Sランク武偵 天羽斬々   作:遊び人の旅行記

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探偵なんだから謎解きくらいするよ。「本当にできんのぉ?」できらぁ!

準備を済ませた私達は改めて依頼主の木屑さんに詳しい話を聞くことにした。というのも、護衛対象である咲羅さんを完全に見失ってしまったからである。方針を決めた後、再度彼女に目通りを願ったがそれは彼女直属の部下数名に阻まれてしまった。

 

丁度その直後に武偵校から依頼の取り消しに対する連絡が着た、これで私達は完全な部外者になってしまったわけだ。

 

これから3日間は特例として各自の判断で行動することが認められ、武偵校に戻るのも特別休暇を楽しむのも自由だそうだ。私達は独自の判断で警護を続けると、仲介役の蘭豹に連絡をいれた。

 

誰かが外に出れば先程まで出入り口周辺の監視カメラを確認していた武藤くんが気付く筈なので、まだ敷地内にいる事は確定なのだが。おそらく隠し通路や隠し部屋などが何処かに存在すると思われる。

 

私達はただの客人だ、余り動き回ると他の教団員に怪しまれて最悪の場合は強制的に送り返されてしまうだろう。だからまずは金次くんと木屑さんに会って、もう一度話を聞きたい。

 

先程の謁見の際は教祖の咲羅さんの手前、自由に発言させてもらえなかったようだし。今回の件でもまだ聞ける情報があるかもしれない、わざわざ民間の武偵事務所ではなく、この施設から少し離れた武偵校に依頼を出したのも気になる。

 

そこには絶対に理由がある筈だ。

 

「あ、居たぞ天羽」

 

金次くんが指差した方向には体育館の前で薙刀道衣の子ども達に囲まれた木屑さんの姿があった。

 

どうやら子ども達に稽古をつけているようだ。その邪魔をするようで少し憚られるが、今を除けば次いつ話しかけられるか分からないので、今のうちになにか情報を聞き出そう。

 

「失礼する、花御 木屑。先程の件で確認したいことがあるのだが、少々時間を貰えるだろうか。」

 

敬語の使えない私が話しかけたのは失敗だったか。大人しく金次くんに任せればよかった。少し後悔しつつも私達は彼の個室に招待された。コーヒーを淹れてもらったが私は毒を入れられている可能性を考慮して遠慮させてもらった。

 

時刻は午前11時を過ぎており教団の託児所でも昼食をとりに食堂へ向かっていた。木屑さんは時々こうやって託児所の子ども達の面倒を見ているそうだ。

 

「子どもと言えば、咲羅さんの事なんですが、」

 

金次くんが話を始める。

 

「失礼ですが、他に親戚や兄弟はいらっしゃいますか?」

 

成る程、身内から攻めるのか。

 

「財産分与や権利の委託についての心配は無用だ、妻が死んでから血縁は私一人だけだからな。」

 

確かに奥さんの姿は見られなかったな。

 

「何故、私達に花御 咲羅の護衛を依頼した?」

「彼女とお前の間に親子愛や組織内の上下関係があるようには見えないが。」

「寧ろ、お前達は敵対関係にあるのではないのか?」

 

彼は少し眉間にシワを寄せ

 

「行きなり何を言い出すかと思えば。私は唯、自分の一人娘の身を危険に遇わせたくないだけだ。」

「まさか私が自分の娘を殺そうとしているとでも言いたいのか?」

 

少し怒気の混じった声音で返答した。

 

「“断じて”違う。寧ろ命を狙われているのはお前だ花御 木屑。」

「否、今は『花御御前』と呼ぶべきか?」

 

木屑さんは明らかに動揺した様子を見せた、どうやら私の勘が当たったようだ。金次くんも私の話についてこれていないようだが当然だろう、唯の下手くそな誘導尋問でしかないのだから。

 

「何時から、いや。どこまで気づいている?」

 

正直、ほぼメタ読みなので説明しづらいが

 

「気づいたのは先程の答えでだ。私が最初に疑問に思ったのは花御 咲羅の年齢について。」

「『考える木』ができたのは今から30年ほど前の筈なのに教祖の咲羅さんは27歳だと言っていたな。だから彼女の話に偽りがないとしたら、最低でも一度は組織のトップが入れ替わっている事になる筈だ。」

「では、誰が最初の『花御御前』だったのか。私は当初お前がこの組織を立ち上げ、影から操っているのだと思っていたが、実際は違った。」

「お前と咲羅の関係について、私が親子愛という単語を出したとき少しむきになったであろう?」

「ここからは私の勝手な推測でしかないが咲羅の母親が最初の『花御御前』だったのではないか?」

「確か20年以上前にこの教団には麻薬密造の容疑がかけられていたが結局のところ証拠はあげられずに終わった。それは何故か、その時は既に麻薬の密造から手を引いていたからだ。」

「では何故麻薬の密造から手を引いたのか、それは当時麻薬の密造に手を染めていた咲羅の母親が死んだからと仮定する。」

「続いて何故死んだのかだが。麻薬に溺れた『花御御前』が育児を放棄し自分の娘に虐待を繰り返していたとしたら、花御 咲羅の発育不全の理由にも説明がつく。」

「骨も異様に脆いようだし、おそらく彼女を妊娠していた時には既に薬物に手を染めていたのではないか?」

「そしてお前はそんな妻から子どもを護る為に自ら妻を事故に見せかけて殺し、その証拠を揉み消した。当時は警察も麻薬密造の証拠を掴むために確実な証拠が見つかるまでは軽率に動けないことが災いしたんだろう。咲羅はその時の事を子どもながらに覚えていて父親に強い憎しみを抱いていた。」

「そうして時が経ち、『二代目花御御前』として地位と力を得た彼女は父親の殺害を企てていたが何らかの事態が起きてその情報が漏れてしまった。」

「あの客室で咲羅の後ろで武器を携帯していた女性、彼女はお前の薙刀道場の門下生ではないのか、鍵付薙刀なんてものを扱っていたぐらいだからな。彼女は咲羅を守っていたのではなく監視していたんだ、咲羅が強行策にでないように。」

「お前は実の娘に殺されるのを恐れた、彼女に自分と同じ過ちをしてほしくなかったんだろう。」

「だから自殺することに決めたんだな、私達に3日間彼女の警護を依頼したのは身辺整理の邪魔を咲羅にさせないためだ。」

 

私の考察を聞いた木屑さんはずっと押し黙っている。

 

ひょっとして私の推理ショー大コケした?

 

「今の話は本当なんですか、木屑さん。」

 

終始、私のとなりで固まっていた金次くんがワトソン役として話を続けてくれた。

 

よかった。私の推理の大穴とか見つけられた訳ではなさそうだ。

 

「ははっ、参ったな。武偵と言っても強襲科の一年生にはバレることはないと高を括っていたんだが…」

 

これは、白状したということでよいのだろうか?

いいよね、ね、ね。

 

「自首してください木屑さん。事情をすべて知れば咲羅さんもきっと納得してくれますよ。」

 

いいぞぉ、金次くんそのまま西村京○郎サスペンスばりの説得術で改心させちゃいなYO☆

 

証拠がないことに関して突っ込まれる前にSA☆

 

「いや、私はもう疲れた。彼女が麻薬に手を染めたのは私が学校の運営に失敗して職を失ってからだ。そしてその責任を全て現代社会に押し付けて、私と同じような者達を集めて団結し新しい生活を始めようと意気込んだはいいも。」

「家族もろくに養えなかった癖に、他人の事まで救える筈がなかったんだ。『考える木』なんて団体を創ったが、私はただ家族に重荷を背負わしていただけだったんだな。」

 

どうやら彼はまだ自殺を諦めてはいないらしい。

 

ふざけるな。

 

「花御 木屑、お前は愚かだ。」

 

私の心ない言葉に二人が息を飲むのがわかる。

 

「娘を守るために妻を殺した?」

「よくそんな浅はかな考えで学校の運営が出来たな。否、出来なかったからお前は今此処にいるのか。」

「お前はただ、自分が責任から逃げたかっただけにすぎない。」

「そうして今度は自殺して責任から逃れるつもりか?」

 

娘を一人残して。

 

「そんなことは“断じて”認めん。その手足を切り落としてでも法に基づいてお前を裁く。」

「裁かれる事こそがお前に許された救いだ。」

「自分で自分を罰しても“断じて”救われない…」

 

 

 

場に静寂が訪れる、一瞬がやけに長く感じながらも木屑さんがなにか言葉を発っそうとした時…

 

 

 

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

私の十津川警部を真似た感動的な説得を台無しにする様に、無線から武藤くんの絶叫がこだました。

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