く先の魔槍も決定打に欠けていた、勝負は着地してから決まる。
ほぼ同時に地に足を着けた私達だが体重の分、金次くんが先に動けた、着地地点に先回りして無防備な私に渾身の「桜花」を叩き込むつもりのようだ。
必死に回避しようと私の左手は回し受けの構えをとるが、それもろとも突き破り「桜花」が私の胸に吸い込まれていく。
この時を待っていた。
「桜花」弾けず、狙い澄ました「小手返し」によって金次くんの右腕にダメージを返した。
利き腕を潰した以上、あとは消耗戦で私に軍配が上がるだろう、私は痛みに呻く金次くんに何故か反射的に「正拳六連撃」を打ち込んでしまうも、彼はまだ倒れない「絶閂」でも使っているのか?
外では急に雨が降りだしたのか、ビルの中に雨の音が響く、ポタポタと雫がここにも垂れてきたのか雨水が私を濡らす、何故だか急に沖縄で師匠の道場の庭に成っていた柘榴が食べたくなった、三戦の修行中に熟れ落ちた果肉が地面で潰れる様をみて水分を欲していた私は喉を鳴らしたものだ、いや違う、何故今そんな事を思い出す!
頭を振って意識を覚醒させた私は前頭部から血を流している事に気づいた。
どうやら私が金次くんの右手を破壊した直後、彼は「秋水」によって全体重を頭突きに回して私の頭蓋を割りに来たらしい。
しかし、「自動反撃(オートカウンター)」による反撃を受けて、私に止めを指すことができなかったのだろう。
すぐに反撃にでないところをみるに、ダメージの深さはお互い様なのだろう、次の一撃で勝負を決める。
「絶牢」は遠山家の秘伝であり他人に見せられない以上カウンターは得策ではない。
故に最大の攻撃で勝負を決める!
私は用いる最大威力の必殺技「魔仭」×「桜花」=「魔葬」を用いて金次くんの胴体を防弾チョッキごと断ち切る。
勿論、殺さないように傷は浅くするつもりだが、多少の出血は覚悟させる。対する金次くんは「絶牢」でも「絶閂」でもない構えをとり、私に集中する。
何をする気かは知らないが、諦めていないことはその目を見れば分かる。
「いいぞ、遠山金次!もっと私に集中しろ!!私だけを見て、私だけを感じ、私だけの奴隷となれ!!」
ライバルとして、全力をぶつけ合おうと宣言するつもりが、稀に熱くなるとこの身体は天羽斬々のようなセリフに変換されてしまうので、私は内心すごく恥ずかしくなりながらも、それを誤魔化すように「魔葬」を放った。