『今回向かってもらうのは幻想郷の紅魔館よ。実を言うと私達情報部ですら今回なぜ紅魔館へ向かってもらうのか正確に説明することはできないの。というのも、この任務自体が上級委員会の勅令なのよ。つまりクライアントが上級委員会、より正確に言えば上級委員会役員No.2。』
『何をしに行ってもらうのかは私も聞かされていないわ。詳細は現地についたら直接通信で伝えられることになっている。準備のしようがないと思うけれど、暗殺は行わないらしいわ。攻撃火器は自衛用だけで十分でしょう。』
『準備は一任するわ。』
~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】
・装備
【シルバーボーラー、結界感知妨害装置】
・服装
【愛用スーツ】
『幻想郷へようこそ。47。』
『今までのICAの活動は一般社会レベルではほとんど露見していないわ。ただ一部の有力者たちには何をしている組織なのかくらいは認知されているわね。』
『今回は人里にはあまり関係のない任務だけれど、紅魔館においては妖精メイド以外全員に面が割れている。正式な手続きをとって入ったとしても、出会い頭に侵入者と思われて排除される可能性もあることを考慮してね。』
『・・・っと、そろそろ上級委員会No.2より通信が入る時間よ。幸運を祈っているわ。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~10時間前~
~???side~
《修正プログラム適応開始。・・・適応状態49%。》
『上級委員会No.6より伝達。全ての作戦行動の一時停止。』
《一時停止中・・・エラー。一部の任務について作戦続行が上位指示系統のため優先されています。》
『上級委員会No.6より伝達。上位指揮系統の任務を閲覧要請』
《閲覧要請は却下されました。却下申請者、リアン・カーキンス。》
『上級委員会No.1からNo.6までの連名指示。上位指揮系統の任務を閲覧要請』
《・・・閲覧要請は認可されました。開示中・・・》
《作戦続行中任務。「プロジェクト23265」。再始動から48時間経過。現在、第二実験体組成準備中。》
『上級委員会No.1からNo.12までの連名指示。「プロジェクト23265」の中止。』
《作戦中止命令は認可されました。中止中・・・エラー。任務を中止できません。》
『詳細報告要請を受信。』
《不明な防護プログラムが作動中。戦術AI操作が拒否されました。「プロジェクト23265」続行中。》
~現在~
~47side~
ザァァァァァァ…
生憎と今日は雨だ。この周辺地域は我々の世界の日本と同じ様に6月が雨季らしい。長雨続きで参ると里の人間も言っていた。
私は今、雨降りしきる中雨合羽を着て紅魔館へ続く道を歩いている。予定ではあと10分も歩けばあの極彩色とも言える館が見えてくるはず。そんなときに通信が入った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『やあエージェント47。君と直接話すのは初めてだね。私は上級委員会No.2をやっている者だ。まあ言いづらいなら私のコードネームである“シックル”とでも呼んでくれたまえ。』
『では本題に入ろう。昨夜遅く、ワシントンにあるICAメインサーバーの復旧作業が行われてね。その際に無視できないものを発見してしまったのだよ。「プロジェクト23265」と言えば君ならわかるだろう。そう、実験体計画だ。あの計画は前任の老人たちが発案し、ドナルド・カーキンスが陣頭指揮をとっていたプロジェクトだったのだが、結果は君も知ってのとおりだ。だがこの度、そのプロジェクトを再始動した輩がいるようでね。しかも上級委員会にも止められないようにご丁寧に細工まで施して。』
『ここ6時間ほどICAの技術部と情報部と協議した結果、あのクソッタレなプロジェクトを再開させようとしている防護プログラムは、科学系のプログラム以外にも何か別系統のプログラム防護がかけられており、それを解除しないことにはアクセスすらできないだろうという結論だ。』
『科学系以外の系統の防護、といえば自ずと“魔術系”としか思えん。そこで君に紅魔館に居る。パチュリー・ノーレッジ氏に協力を要請してほしいのだ。彼女は我々が出会ってきた魔術師の中でも“、学者”に近い魔法使いと言える。今回のような状況には最適だろう。できる限り隠密理に協力を仰ぎたい。本来なら潜入のプロであるソリッド・スネーク氏などにも協力を要請したいところだが、上級委員会では誰がこんな細工を施したかわからない以上、必要以上の部外者の介入は避けるべきという意見が大半でね。君に白羽の矢が立ったというわけだ。』
『改めて、今回の任務を伝達する。“紅魔館に潜入し、パチュリー・ノーレッジに協力を要請せよ。”幸運を祈っている。』
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長めの通信が終わる。要約すると例の不具合を起こしたAIを治そうとしていたら実験体計画を再始動するトンデモ計画を発見して、中止させようとしてもよくわからない魔術的ガードが邪魔してアクセスできないから、私に幻想郷の魔術のプロに協力を要請しに行ってほしい。ということになる。本来ならばそういう事は然るべき立場の人間がアポイントを取りつつ自ら出向くのが筋だが、いきなり部外者がアポイントを取るより多少なりとも顔が知れた相手が言ったほうが良いとの判断か。
ともかく、私は与えられた任務をこなすだけだ。そうこうしているうちに紅魔館が見えてきた。結界感知妨害装置は常にON状態。今回も静かに潜入したいところだ。
バシャ
「何か御用ですか?暗殺者さん。」
「!」
急に道の脇から話しかけられた。振り向くとそこには蓑をまとった紅美鈴が立っていた。先程紅魔館が見えてきたときに見えた正門の前に立っていた人物がいきなり真横に現れたのは驚きだ。
「・・・今日は仕事をちゃんとこなしているのだな。」
「私だって毎日寝てばかりじゃありません。だいたいこの雨では寝るに寝れませんよ。」
「そうか。」
「それで?幻想郷を騒がせた暗殺集団の実質的リーダー格がまた紅魔館に何のようです?返答によっては実力で排除しなければならないのですが。」
紅美鈴はごく自然な形で構えた。いつでも拳や足技を放つことができる体勢だ。私としても戦闘はできる限り避けたいため、開示してもいい内容を精査しつつ交渉を開始した。
「今回は紅魔館のパチュリー・ノーレッジに会いに来た。」
「パチュリー様に?」
「ICA本部の方でかなり重大な問題が発生した。我々だけで対処するには時間が足りない。彼女の協力を要請したい。」
「・・・重大な問題とは?」
「君は聞かされていないかもしれないが“実験体計画”を再始動しようとしている輩がいる。パチュリー・ノーレッジならばこれだけでも事の重大さがわかってくれると思う。」
「実験体計画・・・そういえばそんな話を聞いたような・・・。」
「私は門の外で待っていても良い。急だがアポを取ってくれないか。」
紅美鈴は少し思案した後、懐から何かを取り出した。プラスチック製の小型機械のようだ。紅美鈴は機械の頭頂部のボタンを押した。
ピンポーン…ピンポーン…ピンポーン…
「少し待っていてください。」
・・・何のことはない。あれはワイヤレスコール。日本のファミリー向けレストランなどで店員を呼ぶ際に使われるアレそのものだ。紅魔館はレストランだったのか?
少しして館の正面扉が開き、メモとペンを持った妖精メイドが傘を差しながらやってきた。まさに店員が注文を聞きに来たかのようだ。紅美鈴はそのメモにサラサラとなにかを書くと、妖精メイドに「これをパチュリー様に。大至急。」と言ってメイドを向かわせた。一応門前払いは避けられそうだ。
「今のは・・・。」
「え?ああ。最近紅魔館に導入された“ピンポンシステム”です。外の世界の茶屋には普通にあるものなのでしょう?」
「無いとは言わないが。」
「便利ですよね。わざわざ叫ぶ必要もありませんし、あれくらいの音量ならお嬢様を起こすようなことにもなりませんから。」
「なるほど。一応理にかなった導入というわけか。」
「はい。」
雨降りしきる中、そのまま10分ほど待った後、再び館の門が開かれ中から黒い羽の生えた赤毛の少女が傘を手にやってきた。
「あら?こあちゃん。」
「お疲れさまです。それで、そちらの方が?」
「ええ。急な来客。」
「はじめまして。小悪魔と申します。気軽にこあちゃんとでもおよびください。」
「ああ。」
「それでなんですが。パチュリー様から言伝です。“至急その者を図書館に案内してほしい”と。」
「良かったですね。アポは取れたみたいですよ。でもこあちゃん大丈夫?この人は・・・。」
「大丈夫です。一応最下級とは言え悪魔ですから。人間には負けませんよ。」
「ならいいけれど・・・注意は怠っちゃだめよ?」
「はい。それではお兄さん。えっと・・・」
「47だ。」
「ふぉーてぃーせぶんさん。こちらへ。」
小悪魔と呼ばれた少女が館の中へ誘導してくれている。今回は正式に客として入ることになるのでコソコソ隠れたりしなくてもよいのは助かった。結界感知妨害は切っていいだろう。
少しばかり廊下を歩いた後、見覚えのある大扉の前まで来た。前々回この館に来た際に見た大図書館へ通じる大扉だ。小悪魔はゆっくりとその扉を開け中に入っていく。
「パチュリー様。お連れしました。」
「ご苦労さま小悪魔。重大な話になるから少し席を外していなさい。」
「わかりました。御用の際はピンポンしてください。では。」
バタン
「・・・あのシステムは存外役に立っているみたいだな」
「ええ。外の技術も悪くはないわね。」
私はさり気なく図書館の中を見渡す。私とパチュリー・ノーレッジ以外に人影は見当たらない。
「さて、本題なのだけれど。あの計画を再始動しようとしているというのは本当なの?」
「ああ。無論我々ICAの本意ではない。何者かが奥底に残っていた情報にアクセスして計画を引き継ごうとしているようだ。」
「私もレミィからあの計画の大まかな内容は聞かされたわ。レミィは“パチェならもっとうまくやるでしょう?”と言っていたけれど、私はそんな物を作りたくはないわね。」
ふむ?あの騒動に関わった人物は全員記憶処理が施されているはずだが・・・。工藤新一の時と同じ用にここでも記憶処理の不備が発生しているのか。
「こちらとしても実験体を再度復活させるのはリスクが高すぎる上費用対効果も薄いと考えている。」
「そうね。あんなものを造らなくともあなた達はすでに十分強大な力を得ているでしょう。この幻想郷の空の彼方に浮かんでいるアレとか。」
「あれは今活動休止中だ。ヤクモユカリに睨まれているからな。」
「そうでしょうね。少なくともあのスキマ妖怪が目を光らせているうちは再起動するのは無理でしょうね。それで?私に何をしてほしいって?」
「計画を推進しようとしている勢力を止めるためにデータを抹消しようと考えた。しかし、科学的な防護プログラムの他に魔術的な要素の防護も同時にかかっているようだ。我々は科学には強くとも魔術はそこまでじゃない。」
「なるほど。そこで魔法関係の専門家とも言える私のところへ来たと。」
「他の世界にも魔術を扱うものは大勢居た。しかし君ほど学者肌のものは居ない。」
「あの兵器に携わった他の面々はどうしたのよ。」
「エレオノール女史は計画の後記憶処理を施してハルケギニアに帰らせた。彼女はまだ帰る場所がある。レレイ・ラ・レレーナ女史も同様だ。」
「チャオとかいう火星人は?」
「彼女は行方不明だ。気がついたらICAの施設から消えていた。」
「脱走されるなんてあなた達らしくもないわね。」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。あれほどの装備と人材と設備がありながら、ってね。」
パチュリー・ノーレッジに関しては部分的な記憶処理だけにとどめており、実験体の攻撃力や一部対処方法に関する記憶は抹消されていない反面、実験体の詳細やICAの技術力に関しては抹消されているはずなのだが、この点でもまた記憶処理の不備が発生している。
「じゃあ頼れるのは私だけってことかしら?」
「そういうことになる。」
「引き受けてもいいけれど条件がある。」
「何だ。」
「あなた達のデータベースにある書籍データをこちらにも提供してくれないかしら。」
「書籍データ?」
「ええ。最近はそろそろ外の世界の本にも目を向けるべきだと考えていてね。以前協力したときにも読んだのだけれど、とてもじゃないけれど時間が足らなくて。それとも部外者にはおいそれと開示はできないかしら?」
「機密関連以外ならば許可は下りるだろう。元々ICA職員に娯楽と教養を養う目的として存在しているものだ。」
「それはどのくらいあるの?」
「書籍数はわからない。専用のデータサーバーセンターが必要なくらいには。」
「それは紙媒体にすることはできるかしら?」
「印刷すれば可能だろう。」
「いいわ。しばらくは幻想入り前の書籍に目が通せそうね。」
案外とすんなり協力を取り付けることができた。ブリーフィングではパチュリー・ノーレッジはかなり物臭な性格で自分で積極的に動くことはまず無いと踏んで居たのだが、やはり大図書館の名を関するだけあって本には目がないらしい。
しかしここで彼女の思わぬ弱点が露呈することになる。
「でも私だけじゃ無理よ。」
「何?」
「だって私、科学技術は専門外だもの。」
「ああ・・・。」
「“ぷろぐらむ”とやらも概念は理解しているけれどどの様な方法で作られてるかは全く知らないわ。」
「そうか・・・。」
さてどうしたものか。彼女に今からプログラミングの勉強をさせる時間もない。かと言って魔術は発動者の繊細な操作が求められる技術であり、他者の助言によってどうこうできるとは思えない。だが彼女にはアテがあるようだった。
「でも方法がないわけじゃないわ。」
「何か策があるのか?」
「妖怪の山に“玄武の沢”という川が流れているのだけれど、そこに住んでいる河城にとりっていう技術河童がいるのよ。」
「にとり・・・会ったことがあるな。」
「あらそう?なら話は早いわね。彼女なら外の世界の技術にも精通しているし、魔術も知っている。」
「魔法使いだったのか?」
「いいえ。河童よ。でも幻想郷には魔法を扱うものがたくさんいるから使えなくとも理論は知っているのよ。」
「なるほど。だが扱えないのであれば意味がないのでは?」
「魔法のことを何も知らない外の技術者が扱うよりはマシだと思うけれど?私のサポートを的確に技術に反映できると思うわ。」
「なるほど。」
パチュリー・ノーレッジは自分の机にあったコールボタンを押した。先ほどと同じチャイムが鳴り響く。少しの間のあと大扉が開き、やってきた小悪魔に手短に指示を飛ばした。
「準備させるわ。少し待っていて頂戴。」
「わかった。」
「おっと、私たちの分も頼むよ。」
「!」
不意に第三者の声が図書館内に響いた。声のする方向を見ると、上階テラス席にレミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットがこちらを見ていた。
「レミィ・・・起きてたの?」
「ああ。あのピンポンに起こされてね。」
「私もー。」
「なるほど。もう少し音量落とさせないとだめね。ついでに依頼してくるわ。」
「依頼?」
「ああ、このピンポンシステム作ったのも河童なのよ。それはそうとレミィ、何の用?文句を言いに来ただけじゃないでしょうに。」
「ふふふ・・・。私も暗殺者に付いていこうと思ってね。」
「私もー!」
「はぁ?」
「私のかけがえのない友人が凄腕の暗殺者に襲われないか心配だからさ。私がちゃんと見張っていてあげようと思ってね。」
明らかにその顔は見張るというよりも“暇だし面白そうだから連れて行け!”としか見えない。横のフランドールに関しては最近外出禁止令も解除されたらしく、幻想郷中出歩くことも多いらしい。今回ついてきたいというのもおそらくその散歩の延長のような感覚なのだろう。
「だめよ。」
「早っ!もうちょっと熟考して?!」
「フランも。私達は遊びに行くんじゃないのよ。」
「えー?」
「ふふん、その点はわかっているさ。何をしようとしているかも全てお見通し。これからにとりのところへ行くんでしょう?」
「あら、よくわかってるじゃない。」
「私くらいになるとそのくらいは見ただけでわかるのさ。」
「お姉さま。さっきドアの向こうで聞きみ(モガッ」
「さーフランなんのことかしらねー。いいこねえー。」
「モガモガ」
要するに客として案内された見知った暗殺者に興味がわき、妖怪の能力を無駄にフルに使って尾行して話の内容を盗み聞きして、面白そうだと判断したのでちょっかいを掛けに来たというわけだ。なんとも自由奔放な当主様だ。
「はー・・・。わかったわ。どうせ断っても付いてくるでしょう。」
「わかればいいのよ。」
「やったー!」
「というわけでエージェント47。これから玄武の沢に向かうわ。」
「了解した。」
「小悪魔、そこに隠れてないで・・・って何よそれ。」
「気がついてたんですね・・・、これはもちろんランチバスケットですよ。」
「・・・。」
「大丈夫です。シートもありますし、パラソルだって用意しましたし!」
「ピクニックに行くんじゃないのよ?」
「違うんですか?」
「違うのですか?」
「咲夜・・・。」
「わたくし、てっきりみんなで妖怪の山へピクニックに行くものだとばかり。」
「わざとでしょう?」
「さあ、なんのことやら。」
「大体、いま外は大雨・・・」
「あら、雨なら先程止みましたわ。」
「太陽サンサンです!ボンジュールです!アバンチュールです!」
「・・・。」
結局、私・パチュリー・レミリア・フランドール・小悪魔・十六夜咲夜、それと出るときに駄々をこねた紅美鈴と、紅魔館メンバー総出となってしまった。ちょっとした百鬼夜行状態だが私とパチュリー・ノーレッジ以外はピクニック気分なので空気は大分和やかだ。もっともパチュリー自身は頭を抱えていたが。
他愛もない会話をしたり途中昼食休憩なども挟んだりしながら歩を進め、1時間ほどで玄武の沢にたどり着いた。飛んでいけば10分とかからないらしいが、私が居るためほぼ全行程徒歩だ。おかげでレミリアとフランはもう疲れてしまっており、フランに至っては紅美鈴の背中で寝息を立てている。
「こんなところまで徒歩で来ることなんか無かったからある意味新鮮だよ。」
「普段は飛んじゃってますものね。」
「まだなのかい?目的地は。」
「レミィ。勝手についてきて文句言うのやめて頂戴。」
「へいへい。」
「あ、あれじゃないですか?」
紅美鈴の視線の先には清らかな一本の川が流れていた。以前妖怪の山へ行ったときに見た川だ。
「やっと着いたか。」
「にとりを探さないとね。あなた達はここで待っていると良いわ。」
「じゃあ一旦休憩ですね。シートもう一回広げますねー。」
「お嬢様。パラソルですわ。」
「ん、あんがと。」
完全にピクニックだ。ひとまずこれ以上動く気はないようなので置いていくことにする。私は川を遡り、河城にとりを探すことにした。
しばらく河原を探したが河城にとりはどこにも見当たらなかった。おそらく前回あったときと同じ用に光学迷彩をつけているのだろう。もしかするとすでに近くに居てこちらの動きを見ている可能性もある。私は一旦立ち止まり、周囲に意識を張り巡らせた。肉眼では確認できないが、ICAで習得したインスティンクトの能力を使うとすぐ近くの木陰に反応があった。私はシルバーボーラーを取り出し、そちらに銃口を向けた。
「そこだな。」
「ひゅい!?」
「あら、よく見つけられたわね。私でも探知用の魔法を使わないとわからないのに。」
「姿は消せても気配は消せないからな。」
インスティンクトは厳密にはサーモグラフィーとパッシブソナーの延長にある能力だが詳しく説明するとそれこそ日が暮れてしまうので適当に気配を察知したことにしておく。
ともあれ無事に河城にとりと接触することができた。銃をしまって改めて3人でここに来た目的を説明する。河城にとりは終始興味津々といった様子で話を聞いていた。
「なるほどなるほど。それでその防護プログラムとやらを突破する手助けをしてほしいんだね?」
「そういうことになる。」
「ならお安い御用!・・・と言いたいところなんだけれど。」
「何か問題が?」
「協力しても良いんだけれどタダってのはちょっとねえ・・・。」チラ
河城にとりはいかにも渋々依頼を断らなきゃならないというふうに腕組みしつつ唸っている。だが薄目を開けて私の懐付近、厳密に言えば先程シルバーボーラーをしまった箇所を見ていたのを見逃さなかった。要は“協力してやるから見返りに弄らせろ。”ということだ。
「なるほど。そういうことか。」
「・・・ま、報酬はあって然るべきよね。現に私も要求したし。」
「前にも言ったがこの銃は私の仕事道具。貸すことはできない。」
「そっかーなら・・・。」
「だがコチラならどうだ?」
「ん?」
私は別のポケットから結界感知妨害装置を取り出した。シルバーボーラーと違いこちらは純粋に支援用の道具なので、今無くなったところでそこまで困るものではない。次の任務の際にはどうせ新しい物を技術部が持ってくるだろう。
河城にとりは取り出したそばから興味津々といった様子で私の手の中にある装置をいろいろな角度から眺めている。これならば協力を取り付けることができそうだ。
「これは探知結界魔法に探知されないようにする機械だ。これを提供する代わりに協力をお願いしたい。」
「探知結界を無効化!へえ!外の技術もなかなかやるもんだねえ!」
「そんな物があるから私が何重にも貼った結界魔法でもあなたを探知できなかったのね・・・。」
「しかも紅魔の動かない大図書館の実証済み!これはレア中のレアだね!」
「どうだろう。引き受けてくれないか。」
「この機械はもらっても良いのかい?それとも貸してくれるだけ?」
「返してくれることに越したことはないが提供することもできる。」
「やったあ!やるやる!そりゃあもう防護プログラムだろうがなんだろうが一瞬で突破してみせるよ!」
「ありがたい。交渉成立だな。」
「じゃあ一旦レミィのところへ戻りましょう。あなたも着いてきて。」
「りょうかーい!」
話がまとまったところで一旦ピクニック気分の連中のところへ戻ることにした。戻ってみると、砂利の多い河原だというのに半ば無理矢理テーブルと椅子を設置して十六夜咲夜がレミリアに紅茶を入れていたり、地面に刺さらないパラソルを持って主人の友人を日光から守っている小悪魔が居たり、起きたフランドールと一緒に紅美鈴は釣りをしていたりと大分くつろいでいた。
「お、帰ってきたな。」
「お帰りなさいませパチュリー様。」
「まったく・・・こんな所まで来て紅茶を飲まなくてもいいでしょうに。」
「あ、パチェおかえりー。」
「にとりさんも。では交渉は?」
「成立だ。」
「それはよかった。」
それから急ぎピクニックセットを片付け、紅魔館メンバーは帰路についた。レミリアやフランドールはついていくと駄々をこねたりもしたが、十六夜咲夜と紅美鈴がたしなめていた。人里にて私とパチュリー・ノーレッジと河城にとりは別れ、人里にあるセーフハウスからICA本部のある世界へ帰還した。
~~3時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カタカタ…
ピピッ
「原因がわかったわ。このメインサーバーに接続するプロトコルって言ったかしら?それに精霊の力を使った魔法がかけられているみたい。」
「精霊の力・・・ですか?」
「ええ。電子精霊とでも言ったら良いのかしら。こんな物を作り上げるのは相当に科学と魔法が混在して発展した世界のものね。そういう世界に心当たりはない?」
「と、言いますと?」
「この電子精霊はここで生み出されたものじゃないわ。この世界には魔力が極端に少ない。この世界で生成するには数百年単位で力を貯めないと難しいわ。でもこの機械もなかのプログラムもそこまで年数は経っていない。ともすれば他の世界から来たと考えるのが妥当よ。」
「電子精霊・・・、あ!そういえば!麻帆良学園っていうところならもしかすると!」
「ああ、その名前は聞いたことがあるわ。チャオリンシェンっていう知り合いが通っていた大きな寺子屋ね。そういえば確かに彼女は魔法と科学両方に精通していたわね。」
「なるほど・・・そこから感染したと・・・。それで突破できそうですか?」
「にとり。」
「あいあいさー!大丈夫さっき教えてもらった方法で・・・そろそろ・・・。」
ピピーッ
「よし!できたよ!」
「メイン画面!すごい!ありがとうございます!」
「こちらこそ。面白い理論の魔法が見られて収穫はあったわ。」
「色んな機械も見れたしこんな最先端のハイテク機械も触らせてもらえたし大満足だよ!」
「じゃあちょっと失礼します・・・えっと・・・23265、23265・・・」
「これでしょう?」
「あ、そうです。それです!えーっとキャンセル・・・」
《戦術AIです。プロジェクト23265のキャンセル命令を受信しました。キープロトコルを入力してください。》
《・・・キープロトコル確認完了。プロジェクト23265は正式にキャンセルされました。》
「ふー・・・なんとか計画を止めることができました。本当にありがとうございます!」
「よかったわね。じゃあ私達はそろそろ。」
「あ、ちょっと待って。っとキャロラインさんだっけ?」
「はい?」
「ここ。ここのサーバーが不具合起こしてるみたいだよ。どうやらプロトコルの一部に抜け穴が生じてるみたいで、そこからあの電子精霊が紛れ込んだみたいだ。」
「ここは・・・DCメインサーバー!」
「このサーバー直さないとまたしばらくしたら電子精霊入ってきちゃうかもしれないよ。じゃ!」
「あ、ありがとうございます!」
「No.2。どうやらDCメインサーバーが破損したのが電子精霊の紛れ込んだ原因だったようです。」
『DCメインサーバーか・・・。』
「早急に修復の必要があると思います。技術部を向かわせてもよろしいでしょうか?」
『あそこは技術部は入れない。』
「え?」
『君は知らなかったか。まあ良い。DCメインサーバーは設置してある場所が少々厄介でね。』
「はあ・・・どこなんですか?」
『DCメインサーバーは、アメリカ国防総省の地下のウォールームにあるんだよ。』
~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・「来客」
【+1000】『アポイントメントを取って正門から入る。』
・「隠し事は無し」
【+2000】『紅魔館の主要人物全員に会う。』
・「紅茶はポットには返らない」
【+3000】『結界感知妨害装置を河城にとりに渡す。』
・「子供は寝る時間」
【+3000】『レミリアとフランを連れて帰還しない。』
あと2~3回、調査回が続きます。
次回はペンタゴンへ向かいます。