Sランク武偵 天羽斬々   作:遊び人の旅行記

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教務科(マスターズ)からの採点

ー蘭豹視点ー

 

暫くにわたって強襲科の試験官を務めているウチでも、今年の様に突出した戦闘能力を有した受験生が二人も同時に現れたのは嬉しい誤算やった。

 

遠山金次については彼奴の通っている武偵中での活躍を聞いて注目しとったけど、予想を遥かに上回る射撃の性能と格闘センスは天才の域に達していた、最初こそあいつの父親や兄貴に名前負けしとると思うたけど、ふたを開けてみれば今後の訓練しだいで化けるダイヤの原石のようなガキやった。

 

性格も私好みの、今時珍しい中々に度胸のある奴で、遅刻して来たくせに挨拶もせんで他の受験生共に睨みを利かせたと思ったら、私に試験内容だけ聞いてとっとと装備の着用に行きおった。

 

「強襲科に入ったらまずは口の聞き方とあの嘗め腐った態度を叩き直さんとなぁ…」

 

これから奴をどう鍛えて(痛めつけて)やろうかと考えていると、もう一人のSランク合格者、天羽斬々についての資料が目にはいった。

 

こいつの扱いは教務科(マスターズ)のあいだでも問題になっとったっけなぁ…

 

遠山金次以外の受験生をほぼ無傷の状態で制圧して周り、話を聞く限りでは試験官が潜んでいることにまで気づいていたらしい。

 

装備科での射撃テストではAランク止まりだったがビルでの攻防を見るに、こいつの戦闘スタイルは鍛えぬいた肉体によるダメージを無視した強引な制圧と研ぎ澄まされた技と感覚による緊急回避能力にある、一見矛盾した戦闘論理だが彼女は急所や他の僅かな部位以外の攻撃は当然の様にはじき返し、更にはカウンターに移れるだけの耐久力を有している。攻撃面でも、その手足はもはや刀の域に到達しており、手刀や足刀で他の受験生の銃や刃物を破壊してみせたほどだ。

 

それに、彼女は武術における先読みなのか、心理学による推理なのかは知らんが、致命傷となり得る攻撃には全て反応し対応しとるし、当初懸念していた死角からの攻撃や狙撃にも、遠山と殺りあった際に使った分銅鎖で対応しているんやろうな。

 

以上の結果だけみれば誰も彼女をSランクにすることに反対せんやろうけど…問題はこの“銃弾”か……。

 

試験の後に、頭からの出血が中々止まらないので救護科で手当てを受けさせ、念のためにと脳のレントゲンを撮ってみた結果、彼女の脳の中枢に銃弾が発見された。

 

脳に銃弾が撃ち込まれて生存している例は珍しくない、「探偵科(インケスタ)」の教諭である 高天原 ゆとり も戦えない体にこそなったが普通に生活している。

 

しかし問題は彼女の頭に銃創の痕はなく、記録にも載っていないことが教務部からの疑惑を抱かせた。

 

遠山家の人間や本人ですらそれの存在は知らなかったらしく、詳しく調べる為に天羽斬々には経過観察と伝えて暫く入院させた。

 

調べた結果その銃弾は金属製の外殻を除き全てが有機体であり、生きていることが明らかになった。

 

そんな不気味な存在を有した彼女を入学させて良いのか教務科でも意見が対立し一触即発の状況のなか急に現れた、否、最初から居たが誰も分からなかった男、緑松 武尊 東京武偵高の校長が、彼女「天羽斬々」の身元を保証すると提言した。

 

「誰か彼女の入学に反対する方はいますか?」

 

皆無であった。

 

一連の流れから『見える透明人間』緑松武尊と天羽の両親の間には何かしらの関連があった事が窺える。

 

「天羽斬々…こいつも中々に手が掛かりそうやな…。」

 

そして、彼女は何ヵ月ぶりかに座ったデスクから離れ、強襲科の戦闘訓練を冷やかしに向かった。

 

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