『我々ICA情報部は、件の“亡霊”について調査を継続していたのだけれど、ちょっと行き詰まってしまっているのよ。全米の民間データセンターから情報収集を行っているのだけれど、1箇所だけ侵入できないデータセンターが有ってね、今回はそこへ向かってもらうわ。』
『向かってもらうのはアメリカのオレゴン州はザ・ダレスよ。ここには世界最大のIT企業の一つ“Google”の北米データセンターの一つがあるわ。このデータセンターのセキュリティは強固で、オフラインで保管されているデータも大量にあるらしいわ。』
『今回、あなたにはこの施設に侵入してもらっていくつか“バグ”を仕込んできてほしいの。我々ICAの情報部の侵入経路をそのバグで切り開くのよ。バグと言ってもコンピュータウイルスを仕込むわけじゃない。ちょっとした端末を用意するからそれを直接サーバーに接続してほしいのよ。』
『データセンター内は内部はもちろん、敷地内もあちこちに監視カメラと警備員が居るから見つからないように注意して頂戴。非公式情報では有るけれど、このデータセンターは特別なセンターらしくてね。構内に侵入者が発見された場合、通常なら州警察が来るところをこのセンターだけは北にあるヤキマトレーニングセンターから合衆国軍のヘリボーン部隊が来ることになってるのよ。あなただって正規軍とはやり合いたくないでしょう?』
『準備は一任するわ。』
~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】
・装備
【シルバーボーラー、ロックピック、ハッキング用バグ×4】
・服装
【愛用スーツ】
『ザ・ダレスへようこそ。47。』
『コロンビア川を挟んでワシントン州とオレゴン州の境目にあるこの街は、オレゴン州ワスコ郡最大の都市よ。と言っても人口は1万4千人程度だけれど。』
『街の東側には中規模のダムがあって、データセンターの電力はほとんどそのダムの水力発電で賄われているみたいね。直接高圧線を引っ張ってきて構内で変電して使っているみたいよ。』
『施設の南側と西側は開けていて見つかりやすいわ。北側の雑木林から侵入するのが良いかもしれないわね。そのあたりは任せるわ。』
『幸運を祈っているわね。』
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時刻は午前2時。対岸からデータセンターの敷地の北側にある小川にボートで到着した。施設の周りは比較的低めのフェンスで囲まれているが、見通しがよくあちこちに有る監視カメラによって監視されているためフェンスの低さに対して侵入難易度は高い。一番建物に近いこの場所も、すぐ近くに監視カメラが有り、雑木林の中から身を乗り出せばすぐにカメラに補足されてしまうだろう。しかも衛星写真ではわからなかったが、あの監視カメラは一部の重要基地などに設置されている強化装甲タイプだ。拳銃弾程度では破壊することは難しいだろう。
一通り林の中から見たがどうにもカメラの死角がない。あの手のカメラは広角であり、ゲームなどによくある「カメラの真下付近がカバーしきれていない」などということもない。私は作戦を変更して一旦施設の正門方面へと移動した。正門の先、一般道との接続交差点までやってくると、流石にここまでは監視カメラは張り巡らされては居なかった。辺りは暗く、電灯自体丁字路のそばに一つあるだけだ。私はこの辺りで侵入を手助けしてくれる人を待つことにした。
20分ほど待っていると、1台のピックアップトラックがやってきた。トラックはそのまま交差点を曲がり、データセンターの方へ向かおうとする。私はすかさずシルバーボーラーで車の左前輪を撃ち抜いた。
バシュ パァン!キキーッ!
ガチャ
「なんだあ?・・・げっ!パンクしてるじゃねえか・・・まいったなあ。」
私は暗闇に紛れてパンクしたタイヤの状況を確認しているドライバーの背後に忍び寄った。車内に他の乗員が居ないことを確認、周囲にも人が居ないのを確認した後、確認していた男を背後から抑え込み、首を絞めて気絶させた。
男の持ち物を色々と探ると社員証が出てきた。幸運なことにその社員証には写真はついておらず、ICチップと名前表記だけだった。これがアレば構内に入れるかもしれない。私は男を適当に縛り上げると、近くの茂みの中に放置。パンクしたタイヤを素早くスペアに交換し、車を走らせてデータセンターへ向かった。
データセンターの正面の検問を、社員証を提示し通過することに成功した。そのまま怪しまれないように構内を走り、中央の建物横の駐車スペースに車を止めた。近くの扉の認証に社員証をかざすと扉が開き、私はデータセンター内部に侵入することに成功した。
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『施設内に侵入できたわね。あなたにやってもらいたいのはあなたが丁度入っている中央棟の1階から4階にあるメインサーバールームのいくつかの端末にバグを仕込んでもらうこと。まずはサーバールームを目指して頂戴。』
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流石はIT企業のGoogle。データセンター内部は無機質というわけではなく、照明や手すり、内装などにも気を使っており、この手の施設にありがちな殺風景な施設というわけではなかった。至るところに人間工学に基づいた木製の調度品や施設設備が有り、温かみすら感じる。だがそんな温かみに浸っている場合ではない。私はできる限り不自然にならないように近くの休憩室の扉を開けて中にはいった。
休憩室内には誰も居なかった。流石に午前3時になろうかというこの時間帯では今働いている人員以外は誰も居ないのだろう。私はそのまま休憩室内をくまなく捜索した。休憩室なだけあって機密情報や重要書類などは一切なかったが、館内図が簡単にでは有るが壁に掲示されているのを発見した。そのすぐ横には社員共同の掲示板があり、様々な連絡事項が貼り付けられている。その中には今日の夜勤シフトに関する連絡もあった。
####情報を入手####
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『シフト変更の掲示によると、この中央棟における今夜の人員は4人だけみたいね。それぞれ全く別の場所で働いているようで、排除は簡単そうよ。』
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排除するにしてもまずは警備室を制圧しておきたい。どうやら警備室は地下1階にあるようで、施設図では北の端に位置していた。ここからそう遠くはない。
私は休憩室を出ると、そのまま通路を進んで警備室へ向かった。警備室までは複雑な経路というわけではなかったが、社員が居ないような場所に設置されている監視カメラには注意しなければならなかった。通信途絶による警戒態勢も避けなければならないため、カメラを壊すこともできなければ妨害することもできない。いくつか突破不可能なカメラが有り、思ったより回り道することになった。
警備室前に到着した時には午前4時を回っていた。侵入から警備室まで時間を食いすぎている。急がなくてはならない。早くしなければ出勤してくる社員が増えてしまう。少なくとも午前7時までにはすべてを終わらせて脱出を完了する必要がある。
警備室の扉には鍵がかかっていたが、中から人の気配はしている。私は古典的では有るが、単純にノックをしてみた。
コンコン
ガチャ
「なんだあ?」
ゴッ!
「うっ!」
ドサッ
幸いにも警備室の中には1人しか居なかったようだ。ノックして外に出てきた警備員をドアの脇からシルバーボーラーのグリップ部分で顎に一撃を加えて気絶させた。そのまま警備員は中へ。警備室には各フロアの監視カメラの映像が数十秒間隔で切り替わりながら映されていた。私はひとまず電源を切って防犯システムをシャットダウンさせた。記録装置をショートさせて記録を消すのも忘れずに。
警備室であらかた仕事を終えた私は、そのまま一番近くにあるサーバールーム。ここからだと9番ルームが近いのでそこへ向かった。9番ルームの中には人は居なかったが、機械だけは無人で動いていた。中を探索していると、フロアの端に端末を見つけた。おそらく制御用かモニタリング用だろう。
「聞こえるか。端末を発見した。」
『だいぶ時間が押しているわ。早速バグを接続して頂戴。』
「了解。」
カチッ
ピピピピピ…
『・・・入れたわ。侵入経路作成には30分ほどかかるから、その間に他のサーバールームにもバグをしかけて頂戴。大体あと3箇所くらいでいいわ。』
「わかった。」
私はその場を後にして他のサーバールームを目指した。設置するバグは例によってコードに偽装されており、設置場所さえ間違えなければしばらくの間偽装が可能な代物だ。
そのまま隣の第8ルーム。階段を上がった先にあった第13ルーム。最上階にあった第20ルームにも次々に設置していく。先程警備室で見た施設図によるとこのデータセンターは全部で50近くのサーバールームが有るらしい。流石にその全てに仕掛けることはできないが、情報部曰く、そのうち最低1~2箇所、3箇所も設置すれば確実に全体がつかめるらしい。第20ルームに設置し終えたところで通信が入った。
『47。サーバー内を早速調べてみたのだけれど、どうやらその中央棟の地下にオフラインのデータバンクが有るらしいわ。そこにもバグを設置してもらえるかしら?』
「オフラインでは遠隔で侵入できないのではないか?」
『問題ない。そのバグ端末は通信機能も備わっているわ。それ自体がWi-Fiアンテナになるの。』
「なるほど。」
私は階段を降りて一度地下へ向かい、オフラインのデータベースを探した。所在自体は情報部のもたらした情報もあって比較的簡単に見つけられたが、データバンクの周囲に作業員がいた。
『47。そのデータバンクは職員の指紋認証がないと一切の操作ができないみたい。』
「指紋なら眼の前に居るさ。」
『網膜認証も有るようよ?精神状態認識機能付き。』
「・・・。」
『そこに作業員が居るなら彼が開いてくれるまで待つほうが良いわね。』
「しかしやけに厳重だな。」
『オフラインのスタンドアロンデータバンク。指紋と網膜と精神状態認証付き。とてもただの個人情報保護とは思えないわね。』
「中を見るのが楽しみだな?」
『ええ。本当に。』
私は遠目から端末の画面を見る。今はログオフ状態になっているが、今まさに作業員が端末を操作しようとしていた。20文字以上のパスワードを打ち込み、近くの端末を覗き込んで網膜認証、同時に手元では指紋認証を行う。端末の画面が変化し、デスクトップ画面と思われる画面に切り替わったところで、私は背後から作業員を羽交い締めにして首を絞め気絶させた。
デスクトップ画面になっている端末にバグを差し込む。すぐに通信が開始され、情報部から遠隔操作で内部情報がアップロードされていく。
『これは・・・すごいわね。』
「有用な情報は合ったか?」
『まだ精査していないからなんとも言えないけれど、少なくともアメリカの現政権を転覆させることはできるようになったわね。』
「後どのくらいかかる?」
『後10分ほど待って頂戴。その間にさっき設置したバグを回収してきてもいいわ。』
「わかった。」
私は一旦部屋を出て先程設置したバグを回収して回った。時刻はそろそろ5時になろうかというところ。結構ギリギリかもしれない。
あらかた回収し終えた後、部屋に戻ってくると、丁度アップロードが完了したようだった。
『OK。ダウンロードは完了したわ。バグを回収して撤収して頂戴。』
「了解。」
私はバグを回収し、そそくさと施設を後にしようとした。社員用の扉から出ようとしたその時だった。
バシュン!ガシャン!
「むっ!」
遠目でマズルフラッシュが見えた気がしたのでとっさに身を捩ると、扉のガラスが銃撃に寄って粉砕された。私はそのまま影に隠れる。何者かからの狙撃を受けたようだ。私は近くに落ちたガラス片を拾い上げ、持っていた黒いハンカチと合わせて簡易鏡にして狙撃手の位置と正体を確認した。
「・・・!赤井。お前か。」
簡易鏡に写ったのは赤井秀一の姿だった。どうやって私がここにいることを突き止めたのか、そして何故彼が私を狙っているのかはわからないが、厄介な相手に狙われたものだ。
私はひとまず建物内に戻った。おそらく馬鹿正直にその場で待っているとは考えにくく、十中八九追ってくるだろう。早急に対処しなければならない。私は警備室に戻り、伸びている警備員から銃保管庫の鍵を拝借する。そのまま警備室内の保管庫を開けて中からアサルトライフル等を回収する。
反対側の通用口から出るとすぐさま発砲してきた。既に中央棟南側へ狙撃位置を変えたようだ。私はスコープもロクについてはいないが、アサルトライフルを物陰から乱射して牽制する。牽制して相手が隠れた隙に西棟北側にある駐車場に止めてある車の影に駆け込んだ。車をピッキングで開け、急いでエンジンをかける。銃声に気がついて検問所の方から警備員が走ってくるが、かまっている余裕はない。そのまま急発進し、狙撃されないよう注意しつつ正面ゲートを強行突破して脱出した。
~赤井side~
「・・・。」
ピッピッピ
プルルルルル…ガチャ
「私です。逃げられました。・・・ええ。追っても無駄でしょう。」
「・・・了解。」
ピッ
「しかしあいつこんなところで何をしてたんだ・・・?」
~~3日後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「何故あそこに赤井がいた?」
『わからない。誰かがあなたを見つけて通報したのかあるいは・・・。』
「内通者か。」
『今の所手がかりはなにもないけれど注意する必要があるわね。』
「・・・。ところで何かわかったのか?」
『ああ。しかけたバグで作ったワームホールのいくつかはあの騒ぎで不審に思ったGoogleに発見されてしまって対処されてしまったわ。でも第20ルームに設置した分がセキュリティチェックをくぐり抜けて今活動中よ。』
「調べている最中か。」
『ええ。でも情報量が膨大でね。今スタンドアロン型のデータバンクの情報と一緒に戦略AIがクロス検索をかけているわ。もうそろそろ結果が出ると思うのだけれど・・・。』
ピピピ
【戦略AIです。検索結果を表示します。】
ピッ
「・・・これは。」
『うーん・・・確かに亡霊では有るのだけれど、私達が調べたことと大差ない気がするわね。』
「収穫なし。か?」
『・・・まって。戦略AI、この“ルイジアナ州における住基登録履歴”についてもうちょっと掘り下げて頂戴。』
ピピピ…ビー!
「む?」
【検索エラーが発生しました。情報展開ができませんでした。】
『どういうこと・・・?詳細を。』
【上級ネットワークからの中止命令を受け取りました。発信者、上級委員会No.9】
『・・・!』
「No.9というとまさか・・・。」
『ドナルド・カーキンス。彼の死後、No.9は空席になっていたはず・・・。』
「・・・亡霊が増えたな。」
『はあ・・・戦略AI。引き続き検索を続行して頂戴。』
「我々はどうする?」
『そうね・・・とりあえず待つしか無いわね。』
「ふむ・・・。」
ガチャ
「47!バーンウッドさん!ちょっと手伝ってほしいのだけれど!」
「ブルー?」
「この子の新しい服を買いに行きたいのよ!」
「・・・別にいい。」
『タバサ・・・、まあ今は小休止と行きましょうか。』
「わかった・・・だが何故私も?」
「いいから!はやく!」
バタバタバタ…
バタン
【戦略AIです。検索を中止します。中止命令発信者、アナンデールICAメインサーバー。】
~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・「セキュリティの脆弱性」
【+1000】『職員になりすまして構内に侵入する。』
・「転ばぬ先の銃」
【+3000】『警備室の武器保管庫から武器を調達する。』
・「夜勤明け」
【+1000】『午前7時までにすべてのバグをしかけ終えて脱出する。』
・「身躱しの達人」
【+3000】『赤井秀一の襲撃を無傷で切り抜ける。』
赤井しゃんは急遽登場してもらうことになりました。いないよりいたほうが良いよね?
次回は青森に向かいます。