『今回向かってもらうのはロシア連邦の最高機密。メシュゴリエ山にあるルスキー・グラーザ基地よ。この基地は合衆国ですら存在を把握しきれていない秘密基地で、その名の通りロシア連邦における北極圏の目に当たる重要な基地。』
『ターゲットはこの基地に捕らえられている男。名前は“カミルズ”本来はイジツの世界とつながっているもう一つの世界に飛ばされるはずだったのだけれど、どういうわけか我々の世界に再転送されてきたみたい。でもそのせいで空間に歪みが生じ始めているわ。』
『空間に歪みができた結果、イジツの世界でも通称“穴”と呼ばれる転移門が複数開いてしまっているみたい。その一つがラハマという街の上空にも突発的にできる可能性があることがわかったわ。予測ではあと3時間後。そしてその時間、丁度オウニ商会の飛行船、羽衣丸2号がラハマに帰還する。十中八九巻き込まれこの世界に転送されてきてしまうわ。』
『転送されてきた場合、北米大陸の近くに現れることが予測されている。そこがどこであろうと、間違いなくNORADの防空監視網に引っかかる。言語が通じなければIFFもないコトブキ飛行隊は間違いなく米空軍と戦闘になって
『今回はロシアで最も警備の厳重な場所へ行くことになる。しかも時間制限付きよ。一人ではかなり困難な任務になることが予想される。そこでモスクワに居るタバサを招集したわ。二人共同で速やかに任務を遂行して頂戴。』
『準備は一任するわ。』
~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】・【エージェント66】
・装備
【シルバーボーラー、ロックピック、コイン×3】・【戦闘用魔導杖、特製秘薬】
・服装
【愛用スーツ】・【魔法学院制服】
『メシュゴリエへようこそ。47。』
『周囲をウラル山脈とツンドラの大森林に囲まれたここはロシアの最高機密の基地を置くのにうってつけだった。近くには閉鎖都市が置かれ、外界から完全に隔絶された存在ね。』
『残された時間は後3時間。基地内部がどれほどの大きさなのかは情報部でも把握できていないわ。それなりに時間がかかることが予想される。できる限り急いで頂戴。』
『幸運を祈っているわ。』
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静かな森の中。そこに響き渡るトラックのエンジン音。私は今、ロシア軍の軍用トラックを運転し、ルスキー・グラーザ基地へと向かっている。このトラックは、ここへ着いたときに丁度通りかかったトラックで、基地内に物資を搬入するためのものらしい。私がそれを止め、降りてきたところをタバサのスリープクラウドで眠らせて、服とトラックを“借りた”。
助手席には眠っている兵士。荷台にはもうひとりの兵士とタバサだ。トラックはカバートラックなので荷台を臨検でもされない限りタバサ達がバレることはないだろう。
しばらく森を走っていると施設の門が見えてきた。表の看板には“メシュゴリエ鉱山”と書かれているが、検問所で検問しているのは明らかに軍人だ。私は静かにゲートの前で停車し、窓を開けた。
「通行証を。」
「はい。」パサッ
「・・・定期便か。だがお前見ない顔だな?」
「今日からここに配属になったものです。」
「ふうん・・・前は何を?」
「施設警備です。カリーニンのほうで。」
「・・・そうか。通っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
やはり多少不審に思われたが通り抜けることができた。通行証が無造作にダッシュボードの上に置かれていたのですぐに気がつけた。私は空いたゲートを通って基地内へ入っていった。
「・・・。」
ピッピッピッ
プルルルル…ガチャ
「こちら北ゲート。“来客”です。」
鉱山施設は立派なもので、とても放棄されてから20年が経っているとは思えない綺麗さだった。もしかしたら何かしら使っていて、今でも定期的に整備しているのかもしれない。私はその鉱山施設の中ほどまで進み、駐車スペースに車を止めた。
「・・・。出てきていいぞ。」
バサッ
「乗り心地は悪い。」
「だろうな。時間がない。行くぞ。」
私はまず手近の事務所のような建物を探ることにした。しかし、横ではタバサが怪訝な顔をしていた。
「おかしい。」
「どうした?」
「人の気配がない。」
「・・・。時間帯も有るのでは?」
「それにしても。ここは仮にも軍事施設。見張りの兵すらも置かないのはおかしい。それに、」
「それに?」
「その事務所も、明かりがついているのに人の気配がない。」
確かにゲートを通過してから人影を見ていない。慎重に事務所の窓から中を覗いても、様々な書類が放り出されたままで誰も居なかった。そしてこの事務所、扉の鍵すらかかっていない。いくら何でも不用心すぎるだろう。
事務所の床や机の上に散らばっていた書類は、鉱山とはほとんど関係のないものばかりだった。その多くは基地へ運び込む物資表や兵士のタイムスケジュール、要人保護の手順などが書かれたマニュアル等だった。そしてそれらを覆うように一番上には大きく広げられた状態で施設図が置かれていた。
「誰かがここで施設図を見ていたようだな。」
「・・・何故?」
「施設図の紙の端、少しシワが寄っている。あそこに誰かが手を置いたときのものだろう。」
「・・・一体誰が。」
「わからん。だが少なくとも書類が散らばっているにも関わらず放置しているところを見ると、この鉱山もといこの基地の人間でないことは確かだろうな。」
私達はその施設図を元に、基地の入口へ向かった。入り口は鉱山の坑道を利用しており、入り口には鉄格子と南京錠で施錠されていたらしかった。しかしそれも今は外されて扉は開け放されている。私達は行動の中を進もうと足を踏み入れた。
「まって。」
「どうした?」
「念の為。」
キュッキュッ…ポンッ
バシャバシャ…
「何だその液体は。」
「私が風メイジだということは前にも話したと思う。風メイジは風の流れ、空気の流れを読んで周囲の人の気配を探ることができる。」
「以前聞いた覚えがあるな。」
「でもその探知距離にも限界がある。この液体は技術部と共同で開発した、その探知距離を伸ばすためのもの。これを撒いた地点を中心に半径30mほどの気配を遠距離から感じ取ることができる。金属探知にも反応せず、EMPやジャミングにも強い。」
「なるほど。入口に撒くことで入ってくる人間を探知しようというわけか。」
「そういうこと。」
坑道はほぼ一本道なので後ろを押さえられるのは死活問題だ。早急に気がつくことができれば対処する時間も稼ぐことができるだろう。
巻き終わった後、気を取り直して坑道の奥へと足を踏み入れた。行動は初めの内、外から見える範囲は通常通りの岩盤がむき出しのところに鋼鉄の柱があるだけであったが、更に奥は床も壁も天井も全てコンクリートで塗り固められた通路になった。通路の壁にある蛍光灯の明かりを頼りに先に進んでいくと、高さ20mはあろうかという大きな扉の前にでた。しかし私達はその扉の前に転がっているもののほうが重要だった。
「あれは・・・。」
「ロシア兵だろう。しかし・・・。」
転がっていたのはロシア兵の死体だった。眉間を一発で撃ち抜かれており、薬莢は落ちておらず争った後もないことからおそらく不意打ちでやられたのだろう。大きな扉は下に人が通るための小さな扉が併設されており、その扉は開きっぱなしになっていた。
私達は細心の注意をはらいながら扉をくぐり内部へと足を踏み入れた。そこには通路の至るところに横たわるロシア兵たちの死体があった。どうやら先客は相当な手練のようだな。
「47。この兵士はまだ息がある。でもだいぶ衰弱している。」
「ふむ。喋れるまで回復させられるか?」
「やってみる。」
“イル・ウォータル・デル”
「うっ・・・がはっ・・・。」
ゴホゴホ…
「失血がひどく、銃創も多い。助けるのは私の力では無理。」
「わかった。おい、誰にやられた。」
「う・・・軍服の・・・4人組・・・。」
「軍服の4人組?所属はわからないか?」
「わからない・・・。だが・・・かなりの・・・ゴホゴホ」
「しっかりしろ。」
「お前も・・・早く・・・逃げろ・・・アレは・・・化物・・・。」
パタッ
「・・・だめ。死んだ。」
「軍服4人組の手練か。どこかの特殊部隊だろうか。」
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『情報部に詳しく探らせてみるけれど、今の所各国の諜報機関に潜入中のインフォーマントからその基地に関する作戦の発令報告は受けていないわ。もしかしたら極秘作戦の可能性もあるけれど。』
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しかし、たった4人でここを制圧するつもりなのだろうか。廊下には少なくとも1個小隊ほどの人数が倒れている。これを4人で制圧したとなれば我々もかなり危険だろう。
ひとまず先を急ぐことにした。行きがけの詰め所のような場所で基地の内部図を見つけたのでそれをたよりに先へ進んでいく。捕虜収容・尋問に使われている部屋は基地の中ほどに有るようだった。
「まって、銃声が聞こえる。」
「・・・私には聞こえない。どのくらいの距離だ。」
「風メイジは音にも敏感。下の階。多分500mは離れている。サプレッサーを使ってるみたい。」
「民間のサプレッサーではそこまでの性能はないが、軍用のサプレッサーならば500も離れていては聞こえないか。」
「ということは・・・。」
「その4人組はどこかの特殊部隊で間違いなさそうだな。」
しかし相手が下の階にいるのは好都合である。私達が目指しているのはこの階にある部屋だからだ。私はタバサに下の階の音を注意深く追うことを指示し、足早に目的の部屋を目指した。
目的の部屋は捕虜を収容する独房が数部屋と、尋問や拷問を行うための部屋が一つ、それを観察する部屋が一つという構成になっていた。観察部屋にも尋問室にも人影はなく、死体もなかった。私達は独房を一つ一つ調べることにした。
「・・・。」
「どうしたタバサ。」
「独房から人の気配はしない。ここには居ないか居たとしても・・・。」
「・・・確認はする必要がある。」
その言葉通り、独房6部屋はすべてもぬけの殻だった。死体すら無く、タバサ曰く入り口から誰も出入りしていないことから、少なくともターゲットはまだこの基地のどこかに居る可能性がある。
私達は部屋を出ると下の階へ降りる階段を目指した。下の階では先程からだいぶ静かになったようで、銃声もしないらしい。この基地は横に広いが、縦方向は2階層しかなく、下の階が事実上最深部になる。
私達は階段を降り、慎重に廊下を忍び足で歩いた。辺りは不気味なほどに静かであり、先客の存在も見当たらない。私達が廊下の中ほどまで進んだその時だった。
カンッ!カラカラカラ…
プシューッ!
「む!」
「煙幕!」
バァン
ダダダダダダダダ‼
突如として近くの少しだけ空いていた扉からスモークグレネードが投げ込まれ、廊下は煙で一杯になった。私とタバサは咄嗟に近くの部屋に飛び込んだ。その直後、私達がいた場所は蜂の巣になったようだ。
私は扉からシルバーボーラーだけだして応戦した。しかし見えない敵相手に当たるはずもなく、このままではこの部屋にもスモーク、もしくは手榴弾が投げ込まれてしまうだろう。
「タバサ!」
「わかってる!」
“エア・ストーム”
ウォォォ?!ギャーナニナニ!
銃声の間隔や方向からしてこちらを打ってくるのは少なくとも3人。だがそれ以外にもそのさらに奥に民間人のような声を上げる男がいるようだ。タバサは続けざまに風魔法を放ち、煙幕を晴らすと同時に相手の射撃を狂わせた。
ヒュッ
ガキン!
ボォォォン!
「ぐっ!」
反対側の部屋から爆炎が襲った。どうやらあちらの部屋はガスボンベなどが置かれていたらしく、相手はその中に手榴弾を転がり入れたようだ。思わぬ方向から襲った爆発による爆炎でタバサは一瞬怯んでしまった。その隙きにと言わんばかりにこちらの部屋の中に手榴弾が投げ込まれた。
「くっ!」ダッ
「むぐっ!」
ドサッ
ボォォォン!
私は投げ込まれた手榴弾を処理する時間がないと悟り、タバサにタックルをする要領で部屋の奥にあったダンボールの山の中へタバサと一緒に飛び込んだ。なんとかダンボールが障壁になり、手榴弾の破片は防げたようだ。
タッタッタ
「タバサ、無事か?」
「なんとか。」
「敵が来る。効くかどうかわからんがスリープクラウドだ。」
“スリープクラウド”
ブワッ
タタタカチャ
「げっ!この煙は!?」
「ちぃ、毒ガスか。ひとまず引き上げるぞ!ソープ!先導しろ!ローチ!お客さんを落とすなよ!」
「了解!」
「イエッサー!」
タタタタタッ…
「・・・行ったみたいだな。それにしてもこの煙・・・。」
「スリープクラウドに色を付けて濃くしてみた。それなりに高等技術。」
「なるほど。黄色く着色したおかげで毒ガスと勘違いしてくれたか。」
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『47。まずいわ。さっきあの連中が抱えていた男。そいつがターゲットのカミルズよ。奴らに先を越されてしまったわ。至急追いかけて頂戴。』
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先程の民間人のような声はターゲットの声だったようだ。私達は急いで部屋を後にして階段を駆け上がる。まだそう遠くへはいっていないはずだが・・・。
「47。今奴らは坑道を出た。・・・えっ?」
「どうした?」
「坑道を出てすぐのところで・・・立ち止まった?」
「待ち伏せか。」
「違う。待ち伏せにもならないようなところで止まっている。」
「・・・とにかく急ぐぞ。」
私達は急いで施設を通り抜け、坑道の入口までたどり着いた。入口の影から覗き込むと、ターゲットと屈強な男4人が立ち往生していた。リーダーと思われる男が何か電話で話している。
「・・・解せねえ。何故今になって?・・・だからそれが解せないって話なんだよ!わかるだろ!ニコライ!」
「・・・こいつをさらってこいって言ったのはそのクライアントなんだろ!なんで今になって!」
「・・・わかった、わかったよ。後でちゃんと説明してもらうぞ。ニコライ。」
ピッ
「プライス、ニコライはなんと?」
「・・・。」
プライスと呼ばれたリーダー格は無言で佇んでいる。そして床にへたり込んでいるターゲットを一瞥すると・・・
カシュ
「え?」
チャキッ
バァン!
プライスは腰から拳銃を抜くと、間髪入れずにターゲットの眉間を撃ち抜いた。
「・・・どういうことですプライス。」
「クライアントからそうしろって指示が来たんだよ。」
「でもなんで・・・じゃあ俺たちはこいつを暗殺するために派遣されたってことですかい?」
「知らん。撤収するぞ。」
バタン
ブロロロロロ…
ターゲットの死体をそのまま放置して彼らは近くにおいてあったトラックに乗り込み去っていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『・・・。どういうことかはわからないけれど、とりあえずターゲットが死んだことで世界線の歪みは徐々に治り始めているわ。これなら穴が開くこともないでしょう。任務完了。いろいろ腑に落ちないでしょうけどあなた達も帰還して頂戴。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
もはや訳がわからないが、彼らがターゲットを処理してくれたのであればここにいる理由はもう無い。私達は近くにあった別のトラックに乗って彼らの後を追うようにこの地域を離脱した。
~~2時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『それで。彼らの所属はわかったのかしら?』
「はい。彼らはどうやら別の世界の特殊部隊ですね。」
『別の世界・・・。』
「所属名は“タスクフォース141”この世界には存在しない特殊部隊です。」
『どこの国の所属なの?』
「一応イギリスのSASが元になっているようですが・・・合衆国の海兵隊も絡んでますね。」
『そう・・・。それで、なんで別の世界の特殊部隊がこの世界に?』
「それはまだ。侵入経路が不明です。例の空間の歪みはイジツにだけつながっていましたから。」
『早急に調べて頂戴。あの男、いつかの埼玉での連中と同じだとしたら・・・。』
「・・・あの時の集団は最終的に・・・。」
『ええ。“亡霊”につながっていた。』
「ということは彼らは亡霊の子飼いの部隊ということでしょうか?」
『どうでしょうね。彼らはニコライとよばれた人物からの指示で動いていたみたいだし。』
「あの方たち、相当に戦闘力高かったですよね。」
『・・・あの者たちと真正面からやり合うためにはこちらも兵力を出し惜しみできなさそうね。』
~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・「お届けものです。」
【+1000】『施設のゲートを通過する。』
・「遺言」
【+3000】『ロシア兵から情報を聞き出す。』
・「世紀の対決」
【+3000】『タスクフォース141と戦闘する。』
・「お株奪い」
【+3000】『ターゲットをタスクフォース141が暗殺する。』
遅くなってしまいまして申し訳有りませんでした。一回瞬電のせいでデータが飛んでしまったせいで書き直していました。次はもう少し早く揚げられるように努力いたします。
次回は射命丸の友人を助けに行きます。