HITMAN2『世界線を超えた先に』   作:ふもふも早苗

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『こんばんは。47。』

『前回、むつ市でデータをアップロードした際に、ついでにあの世界の現状を色々と調べたわ。その結果、我々情報部が当初予想していたよりも深海棲艦の隆盛が早いことがわかったの。』

『無論、原因も特定したわ。前回の大戦の後、深海棲艦の存在にいち早く気がついた人間たちが居たみたい。彼らは一連の戦争が日本国によって仕組まれたマッチポンプだということをおぼろげながらに理解したようね。人類に対して反旗を翻した者たちは、あろうことか自らの肉体の一部を深海棲艦と同化させてしまったようなの。そうすることで地球の支配者シフトにも対応しようとしたんでしょうね。』

『今回のターゲットは深海棲艦に寝返った人間の中で中心的な役割を果たしている人物。元の名前は“ロバート・クリス”。現在は深海棲艦によって再び占領されたハワイ、オアフ島、パールハーバーに浮かぶフォード島、のどこかに居るはずよ。』

『彼を暗殺しても指揮系統は混乱するでしょうけど決定的な打撃にはならないわ。重要なのは彼が死んだ後どういうプロセスで新たな司令官が誕生するのか。それを我々は観測したいの。予測ではこのプロセスを監視することで、深海棲艦の根源となる存在の居場所がわかるわ。』

『深海棲艦が跋扈しているさなかに単身向かうことになる。発見発覚は即座に死につながるわ。十分に注意して頂戴。』

『準備は一任するわ。』




~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】
・装備
【注射器、ウェットスーツ】
・服装
【愛用スーツ】




HITMAN2『大洋を翔けた男』

『フォード島へようこそ。47。』

 

『ICAの開発した静音タービンでもフォード島南岸に近づくのが精一杯らしいわ。悪いけれどそこからは歩きでお願いね。』

 

『フォード島を含めてパールハーバー一帯はすべて深海棲艦の基地になっているわ。くれぐれも見つからないように。』

 

『フォード島までは艦娘が連れて行ってくれる。帰りも同じよ。でも闇夜に紛れて脱出することになるからタイムリミットは午前4時。それ以降になる場合は一旦艦娘を撤退させることになるわ。乗り遅れたら同日23時に再び同じ場所に帰ってくるからそれまでどこかでやり過ごすことになるわ。』

 

『非常に危険な地域よ。十分に気をつけて。』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

パシャン

「ぷぁ・・・やっと付きました・・・。」

「ここまで感謝する。任務完了までここで待機していてくれないか。」

「はい。ここで静かに待っています。・・・あ、それとこれを・・・。」

「これは?」

「キャロラインさんという方から預かりました。深海棲艦に対抗できる武器だそうです。」

「これは・・・なるほど。感謝する。」

「いえ・・・それでは。」

「ああそうだ。そういえば君の名前をまだ聞いていなかったな。」

「あ、はい。伊13。“ひとみ”とお呼びください。それでは・・・。」

 

トプン…

 

 

とても物静かな潜水艦娘だ。だからこそこの任務に選ばれたのだろう。道すがら聞いた話では妹の方はだいぶ騒がしいという話だった。姉妹でもそうも違うものなのか、それとも艦娘だからなのか。

 

なにはともあれフォード島南岸に上陸した後、雑木林の中へ素早く身を潜める。ウェットスーツを脱ぎ、茂みの中に隠しておく。深海棲艦は人の形をした種類も多くいるが、多くは人語を話せない生命体だ。情報収集は厳しくなることが予想される。本部施設へは独力で行くほかないだろう。

 

東側は大分開けている上、海からも対岸からも丸見えだ。ここを進むのはいくら今日が新月の曇り空でほぼ真っ暗闇だからと言ってもかなりリスキーだ。私はすぐ近くにある建物の外周に張り付きながら一旦西側へ向かった。別の建物の更に奥は東側と同様に開けているため、ここから素早くかつ静かに道の反対側に有る大きな格納庫へ向かわなければならない。

 

飛び出すタイミングを見計らっていると、北から光が近づいてきた。どうやら深海棲艦もトラックは使うらしい。道沿いに走ってきたトラックはそのまま私の居る建物へ寄ってきたかと思うと、一つのシャッターの前で停車した。中から頭に白い面のようなものをかぶっている深海棲艦が出てきた。たしかあれは“雷巡チ級”と言ったか。片手が砲艤装になっているが慣れているのか器用にシャッターを開けると中へ入っていった。

 

私は中へ入っていったタイミングでトラックの荷台に潜り込んだ。荷台には物資と思われる大小様々な木箱が所狭しと並べられており、隠れるには十分だった。少しして建物のシャッターを閉める音が聞こえたあと、荷台に新たな木箱が積載された。荷台の扉が閉められ、トラックが動き出した。感覚から言えば東へ向かっているようだ。少し走ると運転席から声が聞こえてきた。

 

 

ピリリリリ

ピッ

「あい。・・・ああ、大丈夫だよ。もうすぐそっちに着く。荷卸たまには手伝ってくれよ。」

「お前なあ・・・一人で持てるって言っても重いもんは重いんだぞ。リコリスはどうしたんだよ?」

「ああ?バカンス継続中だあ?あいつ南方から出向してきてるんだろ?なんでそいつがバカンス取ってんだよ!」

「・・・はいはい、わかったわかりましたよ。一人で下ろせば良いんだろ・・・。ハァ…」

ピッ

「ったく中間ときたら・・・自分の執務室の備品くらい自分で運べっての・・・。」

####アプローチ発見####

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『どうやらこの木箱は執務室の備品が入っているみたいね。“中間”とはおそらく中間棲姫のことだと思われるわ。この基地では結構重要ポジションのはずよ。つまりこの木箱が運ばれる場所はこの基地の中心部の可能性が高いということ。うまくすればターゲットのすぐ近くまで潜り込めるかもしれないわね。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

トラックはそのまましばらく走った後止まった。荷台の扉が開けられると、チ級が手近な木箱を取ってそのまま近くの建物へ入っていった。私は隠れていた場所から出て手近な植え込みに身を潜ませる。

 

どうやらここはフォード島のフィットネスセンターという建物のようだ。深海棲艦たちはこの建物を基地司令部施設として活用しているのだろう。

 

チ級が1つ目の木箱を運び終えて戻ってきた。そのまま2つ目の木箱を取って再び建物の中へ入っていく。木箱はなかなかに大きく、おそらく前はおろか周囲が殆ど見えていないと思われる。私はチ級の後をつけていくことにした。

 

ここは深海棲艦の根源地に近いため、周囲の海域はその圧倒的な数に物を言わせた哨戒活動によって完全に防御されている。ICAの消音装置がなければ送ってくれたあの艦娘もこの島までたどり着けなかっただろう。そんな厳戒態勢の中だからなのか、司令部施設自体の警備は手薄と言っていいほどにセキュリティが全くなされていない。人間が作ったセキュリティシステムを扱えないのか壊れていて直せないのかはわからないが、時折廊下にある監視カメラも根本から折れていたり、コードが繋がっていなかったりと正常に機能しているとはとても思えない状態だった。

 

その御蔭でチ級の後ろでそれなりに大胆に尾行していても警戒態勢になるようなこともなく、すんなりと3階の一室に到達できた。チ級は一旦床に木箱を置くと不意に周囲を見渡し始めた。どうやら何か別の存在が近くにいた気配だけは感じ取っていたらしい。私は音を立てず、その見回した視界に入らないように注意しつつ背後についた。

####アプローチ完了####

 

 

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『中間棲姫の部屋にたどり着いたみたいね。ここはこの基地でも最高機密の場所に違いないわ。ターゲットもきっとすぐ近くにいるでしょう・・・。』

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チ級は周りに誰もいないことを確認すると、首を傾げつつも懐からカードキーのようなものを出して扉のノブの下の隙間に差し込んだ。鍵が空いた音がしてそのまま取っ手を掴んで開ける・・・その瞬間に私は背後からチ級を掴み、首筋に注射器を刺した。注射器の中身を入れる寸前のところで止め、そのまま語りかける。

 

 

「ぐっ!?な、なんだ?!」

「抵抗するな。抵抗すればこの注射器の中身を一気に注入するぞ。」

「き、貴様人間か!?そんなもので私が殺せるとでも?」

「試してみるか?」

「・・・!わ、わかった。とりあえず落ち着け。」

「部屋に入れ。」

 

 

自信たっぷりな私を見て何かを感じ取ったのかおとなしく言うことを聞いてくれた。この注射器の中身は先程艦娘に渡された新型麻酔薬バサラブの原液なだけなんだがな。

 

そのまま部屋の中へ入ると一人の深海棲艦が机に座った状態でこちらを見て固まっている。おそらくあれが中間棲姫だろう。私は間髪入れずに拘束しているチ級ごと机に突進した。チ級が机にぶち当たり前につんのめったその瞬間に注射器の中身を半分投与した。想定では半分でも深海棲艦を5時間は眠らせられるはずだ。そのままつんのめった勢いを利用して机を支点に前方宙返りで中間棲姫の背後についた。間髪入れずに中間棲姫の首筋に同じく注射器を刺した。

 

 

「貴様は一体?!」

「抵抗するな。目の前のやつのようになりたいか?」

 

 

目の前には首筋という脳に近い部分に直接麻酔薬を入れられたために机につんのめったままの状態で意識を失っているチ級がいた。下位種とはいえ深海棲艦を手玉に取る武器が有ることを上位種に認識させるには十分だった。

 

 

「何が目的だ・・・!」

「この基地に元人間がいるはずだ。」

「ローズ司令に・・・?」

「ローズ、そう呼ばれているのか。」

「あ、しまっ・・・。」

「今どこにいる。」

「はっ、言うわけがないだろう?」

「ではこれを投与するしか無いな。目の前のやつと同じように。」

「チ級に何をした・・・!」

「安心しろ。眠ってもらっただけだ。目を覚ますかどうかはわからんがな。」

「貴様・・・!」

「さて、どうする。」

 

 

私が首筋に刺した注射器に少しだけ力を込めて威嚇しようとしたその時だった。

 

 

ガチャ

「ちゅうちゃん、この資料なんだけど・・・ってなんだこりゃ?」

「司令!来てはいけない!」

「なるほど。あなたがそうか。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『彼が深海棲艦に寝返った男、ロバート・クリスよ。彼を中心としてこの周辺の深海棲艦の指揮系統は保たれているわ。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

私は中間棲姫に刺している注射器をほんの少しだけ注入し、中間棲姫の肩を支点として再び宙返りで机の向こう側に降り立った。

 

 

「な、何だお前は!ちゅうちゃん!大丈夫か!」

「人の心配をするより自分の心配をするんだな。」

 

 

私は少しだけ余裕を持ってターゲットに向かっていく。

 

 

「貴様ぁ!司令に触れるなぁ!」ガチャ

 

 

中間棲姫は朦朧とした意識の中、どこからともなく取り出した砲艤装でこちらを撃ち抜こうとしてくる。私は素早くターゲットの手を取る。引き金が惹かれた瞬間、ターゲットの手を引き、私の位置とターゲットの位置を素早く交換した。

 

 

ドォン!

ドシュッ

「がっ・・・。」

ドガァァン!

 

 

朦朧とした意識の中では正確に照準することは不可能に近い。私の後ろ姿だけを見て放たれた砲弾は、寸分違わず位置を交換したターゲットの腹部を貫いた。貫通力が高すぎるためそのまま体を突き抜けて外の壁もぶち抜いてしまったが。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ターゲットの死亡を確認。よくやったわ。でも今の騒ぎで基地の警備が飛んでくるわよ。急いで脱出して頂戴。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「司令!!」

 

 

中間棲姫は誤射してしまったことに動揺したのか一瞬体の動きが止まった。その瞬間を見逃さず持っていた注射器をダーツの要領で彼女の体に向かって全力で投げつけた。命中した注射器は勢いに任せそのまま中身を体内に注入した。元々意識が朦朧としていた中間棲姫はその一撃で完全に意識を手放した。

 

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 

基地の警報が鳴り響いている。私は注射器を回収すると、部屋の窓から近くの木へ飛び移り、海へ向かって一目散に駆け出した。別の建物の影に隠れた瞬間、今までいた建物の入口付近に大量に深海棲艦が集まってきた。私はできる限り静かに建物伝いに移動し、隙を見て道路を渡って海へ入った。

 

そのまま泳いでいくわけにも行かないので岸壁沿いをギリギリの姿勢のまま南へ泳ぎ、30分ほどで最初の上陸地点が見えてきた。

 

すると不意に足を掴まれる感覚があり、一拍おいた後海中に引きずり込まれた。

 

 

「・・・。(シーッ)」

「・・・!」

 

 

足を引っ張って海中に引きずり込んだのは上陸支援の艦娘“伊13”だった。彼女はそのまま海中を凄まじいスピードで進み、最初の上陸地点まで私を連れて行った。

 

 

「ぷぁっ!あぶなかったあ・・・。」

「ふうっ・・・感謝する。」

「いいえ。でもなんでこんな騒がしく・・・?」

「ターゲットを仕留める時に中間棲姫に砲撃されてしまった。」

「ええ!?だ、大丈夫なんですか・・・?」

「中間棲姫は無力化した。追っては来れないだろう。」

「そうですか・・・。」

「ウェットスーツに着替える。少し待っていてくれ。」

「わかりました。」

 

 

茂みの中で濡れた服を絞りつつウェットスーツに着替える。多少寒いが仕方ないだろう。着替え終わるとそのまま来たときと同じ要領で手を引かれながら海中を進み、この海域を離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

~~同時刻~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『47から送られてくる情報によると、やはり深海棲艦は独自の進化を遂げているようです。』

「ううむ・・・一体何故・・・。」

『当初このような進化の仕方は想定されていませんでしたし、要因もありませんでした。』

「誰かが意図的に進化の要因を混入させたということですか?」

『それはわかりません。ですが可能性の一部としては・・・否定できません。』

「・・・わかった。こうなっては仕方あるまい。」

「アレの進捗はどうなっていますか?」

『“小型中性子掃射砲”は先週承認を受けたことで現在開発が進んでいます。』

「追加で予算を回す。早急に完成させろ。」

『・・・使うおつもりですか?』

「そうだ。あの深海棲艦とやらはあの世界の人間にとって驚異どころの話ではなくなっている。」

『随分とその・・・肩入れと言ったら些か失礼かもしれませんが・・・。』

「・・バーンウッドくんにはまだ知らせていなかったな。」

「そういえばそうでしたわね・・・。」

『はい?』

「あの世界の趨勢は複数の世界に影響を及ぼす可能性があることがわかったのだよ。」

『・・・その報告は受けていませんが。』

「当然だろう。我々もつい先程情報部からメールで簡易報告を受けたばかりだからな。」

「影響を及ぼす世界は我々の世界も含んでいるそうですよ。」

「あの世界が滅べばこの世界にも何かしらの悪影響を及ぼす可能性があるということだ。」

『・・・。』

「では。上級委員会No.1とNo.6の連名で通達します。」

 

 

「“小型中性子掃射砲を完成させ、深海棲艦部分掃討作戦を開始せよ。”」

 

 

 

 

~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・「無賃乗車」

 【+1000】『トラックの荷台に乗る。』

 

・「人類の切り札」

 【+3000】『深海棲艦を1人以上無力化する。』

 

・「相容れない存在」

 【+5000】『中間棲姫にターゲットを殺害させる。』

 

・「ヌメヌメする!」

 【+2000】『水に濡れた状態でウェットスーツを着て脱出する。』




あけましておめでとうございます(激遅)
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

物語の方は結構巻きで進んでいますが、いかんせんモチベーション維持が難しく、書くのが遅れ気味になっていますことをお詫び申し上げます。


次回は極寒の大地に向かいます。
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