金叉さんの凶報が届き、急遽帰る事になった私はどんな顔をして家族に会えばいいのかわからなかった。
原作どおりに話が進んでいれば、遠山金叉は擬奇屍を使用して生き延びているが、私が介入したことによりバタフライエフェクトの様な事が起きて万が一にも金叉さんを死なせていたとしたらと考えると背筋が凍る。
「頼むから殺してくれるなよ、伊藤マキリ…」
私は飛行機の中で、誰に聞こえるでもない一人言を呟いた。
飛行機が着陸した後、空港では鐵さんと金次くんが迎えに来てくれていた。
タクシーに乗り込んでから鐵さんが経緯を話してくれた、どうやら金叉さんの死体はまだ確認ができていないらしく、それを聞いた私は安心した。
少なくとも生き延びた可能性が残っているならば、後は遠山金叉という武装検事を信じるだけだ。
鐵さんと金次くんは、自分達の方が辛いだろうにまずは私の心配をしてくれた。
二人だけではない、私は遠山家の優しさに生かされてここに居る。
私は、この家族に何も返せていない。そう思うと、とてもいたたまれない気持ちなり悲しさと情けなさで涙が溢れそうになる。
そんな私を気遣って隣の金次くんが私の手を優しく握ってくれた、自分の方が辛いだろうに、、彼はいつも自分より他人のことを優先してしまう。
それに甘えて、私が泣くわけにはいかない。
私は金次くんの手をそっと握り返した。
葬儀は遠山家で行われた。金叉さんの同僚と星伽の人間が数名、後は嘗て金叉さんに救われたという大勢の人達がご焼香に来ていた。
私も遠山家の人間として、芳名帳を記帳してもらう受付の役割をさせてもらった。
その際に、伊藤マキリが葬儀に顔を出して来ていることを確認した。
何食わぬ顔で芳名帳に記帳して、ご焼香を終え帰って行こうとする。
私は気づけば彼女の背中を追って走り出していた。何故そんなことをしたのか自分でもわからなかった。問い詰めようだとか、ここで敵を討とうとしたわけではなかったと思う。
それでも私は彼女の背中にこう問いかけた。
「意味はあったのか?」
彼女は私の問いにただ目を細めて、街灯ひとつない夜の道に消えていった。
私は暫くそこに立ったまま動けずにいたが、私を追ってきた金次くんに連れられて家に帰った。
その日の夜は眠れなかった。
私が縁側で夜風に当たっていると金次くんがやってきた、彼も眠れなかったのか暫く無言で私の隣に座っている。
その沈黙げ少し心地好くもあったが私は彼に話題を振る事にした、具体的には沖縄での生活や修行の事、黒木師匠の事まで話した。
伊藤マキリの事や金叉さんの話題は避けて。
金次くんも私がいない間の遠山家の話しをしてくれた。
金一さんと鐵さんで宴会芸で銃弾撃ちをした話しや金一さんとの頭突き勝負等の面白い話しだ。
彼も金叉さんの話題は避けて。
もうすぐ受験シーズンがやってくる私は修行の仕上げにもう一度沖縄に戻る。
次に会うときは東京武偵高校の受験日だろう、
「HSSはまだ使いこなせてないんだろう、馬鹿な女どもに言いように使われてボロ雑巾の様になるなよ、遠山金次。」
「はっ、どの口が言ってんだよ。これでもヒステリアモードにならなくても武偵中ではそれなりに活躍してんだ。」
「ふふ、それでいい、、周りに女がいないせいで桜散るなんてことにはならないでくれよ。」
「上等だ、散らせるものなら、散らしてみやがれ。」
私は金次くんと再会の約束をして布団入った、その日はとても幸福な夢を見れた気がしたが、朝起きたら忘れてしまっていた。