私は他の受験生を倒しながらこのビルの構造を観察していた。
受験生はこの試験を受けるにあたり、上から順に詰めるように教諭に配置された為、遅れてきたであろう金次くんはまず間違いなく下から上に登るように迫って来るだろう。
私としては、金次くんを相手にするのはできれば最後にしておきたかった。
ヒステリアモードの金次くんを相手にしながら他の受験生からの不意打ちに気を配るなんて器用な真似は流石に出来ないので、必然的に私も上に向かう階段を登る。
途中にいる受験生を潰してまわっていると峰 理子のいる階層にぶつかった。超能力(ステルス)を使わない理子の相手自体は簡単だったが、途中に張り巡らされた罠を掻い潜るのは面倒で特に理子を囲うように張られたワイヤートラップは、私でなければ動脈や手足の筋を切られて武偵としての生命どころか人命を絶たれる程のものだったが、あまり時間を掛けられない私は全ての罠を強引に突破して進み防弾チョッキ越しの銃撃は全て避けずに受けることを覚悟し勝負に出た、捕縛する際に理子が暴れて腹部や肩口には2~30発程銃弾をくらってしまった。
ごり押しチンパンジーもしくはバイオハザードのタイラントと化した私に唖然としていた理子の腹に、前世で読んだ「武装少女マキャヴェリズム」の主人公が使用する技「魔弾」の試し撃ちをさせてもらったら一発で気絶してしまった、流石はこの天羽斬々の肉体にダメージを与えた技だけはある。
前々から修練に励んでいたかいがあり、今では雲耀の域にまで達している。
まさかこの身体で使用できるとは、ある意味では感慨深くもあった。
私は理子を安全なビルの隅にまで移動させた後で屋上へ向かった。
影に隠れていた教諭等は残して置いたので、勘違いした金次くんと戦えば少しは体力を削ってくれるだろう。
しかし、驚くことに、私が最上階の掃除を終わらせた直後にはもう金次くんは私以外の人間全てを捕縛、もしくは気絶させてきたようだった。しかしそれより驚くべき事は、、
「思ったより早い到着だったな、遠山金次」
私が金次くんを褒めると。
「まぁな、途中に怪しいおっさんどもの相手に時間をかけちまってなぁ、埋め合わせにキスでもしてやろうか?」
と、妙に俺様な口調になっていることである。
何故か今の彼は通常のヒステリア・ノルマーレではなく、女性を他の男性に奪われた際のヒステリア・ベルセの状態だった。
何故、彼が今ベルセの状態になっているのかまったくもって☆意☆味☆不☆明☆だったが、少なくとも今の彼は通常のヒステリアモードよりも1.7倍強く、なおかつ攻撃的な性格になった為、状況把握に問題がでている筈だ。今の彼なら女性にも多少の乱暴をしかねないので私のアドバンテージが一つ消えてしまった。
私が考えを纏めていると金次くんは既に攻撃に移っていた。とっさに三戦の型をとった直後に腕に衝撃が走った。
「くっッ……これは桜花か」
まだ、痺れの残る腕に力を込め直し対峙する。
今の攻防で確信した、彼は捕縛などといった甘い考えは捨てている。
無理矢理にでも私を捩じ伏せるつもりなのだろう。
ならば私も覚悟を決めろ。彼とこれから先も競い会い、隣で戦い続けようというのなら、ここで退くわけにはいかない、もてる全てをもってぶつかりあう。
「逝くぞ!遠山金次!!」
次の瞬間には互いの拳が交差していた。