Sランク武偵 天羽斬々   作:遊び人の旅行記

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「まるでピクニックだな」お花見編

武藤くんと連絡がつかない、外でなにかあったのか?

 

「私が外の様子を見てこよう、金次はここで木屑を監視しているがよい。」

 

おそらく武藤くんの近くでなにか起きたんだろうが、咲羅さんの居場所もわからないし、それと関係しているのか?

 

私が部屋を出た瞬間、死角から刃が迫ってきた。

 

「気配の消し方だけは中々のものだったぞ。」

 

自動反撃 四本貫手

 

急所を外しているとはいえ決して軽傷ではないだろう一撃を受けた相手は、それでも尚小太刀を振り抜いた。

 

「痛みを感じないのか?」

 

私の顔面に振るわれた刃は弾かれ廊下に転がる。それでも暴れ続ける男の首を絞め落とし、床に寝かせる。

 

それにしても異常な程我慢強い男だったな。内臓は避けたとはいえ鳩尾と右胸あたりに手刀を刺したのだから呼吸するだけでも激痛が走っただろうに、まさか薬でもやっているのか?

 

「これは、蜂に刺された痕だな。」

 

首を絞めた際に注射をうたれた痕のような傷を見つけたからもしやと思ったが。どうやらただの覚悟決めた奴だったようだ。

 

武藤くんもこんなのに襲われたのだろうか。だとしたらそりゃ悲鳴もあげるだろう。

 

武藤くんのいるであろう駐車場に近ずくにつれ襲いくる信者も増えてきたが先程の男との攻防を考慮して分銅鎖による拘束からの手刀(峰打ち)で気絶させて行く。

 

途中蜂の群れに襲われたが蜂の針程度は受け付けないので問題ないし、消火器をもちいて蜂を撃退する警備員のおじさんが暴徒とかした信者を制圧していたのでそちらのカバーは任せることにする。

 

駐車場に着くと、そこにはまるで生きているように枝や根を蠢かしている桜の木とそれを手斧で薙ぎ倒そうと奮闘する警備員達、咲羅さんの側に控えていた女性が薙刀を振り回して武藤くんを襲っている。

 

いや、どういう状況?

 

「“断じて”私の仲間に手を出すことは許さん。」

 

とりあえず武藤くんの安全を確保するために薙刀女の相手をしようと分銅鎖で武器をとりあげようと試みるが腰の脇差しにより阻まれる。

 

私の裏(正)ヒロイン束縛術 囲い(キープ)をいとも容易く攻略してしまうとは…やっぱりネーミングセンスないな、私。

 

あまり強い相手に自動反撃をもちいると手加減できずに致命傷を与えかねないので自重せざるを得ない。

 

どうやら相手は標的を私に変えたようで、薙刀を上段に構えて迎え撃つつもりのようだ。

 

お互いに出方を伺うが、傷でも痛んだのか一瞬相手の集中が切れた様に感じた。

 

例え誘いだとしても通常の攻撃では私の体に刃は通じないので、特に気にせず捕縛の為に私から踏み込む。

 

振り下ろされた薙刀は回避するのは困難な程速く、私の頭に直撃したが刃の方が砕かれる結果に終わった。しかし彼女は振り下ろした勢いのままに腰の小太刀を抜刀する、どうやらあの一瞬で私の異常性に対応したようだ。彼女は迷わず私の眼球を斬りつけに掛かる。

 

確かにそこはまずいな

 

「自動反撃 虎爪」

 

思わずやってしまったが、相手が後ろに跳んでくれたのでただの致命傷で済んだようだ。ちなみに相手の攻撃は目を閉じることで防いだ。

 

「心配するな死んではおらん。手当てをしてやるがよい、武藤。」

 

胸部と眼球を斬り裂かれた薙刀女の止血を済ませて私は武藤くんにあのハリー・ポッターに登場する暴れ柳のような桜の木について聞くと、どうやら咲羅さんは超能力者であの木の根元に取り込まれているという事と、その救出の為に守木さんと警備員が数名助けに向かったが木に近づけば近づく程に力が抜けていき意識が朦朧とするらしい。

 

おまけに幻覚や吐き気等の症状も発祥するらしく、頭を打って意識が朦朧としていたのか一番近くで戦っていた薙刀女が武装した彼らを敵と認識して暴走したらしい。

 

説明を聞いている間にも桜の被害に会った警備員が増えていたようだ。朦朧とした意識ではまともに動くこともできず根や枝に貫かれていく。

 

根元に居るのならそこを避けて伐採すれば大丈夫だろう。

 

「あとは私がやる、お前は怪我人を避難させていろ。」

 

たしか、桜の木にはエンドルフィンという麻薬の一種?が僅かに生成されているという話を何処かで聞いたことがある。

 

日本人が桜の木の下で宴会を開いて盛り上がるのも、このエンドルフィンにリラックス効果があるからだそうだ。薙刀女にあの時隙ができたのもこれが過剰分泌されたことによるものだとしたら。それも「花御御前」の超能力によるものとみていいだろう。

 

桜はそもそも品種改良されることが多く、一代限りの突然変異等もよく確認されている。花御家の超能力を利用してエンドルフィンを異常分泌するよう桜を改良していてもおかしくない。

 

敷地内に蜂の巣が多く見られたのも花粉を運ぶ蜂の習性を利用して周囲に広めているんだろう。そう考えると蜂そのものも品種改良してエンドルフィンを毒針に蓄積するよう一種の生物兵器として利用しているふしもある。

 

私に蜂の毒針は問題ないとしてもそれが運ぶ花粉はもちろん本体の木が直接周囲に撒き散らしている花粉を吸ってしまえば気が弛み隙が出来てしまう以上、下手に近づけないな…。

 

どうすれば…いい作戦が思いつかない。

 

なにかないのか、最高に頭の良い作戦は。

 

その1 周囲の車輌に弾丸を撃ち込み炎上させる。

 

これは論外だな、邪魔な花粉や蜂を処分できるかもしれないが、爆発による被害が咲羅さんや警備員に広がる恐れがある。

 

その2 武藤くんに車で突っ込んで道を開いてもらい、その後に続いて私が咲羅さんを救出する。

 

これも武藤くんの車が破壊されたらアウトだし、周囲と救出対象に被害が及ぶ可能性が高い。武藤くんの運転技術は信頼しているが、命懸けのギャンブルに挑むような状況ではないだろう。

 

その3 金次くんを呼んで協力して対処にあたる。なんなら作戦もまる投げする。

 

できればこれを押したいがヒスってない金次くんはここに来る前に蜂に襲われたり武装した狂信者に木屑さんを殺される危険があるので木屑さんと待機だ。

咲羅さんの目的は木屑さんを殺すことにあるとしたら、あの木や蜂も護衛が手薄になった今を狙うだろうからな。

 

その4 私一人でなんとかする。

 

考えた結果、エンドルフィンの効果が表れる前に“魔葬”で一息に断ち切り、あとは咲羅さんを引っ張り出す。

 

やはり“これ”(力技)に限る。

 

こんな頭の良い(悪い)作戦しか思いつかない私は既にエンドルフィンが回りきっているのか、もしくは脳を筋肉に侵されているのだろうか。

 

脳の弾丸が関係しているのかもしれない。

 

ともかく、被害が広まらないうちに片をつける必要があるのは確かだ。

 

「お前の桜には風情がないな、まだ私の相棒の方が幾分か“華”があるぞ。」

「お前の父が私達に依頼をだしたのは遠山の家と何かしら縁があると愚考するが、もし、仮に、私の推測が当たっているのだとしたら、その桜の醜悪さは“断じて”許容できん。」

 

私は走りだし無数に襲いかかる枝や根を回し受けで斬り捌き幹を断ち切る。強度そのものは大したことはなく、“魔葬”を使うまでもなく桜の木は活動を停止した。

 

しかし、そこに咲羅さんの姿はない。

 

「根の深くに埋もれているのか?」

 

私がより深く根を探っていくと子ども一人が通れそうな小さな穴が無数に空いており、そこから先程とは比べられない程の大木が無数に地面を盛り上げて私を地面に引きずり込みにかかる。完全に油断したが問題はない。

 

「“断じて”無意味だ。」

 

自動反撃 “無慙” ノーモーションの手刀による斬撃、拘束された状態からでも筋肉の収縮運動を利用し密着した対象をも切断する。

 

といっても、分厚く固い樹木を両断するだけの威力は発揮できないので片腕を出すだけで精一杯だが、これで拳銃を握ることができる武藤くんが怪我人の避難を完了させている今なら周囲の車輌を爆発させることも可能だ。

 

私は愛銃のコルト・ディテクティブを全弾ガソリンタンクに撃ち込み爆発炎上させる。

 

爆発の衝撃程度なら私の身体はダメージを受けないが、窒息死だけは避けられない。

 

衝撃で緩んだ拘束を断ち切り、そこから距離をとる。

 

「武藤、お前はここで動かせる車を探していろ。私は咲羅の後を追う、お前は怪我人を病院まで運ぶが良い。」

 

本体の桜は既に何処かに移動しているが、まだそう遠くにはいない筈だ。

 

私が金次くんに無線で連絡を取ろうとした瞬間、この山全体を無数の桜の木が包囲した。

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