HITMAN2『世界線を超えた先に』   作:ふもふも早苗

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『よくやったわ。47。』

『無事にシルバーとキュラソーと合流できたみたいね。でも大変なのはここからよ。梅川区のマンションに向かってもらうことになるのだけれど、そこもいつ冠水するかわからないからできる限り急いで頂戴。』

『それから・・・あっ!ちょっと!』



『シルバー!無事なの!?・・・ああ、47。そうねごめんなさい。姉である私が取り乱しちゃってどうするのって話よね・・・。わかってるでも声だけでも聞かせてほしいのよ・・・。・・・あっ。』



『キャロライン、彼女をしばらく押さえておいて頂戴。ごめんなさいね47。ブルーは今シルバーが被災したって聞いて軽い錯乱状態になってるのよ。だから大目に見て頂戴。』

『話を戻すわ。今技術部が航空機が飛べない理由を調べてる最中。どうやら現地に敵対勢力の反応も情報もないわ。つまりほぼ完全に事故。主要人物の近くに居ればいるほど事故が起こる可能性が強くなるみたい。これは世界の理に関する事象だから私達ではどうしようもないわ。』

『でも先導役の無人ヘリくらいは出させて頂戴。あなた達が今向かってる柿沼サービスエリアに向かわせるわ。そこでヘリと合流して。柿沼サービスエリアにはまだ色々避難用の食料や道具が残ってるらしいわ。それに、航空機が墜落する原因も確認しておきたいしね。』

『準備は一任するわ。』





~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】・【エージェント67-2】・【エージェント68】
・装備
【バール、ワイヤーロープ】・【ポケモン6匹】・【クルーガーマイヤー2-2、ロックピック】
・服装
【愛用スーツ】・【愛用ジャケット、雨合羽】・【愛用レディースリクルートスーツ、雨合羽】




HITMAN2『エスケープ・レポート』

####ニュース速報####

 

『富坂市中央部を流れる羽代川が新たに2箇所で決壊が確認されました。海岸線付近でも堤防が決壊し、海水の流入が始まっている地域もあります。港ジオセクションは浸水が進んでおり、既に水没したと未確認情報も入ってきています。これらを受け富坂市は市内全域に大雨特別警報を発令しました。市内に在住している方、市内に残っている方は直ちに避難を開始してください。市内にいる方は全員、命を守る行動をとってください。避難が困難な場合は、できる限り高いところへ上がり、救助を待ってください。』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

現在時刻は午後7時。道路はかろうじて無事だが、街灯が停電によって全くついていない。車のライトだけが頼りだが、これだけで走るのはあまりに危険すぎる。私は先程富坂西インターでキュラソーに渡したタキオン通信機をつなげた。

 

 

「キュラソー、聞こえるか。」

「聞こえているわ。」

「あたりが暗くなり道路状況がわからなくなっている。もうすぐ柿沼サービスエリアだ。そこで夜明けまで待つのがいいと思うのだが。」

「いい考えね。こっちの車はちょっと無茶したせいでさっきから変な音がするのよ。一旦降りて見てみないと。」

「では柿沼サービスエリアに寄るぞ。」

「了解。」

 

私達は速度を落とし、真っ暗闇の柿沼サービスエリアの中へ入っていった。

 

サービスエリア内には車の姿はなく、施設内も無人のようだ。私は施設の入口の目の前の駐車スペースに車を停める。そのすぐ横にキュラソーの車も停まった。見ると既にシルバーは起きていたようだ。

 

 

「シルバー、気分はどうだ。」

「47・・・。来てくれたんだね。」

「今日はここで一夜を明かす。お前の姉さんが心配しすぎて錯乱を起こしてるから早いところ無線をかけてやれ。」

「ええ!?錯乱って・・・全く姉さんは心配性なんだから・・・。」

「まあそういうな。・・・で、キュラソーの方はどうだ?」

「うーん、なんとも言えないわね。というか懐中電灯だけじゃよくわからないわ。」

「朝を待つほかないか・・・。とにかく一旦中へ入ろう。」

「でも入り口はシャッター閉まってるけれど?」

「このシャッターはクランクハンドル式か・・・。仕方ない。窓から入るぞ。」

 

 

私は近くの窓を調べる。すべてはめ殺しの窓だったので、窓から見えるラウンジから一番遠いガラスをバールで割って内部に侵入した。ここも正直いつ崩壊するかわからない。窓の1枚や2枚どうってことはないだろう。

 

内部は意外に暖かかった。外から見えたラウンジのような場所はどうやらフードコートだったようだ。奥にキッチンがある。私はキッチンのガスコンロをつけてみる。・・・火がつかない。どうやら電池が切れているのかそれとも壊れているのか、スパークが出ないようだ。だが、音を聞く限りガス自体は出ているようだ。

 

 

「キュラソー、クルーガーマイヤーを持っていたな?そいつでガスコンロをつけてくれ。」

「ええ?どうやって。」

「つまみを回せばガスが出る。出始めたらその付近で火花さえアレばいい。」

「んー・・・まあやってみるわ。」

「キッチンごと吹き飛ばすなよ?」

「保証はできないわね。」

 

カチッ シュー

バキュン!

ボッ!

 

「うまく行ったな。」

「一歩間違えれば大爆発案件だと思うのだけれど。」

 

 

火さえアレばどうにかなる。早速体が冷えていたキュラソーとシルバーはその近くで暖を取り始めた。私達は倉庫にあった食料をその火で調理して暖を取り、朝を待った。

 

 

 

 

 

~災害2日目~

 

 

 

 

カチャカチャカチャ

「どうだ。キュラソー。」

「んー・・・これね。」

カチャ ガキンッ!

「よし、これでまあしばらくは持つわ。あとは・・・。」

 

「大丈夫だって姉さん。どこも怪我していないし・・・低体温?ああ、サービスエリアの中で火に当たりながらスープ飲んだら治ったよ。心配しないで。・・・ごめんってば!」

 

「アレはどうしたのよ?」

「昨日寝る前に通信を入れておけと言っておいたのだが、どうやらシルバーは忘れていたらしい。」

「なにやってるのよ・・・。」

 

 

朝になり、依然として雨は降り続いているが少なくとも暗闇ではなくなった。視界が確保できる段階までくると、キュラソーは早速車の修理を行った。異音の正体は落下した衝撃で一部の部品が外れ、他の部品にあたっていたために起こったものだった。正面のバンパーは完全にへしゃげており、今にも地面に擦りそうになっていたが、サービスエリアの倉庫にあったガムテープで補強した。

 

車の修理が終わる頃合いでシルバーが心配性すぎる姉のお小言から戻ってきた。

 

 

「ふう、帰ったら姉さんにちゃんと謝らないと・・・。」

「ふふ、いい姉弟ね。」

「キュラソー・・・さんにはそういう人居ないのか・・・ですか?」

「敬語はやめてっていったでしょ。普通に話してくれていいわよ。」

「うーん、なんか昨日から調子が狂うなあ・・・。」

 

 

しかし、そんな束の間の休息は唐突に終わりを告げることになる。

 

 

グラグラグラ

「また地震?」

「・・・むっ!」

 

 

ピキピキピキ…

「道路に地割れが発生している。崩れる可能性があるな。急いで先へ進むぞ。」

「なんだって!?」

「・・・本当。シルバー!乗って!」

「行くぞ!」

 

 

私は自分が乗ってきた赤のアウディRS5に。シルバーとキュラソーは現地で拝借したという白のシビックタイプRに乗り込んだ。

急発進し、駐車場を白線を無視して突っ切る。後ろをキュラソー達がついてきているが、そのさらに後ろでは今まで居たサービスエリアが轟音を立てて沈んでいくのが見えた。サービスエリアの入口付近では既に陥没が始まっており、そのほぼ真上にあった鉄道の高架橋も一緒になって崩れ落ち始めている。私達がサービスエリアを出た瞬間、凄まじい轟音とともにサービスエリアの背後にあった山が崩れ、建物を完全に飲み込んだ。私達はまたもや間一髪難を逃れたことになる。

 

そのまま羽代川を渡り、看板が倒れてしまっていて名前はわからないが、ジャンクションを右折する。すると先ほど渡った羽代川のすぐ横を通って南へ向かうルートに出た。このまま梅川区まで行くことにしよう。

 

 

『47。聞こえるかしら?』

「聞こえている。」

『今無人ヘリがそちらを補足したわ。すぐに上空に現れる。どうやら高空を飛ぶより低空を飛んだほうが墜落しづらいみたいだから低空侵入になるわよ。』

「了解した。先導役か?」

『そういうこと。この先道が寸断されてたりするからその情報をもとにね。』

「心強いな。」

 

その通信の直後に東方面の空から低空侵入してくる中型ヘリコプターが現れた。こちらに発光信号をよこすと、そのまま私の車の前を先導するように飛びだした。しばらくその先導に従って、川沿いを南下しているとまずい状況に出くわしてしまった。

 

 

パッパー!パパー!ビービービー!

「うーん。動かないわね・・・。」

「バーンウッド。渋滞はその情報に入っては居なかったのか?」

『・・・ごめんなさいね。渋滞情報は入ってなかったみたい。』

「いつまでもここにいるわけには行かない。別の経路を探索してくれないか。」

「いっそ戻るってのも手かもよ?」

『いいえ。戻ることはできないわ。あなた達が通った後にいくつかの地点で高架橋が崩落したわ。もう後戻りはできない。』

「え、それって・・・。」

「えーっと・・・。」

「・・・私の記憶が正しければ、ジャンクションからここまでほとんど一本道だった気がするのだが。」

「いくつかインターチェンジはあったけれど、寸断されてるか先が冠水してるかのどちらかよ。」

『・・・。みんなトイレは大丈夫よね?』

「・・・打つ手なし。か・・・。」

 

諦めて渋滞が動くのを待つしかなさそうだ。幸いにしてこのあたりの地盤はそれほどダメージを受けていないようで、ヒザ下程度まで浸水こそしているもの陥没したりといったことはまだ起きていないようだ。隣の車線に止まっているキュラソーの車のなかでキョロキョロしていたシルバーがふと口を開いた。

 

「あれ?キュラソー、なんで左の車線には車が1台もいないんだ?」

「え?ああ。そっちはもうすぐジャンクションの分岐なのよ。韮沢ジオセクションに向かう道みたいね。」

「ああ、なるほど。じゃあ無理かあ・・・。」

 

 

私は車に備え付けのタブレットで周辺の地図を確認する。確かにあの道は韮沢ジオセクションにつながっている。平時では川の反対へ電車の高架橋をオーバーパスしながら市街地へ入っていくようだが・・・。今はおそらくその市街地はすべて水に浸かってしまっているだろうな。

 

 

カーナビに表示されている時刻は既に午後1時を回っている。渋滞に捕まってから既に2時間以上が経過しようとしているが、進んだのは車6台分くらいでしかない。いよいよ何か打開策を考えなければならないな・・・。

 

 

ゴゴゴゴ

「ん?何この音。」

「・・・あっ!後ろ!」

「むっ!」

 

ドドドドド

 

 

川の上流から凄まじい濁流が流れてくる。上流にあった鋼鉄製の橋脚がいとも簡単に流されるのが遠目で見えた。波の高さは地上より少し高いだけのこの高速道路より上のように感じる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『47!緊急事態よ!羽代川上流にある奥富ダムが決壊したわ!とんでもない濁流がそっちに向かっているわよ!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

このままでは濁流に飲まれてしまう。私は最終手段として取っておいたプランを実行に移した。

 

 

「キュラソー!私について来い!」

「え!?ど、どこへ行くつもりなのよ!」

「いいから来るんだ!」

 

私はアクセルを踏み、一旦バックすると、一番左の車線、韮沢ジオセクションに通じる分岐へと入った。

 

 

「ちょ、ちょっと!そっちは冠水してるわよ!」

 

 

キュラソーがなにか叫んでいたが、他に手がないため半ばやけくそのような感じで私の後ろについてくる。私はそのまま川を渡ると、ある地点でハンドルを左に切った。高架橋の外壁を速度に任せてぶち破ると、その先の鉄道の高架橋に強引に降り立った。凄まじい音がした気がするが、まだエンジンは生きており、ライトが使えなくなった以外は特に問題はない。一拍遅れてキュラソーの車も線路へ降りてきた。

 

 

「急げ!濁流の流れが思ったより早い!」

『ヘリで先導するわ!5キロ先に左に向かえる橋がある!そこまでいければ!』

「行くぞ!」

「了解!」

「またこうなるのかあ!!」

 

 

あの濁流、かなり流れが早い。時速にして150は出ているぞ。こちらもアクセルを吹かす。

 

 

「47!左!」

「ああ!高速道路が!」

「!!」

 

 

先程まで居た高速道路が濁流によって押し流されている。渋滞で止まっていた乗用車やトラックから逃げ出す人々や、車で強引に進もうとしている車など、全てを濁流に飲み込んでいっている図がサイドミラー越しに見えた。濁流の中で衝突した乗用車が爆発し時折波の中から爆炎が上がる。まさに地獄絵図だ。

 

 

グラグラグラ

 

「地震!?こんなときに!」

『急いで!あと2キロ!』

「キュラソー!右に注意しろ!」

「!!」

 

 

地震なのかももはや疑わしい揺れによって右側のビル群が一斉に傾き出した。

 

 

ギギギギガラガラガラ!

 

 

そのうちの一棟が真ん中から折れた。私はアクセルを全開にして崩れ行くビルの間を通り抜けた。

 

 

「シルバー!掴まってなさい!」

「もういやだああ!!」

 

 

後ろを走っていたキュラソーの車に至っては倒れ込んだビルのまだ原型を保っていた窓ガラスに飛び込んだ。そのまま斜めになって崩れている最中のオフィス内をかなり強引に通り抜け反対側の窓ガラスから飛び出してきた。向こうもかなり危機一髪だ。

 

 

ドカァァァン!

『ああ!ヘリが!』

 

 

前方を飛んでいたはずのヘリは、こちらが急加速したためいつの間にか追い抜かしていたようだ。ヘリは倒れてきたビルに対応できずに壁面に激突、爆発炎上した。なるほど。航空機はまともに飛べる世界ではないということか。

 

前に視線を移すと、丁度カーブになっている先から電車がやってきた。まだ動いていたのが驚きだ。この街の電車は完全自動制御だと聞いているのでもしかしたら何らかの誤作動で勝手に動いているのかもしれない。だがその電車はこちらには来なかった。なぜなら線路が陥没で寸断され、電車はカーブの先の外壁に突っ込んでいったからだ。そのまま電車は川を速度に任せて飛び越えると反対側の高速道路に直撃した。直撃した箇所が飛び移る予定の橋のすぐ近くだったので、私は意を決して衝突でできた外壁の割れ目からその電車の屋根に飛び移った。一瞬だけ車両の屋根に乗るとすぐまた飛び出し、なんとか左折予定の橋の上に降り立てた。

 

ギュギュギュギュキキーッ!

ドゴォォォン

「ぐっ・・・。無茶苦茶ねもう。」

「生きてる!生きてるよ!」

「安心するのはまだ早いぞ!」

 

 

そのまま橋を渡ろうとしたとき、シルバーが叫んだ。

 

 

「左!濁流の上!」

「嘘でしょ!?」

「クソッ!」

 

 

直ぐ側まで迫ってきていた濁流は、高速道路の様々な車両や建物を押し流しながらこちらへ向かってきていた。その濁流の波に乗って巨大な丸い車体がこちらに一直線に降り注ごうとしているのが見えた。あれはタンクローリーだ!

 

私達はアクセル全開で橋を急いで渡った。キュラソーの車が渡りきった直後、橋の欄干にタンクローリーが直撃し、今までの爆発とは比べ物にならないくらいの爆炎が上がった。その爆風に押し出されるようにして若干車の後部が浮き上がる。だがその爆炎のおかげか、濁流がこちらに来るのが若干遅れた。その隙を逃さず私達は東に向かって走った。

 

濁流との追いかけっ子は我々が周囲より高くなっている台地へ登ったことによって終わりを告げた。一旦車を止めて状況を確認する。キュラソーの車はなんとか付いてきていたが、タンクローリーの爆炎をもろに食らった影響か後部の窓ガラスは完全に割れ、エンジンルームからは白煙が上がっている。私の車はICAが用意した特別仕様のため、このような極限状況でも対応できるように頑丈に作られているが、キュラソーが乗ってきた車両は現地徴用の一般車だ。本来このような状況に耐えられるように作られてはいない。

 

 

「無事か?」

「ええ・・・、なんで無事なのか全くわからないけれど。」

「フー・・・フー・・・」

「シルバー?」

「待って今呼吸を整えてるから・・・。」

「ゆっくりでいい。」

 

 

シルバーが呼吸を整えている間に車に戻って現状を確認しておく。カーナビによると今いるのは一応梅川区らしい。住宅街ではあるが人気はなく、全員避難済みの地域らしい。

 

 

『47。聞こえるかしら?無事?』

「ああ。なんとか。」

『よかった。梅川区に到達したのね。でも悪い知らせよ。』

「・・・今度はなんだ。」

『回収予定の梅川区のマンションなのだけれど、先程その周囲でも陥没が発生したみたい。渡界機端末の通信が途絶したわ。ほかも陥没が激しくて近くに移転できなかったの。だから別の場所に門を移動させたわ。今は中央区のメディアタワーの根元にある富坂駅の屋上に出しているわ。』

「中央区だと?では通り過ぎたということか。」

『そうなっちゃうわね・・・。』

「駅の上に出して大丈夫なのか?」

『既に富坂駅周辺の避難はほぼ完了している。電車も来ない駅に用のある人間は居ないわ。』

「わかった。なんとかそっちへ向かってみよう。」

『頑張って頂戴。この街、最新の予測では全域が完全に水没してもおかしくないわ。』

 

 

街が完全に水の底へ沈む。おとぎ話の世界くらいでしかないような出来事がここで起ころうとしているわけか。まあこの世界自体我々からすればおとぎ話の一種なわけだが。

 

ともかく急いで中央区へ移動する手段を探さねばならない。探索用の無人ヘリはビルに激突して粉微塵になってしまったことだし。私はそろそろ落ち着いた頃だろうキュラソーたちのもとへ戻った。キュラソーはボンネットを開けて車を修理している。シルバーはもう色々諦めたような顔をして助手席で呆けている。

 

 

「諦めるのは早いぞシルバー。」

「うわ!・・・もう脅かさないでよ47。大丈夫まだ生きるのを諦めたわけじゃないよ。」

「では何を考えていた?」

「何も。ただ単に映画の中の世界みたいだなって。一周回って現実味がなくなってきたよ。」

「現実感を無くしすぎるのは問題だが、その考えは精神安定のための防衛措置の一つだ。仕方あるまい。」

「ははは・・・。まあそれに僕が運転してるわけじゃないからね。」

 

「駄目ね。完全にエンジンがやられちゃってる。後数キロも走れば間違いなくエンストよ。」

「では移動には使えそうにないな。私の車に移れ。」

「そうする他ないわね。行くわよシルバー。」

「わかったよ。」

 

 

二人は乗ってきたシビックを捨て、私の車に移動した。移動してきた車内で今後の予定について説明する。1,中央区へ向かう方法を見つける。2,中央区の富坂駅へ向かう。3,富坂駅屋上にある渡界機で脱出する。単純ではあるがこれが予定だ。最も最初の1つ目で躓きかけてるわけだが。特に川の向こう側に行く手段があるかどうか不明瞭だ。濁流の影響がどこまで続いているのか・・・。

 

 

『47。聞こえるかしら?』

「聞こえている。」

『たった今、技術部がその世界での航空機の飛行方法についての安全策を導き出したわ。これで飛べる。』

「ということは、ここで待っていればよいのか?」

『ヘリで回収するのを検討したけれど、富坂駅自体がもうヘリを着陸させられるほど強度がないの。周辺に着陸できそうな場所もないからやはりここまで来て貰う必要があるわ。』

「経路探索は無理なのか?」

『それに関しては今小型のドローンで検索している。とりあえず蓮野区の一部の橋がまだ生きているから、そこへ向かうのをおすすめするわ。でも一旦休憩するのもいいと思うわよ。』

「わかった。」

 

 

流石に2人共表情に疲れが見えている。私は近くの住宅の鍵をこじ開けた。ひとまずここならば雨風はしのげるだろう。私達は住宅の中にあったカセットコンロで暖を取りつつ、ひとまずここで一夜を明かすことにした。

 

 

 

 

 

~災害3日目~

 

 

 

 

 

朝になり、外の雨は雪に変わっていた。私達は再び車を走らせ、カーナビに表示された橋を目指して北へ向かった。ドローンからもたらされる情報を頼りに、陥没している道や崩れかけている道をさけて進んでいく。

 

表示されていた橋は鉄道の高架橋だった。すぐ近くに高台があり、そこから水平に伸びて橋がかかっているため、先程の濁流には巻き込まれずに済んだようだ。私は高台の上の駅から線路内に侵入。そのまま線路を伝って中央区へ入った。この線路はそのまま富坂駅まで通じているはずだ。このままスムーズに駅までたどり着ければよかったのだが・・・。案の定線路は途中で寸断されていた。

 

鉄道の高架は中央ジオセクションに入ったところで途切れていた。中央ジオセクションは既に冠水状態で、地面は一面水に覆われていた。しかし、濁流の影響などをあまり受けていないためか波は穏やかで、ビルが冠水した市内に整然と立ち並んでいるのが見える。途切れているすぐ近くのビルの上に乗り移りさえできれば、後はビル伝いになんとか富坂駅までいけそうだった。

 

 

「さてどうするか・・・。」

「勢いつけて加速つけたらあそこのビルまで飛べないかな?」

「無理ね。ビルまでは軽く見積もっても60mは離れてる。高さはざっと20mってとこかしら。」

「このまま飛ぶとすると車を100km/h以上に加速させなければならないだろうな。線路上の凹凸が邪魔でそこまでの速度は出せないだろう。」

「そうか・・・。うーん・・・。」

「本部に応援は要請できないの?」

「実は先程から呼びかけているのだが、応答がない。」

「どういうこと?」

「通信がオフラインになっている。こちら側の問題なのか向こうの問題なのかはわからない。」

「・・・いよいよ切羽詰まってきたわね。」

 

 

実際のところ、かなり無理をすれば100km/hに近い速度は出せると思う。だがおそらくビルの手前で失速してビルの壁面に激突するのがオチだ。何か策を講じる必要がある。他の道を探すことも考え始めたとき、シルバーが案を出した。

 

 

「・・・じゃあ、ジャンプ台みたいなのがアレばどうかな?」

「ジャンプ台?」

「・・・確かにジャンプ台のようなものがアレば100km/hに到達していなかったとしても距離が稼げるが・・・。」

「一体どこにあるのよ100km/hで突っ込んでも壊れないジャンプ台。」

「あるじゃない。ここに。」

 

 

シルバーが指し示したのは線路の防音壁だった。そうか、確かにこれはコンクリートの塊だ。真正面からぶち当たれば破壊されてしまう可能性があるがジャンプ台には使えるはずだ。

 

 

「なるほど、こいつか。」

「でもどうやってジャンプ台にするの?」

「キュラソー、シルバーの得意分野くらい覚えておいてやれ。」

「得意分野・・・あっ。」

「そういうこと。でてこい!オーダイル!ドサイドン!」

グワー!

「2人共、両側の壁を抜き取ってジャンプ台を作るんだ!」

 

 

2体の大型のポケモンにかかれば大きなコンクリート板など発泡スチロールのようなものだ。2枚を重ね合わせ土台にし、もう2枚でスロープを作った。ついでにと言わんばかりにスロープより手前の線路にも周辺の防音壁を敷き、車からスロープまでのジャンプ台ができた。多少凹凸があるが、線路の上を直接走るよりは遥かにマシだ。

 

 

「大したものね。簡易の道ができたわね。」

「ふふん。」

「よし、では車に乗るぞ。覚悟を決めろ。」

「ああ、そういえば飛ぶんだったわね・・・。」

「もう慣れてきてるのが怖いよ。」

 

 

私達は車に乗り込み、準備を整える。私は後部座席に座った二人の準備ができたことを確認し、アクセルを踏んだ。車は急加速しき、ジャンプ台に到達した頃には120km/hまで加速できていた。そのままビルに向かって盛大にジャンプする。重量バランスを3人の体重移動で無理やり調節しつつ、ビルの屋上に・・・。

 

 

「む!まずい!ビルを飛び越える!脱出するぞ!」

「え!?」

カチャ

「シルバー!行くわよ!」ガシッ

 

バッ!

ブゥゥゥン・・・ドゴォォォン!

 

 

私はシートベルトを素早く外し、運転席のドアを開けてビルに飛び移った。転げ回ることになったがうまく受け身が取れたので怪我も擦り傷程度で済んだ。キュラソーは自分とシルバーのベルトを外し、右側のドアからシルバーを抱えて飛び出した。驚くべきことにキュラソーはシルバーを抱えたまま見事に足だけで着地してみせた。さすがの身体能力だ。車はそのままビルの向こう側へと飛んでいき、隣のビルの壁面に激突して爆散した。

 

 

「間一髪だったわね。」

「今回の任務で何回“間一髪”があっただろう・・・。」

「考えないほうがいいわ。」

「無事か?」

「ええこっちは大丈夫よ。」

「こっちもOK。」

「一応予定通りのビルの上に飛び移ることはできたな。行くぞ。」

「少しは休み・・・そうか、休むとこは今爆散したっけか。」

「そういうことだ。もたもたしていると凍死するぞ。」

 

 

私達は車が激突したのとは別の方向のビルへよじ登った。時にジャンプで飛び越え、ジャンプが届かなそうな場所へ行くために近くの看板をポケモンたちに倒してもらったり、落下しかけたシルバーをキュラソーが助けたりしながらやっとの思いで富坂駅の隣のビルまでやってきた。その時、1機のヘリコプターがこちらに向かってくるのが見えた。他にも避難しそこねた民間人がいるのだろうか。

 

富坂駅まではジャンプで届くかどうかの距離がある。近くに倒せそうな看板はない。自力であそこまで行かなければならないようだな。

 

 

「飛び移るぞ。縁に手がかかればいい。」

「シルバー、行ける?」

「行くしかないさ。ここまで来たら。」

「3カウントで行くぞ。3,2、1、GO!」

 

 

一斉に助走をつけて飛んだはいいものの、私とキュラソーは片手を駅の縁にかけることができたが、シルバーは後数センチ届かなかった。

 

 

「あっ・・・。」

「シルバー!」

 

 

私は落下しかけるシルバーの手をなんとか掴んだ。今回何度目かわからない間一髪だ。しかしその時、これ以上ないタイミングで揺れが襲った。揺れるだけならまだマシだった。周囲のビルの間、ジオセクションの外周壁の上から水が大量に流れ込んできた。あまりに大量の水は周囲の高層ビルまでも押し流そうとしている。

 

 

 

「47!右!」

「くっ!」

 

 

右側に立っていた別のビルが地盤沈下でこちらに向かって傾いてきた。このままでは私もシルバーもビルの倒壊に巻き込まれてしまう。私はなんとかシルバーを駅の上に引っ張り上げようとしたが、長らく真冬の雪降りしきる屋外にいたため体がうまく動かない。ビルはもうすぐそばまで来ていた。万事休すかと思われたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ニドちゃん!はかいこうせん!」グガー!

 

 

ドガァァァン!

 

 

“レビテーション”

 

 

 

突如として駅舎の上から放たれた光線が倒れてくるビルに直撃。ビルは中腹辺りからへし折れ、そのままこちらへ倒れることなく自壊した。それと同時に私とシルバーとキュラソーの3人の体がふわりと宙に浮いた。そのまま駅舎の上に運ばれ、ゆっくりと着地した。

 

 

「なんとか間に合ったみたいね!」

「姉さん!来てくれたんだね!」

「間一髪。」

「それはもう何度もやったわ。タバサ。」

「グッドタイミングだな。助かった。」

 

 

ブルーとタバサがそこにいた。後に聞いた話では、この世界のあまりの崩壊っぷりにICA本部も相当慌てていたらしく、この二人にも緊急で招集をかけたらしい。なんにせよ九死に一生を得た気分だ。

 

 

「シルバー・・・無事で良かったわ・・・。」

「きっと来てくれると信じてたよ姉さん!」

「感動の再開は後。ここは危険。」

「のようだ。駅舎が崩れ始めている。」

「そ、そうね!とりあえず帰るわよ!」

 

 

我々は急いで駅舎の屋上に仮設されたテントの下にあった渡界機でこの世界から離脱した。離脱直後、駅舎は崩壊し、周囲の高層ビルも濁流に飲まれて沈んでいく。その15分ほど後、最後まで残っていたメディアタワーが倒壊し、富坂市はその全てが水底に沈んでいった。すべてが沈むのを見届けたかのようにその直後、雪が止み太陽が雲の切れ間から顔を出した。

 

 

 

 

 

 

 

~~2日後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ふーん・・・なるほどなるほど・・・。」

『キャロライン。それは?』

「ああ、バーンウッドさん。この前の作戦でシルバーくんが決死の覚悟で持って帰ってきてくれた“ジオフロンティア計画”の設計図ですよ。」

『ああ。あの都市の構造に関する情報ね。でもあの都市は結局欠陥だらけだったじゃない。』

「そうです。私、こうみえてスタンフォードで建築工学の勉強をしてたんですよ。だからちょっと興味があって、技術部の人に借りたんです。」

『ふーん・・・で?なにかわかったのかしら?』

「ここの防災設備は通常の大雨。私達の世界の記録に残っているような大雨ならば十分耐えられる設計をしていることがわかりました。意外にも防災設備や各種予備施設が充実してるんですよ。」

『ではなぜあの街はあんなことに?』

「1日の総雨量が通常の1ヶ月分にもなる大雨を1週間以上連続で喰らえば、流石にこの完璧なシステムでも許容範囲を超えてしまったようですね。現に7日目までは水没はおろか河川の氾濫すらなかったわけですから。総雨量を見ると、あの水害が起こる原因になったあの10日あまりの長雨、全部合わせれば日本の関東圏全域の年間総雨量とほぼ同等です。」

『1年間の雨の量を10日で降ったってわけ?そりゃまたあの街も災難ね・・・。』

「まああといくつか施工不良もあったみたいですけどね。でも私から見ればいくつかの点を改良すればあの長雨にも耐えられるようにはできたと思います。実は今、戦略AIの演算能力をお借りしてその弱点を克服した私流の“ネオ・ジオフロンティア計画”を作ってみてるんですよ。完成したら技術部の方に評価してもらおうかなと。」

『そう。でも程々にね。本来戦略AIはそういう用途には使わないものなのだから。』

「わかっています。新たな任務が来たときはそちらを優先します。その辺はわきまえております。」

『ならいいのだけれど。・・・じゃああなたは今のところその計画を作るので忙しいわけね?』

「え?まあそうですね。こんなに燃えるのは久々ですよ!」

『ならこれは見せないほうがいいわね・・・。』

「え?なんですかそれは?」

『12月24日にクリスマスパーティやる予定だったじゃない?でもあの事件で中止になっていた。明日、ちょっと遅れたクリスマスパーティーをやろうとウィートリーが言い出してね。その招待状なのだけれど・・・忙しそうだから欠席にしておいてあげるわ。』

「い、いや!行きます!行かせてください!あー!バーンウッドさん!ひどいですよぉ!」

『ふふふ。それじゃあごゆっくり~。』

「ああ!待ってください!バーンウッドさん!」タタタッ

 

 

バタン

 

 

 

『戦略AIです。ネオ・ジオフロンティア計画。演算完了・・・。戦略ドライブに保存します。』

 

 

 

 

 

 

~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・「運命の日」

 【+2000】『災害3日目を向かえる。』

 

・「満身創痍」

 【+1000】『車を2台共大破させる。』

 

・「物語の裏側」

 【+3000】『主要人物に合わずに任務を遂行し、帰還する。』

 

・「ハルマゲドン・レポート」

 【+5000】『ジオフロンティア計画の設計図を持ち帰る。』




実績で主要人物には会わないとありますが、今回起こった災害の9割は主人公も体験している災害です。

次回はモスクワへ向かいます。
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