HITMAN2『世界線を超えた先に』   作:ふもふも早苗

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『おはよう。47』

『今回向かってもらうのはイジツのアタザキという町よ。以前シルバーやタバサたちと一緒に行ったことがあったわよね。』

『イジツに行ってもらうと言っても今回は航空戦をやってもらうわけじゃない。この街の行政長官のノブという男の暗殺よ。彼は町のみんなに慕われる行政長官を目指していて、各種免税措置やイベント発案などを積極的に行ってアタザキをイジツ随一の観光地に仕立て上げたわ。』

『クライアントはそんな名声と権力を併せ持ったターゲットを妬む、観光都市“ニッコー”の行政長官よ。彼も自らの都市の観光地化に成功しているのだけれど、アタザキには及ばなかった。話題をすべてアタザキにかっさらわれた腹いせの意味で依頼してきたみたいね。』

『現在、アタザキではターゲットが主催した催し物、「アタザキ奇術大会」が開催されているわ。市街地はいつも以上に人が多く、その中心人物であるターゲットを気が付かれずに暗殺するのは至難の業と言えるでしょうね。』

『準備は一任するわ。』


~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】・【エージェント67-1】・【エージェント68】
・装備
【シルバーボーラー、小型リモコン式陽動装置】・【ポケモン6匹】・【クルーガーマイヤー2-2】
・服装
【愛用スーツ】・【愛用ノースリーブ】・【愛用レディースリクルートスーツ】
・設置アイテム
【ステージ衣装×3】





HITMAN2『奇跡の暗殺劇』

『アタザキへようこそ。47。』

 

『アタザキには町の中央に大きな多目的ホールがあって、毎週のようにそこで催し物が開かれているみたいね。特に今週の奇術大会は長官肝いりの催しともあって気合の入り方が違うみたいよ。』

 

『ホール自体は地上2階、地下2階の4階層構造よ。広さもそこまで広くないから迷うことはないと思うわ。むしろ決して広くないその会場に1万に届くかという大勢の観光客がやってきていることのほうが問題ね。暗殺現場を見られでもしたらかなり厄介な事態になるわ。十分気をつけてね。』

 

『健闘を祈ってるわ。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

ガヤガヤガヤ

 

以前来たときよりも人が多い。これも開催される催し物のせいなのだろう。この世界は石油が真水の次に重要な資源であるため、石油由来のガソリンをバカ食いする車はそれ自体が高級品であまり走っていない。イケスカなどの富裕層が多く住む街ではそれなりの量走ってはいるが、それでもニューヨーク、香港、東京、ロンドンなどにくらべれば圧倒的に空いてると言えるレベルだ。ここアタザキのような観光地では富裕層向け宿泊施設の送迎用くらいにしか使われておらず、道は殆ど歩行者で埋まっている。

 

 

「ちょっと!47!早い!早いから!」

「ちょっとは待ってあげてもいいんじゃない?」

 

 

おっと、今回はブルーとキュラソーも一緒についてきているのを忘れていた。こうも人が混み合っていると子供でなくても逸れる危険性が高い。私は一旦路地に入り、二人と合流する。

 

 

「ふう・・・ここまで混んでるなんて聞いてないわよ。」

「それだけ注目されている行事ということなのだろう。難易度はかなり高いな。」

「そうね。ここまで注目度が高いとなったらターゲットが一人になるのなんてそれこそトイレの個室の中とかしか無いわね。」

「単純にトイレの中というだけでは完全に孤立状態になることはなさそうだな。」

「じゃあどうするのよ。大勢の人の目の前で頭撃ちぬく気?」

「その点に関して策があると聞いている。」

「誰に?」

「ブルー。君のオペレーターにだ。」

「なんですってえ!?」

 

『おうおう!なんでえその反応は!オレっちだって偶には積極的に働くんだぜ?!』

「ああ・・・もう不安しかないわ・・・。」

「名はなんと言ったか。」

『ウィートリーだ。あんたがかの有名な47さんだな?よろしく頼むぜ!』

「よろしく。早速だが策というのを聞かせてもらおう。」

『あいよ!じゃあオペレーターの姉ちゃん。よろしく頼むぜ。』

####アプローチ発見####

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『はいはい・・・。目の前の道を北へ1キロほど行ったところに目的地である中央ホールがあるわ。そこで奇術大会が行われることになっているのだけれど。あなた達、参加して見る気は無いかしら?』

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「はぁ!?」

「奇術大会に私達が?」

「ふむ・・・。」

『インフォーマントの連中が調べた所、あの劇場のホールは舞台装置に色々仕掛けがしてあるみたいだぜ。詳しいことはわからなかったけどな。天下の47様ならそれらをうまく使ってターゲットを暗殺することもできるんじゃないかなと。』

「面白いアイディアだ。」

「47?!」

「本気なの?」

『だろう!いやーさすがはICAのエース様だ。話がわかる。ホールへの侵入は裏口が有効だ。頑張れよ!』

 

「ちょっと47!私達が出場するってそんなことしたら衆人環視状態よ!どうやって暗殺するのよ!」

「第一参加するにしても私達は奇術なんてできないわよ?」

「問題ない。有名所のマジックショーの手順は訓練済みだ。」

「ICAの訓練ってそんなことまでしてたの・・・?」

「選択訓練過程の中にあったはずだが?」

「あの20ページにも及ぶ一覧表でしょ?最初1ページ見ただけで気が滅入っちゃったわよ。」

「私も、組織ではあそこまでの多種多様な訓練はしたことがなかった。」

「暇なときで良いからやっておくべきだ。私はすべて履修済みだ。」

「マジで・・・?」

「・・・さすがね。」

「ともかくホールに向かうぞ。逸れるなよ。」

 

 

ICA選択訓練は必修ではないスキルや知識を学ぶことができる選択訓練項目だ。比較的よく使う早着替えや警備の基本などから、遊園地マスコットの振る舞い、バーテンダー、保育士、潜水艦操舵手、変わり種ではホームレスの振る舞い方などもある。すべて履修すれば少なくともこの世にある全ての資格試験は合格できるだろう。

 

なにはともあれ方針は決まった。私達は揃ってホールへ向かった。まずはホール内部に侵入するところからだ。流石に裏口ともなると完全な路地裏であり、入口部分に警備員が2名立っているだけだった。警備員2名程度ならなんのことはない。ブルーのポケモンの“うたう”で眠らせることで簡単に侵入できた。

 

内部はそれほど広いわけではなかった。まさに舞台裏という感じで、壁はコンクリート打ちっ放し、床は簡易タイル、窓もあまりなく、照明は裸の蛍光灯だ。時折通るスタッフと思わしき人を、ときにロッカーに隠れ、ときにブルーのポケモンで隠匿し、ときにキュラソーの手刀で眠らせた。

 

 

「47。こっちこっち。この部屋警備室っぽいわよ?」

「ふむ。キュラソー、外を見ていてくれ。私とブルーで調べる。」

「了解。」

「もう一度お願い!ぷりり!」プリー

「ぷりり!うたう!」ガチャ

プーププープープリー

 

 

聞かせた相手を無差別に眠らせる技というのはかなり使い勝手が良い。その気になればターゲット以外全員眠らせてしまえば良いのだから。しかし、以前にそのことを指摘した時、彼女はこう言っていた。

“「みんなそう言うんだけど、“うたう”は意外に効果を発揮させられる人数が限られてるのよ。具体的に言えば10人。それ以上眠らせようとすると効果が出ないかもしくは先に寝た人が起きちゃうのよ。」”

一見便利そうな技や特技にも何かしらの欠点があるものだ。この世に欠点の無いものなど存在し得ないということなのだろう。

 

ともかく、無事警備室は制圧できた。警備室には3人の警備員が常駐していたようだ。各種監視カメラの映像や、簡単なセンサー類の情報がモニタに映し出されている。その中の一つにターゲットが映っていた。どうやら今はホールのエントランスで報道陣の囲み取材を受けているらしい。

 

 

「47。あったわよ。施設見取り図。」

「よし、これで少なくとも迷うことはなくなったな。」

「後こんなのもあったんだけど使えるかしら?」

「これは・・・見取り図とは別の構造図か。」

「ここ、ステージの真ん中に人一人が降りれる地下通路があるわね。」

「マジックショーやミュージカルを行う劇場などではよくある隠し通路だな。使えるかもしれない。」

「どうするの?」

「・・・ここにあるやつが役に立ちそうだ。」

「そこは・・・倉庫?」

「この構造、ただの倉庫ではなさそうだ。」

 

 

各種鍵などを入手して私達は部屋を出て、怪しまれないように空き部屋に移動した。

 

 

「まず、ここに行ってなにか暗殺に使えそうな薬品を手に入れる。ここは薬品関連の倉庫だ。」

「なんでホールに薬品倉庫が?」

「わからん。もしかするとホールになる前は別の施設だったのかもしれない。」

「で、薬品を見つけたらどうするの?」

「ここだ。マジックショーの最中にターゲットを実験台に指名する。その際、この部分に落ちて消失マジックの完成になるわけだが、その落ちた先に薬品を仕込む。」

「なるほど。落ちた後はそこでそのままターゲット死亡ってわけね。」

「でも実験台の人が帰ってこなかったら不審に思われるんじゃない?」

「そのあたりは話術でカバーすればいい。その部分も訓練内容にはあった。」

「私もその訓練受けてみようかしら・・・。」

「念のため陽動装置も持ってきている。これで騒ぎを起こして混乱に乗じて脱出するのも手だ。」

「そっちのほうが手っ取り早そうね。」

「後はそのままショーを追えて裏に下がったらそのまま脱出だ。」

「わかったわそのプランで行きましょう。」

「今の所一つ問題がある。」

「え?」

「ステージ衣装がない。流石にこのままでは不自然極まりない。」

「あーそれはそうねえ・・・。」

 

『お困りのようだな!』

「またあんた・・・今度は何よ?」

『こんな事もあろうかとホール内にステージ衣装をインフォーマントに設置させておいたぜ!』

「ほう。用意がいいな。」

「47、騙されちゃダメよ。こういうときは大抵の場合どっかに不備があるんだから・・・。」

『おおん?ブルーちゃんよぉ。そんなこと言っていいのかなあ?』

「・・・なによ。」

『ヒヒヒ・・・まあお楽しみってことで。場所は2階の南西の部屋だ!ちゃんと3人分あるぞ!』

「ふむ。では私はホールエントランスで出場の手続きをしてくる。キュラソーは薬品の回収と設置。ブルーは衣装の回収だ。」

「わかったわ。」

「了解。」

『フヒヒ・・・がんばれよぉ~。』

 

 

我々は手分けして各々自分の仕事を開始した。エントランスホールに入るには怪しまれないためにも正面玄関から入る必要があるが、手荷物検査がある可能性もあったので、廊下の近くのゴミ箱の中に陽動装置とシルバーボーラーは隠しておく。私は一度外へ出て正面玄関から入り直す。中にはいると案の定、入口で手荷物検査と金属探知が行われていた。それらをパスし、エントランスの出場者受付窓口に向かう。

 

 

「いらっしゃいませ。出場をご希望ですか?」

「3人で出場したい。」

「かしこまりました。ここに必要事項を記入してください。」

「わかった。」

 

 

紙を渡され、近くのテーブルで必要事項を記入する。名前や住所は勿論偽名と偽の住所だ。内容は・・・5つくらいでいいだろう。それらを書き終え、受付に再度渡しエントリーを完了する。出場者はこの後ショーが始まる30分前までに楽屋入りしなければならないらしい。それまであと1時間ほどある。無線で場所を伝え、先に楽屋に入って待つことにした。

 

 

 

 

~ブルーside~

 

 

えっと、たしか2階の南西の部屋って言ってたわよね。しっかし、あのポンコツが先を読んで衣装を配置しておくとか、ほんとに大丈夫なのかしら?3人揃ってピエロの格好だったりしないわよね・・・。

 

私はスタッフが行き交う廊下をメタちゃんを駆使して隠密で進んでいく。なかなか遠いじゃないの南西の部屋は!やっぱりアレなところでポンコツだったわね。

 

進んでいくうちに廊下でスタッフが2人話しているところに出くわした。そこをどいてもらわないと部屋にたどり着けないのだけれど・・・。しばらく待ってみましょう。

 

 

「それにしてもすごいな、ノブさまは。市民のためにこんな大会開くなんて。」

「ははは、お前信じてるのか?そんな詭弁。」

「何?」

「俺はアイツが学生時代だった頃から知ってるけどよ。人のためになにかする奴じゃないぞ。」

「じゃあこの大会はなんだってんだよ。」

「金だよ金。この大会はそこまで有名じゃねえ奇術師が集ってる。そういう連中は大抵披露する奇術もイカサマが多いんだよ。で、そいつらがイカサマを見逃して貰う代わりにオーナーに金を払うわけだ。」

####情報を入手####

「そういうことかい。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ノブ行政長官はこういう催し物で裏金をよく受け取っているみたい。逆に言えば金さえあればターゲットを好きなように動かせるということでもあるわね。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

これは使える情報かもしれないわね。あとで47に教えてあげましょう。そのあと2人は別々の方向へ別れていったので、そのまま通り抜け、建物の南西の部屋へたどり着いた。

部屋の中は使われていない小部屋で、あちこちに廃材や何に使うのかわからない彫刻や絵画などが置かれていた。その中央の柱の根元に真新しいスーツケースが置かれている。多分これね。私はとりあえずその場で開けてみることにした。

 

中には結構きっちりとしたタキシードが入っていた。へえ、あのポンコツが用意したにしてはまともなチョイスじゃないの。まあこれなら問題はないか。私はそのままスーツケースを閉め、運び出すことにした。今思えば、そこでもっとちゃんと中身を確認しておけばよかったのだけれど、その時の私はまだ詰めが甘かった・・・。

 

 

 

 

 

~キュラソーside~

 

 

 

薬品倉庫と思われる場所は地下2階にあった。今は使われていない区画のようで、その倉庫に至る通路は大半が物置となっていた。もっとも台車が通るくらいのスペースはあるので薬品の運び出しには苦労はしなさそう。

 

無論、薬品倉庫は鍵がかかっており、その鍵も錆びかけていたが、先程警備室で拝借した鍵束の中に倉庫の鍵があったのでなんとか開けることができた。中は大きめの棚が並んでおり、そこにはホコリを被った薬瓶がずらりと並べられていた。ホコリを出来る限り立てないように注意をはらいつつ、中を探索していくと、一番奥のスペースに目的に合致するものを発見した。

 

 

「さて、人を溶かすと言ったらまあこれよね。」

 

 

私はおかれていた棚から業務用の洗浄液のタンクを引っ張り出した。倉庫から運び出し、先ほど確認していた落下予定地点へ持っていった。落下予定地点のそばに大きめのガラス製の水槽があった。おそらく水中脱出マジック用だと思われるが、これは使えるかもしれないわね。

 

 

 

 

 

~47side~

 

出場登録を終え控室に通された後、隙を見て控室から外へ出てホール下の部屋に集合していた。隠しておいたシルバーボーラーと陽動装置も回収しておいた。

 

 

「では、各々の仕事の確認と行こう。エントリーは済ませてきた。我々の出番は4番目だ。」

「定番の苛性ソーダを見つけたわ。そこにあるガラス製の水槽を使えばいいと思う。」

「衣装は回収してきたわ。タキシードが入ってるみたい。あと道すがら聞いた話だと、ターゲットは裏金をもらってマジシャンたちを囲うこともあるみたいね。使えるかもしれないわ。」

 

 

各々しっかりと仕事をこなしてくれた。どうやら脱出マジックを行うのは我々だけのようで、先ほどからこの脱出先のスペースにマジシャンどころかスタッフすら誰も来ていない。どうやらこの場所自体がオーナーによって隠匿されているようだ。壁は見るからに厚く、どうやら扉である天井部分も含めて完全防音仕様になっているようだ。

 

 

「ではまず衣装に着替える。スーツケースを。」

「わかったわ!」ガチャ

 

 

中には確かにタキシードが入っている。形状からして男性用なのでこれはおそらく私用だ。ほかにも顔を隠す用の仮面があった。しかし、ほかの二人にとってはそのタキシードを私がとった後が問題だったようだ。

 

 

「なによこれ!?」

「あらあら・・・。」

「どうした?」

「・・・ちょっとウィートリー!!これはいったいどういうことよ!!」

「説明して貰いたいわね。」

『ははは!やっと気が付いたか!どうだ!俺の用意した衣装は!タキシードはもちろん47用だ。』

「私たちの衣装はどうなってんのよ!こんなの着ろっていうの!?」

 

 

私は着替えつつ横から覗き込んで衣装を確認する。・・・なるほど。黒のレオタードにカフス、ウサギ耳のカチューシャと網タイツとハイヒール。これは紛れもないバニーガールの衣装だ。

 

 

『そりゃあマジシャンの相方の女っていえばバニーガールだろ!マジシャンが47。相方がお前ら。何も問題はないな!』

「問題しかないわよ!もうちょっと露出の少ない衣装もあったでしょう!」

『それじゃあ誰がマジシャンかわかり辛いじゃねえか。それにこういうエロい衣装は男のターゲットの気をそらすにはもってこいだろ?』

「なるほど。一理あるわね。」

「キュラソーさん!?」

「なんでもいいがあと30分で開演時間だ。着替えるなら早めにしろ。」

「47も!私たちがこの衣装着ることに異議はないわけ!?」

「何か問題があるのか?」

「ブルー、駄目よ。47は相手を油断させられるか、騙せるかだけでしか見ていないわ。」

「ぐぬぬ・・・。」

『そういうこった。諦めるんだなブルーちゃんよぉ!』

「では着替えている間に私はターゲットの誘導のための下準備をしてくる。後を頼むキュラソー。」

「わかったわ。」

「なんでこうなるのよー!!」

 

 

なぜかブルーが癇癪を起こしていたが私は私の仕事をするだけだ。着替え終わった私は一旦部屋を出て、ほかの参加者のいる楽屋へ向かった。

 

楽屋には様々な衣装に身を包んだマジシャンたちが自分の出番を待っていた。その中には金属製のアタッシュケースを持つ者が何人かいた。私の予想が正しければあのアタッシュケースの中身はターゲットへの裏金だ。

 

それにしても結構な人数参加するらしい。パッと見まわしただけでも20組以上いる。その中で4番目の私たちがいきなりターゲットであるオーナーを行方不明にしたら発覚が早まってしまう危険性があるな。何か考えねばならないだろう。

 

 

「おし、ちょっくら用を足してくるかな・・・。」

 

 

奥に1人でいた男が独り言をつぶやきながら席を立った。手にはアタッシュケースが握られており、おそらくトイレまでもっていくつもりなのだろう。私は不自然にならないように気を付けながら後をつけた。

 

彼がトイレに入ったのを見て私もそれに続く。幸いトイレの中には関係者以外立ち入り禁止の区域なのもあってか他に誰もいなかった。私は小便器の前の荷物棚にアタッシュケースを置いて用を足そうとしている彼を、後ろから羽交い絞めにして気絶させた。懐からケースのカギを拝借し、そのまま近くの掃除用具入れに放り込んでおく。アタッシュケースを回収してトイレを出た。

 

トイレから待機場所へ戻る道すがら、ほかの下準備も行っていく。まず人目につかない場所の消火栓に細工を施す。陽動装置を取り付け、遠隔操作で作動させられるようにした。脱出プランはこれでいいだろう。ついでに近くでアタッシュケースの中身も確認しておく。案の定、中は札束がぎっしりと詰まっていた。一通り終わらせた私は集合場所へと戻った。

 

 

「・・・なかなかいいわね。これ。」

「うぐぐ・・・。なんで私が・・・。」

「着替え終わったようだな。」

「あら、47。そのケースは?」

「裏金だ。ほかのマジシャンから借りてきた。」

「そう。で、どういうプランで行くのかしら?」

「最初は当り障りのないマジックをやっていく。クライマックスで脱出マジックを行い、その最中に遠隔で火災報知器を作動させる。」

「なるほど。その混乱に乗じて撤収というわけね。」

「消失マジックの箱に入れた後、一旦おとなしくさせる必要がある。キュラソー、頼めるか?」

「人を気絶させるのはお手の物よ。」

「よし、では準備をしよう。終わったら二人は先に楽屋へ行け。私はこいつを渡して協力を仰いでくるとしよう。」

 

 

上の劇場ではどうやら客が入り始めたようだ。私たちは水槽を落下予定地点に移動させ、中に苛性ソーダ水溶液を入れた。蓋を開け放し、糸を張って落ちた衝撃で閉まるように工夫しておく。準備が完了したので2人は楽屋へ向かった。私は客席後ろ上方の貴賓席へと向かった。部屋をノックし、中から返事があると私は中へ入った。

 

 

「おやおや、君は今回初参加の。どんな要件かな?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『アレが行政長官のノブ。この街を発展させた敏腕政治家。優秀な釘は打たれる運命にあるのよね。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「折り入ってご相談が。」

「ほほう、何かな?」

「今回のショーで人が消えるという奇術を行いたいのです。そのためにご協力を仰ぎたく。」

「ふむ・・・。しかしなあ、協力といっても・・・。」

「無論、タダでとは言いません。」ゴト

「ふうむ・・・考えておこう。」

「演目の最後に行う予定です。その際は。」

「・・・私もたまには市民の皆様と同じ目線でショーが見たいと思っていたところだ。」

「左様でございますか。」

「私は観客席の左上方にいる。・・・ああ、これは独り言だ。」

「そうですか。では私はこれにて失礼いたします。」

「ああ、期待しておるよ。」

 

バタン

「・・・ふん、卑しい奇術師め。こんなはした金で私を動かそうなどと。まあ蔑ろにするわけにもいかないのだがな。」

 

 

楽屋ではブルートキュラソーが周りの視線を釘付けにしていた。この分ならばステージ上でも十分注目を集められるだろう。スタッフと簡単な打ち合わせを行い、そしてついに我々の出番がやってきた。

####アプローチ完了####

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『さあ、いよいよショーの始まりよ。うまくショーに乗じてターゲットを暗殺するの。衆人環視の元暗殺するのはあなたでもなかなかないわよね。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ワーワー

「レディースアンドジェントルマン。今宵は私共のマジックを見に来てくださりありがとうございます。」

ワーーワーー

「まずは・・・ハッ!」

ボゥン

「二人の助手をご紹介しましょう!」

ジャジャーン?

ワーワー

 

「(なんかノリノリね47・・・。)」

「(仮面に隠れて表情は見えないけれど相当楽しんでるわよねアレ。)」

「彼女たちが私の助手のアクアとクォーツです!お見知りおきを。」

「「(私たちいつの間にそんな大層な名前になってたのかしら?)」」

「ではさっそく。初めにご覧にいれますのは・・・」

 

 

 

 

「ねえねえ。あの人たち。どっかで見たことない?」

「え?うーん・・・そういわれてみれば誰かに似ている気も・・・。」

「見間違えじゃありませんの?キリエはいろんな人にちょっかいかけてますから。」

「むー!ちょっかいかけてないよ!向こうからくるんだもん!」

「二人とも静かに。ショーが始まるぞ。」

「レオナだって見覚えあるでしょ?あの男の人とかさ!」

「え?うーん・・・思い出せないな。せめて顔が見えれば・・・。」

 

 

私は訓練で学んだ炎をまとうマジックや、水を操るマジック、トランプを宙にはばたかせるマジックなどを行った。時折助手の扱いであるブルーとキュラソーも見とれていたのは想定外であったが。何とか滞りなく最後の演目まで来た。客の反応も上々だ。客の中にコトブキの面々が観覧に訪れていたのを見つけたときは一瞬動揺したが、何とかバレずに済んでいる。

 

 

「さあさあ、皆々様。残念ですが次が最後の演目となってしまいました。最後は世紀の人体消失の奇跡を御覧に入れましょう。」

ワーワー

「では誰かひとり、実験台になってくださる方を・・・おや!おやおやおや!」

「(わざとらしい大げさな表現もうまいわねー47。)」

「行政長官のノブ様ではありませんか!どうでしょうノブ様、ご協力願えませんでしょうか!」

「ふむ・・・いいでしょう。私がやります。」

ワーワー

「ありがとうございます!これは私も一層気合を入れてかからねばなりませんね。」パチン

カラカラカラ

「ここに用意しましたのは何の変哲もないただの箱でございます。ノブ様、お手数ですがおかしいところがないか確認をお願いいたします」

「ふむ・・・何もない。穴もなければ正面以外に扉もない。何の変哲もない木の箱ですな。」

「ありがとうございます。ではノブ様。この中へお入りください。」チラッ

「(はいはい…)どうぞこちらへ~!」

「うむ。」

「では皆さま、今からこの箱のふたを閉め、布をかけます。私がワン、ツー、スリーといいますと、この中のノブ様が一瞬にして消失してしまうのであります!」

ワーワー

「では参りますよ。蓋を閉じてください。」

「わかりました。」ギィィィバタン

「そして先ほどの奇術でも使ったこの布を箱にかけます。」バサァ

「(今よ!)」

「(ええ。)」

 

 

キュラソーが後ろの布を整えるふりをして、隠し戸をあける。そして素早く静かにターゲットの首筋に手刀を食らわせた。

 

 

「うぐぅ!」ドサッ

「それでは参ります!ワン!ツー!・・・スリー!」

ガタンボゥン!

オオォォォォ!

 

 

ツーからスリーになる段階で箱の下側の隠し扉が開き、気絶したターゲットが下に落ちていく。すぐに扉がしまり、派手な音と煙とともに前方部の扉を開ける。もちろん中身は空っぽだ。客はみな一様に驚いている。前3組のマジックしか見ていなかったがテーブルカードマジックや言い当て系のものばかりであまり見栄えがしないものばかりだったのもあるのかもしれない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ターゲットのノブは予定通り水酸化ナトリウムの中へ入ったわ。すぐに気が付いて脱出を試みたようだけれど、蓋が閉まっていて出られずそのまま。任務完了よ。脱出して頂戴。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

ターゲットはどこへ消えたのか、客へもったいぶるようにふるまいつつ、私はポケットの中の携帯を操作し火災報知機を作動させた。

 

 

ジリリリリリ!!!!

ザワザワザワ

「場内の皆様!火災報知器が作動しました!確認がとれるまで係員の指示に従って避難をお願いいたします!」

 

「よし、会場は混乱している。舞台裏に下がるぞ。」

「OK。」

「了解。」

 

 

私たちはそそくさと舞台袖へ退避し、スタッフが行う避難誘導に従って外へ出た。避難のためにホール正面の広場に集まっている。人ごみに紛れて我々だけ近くの路地に入った。そのまま脱出しようとしたが突如ブルーが叫んだ。

 

 

「あーっ!!」

「びっくりした。どうしたのよ。」

「何があった。」

「私たちまだ着替えてないじゃない!」

「そういえばまだバニーガールのままだったわね。」

「それがどうした?」

「何言ってんのよ!こんな格好で外出歩けるわけないじゃない!!」

「今まさに出歩いているんだが?」

「そういうことじゃないわよ!!とにかくホールに戻るわよ!」

「ちょ、ちょっとブルー。何も戻らなくても・・・。」

「パット見近くに洋服屋はないし、戻って元の服に着替えなおすのが一番手っ取り早いでしょ!ほら、行くわよ!」

「しかし、服ならばそのあたりで調達すれば・・・。」

「い・く・わ・よ・!」

「・・・47、ここは素直に従ったほうがいいみたいよ。」

「・・・のようだな。」

 

 

急遽ホールに戻ることになった。恰好が恰好なだけあって人目に付くのはまずい。慎重に路地を通り抜けつつ、ホール側面の塀まで戻ってきた。

 

 

「出てきて!ぷりり!」プリー

「手際がいつもよりいいわね。」

「いつもそのくらい手際が良ければ良いのだが。」

 

 

手早く全員がブルーのプクリンに乗り、塀を乗り越える。そのまま近くの窓から侵入し、ターゲットが死んでいた隠し部屋へ向かった。隠し部屋にはまだ誰も来ていないようだが、既に火災報知器は鳴りやんでいるためここにも人が来る可能性が高い。

 

 

「ブルー、早くしろ。」

「わかってる!えっと、どこへ置いたっけ・・・。」

「こっちよ。早く。」

「わかってるってば!・・・って47!あっち向いてて!」

「なぜだ?」

「47・・・さすがにそれはどうかと思うわよ。女性への対応は訓練に入ってなかったのかしら?」

「ああ。そういうことか。わかった。」

 

 

私は後ろ、つまりは入ってきた扉のほうを見張ることにした。が、振り向いたと同時に扉があいた。

 

 

ガチャ

「こんなとこに部屋あったよ!」

「ちょっとチカ!そんな勝手に入っていったら・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「えっと、どちら様?」

「・・・ここは立ち入り禁止のはず。あなた方は何者ですの!」

「あれ?さっきの奇術師さんたちじゃ?」

「・・・いわれてみれば!ノブ長官がいなくなった時の奇術師!」

 

「戦闘体制に移行したほうがよさそうね。」

「ちょ、ちょっとま…まだ着替えてない・・・。」

「その暇は無いようだぞ。」

 

「あっ!思い出しましたわよ!あなた方!あの時の!」

「私も思い出した!アイシーエーとかいう暗殺屋!」

「アクアさんってやっぱりブルーさんだったのか!」

「ということは・・・ノブさんも!」

「・・・。」

「とりあえず、お話を聞きたいですから。私共と来てくださいますこと?」

「断ると言ったら?」

「そりゃもちろん・・・。」

「実力行使ですわ!」

 

ヒュッ

バシンバシン

ガッガッ

 

 

案の定近接戦闘に発展した。チカの繰り出したキックを軽く受け流し後ろに下がる。既にブルーたちは着替えが完了していた。私は急いで指示を飛ばす。

 

 

「やむを得ない。ブルー、あいつらの足元を攻撃させて目くらましを。キュラソーは私と共同で気絶させるぞ。」

「了解。」

「まあそうなるわよね・・・。出てきて!ニドちゃん!」

ガーッ!

「な、なに!?あれ!?」

「あんな生き物見たことありませんわ!」

「ニドちゃん!メガトンパンチ!」

ガァァ!ドゴォォォン!

「きゃあ!」

「うわあ!」

 

 

ブルーのニドクインが3人に素早く近寄ると足元に向かってメガトンパンチを炸裂させた。激しい土煙が巻き上がる。その隙に私が右側から、キュラソーが左側から素早く近寄り、チカとキリエの鳩尾に拳を食らわせる。二人は軽いうめき声とともに崩れ落ちた。残るエンマも2人が倒れたことに気が付いた時にはすでに私が後ろに回り込み、首筋に手刀を食らわせられていた。

 

前回の任務では協力者にもなりえるということでコトブキ飛行隊の面々には記憶処理は行わなかった経緯がある。今回のことから見てもやはり記憶処理が必要だろう。そのあたりは本部に意見を具申しておくとして、私たちは3人をその場に残し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~1時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「チカ!チカ!」

「ううーん・・・。あれ?ここは?」

「アタザキの診療所だ。いったいホールで何があったんだ?私が商会支部に戻っている間に何があった?」

「レオナ・・・。えーっと・・・そうだ!キリエとエンマは?」

「ああ、あの二人ならそっちで寝ている。まだ目は覚まさないが、じきに目を覚ますとのことだ。」

「そっか。」

「それで、あのホールで何があった。ノブ長官も行方不明だし。」

「あ!そうそう!アイシーエーが出たんだよ!」

「ICAが?・・・そうか!あいつらがノブ長官を!」

「たぶん。でも長官がどこへいったのかはわかんない・・・。」

「死体も今のところ発見されていない。だがICAが絡んでるならもっとくまなく探させたほうがいいな・・・。」

「ううーん・・・。」

「あ、キリエ。」

「あれー・・・、ここは・・・。」

「うむむむ・・・首が痛いですわ・・・。」

「エンマも。二人とも起きたか。ここはアタザキの診療所だ。お前たち三人はホールの下の部屋で倒れてたんだ。」

「くっ・・・わたくしがもっとしっかりしていれば・・・。」

「そういえばあいつら見たことない生き物を従えてたね。」

「ああ、あのでかい怪獣でしょ?あんなの図鑑でもみたことないよ。」

「なんだ?それは。」

「なんかすっごいでかい怪獣を従えてたんだよ。そいつの攻撃で混乱させられて、気が付いたらここってわけ。」

「そうか・・・。それについても調査しないといけなさそうだな。」

ガチャ

「皆さん、起きられたのですね。念のためこの薬を飲んでいただきますよ。」

「ああ、じゃあ私は商会に戻るよ。じゃあ。」

「うん、またあとでね。」

バタン

「はい、お薬です。飲んだら安静にしていてくださいね。」

「「「はーい。」」」

 

 

「こちらフォーチュン3。キリエ、チカ、エンマの三名は睡眠薬で眠りました。これより記憶処理を開始します。」

 

 

 

 

 

~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・「過激なマジシャン」

 【+1000】『タキシード・バニーガールに変装する。』

 

・「裏の方策」

 【+3000】『ターゲットに裏金を渡す。』

 

・「ノーストップショー」

 【+5000】『ホールの舞台でマジックショーを行う。』

 

・「空でも陸でも」

 【+3000】『コトブキ飛行隊のメンバーと戦闘する。』




遅くなりました。PC不調のほかにも、PCを買いに行った秋葉原で風邪をもらって調子が絶不調だったのもあります。あと、なかなかうまい具合に文が浮かんでこなかったのもあります。(あとサンマ漁を・・・word)


次回は新しいところに行く予定です。
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