昔馴染みの凶報を聞いたのは仕事でアメリカに渡ってすぐのことだった。
高校を卒業してからはお互い忙しくなり顔を合わす事も少なくなったが、それでも二人の結婚式式には仕事をふけて顔を出しに行ったし、彼奴等も俺の結婚式に来てくれた、一生の付き合いというのはこういうものの事を言うのだと漠然と感じていた。
こないだだって電話で産まれたばかりの子どもの事を話してくれた、お互い子育ては初心者で子どもの年が近いこともあいまって良き相談相手になってくれた。
子どもができて間もない頃、二人の武装探偵事務所には銃弾の紛失事件に関する捜査依頼が舞い込んできた。母親の濡羽はこの依頼を最後に武偵を引退することに決めていた、人伝に聞いた話しでもそう危険な内容の依頼ではなかったが、このご時世にたかだか銃弾の一発を探すのに警察がプロの武偵に捜査協力を要請することじたいがおかしかった。
二人は数日がたった頃から連絡が着かなくなり、その一週間後には銃弾に倒れた遺体が発見された。
一連の騒動は当時話題になったが時間が経つにつれて人々の記憶から薄れていった。
武偵という職業がら殉職は珍しくなく、犯罪数の増加や未解決事件がざらにあるのだから当然といえば当然なのだが被害者遺族を残して進んで行く社会の流れを強く実感した。
二人の子ども、天羽斬々ちゃんの事は心配だったが叔父夫婦に引き取られていると聞いていたのと、当時の俺は次期大統領候補の護衛という極秘の依頼を法務省から受けており自由に動くことができなかった。
仕事を終え帰国した後も、葬式に顔をだせなかった気まずさと、申し訳なさ、そして彼女に会うことにより嫌な記憶を思い出させてしまうかもしれないと恐れ躊躇っていた。
しかし、妻を亡くし悲しみに暮れる子ども達を見て、子にとって親がどれだけ重要な存在かを再認識し、数年ぶりに二人の子どもに会いに行くことを決めた。
会って二人の思い出話を聞かせ、どれだけ彼女が愛されて産まれてきたのかを話す義務が自分にはあると考えたからだ。
もし、二人が自分を残して先に逝ってしまったことを恨んでいたとしても、それは仕方のないことだ。
武偵とは報われない職業だ、幾ら過酷な訓練を積み自らを犠牲にして人々を救っても、そこに報酬が入るだけで便利屋としてしか認識さるない。
むしろ銃火器や刀剣類で武装していることで世間一般からは危険な存在として認識される事も少なくない。
だが、それでも彼等に救われた命があることを彼女には知っていてほしかった。
ただ、それだけの為に俺は彼女に会いに来たのだ。
だが、現実は俺の想定していたものと違った。
彼女の身体中には無数の青痣が痛々しく広がっており、それは母親似の端正な顔つきにも例外なく表れていた。
現状を理解した俺は溢れでる激情を抑えながらできるだけ優しい声音で彼女、天羽斬々に家で暮らすよう説得し車に乗せた。
途中、義理の母親らしきものに止められたが少し殺意を向けただけで膝から崩れ落ちた。
そして夜に義父母が揃ったところで俺は極めて冷静に交渉に移った。
「まず、一発ぶん殴るところからだな、本気で殺るから男みせて耐えやがれ。」
その一言を金叉が言い終わる前に義父はその人間離れした殺気だけで、心停止を起こしていた。それに気づいた義母も金叉の迫力の前で口を開くことすらできなくなっていたがそれも無理はない。
「静かなる鬼(サイレントオーガ)」の前では誰も口を開くことはできないのだから。